ルーシェ編 絡まる糸を解くために……
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ルーシェ編
【絡まる糸を解くために……】
お楽しみください。
――ルーシェ攻略 3日目 西の塔リビング――
リビングのソファで一夜を明かした俺は、思ったよりもグッスリ眠れたみたいで、清々しい気分で目を覚ました。
一度大きく背伸びをしてソファから立ち上がると、まだルーシェが起きて来ていないことに気付き、寝室まで様子を見に行った。
寝室前に着いた俺は、扉をノックして、返事を待ったが、応答はなかった。
すでに起きて帰ってしまったのか?
そう思った俺は、寝室の扉を開き、部屋に入った。
窓から差し込む朝日はまだ細く、薄暗闇に包まれた部屋の隅のベッドに、ルーシェが横たわり眠っていた。
昨日の夜、駆け込むようにベッドに横たわったのだろう、彼女は、眼鏡を取ることもせずにうつ伏せで眠っていた。
俺は仕方なく、ベッドの横の椅子に腰掛けて、彼女が目を覚ますのを待つことにした……
「う……うぅん」
ルーシェが俺の方に寝返りをうつと、怠そうな声を上げながら、目を覚ました。
「おはよう、ルーシェ……」
「……ここ、は?……はっ!?」
目が覚めたルーシェは、急に毛布を跳ね除けて、なにかを確認し出した。
彼女はシーツと衣服を交互に見ると、どこか安心したように息を吐き出し、俺の方に向き直して苦言を漏らした。
「人の寝ている横に、居座るなんて、どういう神経してんのよ!」
「昨日、お前もしてたよね!?」
ルーシェの苦言に俺が反論するが、彼女は聞く耳を持たず、空間魔法で衣服を取り出した。
「着替えるから、部屋から出てってくれる? それか目を潰してくれる?」
「わかったよ! 出てくから、リビングで待ってるぞ!」
そう言って俺は、ルーシェを残して寝室を後にした……
……俺がリビングでルーシェを待っていると、彼女がいつもの青いローブ姿に着替えてやって来た。
「来たか! パンでいいか? ジャムがあるから、それで食えるぞ!」
「えっ? ええ、お願い……」
ルーシェの返答を確認した俺は、軽い朝食の準備を始める。
「すぐにできるから、座って待ってろよ」
俺のその言葉に、彼女は無言で頷き、椅子に座って待っていた……
「お待たせ! このジャム、イリーナが侍女に言って持って来てくれたんだよ!」
そう言いながら俺は、皿に乗せたパンとジャムの小瓶、そして紅茶の入ったポットとカップをテーブルに並べて、ルーシェの向かいに座った。
「へぇ、あの子が……」
「ああ、楽しみだな! じゃあ、いただきます!」
「……いただきます……」
2人でいただきますの挨拶をすると、黙々と食事を口に運んだ。
ジャムの美味しさに声が漏れることはあったが、それ以上なにかを言うこともなく、ただ静かに時が流れていた……
食事が終わり、一区切りがついたと感じた俺は、ルーシェに意を決して話しかけた。
「ルーシェ……昨日の契約書だけど……」
俺の言葉に彼女は、体を強張らせて、続きを待っていた。
「サインはしない! 俺はお前を愛したいし、愛されたい! でも、契約書にサインなんてしたら、俺は一生お前を愛することができなくなる……」
ルーシェは顔を伏せてしまったが、俺は構わず彼女の契約書について思ったことを話し出した。
「考えてみてくれ! 契約書なんてなくても、おはようの挨拶はできたし、一緒に朝食を取ることだってできる……だから契約書なんて必要ないんだ!」
ルーシェからなにも返ってくることはなく、ただ沈黙だけが部屋のなかで鼓動を走らせていた……
彼女は、俺の言ったことを理解してくれたのだろうか? そう思っていると、ふとルーシェが顔を歪めながら俺を睨みつけてきた。
「なにそれ!? 嫌なら嫌ってハッキリ言いなさいよ! 変に期待させるようなこと言わないでよ!」
「ち、違う! 嫌なんて言ってない! ただ契約書にサインをしないと言ってるだけだ!」
「それが、拒絶だって言ってるのよ!」
そう言ってルーシェは、椅子から立ち上がり、俺に怒鳴りつけてきた。
「落ち着けルーシェ! 考えが極端だぞ!」
だがルーシェに、俺の声は届かなくなっていた。
「ねぇなんで!? ただサインして安心したいだけなの! じゃないとアンタだって、私から離れていくんでしょ!?」
すると、テーブルの食器がカタカタと揺れ始める。
「そんなのいや!」
それは徐々に大きくなり、俺がその異変に気付いたときには、すでに手遅れだった。
「ぜったいに……いやぁぁぁ!!」
その瞬間――ルーシェの悲鳴にも似た叫びと共に衝撃波が走り、彼女の周囲を魔力の渦が巻き起こっていた。
なにが起きたのか困惑する俺の横に、セレーネが慌てて姿を見せ、今起きていることを説明し出した。
「クロードさん! まっずいですよ! ルーシェさんの叫びに精霊たちが暴れ回ってますよ! 暴走です!」
(精霊の暴走!? どうすればいい!?)
俺も慌ててセレーネに問い返したが、彼女がなにかに気付くと、ニヤリと笑いながら答えた。
「安心してください! ルーシェさんの記憶の扉は開かれました!」
「それはいいけど、今の状況とどう繋がるんだよ!?」
「いいですか! この状況は、ルーシェさんのトラウマを刺激したことによる、いわゆる『子供の癇癪』です!」
「か、かんしゃく!?」
「そうです! だから子供の癇癪は、なだめればいいだけ! そのために、今からルーシェさんの記憶のなかに飛び込んで、彼女の根底にあるトラウマを打ち砕く方法を探してください! そして戻ったらそれをやるだけです!」
セレーネの説明を聞き、俺はルーシェの方に向き直して、彼女を見つめた。
確かにあれは、子供の癇癪だ……自分の思い通りにいかなくて、泣き叫んでいるだけの、小さな女の子だ。
だったら俺が叱ってやろう、褒めてやろう……そして、教えてやろう……こんなことをしなくても、お前は愛されるということを!
「……めちゃくちゃなことを簡単に言うな! ……まぁやるしかないんだな?」
「はい! 心の準備はいいですか? クロードさん!」
「そんなのいらん!」
セレーネの問いに二つ返事で答えると、俺は目を閉じて、心のなかでつぶやいた。
(【記憶回想】をルーシェに使う!)
【スキルの使用を確認しました。対象者ルーシェの記憶を回想いたします】
その声が聞こえた直後に、俺の視界は真っ白になった……
――ルーシェ編 絡まる糸を解くために…… 完――
最後までお読みいただきありがとうございます。
シーツを確認するルーシェ、つまり彼女は!! しょ……
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▼次回予告
『天才の日常』
明日 21時 投稿予定です!!




