■◆▽編 影に溶ける少女
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■◆▽編
【影に溶ける少女】
お楽しみください。
――スロット1 ロード後 談話室前――
再度ロードを行った俺は、陛下の許可をいただいて、内庭に来ていた。
「さて、何があったのか、そろそろ説明してくれないか?」
俺は何が起きているのか、セレーネに問いただした。
「クロードさん、まずはアナタが薄情とか、人としてどうなのか、とか言ったことを謝罪します」
「そ、そうか……俺そんなこと言われたっけ?」
「はい……それには今から話すことが関係しています」
「今から話すこと?」
「……クロードさん、アナタはあるスキルの影響を受けて、特定の記憶を完全に失っています」
「……はぁ?」
セレーネの突拍子のない説明に、俺は間の抜けた声を漏らしてしまった。
だが彼女の反応は冷たいものだった。
「話を続けますね! そのスキルは2つ……1つは自身の存在を認識しづらくする【気配遮断】、そしてもう1つ……自身への認識を阻害する【認識改変】です……これが問題なんですが、『そこにいる』ことを阻害するとは、『そこにいた』ことまで認識できなくなるスキルです! つまり記憶に残らなくなるってことです」
「ま、待ってくれ! そんなスキル、いったい誰が!?」
「それは言えません! なぜならスキルの効果は『その人を認識』したら起きるからです!」
「なっ!?」
セレーネの説明に、俺は混乱していた。
相手が誰なのかわからないのに、わかった瞬間に忘れてしまう。
そんなの、どうやって対応すれば……
「セレーネ! そいつに襲われたらどうすればいい!?」
「落ち着いてください! これは4人目の攻略対象の話です!」
「……えっ!?」
「驚くのも無理はありませんが、本当のことです!」
「でも! そんなスキルを持ってたら、日常生活に支障が出るだろ?」
「だから厄介なんです! そんなえげつないスキルを持っているのに、日常生活が送れているってことは、このスキルを『操作』できているってことです!」
「なっ!?」
「おそらく、普段は影が薄い人程度の認識にして、都合の悪い人には忘れさせてる、ってところでしょう……」
「……マジかよ?」
俺は誰のことなのかわからない、めちゃくちゃな話を、呆然と聞いているしかなかった。
「念のために聞くが、お前は影響を受けないんだな?」
「もちろん、女神ですからね! だからクロードさんが忘れても、私は覚えてますよ!」
「もう1つ……俺はそいつを攻略する必要性があるのか?」
「……正直ありません、ですがそれを言ったら他の3人も同じでしょう?」
「まぁ、それもそうだな……」
俺のその返事に、セレーネはニヤリと笑って語りだした。
「さぁクロードさん! おそらくこれが最後の攻略です! 相手はクロードさんのことを想いながら、自らの存在を隠匿してきた謎の少女! 長い道のりになりそうですが、準備はいいですか!?」
「……そんなもんいるか!」
「いいですねぇ! では行きましょう! 相手は談話室にいます!」
「おう!」
俺は返事と共に、談話室へと向かいながら、セレーネの助言を聞いていた。
「いいですかクロードさん、今は3人との会話に集中してください」
「それだと、4人目を攻略できなくないか?」
「いえ、先程も言いましたが、クロードさんが4人目を認識した瞬間に【認識改変】が始まります……おそらく紐付けされた話は全部忘れるでしょう……」
「なら、どうすれば?」
「問題ありません! おそらくですが、そのスキルは彼女と関わっている間は発動しないはずです! じゃないと、まともな会話もできなくなりますから……なので、彼女と2人きりで話せる状況を作れば勝機はあります」
「なるほどな……で、どうやってその状況を作るんだ!?」
「そこは、なんとかするしかありません!」
「……結局、出たとこ勝負ってことかよ!」
そんな作戦とも呼べないやり取りを続けながら、談話室前へと戻った俺に、陛下が声をかけてきた。
「おぉ、クロードよ! もう体調はよいのか? 急に歩き去ってしまうから心配したぞ!」
「大変申し訳ありません、陛下……まだ少し心乱れてはおりますが、問題ありません」
「うむ、そうか……では参ろうか!」
そして、俺たちは談話室へと入っていった……
そこにいるのは、見慣れた仲間たち――クレスとイリーナとルーシェの3人だ。
(この3人以外に誰かいるのか? 見たところ他に誰もいないが……)
「クロードさん! 今はこの場をやり過ごすことだけに集中してください! じゃないと、また記憶が飛びますよ!」
(そ、そうだったな……すまない……)
危うく早々に失敗を犯すところだった俺は、改めて目の前の3人に集中した。
(しかし皮肉なものだな……以前なら結婚したくなくて、やり過ごそうとしたのに、今は結婚相手を見定めるために、やり過ごそうとしているなんて……)
そう思いながら、俺は陛下に冗談めかして言ってみた。
「陛下……誰と結婚するかなんて、すぐには決められません……今回は親睦を深めなおす会、と割り切ってもよろしいでしょうか?」
すると陛下は、俺の問いにあっさりと返してきた。
「そうだな! 余は構わんぞ! 其方らもそれでよいか?」
そう言って陛下は、彼女らへと視線を移すと、クレスが誰よりも早くうなずいた。
「はい! クロードも急な話で混乱しちゃってるもんね! 今日はゆっくりお茶しようよ!」
そしてイリーナがそれに同意する。
「そうですね! わたくしたちも、心の準備は必要でしょうし、すぐにお茶の準備しますね! ……ミリス、お願いできますか?」
侍女の子がイリーナに返事をして離れると、ルーシェがため息をつきながら話し出した。
「まぁ、なんとなくこうなるかなと思ってたわよ! ほら! アンタも早く座りなさいよ!」
(……あれ? 怒らないのか、誰も?)
「クロードさん! ナイスやり過ごしです!」
(……なあセレーネ、もしかして今のを最初にやってたら、こんなことにならなかったんじゃ……)
「……過ぎたことは忘れましょう……」
(……そうだな……)
俺は過去を振り返ることをやめて、彼女たちの元へと歩いていった……
――■◆▽編 影に溶ける少女 完――
最後までお読みいただきありがとうございます。
チート級のスキルを2つも持つ少女に、あらがう術はあるのか?
正直、私にもわかりません!
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▼次回予告
△リ%編
『寄り添う影』
明日 21時 投稿予定です!!




