ルーシェ編 アナタの誓いを胸に……
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ルーシェ編
【アナタの誓いを胸に……】
――セレンディア城 西の塔 リビング――
視界がまだハッキリしていないなか、周囲を渦巻く魔力の奔流に呑まれそうになる。
そう、ルーシェの記憶に潜るとき、彼女は精霊を暴走させていた。
「くっ! ルーシェ! 聞こえるか!? ルーシェ!」
俺は渦巻く魔力の中心にいるルーシェの名前を、必死に叫んだ。
「いや! いや! なんでダメなの!? なんで!?」
しかし、彼女に俺の声は届かず、泣き叫ぶばかりだった。
「クロードさん、ヤバイですよ! 早くしないと、塔が崩れるどころか城が崩壊しますよ!」
「はぁ!? そんなにヤバイのか、コレ!?」
「本来なら1人につき1体の精霊が普通なのに、ルーシェさんは8体の精霊と契約してて、それが全部暴走してるんです! ヤバイ超えてヤバスです!」
「クソ! これだから俺の仲間は最高だぜ!」
セレーネの説明で状況を再確認した俺は、精一杯の冗談を言って余裕ぶった態度をとった。
「そんなこと言ってないで、どうするんですか?」
「……任せろ!」
そして俺は、大きな声で話しだした。
「おい! 精霊ども! 落ち着きやがれ! ルーシェに近づけねぇだろ!」
精霊たちには、俺たちの声が聞こえている、ならこれで精霊も落ち着くはず……なんてことはなく、逆に勢いが増していった。
「なっ? おい!? 何でもっと暴れてるんだよ!?」
「クロードさん! 精霊たちが拒絶しまくってますよ!」
「拒絶!?」
すると、どこからか謎の声が聞こえてきた。
『ルーシェなかした〜』『ルーシェをまもれえ〜』『あんぽんた〜ん』
「お、おい! 今のなんだ!?」
「? クロードさん、どうかしました?」
「いや、今気の抜けるような声がしなかったか?」
「……もしかして、精霊の声が聞こえてる!? ヤバイっすよ!」
俺が精霊の声を聞いたことで、セレーネの焦りが増していった。
「なんだ!? 精霊の声が聞こえたのが、そんな大事なのか!?」
「いいですか! 普通の精霊が普通の人間と対話するなんてことできません! でも、クロードさんにも聞こえたってことは、普通の精霊じゃなくなってるってことです!」
「つまりどういうことだ!」
「……暴走しているとはいえ、『精霊王』クラスの力があるってことです!」
「よくわからんが! ヤバイってことだけわかった!」
セレーネの話を聞いて、状況が悪くなる一方であることに、やけくそ気味に返事をしていると、また精霊たちの気の抜けるような声が聞こえてきた。
『たぎってきた〜』『みなぎってきた〜』『ぜっこうちょうである〜』『わがよのはるがきた〜』
「……なぁ、絶対あの中に、お前の同類がいるだろ?」
「……機会があれば、好きなMSを聞いてみましょう……」
『なやむ〜』『きめられな〜い』『なんこまで〜?』『シリーズごとでもい〜い?』
「おい! 絶対、お前の同類だぞ! アイツら!」
そんなやり取りをしていると、急に魔力の暴走が弱まるのを感じた。
「クロードさん! よくわかりませんが、今がチャンスですよ!」
「あ、ああ、しかし何で……」
『ファーストだとグ○かな〜』『わかる〜』『グ○カスタムもいいよね〜』『だよね〜』
「…………あれ……か……?」
「あれ……ですね……」
俺は体の力が抜けてしまっていたことに気付き、気持ちを切り替えてセレーネに指示を出した。
「セ、セレーネ! とりあえずアイツらの会話に混ざるんだ!」
「えっ!? い、いいんですか!?」
「お前、ああいう会話、得意だろ!? できるだけ、話を引き延ばしてくれよ!」
「よ、喜んで! ねぇねぇ、最近の方はわかるの? 私ねぇ、プロヴ〇デンスが好きなのぉ〜!」
『シ○ドだぁ〜』『さいきんかな〜?』『もう2○ねんまえだよ〜』
「み、認めたくない! 認めたくなぁ〜い!」
セレーネを囮にして、俺はルーシェに向かって少しずつ足を伸ばして前へと進む。
しかし、まだ抵抗を受けてなかなか前に進めないでいると、リビングの扉が『バァン』と音を鳴らして開いた。
「クロード! 大丈夫!?」
「クロードさま! ご無事ですか!?」
俺はクレスとイリーナが駆けつけたことに気付くと、とっさに2人へ指示を出した。
「クレス! 風を抑えてくれ!」
「イリーナ! 身体強化を!」
2人は俺の声に反応して動き出す。
「そうですねぇ! ゴ○ドもウイ○グも好きですけど〜、ベルテ○ゴが好きなんですぅ〜」
『Gはマネするよね〜』『ゼロカスにしびれた〜』『Xみんのわい、だいかんき〜』
「ねぇ、クロード! 変な声が聞こえるんだけど!?」
「わたくしにも、なにか聞こえますー!」
「気のせいだぁー!」
そして、もう少し……もう少しでルーシェに手が届く……
「じゃあ、"例のヤツ"やっちゃいますぅ?」
『いいね〜』『やるやる〜』『いつでもいけるぜ〜』
「では! 行きますよぉ〜……『俺が!』」
『ぼくたちが〜』『わたしたちが〜』『おれたちが〜』
俺は全力を振り絞ってルーシェに手を伸ばした……
『『『『ガン○ムだぁぁぁ!!!』』』』
「うおぉぉぉ――――!!!!」
その瞬間――魔力の奔流の中心へと抜けた俺は、ルーシェの肩を掴み、思いっきり抱き寄せた。
そして魔力の渦は完全に霧散し、チリとなって消えていく。
抱き寄せたルーシェが、俺の胸の中で小さくつぶやいた。
「なんでこんな無茶したのよ……」
「……泣いてる女の子を放っておく男に見えたか?」
「……どうだか……もういいわ! ありがとう」
そう言って俺から離れようとするルーシェを、もう一度抱き寄せた。
「ちょ、ちょっと! なにしてんのよ!?」
「いいか、ルーシェ! 契約なんかしなくたって、何度でも褒めてやるし、何度でも抱きしめてやる!」
「なにを!?」
「ルーシェの願いは、俺が叶えてやる! だから我慢しないで、全部言ってみろ!」
「……な……なんでも……?」
ルーシェは不安そうな表情で恐る恐る、俺に質問してきた。
「なんでもいいし、何回でもいいぞ!」
「……で、でも! 私めんどくさいし、わがままだし……」
「ルーシェ!!」
彼女の肩を持って、顔を突き合わせると、俺は笑顔で応えた。
「任せとけ!」
「……ギュッて抱きしめ……」
俺は彼女の願いを聞き終わる前に、これでもかという位に思いっきり抱きしめた。
ルーシェから、力が抜けていく……
「次のお願いはなんだ?」
「……えっ?」
「ドンドン言っていいんだぞ!」
「…………頭、撫でてほしい……」
「わかった!」
そして俺は、ルーシェを抱きしめながら、彼女の頭の上に手を置いて、ゆっくりと撫で始めた。
「……ねぇ、本当に? ずっとずっと……お願いをなんでも聞いてくれるの?」
「言ったろ! 任せとけって!」
「本当に、本当?」
「本当に、本当だ!」
「……私、アンタのことが好き! 大好き! だから、アンタにも……ク、クロードにも言ってほしい!」
「ああ! 俺も大好きだぞ!」
「……うん!」
そして俺たちはもう一度、強く抱きしめ合った。
するとクレスが、俺たちの元に勢いよく現れた。
「よかったねー、ルーシェ! おめでとう!」
クレスの後ろからゆっくりとイリーナも近づいてきた。
「おめでとうございます、ルーシェさん、ご無事でなによりです」
2人の登場に、ルーシェは恥ずかしそうに俺から離れて身なりを整えだした。
「2人とも、ごめんなさい、助かったわ……」
「いいんだよー、久しぶりにいい運動になったよ!」
「そうですね、ちょっとハラハラしましたが、懐かしい気分でした!」
ルーシェが2人と話し込んでいるのを見て、俺は安堵してセレーネの方に視線を移した。
「ZもVもいいですよねぇ、ゼ〇タもアサルトバスタ〇もいいですが、ハン○ラビとザンネ○クは、本当にいい機体でした……」
『わかるわぁ〜』『じかんがたりないね〜』『かたりあかす〜?』
「まだやってたんか……」
俺が呆れていると、ルーシェが思い出したように、精霊たちに話しかけた。
「そういえば、みんな何を話してるの? 誰かと話してたみたいだけど……」
すると精霊たちが、ルーシェの元に集まると、慌てた様子で誤魔化し始めた。
『なんでもないよ〜』『きにしないで〜』『きのせいだよ〜』
「そ、そう? ならいいんだけど……」
精霊たちの言動に、俺が不思議に思っていると、セレーネが語り始めた。
「クロードさん、あれが『隠れオタク』の習性なのです……同士と語り合いたい、けど女子にはオタクであることをバレたくない……そんな悲しい生き物なのです……」
「そ、そうか……」
おそらく、今後使うことのない知識を聞き流しながら、俺はいつもより柔らかな表情をしているルーシェを見つめていた……
――ルーシェの誓い――
正直まだ怖い……いつか私のことを嫌いになったり、イヤになって捨てられちゃうかもしれない。
でも、彼は誓ってくれた……
ずっとずっといつまでも、私の願いを聞いてくれると誓ってくれた。
だから、私も彼を信じてみようと思う……
ねぇ気付いてる? 私、さっき初めてアナタの名前を呼んだの……人と繋がることが嫌で、わざと距離を置いていた私がよ!
そこまでさせたんだから、ちゃんと誓いを守りなさいよ!
その不確かな誓いを胸に……私は、アナタを想い続けるから……
【スキルの使用を確認しました。スロット5のセーブポイントを作成いたします……スロット5のセーブポイントを作成いたしました】
――やり直し勇者と糸を編む少女編 完――
最後までお読みいただきありがとうございます。
これでルーシェ編は最終話となります。
本当に本当にありがとうございました。
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▼次回予告
新章 やり直し勇者と◆に✕け〇△女
明日 21時 投稿予定です!!




