表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やり直し勇者は溺愛される ~魔王を倒した勇者ですが、平和の代わりに元仲間たちとのお見合いが始まりました~  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と偶像に祈る少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/70

イリーナ編 月光すら霞む

いつも読みに来てくれてありがとうございます。


『イリーナ編 月光すら霞む』


お楽しみください。

 

 ――イリーナ 大広間 夜会にて――

 


 大広間の扉を近衛兵の方々が開けてくださり、クロードさまとわたくしは、2人で広間の中央へと歩き出しました。

 

「おお、なんと美しい」

 

「ええ、勇者と聖女の姿をこの目で見られるとは……」

 

 クロードさまとわたくしに向けられる言葉は、本心かどうかはわかりませんが、今は気分がいいので許しましょう。

 そして中央まで来ると、クロードさまがわたくしにだけ聞こえるようにささやかれました。

 

「イリーナ……一応練習したんだけど、上手くいかなかったらごめんな……」

 

「いえ、ご安心ください! クロードさまなら大丈夫です!」

 

「そうかな? まぁ、でも頑張るよ!」

 

 その言葉を待っていたように、楽団の方々が演奏を再開し、わたくしたちもダンスを始めました……

 

 クロードさまのダンスは一生懸命で、でも強引にならないようにとても気を使われていて、わたくしはそれだけで幸せな気持ちでいっぱいになりました。

 だから、わたくしもクロードさまの動きに合わせ、クロードさまがリードしてくださっているように、ダンスを踊りました。

 

 ああ……セレーネさま、時の女神と言われたアナタさまなら、この時間を永遠にもできるのでしょうか?

 そんな願いも虚しく、曲の終わりと共に、幸せな時間も終わってしまいました。

 

「いやぁ、なんとかなったな! イリーナは大丈夫だったか?」

 

「はい! とても楽しいひとときでした」

 

「そうか、それならよかった……」

 

 するとそこへ――

 

「イリーナさま! どうか次は私と踊っていただけませんか?」

 

「いえ、私と!」

 

「私と踊ってください!」

 

 あさましい貴族の男たちが、わたくしとクロードさまの間に割って入り、我先にと群がってきました。

 群れる野獣のなか、わたくしがクロードさまに目を向けると、クロードさまは邪魔にならないよう、自ら壁際まで下がってしまわれました。

 

 ああ、忌々しい群衆共。

 

 共に死地に赴く訳でもなく、ただ王族との繋がり欲しさか『聖女イリーナ』欲しさに群がる羽虫共……

 

 わたくしは仕方なく、1人の手を取り、ダンスを踊りましたが、吐き気を必死に抑えていました。

 

 1日中、剣を振ったこともないような、滑らかな手。

 礼儀作法だけを頭に入れ、わたくしのほしいものもわからない愚鈍な頭。

 見た目だけ気にしてわたくしを見る、すかした顔。

 

 どれもが、あの人と違って、ただ気持ち悪かったのです。

 

 だからわたくしは、誰にも気付かれないように、わざとテンポをずらし、相手のリードを殺しました。

 するとどうでしょう、踊りは乱れ、周りの冷ややかな視線に焦った野獣は、強引にダンスをリードしようとしました。

 

 だからわたくしは、それを見計らってわざと体勢を崩しました。

 

 『きゃっ!』

 

 わたくしの小さな悲鳴に、壁際の騎士たちが身構え、剣に手をかけていました。

 その様子に気圧されたのか、野獣はダンスを途中で切り上げて、逃げるようにその場を去ってしまいました。

 すると、他の野獣たちも恐れをなして、茂みの向こうへと消えてしまいました。

 

 そこに――

 

「イリーナ、大丈夫か? だいぶ派手に体勢崩してたろ?」

 

「クロードさま! ご心配をおかけして申し訳ありません! わたくしなら大丈夫です……」

 

 クロードさまが、わたくしを心配して駆け寄ってくださいました。

 

 ……王子さまです!

 

「そうか、ならよかった! しかし、貴族でもあんなミスするなんて、ダンスって難しいんだな!」

 

「えぇ、そうですね……わたくしももっと練習しないといけません……」

 

「いや、それでちゃんと最後まで踊れた俺たちって、結構上手いんじゃないか?」

 

「……ふふっ、そうですね! 意外と才能があるかもしれません」

 

「だろ! なんならもう一度、踊ってみるか?」

 

「………………」

 

「……あれ? イリーナ?」

 

「あっ! はい! よろしいのですか?」

 

「ああ! 体力には自信あるから任せておけ!」

 

「……では、申し訳ありません、クロードさま……お願いできますか?」

 

「うん? なんで謝ってるんだ? じゃあもう一度踊るか!」

 

「……はい!」

 

 そしてわたくしたちは、2回目のダンスを踊り出しました。

 クロードさま、申し訳ありません、同じ方と2回踊るということは『親しい人・好きな人』って意味があるんです。

 

 けど、許してくださいね? だってこれは、他でもないクロードさまが誘ってくださったのですから……

 

「クロードさま、またいつか……一緒に踊ってくださいね……」

 

「ああ! 任せとけ!」

 

 わたくしたちのダンスに、周囲が騒いでいるのを横目に、幸せなひとときを、わたくしは過ごしていました……


 


 ――魔王討伐の旅 道中――


 

 クロードさまと侍女のミリスと共に、わたくしたちは旅に出ていました。

 

 山向こうの村に行くため、朝早くに出発したのに、その日は魔物との遭遇が重なり遅れが生じていました。

 遅れを取り戻そうと、山越えを急ぎましたが、体力のないわたくしが足を引っ張ってしまいました。

 

「イリーナ、大丈夫か?」

 

「……はい……大丈夫……です……」

 

「……危険だが、ここで夜営しよう!」

 

「……ッ! いえ、大丈夫です!」

 

 いけない! わたくしのせいで、クロードさまの旅を台無しにしてしまう。

 わたくしが意見を申し上げようとしたそのとき――

 

 足元にあった大きな石に気付かずに足を挫き、激しい痛みと同時に、そのまま意識を失ってしまいました……

 


 ……わたくしは目を覚ますと、なにかに乗って移動していました。

 

「……ここ……は?」

 

「お! 起きたか、イリーナ!」

 

「ク、クロードさま!? なにを!?」

 

「なにって、前の村まで戻ってるんだよ!」

 

「戻ってるって、なぜですか!? それでは、つっ!」

 

「ほら、足挫いてるから暴れるなって!」

 

 わたくしは、クロードさまに迷惑をかけるどころか、背中に背負わせてしまっていました。

 

「申し訳ありません、クロードさま……」

 

「気にすんなよ! 仲間だろう?」

 

 ああ、アナタはなんでそんなにお優しいのでしょう……

 

 ですが、いけません、わたくしは汚く醜く、そして穢れてしまった……

 服はぼろぼろになり、足は赤く腫れ、泥にまみれている……こんな聖女ではアナタのそばにいられない……

 

「クロードさま……わたくしを置いて、旅を続けてください……」

 

「……はあ? どうした急に?」

 

「わたくしは汚れてしまっています……そんなわたくしがクロードさまと共に旅をするなんて、許されません……神がお許しになりません……」

 

「……そんな神、どうでもよくないか?」

 

「……えっ?」

 

「いやだって、生きてれば汚れるんだから、1日中風呂にでも入ってないといけなくなるぞ? そんなの無理だろ!」

 

「いえ、そういうことでは……」

 

「それに! 普段のイリーナも、ドレスを着たイリーナも、今の泥だらけでがんばるイリーナも、俺は好きだぞ!」

 

「えっ……?」

 

 このお方は、どんなわたくしでも愛してくださる? 穢れたものを愛さないセレーネさまと違って? それはつまり、神をも凌駕する存在なのでは?

 

 『セレーネさまは、清く美しく、そして穢れなき存在を愛するのです』

 『今のイリーナも、俺は好きだぞ!』

 

 そう! このお方はきっと、神よりも尊い存在で、どんなわたくしでも愛してくださるのですね! ならわたくしは……アナタさまに一生お仕えいたします。

 それがわたくしの本当の『天命』だったのですね!

 

「クロードさま……ありがとうございます……」

 

「おう! 任せとけ!」

 

 その言葉にわたくしは、安堵の息をつき、目を閉じました……


 


「クロードさん、どうでしたか?」

 

「ああ、よく覚えてるよ! あんなことで俺を崇拝するなんてな……」

 

「でも……『こうあるべき』『そうあるべき』と言われ続けてきたイリーナさんには、衝撃的な一言だったんですよ……」

 

「……そうだな」

 

 俺は横にいるセレーネにも、色々と言ってやりたい気持ちがあったが、彼女に非があるかと言われると反論できない内容に、俺は言葉を呑み込んだ。

 

「でもクロードさん! よかったですね! イリーナさん、クロードさんのことが、大好きですよ!」

 

「あ、ああ、そうだな……」

 

「なに、照れてるんですか?」

 

「うるさい! 俺だって好かれてて悪い気はしてないんだよ!」

 

「ほう! 言えたじゃねぇか!」

 

 なにか頭に来る表情をセレーネがしていたが、俺はそれを無視して、気になっていたことを口にした。

 

「ところで、イリーナがなんで自分に強化の術が使えるのか、わからずじまいだったな……」

 

「あっ! それならもうわかってますよ!」

 

「……えっ!?」

 

「勇者の加護がイリーナさんにも及んでたんですよ!」

 

「……俺の力がイリーナに?」

 

「はい! 勇者の加護で得られる身体能力の向上が、信仰によって使えるようになる……ある意味クロード教の祝福ですね!」

 

「……聖女が勇者の力を使えるって、やっぱり強すぎだろ!?」

 

 俺は、呆気なくわかったおそろしい真実にボヤきながらも、これで心置きなく戻れることに安堵した。

 

「よし、戻るぞ! これでするべきことは決まった!」

 

「はぁ〜い! では、健闘を祈りますよ!」

 

「はっ! 誰にだよ?」

 

 セレーネに悪態をつくと、俺の視界は、完全な白で覆われた……


 

 【スキルの使用が終了しました。発動地点に移行いたします】



 

 ――イリーナ編 月光すら霞む 完――


 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


イリーナの過去を知ったクロードさんは、どうやってイリーナとの関係を作り直すのか?


次回にご期待ください!!


本作を気に入った!続きがちょっと気になる!ってなったら

下にある【☆☆☆☆☆】マークから評価と、ブックマーク登録を何卒よろしくお願いいたします!


応援していただけたら、承認欲求が満たされます!!


▼次回予告

イリーナ編 最終話

『アナタと〇〇〇〇〇〇〇〇……』


明日 21時 投稿予定です!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ