表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やり直し勇者は溺愛される ~魔王を倒した勇者ですが、平和の代わりに元仲間たちとのお見合いが始まりました~  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と偶像に祈る少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/71

イリーナ編 大人への儀式

いつも読みに来てくれてありがとうございます。


『イリーナ編 大人への儀式』


お楽しみください。

 

 ――イリーナ 15歳の日――

 


 その日の朝は、久しぶりに緊張していました。

 

 勇者さまとわたくしが、旅に出るための準備が進み、共に旅をする仲間を決めるため、城下町のギルドへ向かう日でした。

 出かける準備を終わらせ、城門の前まで行くと、数名の護衛と共に待つクロードさまの姿がありました。

 

「イリーナ! おはよう! 昨日はよく眠れたか?」

 

「おはようございます! クロードさま……それがあまり眠れなくて……」

 

「やっぱり! 実は俺もなんだ! どんな奴が仲間になるのか楽しみでぜんぜん眠れなかったよ!」

 

 クロードさまが、嬉しそうにそのことを話していると、いつものようにアルバインさまに怒られていました。

 わたくしは、それを見ていつも心から笑みが溢れてしまっていました。

 

 なぜなのでしょう? きっとわたくしとは違う世界にいるクロードさまを、まるで物語の主人公のように感じて、はしゃいでいるのでしょうか?

 そんな疑問をいつも抱きながら、今日もわたくしは、クロードさまの近くを離れないようにしていました……

 

 そしてギルドへ着き、ギルド長を名乗る方の案内を受け、円形の広場に出向くと、十数人の冒険者たちがいました。

 クロードさまの登場に注目が集まりました。

 

 ですが、視線のいくつかが、わたくしにも向けられ不快感を覚えていると、クロードさまが視線を遮るようにわたくしの前に立ち、冒険者たちに大声で語りかけました。

 

「じゃあ、誰からやる!?」

 

 その言葉に、冒険者たちは笑い出しました。

 なんと無礼な! 万死に値する行為です!

 

 そんななかで1人の剣士が、前に出てきました。

 

 使い込まれた黒い鎧と身の丈ほどの大剣、そして首元から見える、歪な形をした白金色の首飾り。

 その男は勇者さまに向き合うと、剣を構えて申し出てきました。

 

「勇者殿、お手合わせ願います!」

 

「ああ! いつでもいいぞ!」

 

 わたくしと護衛たちは数歩下がり、勇者さまの戦いを見守りました。

 そこからは、あっという間の出来事でした……

 

 最初の挑戦者を、クロードさまが呆気なく倒すと、冒険者たちの顔色が変わりました。

 それから、1人ずつ相手をしましたが、誰もクロードさまに歯が立たず、一方的な戦いになっていました。

 

 呆れたクロードさまが『全員一気に来い』と言って、まとめて相手をしましたが、結果は変わりませんでした。

 ギルド長に、これで全員だと言われて、クロードさまは『これじゃあ連れていけない』と溜息をついて、わたくしたちは城に戻ることになりました……


 

 

 ……城に戻ると、叔父さまが話があると言って、わたくしたちを出迎えてくださいました。

 クロードさまとわたくしは談話室に移動し、叔父さまの話をうかがいました。

 

「先ずは2人とも、今日で15の誕生日おめでとう!」

 

「陛下! ありがとうございます!」

 

「ありがとうございます、叔父さま……」

 

「うむ、して今宵の祝宴なのだが、イリーナよ……成人の儀も兼ねて行いたいのだ」

 

「わたくしの……ですか?」

 

「そうだ、普通なら18歳のときにするものだが、そなたは魔王討伐の任に就き旅に出る、だからその前に成人の儀も行いたいのだ……」

 

 この提案は叔父さまの、父としての優しさと、王としての建前なのでしょう……

 王族のわたくしが成人した身となれば、旅先での権限が強まり、旅が楽になる場面も増える……

 

 そして、もし旅の途中で命を落としたとしても『成人前の女性を死なせた』ではなく『王族として戦い、志半ばで倒れた』と美談になるでしょう……

 

 ……そして……

 

「陛下! 成人の儀って俺も参加できますか!?」

 

「おお、クロードよ! 貴公も興味があるのか?」

 

「はい! だって、一緒の誕生日なのに、イリーナだけなんてズルいっすよ!」

 

 その無邪気な言葉に、わたくしも叔父さまも、笑いを堪えきれませんでした。

 

「ふふっ……」

 

「はっはっはっ!」

 

「えっ? なんか俺、変なこと言いました?」

 

「いいや、クロードよ! 貴公の意見、もっともだ! では、貴公の叙任式も執り行おう!」

 

「叙任……式?」

 

「男性の成人の儀のことですよ、クロードさま……」

 

「そっか! 陛下、ありがとうございます!」

 

「うむ……して、イリーナよ! そなたの"相手役"のことだが……」

 

「大丈夫です、叔父さま……もう決めております」

 

「ほう……どこの馬の骨かのう……」

 

「ふふっ、叔父さまも人が悪いですね……」

 

 わたくしと叔父さまが、互いに含み笑いを交わしていると、クロードさまが口を開かれました。

 

「えっと……わかってないの、俺だけ?」

 

「ふふっ、申し訳ありません、クロードさま……実は夜会でのことでお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」

 

「お、おう! 任せろイリーナ! なにか運べばいいのか?」

 

「いいえ、クロードさま……わたくしの、お相手役をお願いできますか?」

 

「……うん?」

 

 クロードさまは、まだことの重大さに気付かれていませんでしたが、だからこそ、わたくしはアナタがよかったのです……



 

 ……その日の夜、先ずはクロードさまの叙任式が行われました。

 

 貴族たちが見守るなか、広間の階段の踊り場に特設された玉座に座る叔父さまに、クロードさまが跪きました。


 ……素敵です!

 

 叔父さまは儀礼用の剣を鞘から引き抜くと、クロードさまの肩に、剣の平を左、右と当てられ、厳かに宣誓と任命を行いました。

 

「汝、クロードを勇者と認め、騎士の位を授ける」

 

「……えっと、はい! 謹んでお受けいたします!」

 

 そして、拍手が広間のなかで鳴り響きました。

 その後、クロードさまは、一度広間を退室されると、わたくしの元に息を切らして戻ってきてくださいました。

 

「イリーナ、お待たせ! 準備はいいか?」

 

「はい! クロードさまも大丈夫ですか?」

 

「ああ、いつでもいけるぞ! ……それと、ドレス似合ってるぞ!」

 

「…………」


「……おい、イリーナ?」

 

「あ、はい! ありがとうございます!」

 

「おう! じゃあ行こうか!」

 

 そう言ってクロードさまは、わたくしに手を差し伸べてくださいました。

 わたくしは、その温かな手を強く握り返し、煌びやかな広間へと歩き出しました……



 

 ――イリーナ編 大人への儀式 完――


 

最後までお読みいただきありがとうございます。


クレス編でもあった無邪気が故に起きた冒険者への苦言や、その後の華やかなエピソードのなかでも、主人公スキル『鈍感』『朴念仁』『唐変木』が発動している残念系主人公のクロードを見つめるイリーナのお話でした。


本作を気に入った!続きがちょっと気になる!ってなったら

下にある【☆☆☆☆☆】マークから評価と、ブックマーク登録を何卒よろしくお願いいたします!


▼次回予告

『イリーナ編 月光すら霞む』


明日 21時 投稿予定です!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ