△リ%編 寄り添う影
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△リ%編
【寄り添う影】
お楽しみください。
――セレンディア城 談話室――
それから俺たちは、凱旋後に何をしていたのか、身の上話などをして、親睦を深めあった。
クレスは以前聞いた通り、故郷でもギルドでも、勇者の仲間として注目されることに疲れて、イリーナの元に居候していること。
イリーナは戦後の復興のために、辺境への慰問を行っていたが、それが終わる頃を見計らうように、縁談の申し込みが後を絶たず困っていたこと。
ルーシェは魔術塔から帰還の催促が来ているが、禁術の秘匿を考えると、何か都合のいい理由がほしくて、結婚はそのために都合がよかったこと。
クレスはともかく、この見合いを使って周囲への牽制をしたいという思惑があったことを、俺は初めて知って驚いた。
そんななか、俺の背後にいるはずのセレーネが、なぜか向かいの席から、こちらを眺めていた。
(おい! なんでそっちに移動してこっちを見てるんだ!? 気が散るだろう!)
「いやぁ〜、わかってはいたんですが、本当に誰も気付かないんだなぁ〜って思いましてぇ〜」
(……誰も、気付かない?)
「はい! クレスさんもルーシェさんも、クロードさんの後ろで、じ〜っとクロードさんを見つめてる彼女に気付いてないなぁ〜っと、思いましてぇ」
(なっ!?)
俺は、振り向きそうになる体を、必死に堪えた。
(おい!? そんな距離にいるのに、2人は気になってないのか!?)
「はい、まったく! いやぁ〜【認識改変】もエグいですけど、【気配遮断】も一級品のレベルになってますねぇ〜」
(いや! 怖いんだが!? 気配もなく立たれてて、怖いんだが!?)
「だ、大丈夫ですよ! それに見てると言っても、睨んだりじゃなくて、見惚れてる? って感じの視線ですから!」
(いや、でもぜんぜん気配を感じないんだよ! 本当に後ろにいるの!?)
「あっ! 今、クロードさんの頭のホコリを取ってくれましたよ!」
(……触られた感覚すらなかったんだが!?)
「クロードさま? どうかなされましたか?」
俺が後ろの存在に恐怖していると、その異変に気付いたイリーナが問いかけてきた。
「えっ? ああいや、なんでもない……」
「本当? クロードの顔真っ青だよ? 熱でもあるの?」
イリーナに返事をすると、クレスも俺を心配して、顔を覗き込んできた。
「久しぶりに遠出して、疲れが出たんじゃない?」
珍しくルーシェも、俺の心配をしてくれていた。
「クロードよ! 部屋に入る前もそうだが、少し貴公を働かせ過ぎたかもしれんな……今日はこの辺にして休むといい、西の塔への滞在を許可しよう!」
なんと陛下まで、俺の体調を気遣って、お馴染みの西の塔への滞在許可を出してくれた。
(セレーネ! よくわからんが、上手くやり過ごせそうだぞ!)
「ええ、クロードさんが余計なことをしなければ、こんなにスムーズにいくんですね!」
(……泣くぞ)
1つ目の難所を越えたことに、俺とセレーネが安堵していると、陛下が俺とイリーナの間に目線を移した。
「ミリスよ! 西の塔の準備とハンスを呼んできてくれ!」
「……かしこまりました……」
(うん? ……今のって……)
「あっ!? ルーシェさんがポロリしてます!」
「なっ!? 何ぃぃぃ!?!?」
セレーネの発言に俺は、反射的に反応してルーシェの方に、思いっきり振り向いてしまった。
「なっ、何よ? 急に変な声出して、人の顔……どこ見てるのよ?」
そう言ってルーシェは、胸元を隠すようにしながら、俺に冷ややかな視線を向けた。
「えっ? いや、何でもありません……すみません……」
ルーシェに向けられた視線に耐えられず謝ると、自らの煩悩と女神を呪った。
「危なかったですね! クロードさんの、中学生なみの煩悩に感謝ですね!」
(殺す! この女神、いつか絶対殺す!)
「まぁまぁ、必要な犠牲だったんです……それに、彼女たちなら『彼はおっぺぇが好き』って思うくらいですよぉ〜」
そう言うセレーネに釣られて、3人に目線を移す。
なにやら胸元に手を当て険しい顔をしているクレス、髪の毛をクルクルといじりながらソワソワするルーシェ、隣のイリーナは先ほどから体全体をこちらに向けていた。
「みんな、健気ですねぇ〜」
(……やっぱり、やり直したい……)
そんな嘆きをしていると、部屋の扉からノックの音とともに、懐かしい声が聞こえた。
「失礼いたします! ハンス・ポーター、陛下の命により参りました! クロードさまを西の塔へご案内いたします!」
「クロードさん! ハンスさんですよ! ネームドキャラとして出したはいいが、意外と出番がなくて困っていたハンスさんですよ!」
(お、おう……何言ってるんだ?)
ハンスに対するセレーネの反応を不思議に思っていると、陛下が口を開いた。
「うむ、ご苦労である! クロードよ、彼女たちも東の塔での滞在を許可している……今日はゆっくり休んで、明日からまた親睦を深めるといい……期待しているぞ!」
「……はい、ありがとうございます、みんなもすまない」
そう言って俺は立ち上がり、全員に挨拶を交わすと、西の塔へ向かうために、部屋を後にした……
――西の塔 リビング――
ハンスに連れられ、俺は西の塔に到着した。
「クロードさま! 私はこれで失礼いたします! またいつでも、お呼びください!」
そしてハンスは、綺麗な角度でお辞儀をすると、俺の返事を待たずに、踵を返して去ってしまった。
「ハンスさん、次の出番があるまでさようなら……グスッ」
「お前、アイツとそんなに親しかったっけ?」
セレーネの反応を不思議に思っていると、彼女の顔が真剣な表情に変わった。
「クロードさん、私の予想が正しければ、彼女は既にこの塔にいます……」
「いるって、4人目のことか!?」
俺の問いにセレーネはうなずき、上を見上げた。
「この部屋にはいません……おそらく寝室かと……」
その言葉に釣られ、俺も天井を見上げてしまうが、覚悟を決めるしかない。
「……行こう!」
「クロードさん、その前に一度セーブしましょう! ここでなら、やり直してもすぐに立て直せます」
「あ、ああそうだな」
出鼻を挫かれた感じがするが、セレーネの提案はもっともだと思い、俺はセーブをした。
(スロット2にセーブ)
【スキルの使用を確認しました。スロット2のセーブポイントを作成いたします……スロット2のセーブポイントを作成いたしました】
セーブが終わり、俺は改めて寝室へと向かい、そして部屋の扉に手をかける。
「部屋に入ったら私が彼女のいる位置を教えますので、クロードさんはすぐに声をかけて、彼女を攻略してください」
「……わかった……」
返事とともに扉を開き、部屋の中に入った……
「……クロードさん、ベッドの奥です!」
その言葉に反応して、ベッドの奥に視線を向けると、1人のメイド服の少女が、ベッドのシーツを整えていた……
――寄り添う影 完――
最後までお読みいただきありがとうございます。
本当にハンスはどこで使えばいいんだ!?
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▼次回予告
ミり■編
『はじめての距離』
明日 20時 投稿予定です!!




