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やり直し勇者は溺愛される ~魔王を倒した勇者ですが、平和の代わりに元仲間たちとのお見合いが始まりました~  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と糸を編む少女

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ルーシェ編 その嘆きは、雷鳴のように轟く

いつも読みに来てくれてありがとうございます。


ルーシェ編

【その嘆きは、雷鳴のように轟く】


お楽しみください。


 ――セレンディア城 西の塔――


 

 俺はルーシェに『今夜、帰さない』宣言をしたため、商家街で寝巻きや、そのほか必要そうな物を買い揃えて、西の塔に帰ってきた。

 

「ふう……結構大荷物になったな! とりあえず、休憩しよう! ルーシェ、なにか飲むか?」

 

「…………」

 

「……ルーシェ?」

 

「えっ? あぁそうね! いただくわ!」

 

 ルーシェは、俺の『泊まっていい』発言の後から、ずっとこんな感じだ。

 

「ルーシェ、心配するな……なにもしないさ!」

 

「なっ!? べ、べつに心配なんてしてないわよ! それより、なんで『泊まってけ』なんて言ったのよ!?」

 

 彼女は、俺の真意がわからず混乱しているようだった。

 あと、『泊まってけ』ではなく『泊まっていい』なのだが、そこは置いておこう。

 

「ちゃんと、お前とのことも考えてるって、わかってもらうためだ!」

 

「私とのことって、だから私は……」

 

「俺はルーシェのこと、いいなって思ってるぞ!」

 

「あぅ……!?」

 

「もう、ハッキリ言うけど、お前らなんで俺のことなんて好きなの? って思うくらい可愛いし美人だし、性格も悪く……ないし!」

 

「なんで一瞬、言葉詰まったのよ?」

 

「うるせぇ! とりあえず、俺にはもったいないって思う子たちから結婚したいって言われて、お前だけ嬉しくないなんてこと、あるわけねぇだろ!」

 

 そして俺は、なにもなかったように、紅茶の用意を始めた。

 ルーシェは、相変わらず立ち尽くしたままだったが、あまりまくし立てても仕方ない。

 俺は、彼女が落ち着くのを待った……

 

「クロードさぁん! 念のため聞きますけど、制約はわかってますよねぇ〜」

 

(ああ、わかってるよ! 過度な接触は禁止だろ?)

 

「そうですよぉ〜、たとえそれが相手からでもダメですからねぇ〜」

 

(うん? それって、どういう意味……)

 

 その瞬間――

 

 俺の背中に、温かいなにかが当たる。

 それは、ルーシェが俺に抱きついた感触だった。

 

「ル、ルーシェさん!?」

 

「う、うっさい! バカ! ……期待してもいいんでしょ?」

 

 そう言って彼女は、弱々しく俺の肩に手を乗せていた。

 彼女の吐息が、首にかかって少しくすぐったい。

 

「……まぁ、変なことはしないけどな……」

 

「……バカ……」

 

 俺の冗談に、彼女はそうつぶやいて体を預けてくる。

 紅茶を淹れる手は、どうしてもゆっくりになっていた……



 

 それから俺たちが夕食を済ませると、ルーシェは寝巻きに着替える前に、浴室へシャワーを浴びに行った。

 浴室からシャワーの音が聞こえ、そこではルーシェが……

 

「シャワーシーンは、アニメ化すれば見られるかもしれません! 謎の湯気は、円盤を買えば……」

 

「お前は、なにを言ってるんだ?」

 

「……いえ、コチラの話です……ちなみにルーシェさんは1番の、おぅペぇ持ちです!」

 

「本当になんの話だ!?」

 

 セレーネの謎の発言に、質問を投げ続けていると、浴室の扉が開き、濡れた髪のままのルーシェが顔だけ出して問いかけてきた。 

 

「なに一人で騒いでるのよ?」

 

「あっ! いや、なんでもないさ! ってか、ちゃんと乾かせよ! 風邪引くぞ!」

 

「……わかってるわよ! 変態!」

 

 そう悪態をつくようにして、ルーシェは扉を閉めてしまった。

 

「……セレーネ、俺なにかしたのか?」

 

「まぁ、シャワー浴びてる部屋の向こうで、独り言を言ってればキモいっすよねぇ〜」

 

 俺はこのときほど、セレーネが周りから見えないことを、悔やんだことはないかもしれないと、ため息をついていた。

 そして浴室の扉が再度開き、寝巻き姿のルーシェが現れて、俺に話しかけてきた。

 

「……出たわよ、アンタもさっさとシャワー浴びてくれば?」

 

「あ、ああ……」

 

 俺は、ルーシェの横を通り過ぎて浴室に入った。

 だが彼女の横を通ったとき、微かに感じた香りに、俺は不覚にも動揺してしまった。

 

(落ち着けぇ俺!! ここで間違いがあったら終わりだぞ!)

 

 そう頭のなかでつぶやきながら、俺は服を脱い……

 

「はぁ〜い! 野郎のシーンなんていりませぇ〜ん! アニメにも円盤にも追加しませぇ〜ん! なのでキング・クリム○ンしまぁ〜す!」


 ……シャワーを浴び終わった俺は、リビングの椅子に腰掛けていたルーシェの正面に座った。

 するとルーシェが、俺に問いかけてきた。

 

「なにか飲む? ワインとかあったと思うけど……」


「ああ、じゃあ一杯だけ」

 

「わかったわ……」

 

 俺の返事を聞いたルーシェが、空間魔法でグラスとワインを取り出して、テーブルに広げた。

 

「相変わらず、便利なもんだなそれ」

 

「そうね、なにを入れたか忘れたら、二度と戻ってこないけど」

 

 そう言いながら彼女は、グラスにワインを注ぎ、1つを俺に差し出した。

 

「はい、言っとくけど、そんなに強いお酒じゃないから」

 

「ああ、ありがとう……」

 

 グラスを受け取ると、お互い無言でそれを軽く上に掲げてから、ワインを口にした。

 

「……美味いな!」

 

 俺がワインの感想を言うと、ルーシェはニヤリと微笑んで応えた。

 

「嘘ね……お酒なんて美味しいと思って飲むものじゃないわよ! 酔いたいから飲むものなの!」

 

「……そうなのか?」

 

「さぁ?」

 

 そう言ってルーシェは、茶化したように笑い、俺たちの間に沈黙が流れた。

 そこでふと、彼女の言っていたことを、俺は思い出した。

 

 『夫婦になる書類へサインしてくれればいい……』

 

 よく考えたらおかしいと思い、ルーシェに質問した。

 

「なぁ、この国の結婚って確か教会での承認制だったよな?」

 

「……そうだけど、それがどうかしたの?」

 

 やっぱりそうだ、この国では教会で神父に承認を得れば、それで婚姻関係が成立する。

 だから書類へのサインなんて必要ない。

 

「いや、ルーシェの話を思い出してさ……書類にサインって……魔術塔での結婚は書類制なのか?」

 

 俺の質問にルーシェは、持っていたグラスを置いて語りだした。

 

「違うわよ……婚姻とは別に、契約書にサインしてほしいのよ」

 

「……契約、書?」

 

 俺の言葉に彼女は、空間魔法から紙の束を取り出していた。

 

「そう、契約書! 神父の承認だけで婚姻なんて納得いかないわよ! ちゃんと契約を交わして、違反したら罰が下るような物にしないと!」

 

 そしてルーシェは、取り出した書類の束を俺の前に置いた。

 

「……これ、は?」


 このとき俺は、ルーシェの根底に潜むものに触れてしまったことを理解した。

 

「契約書よ! 寝るときは一緒に寝る、起きたらおはようの挨拶をする、1日5回は愛を伝える、浮気したら殺す!」

 

「ま、待て待て! 浮気したらってのはわかるけど、それ以外はべつに契約書なんて……」

 

 その瞬間――ルーシェがテーブルを叩き、立ち上がって、俺に言い放った。

 

「必要よ! だってわからないじゃない!! アンタが本当に、ずっと一緒にいてくれるかなんて!!!」

 

 そして彼女が俺を、潤んだ瞳で睨みつける。

 

「確証なんて……ないじゃない!!」

 

 


 ――ルーシェ編 その嘆きは、雷鳴のように轟く 完――


 

最後までお読みいただきありがとうございます。


シャワーシーンが見られるなら、私は悪にでもなります!!


本作を気に入った!続きがちょっと気になる!【共に悪になろう】ってなったら

下にある【☆☆☆☆☆】マークから評価と、ブックマーク登録を何卒よろしくお願いいたします!


▼次回予告

『契約書』


明日 21時 投稿予定です!!

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