ルーシェ編 歪みを正す者たち
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ルーシェ編
【歪みを正す者たち】
お楽しみください。
――ルーシェ 魔術塔――
それからの私はとても幸せだった……
お父さまにお願いして、部屋から出してもらい、美味しい食事を用意してもらい、お風呂にも入れてもらった。
寝る時は一緒のベッドで寝て、朝になったらまた美味しい食事をいただく。
やっとお父さまが私を愛してくれる……だからとても幸せだった……
でもどうしてだろう……お父さまは日に日に言葉数が減り、うつろな表情になって、元気もなくなっていくように見えた……
そして、お父さまは動かなくなった……
理由はわからないけど、周りの大人たちは『頭がおかしくなった』『精神がやられた』と言っていた……
そして私は1人になり、誰も私に近寄らなくなった……
ただ1人、私を引き取った女を除いて。
「可哀想な子だ……愛を求めるゆえに、愛から最も遠い方法で、相手を縛るなんて……」
その女は有名な人らしく、周りの大人たちは、彼女が私を引き取ると知るや否や猛反発してきた。
「なぁに、この子はまだ大丈夫だよ……しかしすごいね! 精霊がこんなに懐くなんてビックリだ!」
その女は無遠慮に私をジロジロ見ると、ニヤリと笑って語りかけてきた。
「アンタ、名前は? 私はバーバラだ!」
「……ルーシェ……」
「ルーシェか! アンタは残念ながら私の弟子になった! そこで精霊術もだけど、ちっと愛され方も学びな!」
私は女の無遠慮な態度に苛立ちを感じて、お父さまにしたようにお願いをした。
「アナタに【【【お願いがあります】】】」
「あっ! それ私には効かないよ!」
そう言って私の言葉を女は一蹴した。
「なっ!? なんで!? "みんな"どうして!?」
「あれは無理!」「すごく強い!」「ルーシェじゃ無理!」
そう言って"みんな"が慌てふためく様子に混乱していると、その女の怒鳴り声が聞こえた。
「こらぁ! アンタたちも、ガキ1人甘やかして変な道に進ませるんじゃないよ! わかったね!」
「怒られた!」「逃げろー!」「ルーシェがんばれー」
「あっ! ちょっと"みんな"!?」
女のせいで、"みんな"が逃げてしまった。
「さて、次はアンタだね!」
その言葉に、私はビクリと肩を震わせて身構える。
だが女は私の警戒などお構いなしに、頭に手を置くと、乱暴に頭を撫でまわした。
「やっぱりすごいね、アンタ! 精霊と会話までできるなんて! コイツはいい拾い物をしたねぇ!」
私は女の手を振り払って距離を取ると、彼女に問いかけた。
「なんで"みんな"逃げちゃったの!? お父さまよりもぜんぜん弱いのに!」
そう、私から見えるそれ……女の纏う魔力は大した物じゃなかった。
いつもお父さまの纏っていた魔力の方がずっと多かった。
「なんだい? これも見えてるのかい? 上出来だ! でも、ちょっと甘いねぇ」
「……どういうこと?」
「単純なことさね! 魔力が大きいと周囲に与える影響も大きい……だから!」
その瞬間――女の纏っていた魔力が、まるで爆発したかのように膨れ上がった。
彼女はお父さまよりも……いや、私よりもすごい魔力を纏っていた。
「こうやって、いつもは抑えてるだけだよ!」
私は膨大な魔力の塊に圧倒されて、彼女に思わず質問を投げかけてしまう。
「……アナタ……なに者……?」
しかし彼女は、またもニヤリとした笑みを浮かべながら口上を唱えた。
「私は『大賢人バーバラ』! 100も生きてない青二才と比べられても困るさね!」
それが、私とバーバラとの出会いだった……
それから私は、バーバラに精霊術のことを教わり、4つの精霊とは異なる魔術を教わった。
「重力?」
「そうだよ! 私たちは当たり前過ぎて気付いていないけど、地面に足が着くように、地面の底で引っ張ってくれる力が働いている……それが重力だ!」
バーバラは私に、重力の概念を教えてくれた。
「土の精霊とは別の精霊……重力の精霊とも呼ぼうかね? そいつらを従えてみせな!」
「でも、どうやって精霊を呼ぶの?」
「そんなの、他の精霊に呼ばせるんだよ!」
「連れてきた〜」「連れてこられた〜」「連行した〜」
そして私は、重力の精霊術を覚えた……
「雷と氷?」
「そう! 昔は神さまの気分で雷が落ちたり、氷が降るって言われてたけど、あれもちゃんと精霊がいるから、連れてきて覚えな!」
「連れてきた〜」「なんですか〜?」「ひまじゃないのに〜」
こうして私は、雷と氷の精霊術を覚えた……
「空間魔法……?」
「ふむ……これは私も説明が上手くできないけど、要は私たちがいる世界とは別の世界にいる精霊だね! 空間を行き来してる精霊だから、呼ぶのも難しいけど、覚えたらとっても便利だよ!」
「でも、呼べないならどうすれば……」
「そうさねぇ……空間の歪みでも見つければそこにいるんだけどねぇ、私もたまたま歪みを見つけて捕まえただけだしねぇ」
バーバラはそう言いながら、空間を歪ませて手を突っ込むと、そこからお酒を取り出していた。
「あっ!」
「うんっ?」
「連れてきた〜」「同族のよしみで〜」「希少種です〜」
こうして私は、空間の精霊術を覚えた……
そんな日が続き、私は周囲から、精霊術を極めた者『魔女』と呼ばれるようになっていた……
そして、バーバラとも別れがやってきた。
「結局、アンタには精霊術のことしか教えられなかったねぇ……」
私が15歳になった年のある日、バーバラは急に倒れてしまった。
長命の種族だと聞いていたが、どうやら先が長くないらしい。
「アンタのそれは才能だけど、使い方を間違っちゃいけないよ! きっとアンタのことを大切にしてくれる人が現れるからね!」
「そんなこと言われたって、バーバラが精霊たちに怒ってから使えなくなっちゃったよ……契約書を使えばできるけど」
「まったく、悪知恵ばかり働いて……まぁいいさ、こればっかりは自分で理解するしかないからねぇ……」
彼女は私の頭の上に、ゆっくりと優しく手を置いた。
「もし、アンタが本当にそれを必要だと思うなら使いな! でも、判断を間違えたらいけないよ!」
「……わかった……そんなことで悩む日が来るとは思えないけど、そのときは考える……」
私の答えを聞いたバーバラは、口元を緩ませると、置いた手で優しく私の頭を撫でてくれた……
そうして、また私は1人になった。
それから、私は人との関わりを持たないようにした。
だって『魔女』と言われた私が、隷属も支配も使えないでどうやって人と関係を持てばいいのかわからなかったから。
そして周囲も、尊敬と畏怖の混在した視線で『魔女』の私を見てくる。
それが怖かった……
やっぱり、誰かと関わるのに契約書がないなんてありえない……
そう思っていたとき、彼が現れた。
「『魔女ルーシェ』って君のこと? 俺、『勇者クロード』! よろしくな!」
その無遠慮さは、どこかバーバラに似ていた……
――ルーシェ編 歪みを正す者たち 完――
いつも読みに来てくれてありがとうございます。
なんかフリ〇レンみたいなシーンがありますが、偶然です!
書きながら思ったけど、ホントに偶然なんです(´;ω;`)
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▼次回予告
『早鐘は、いつまでも鳴り響く』
明日 21時 投稿予定です!!




