イリーナ編 文化の違い
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『イリーナ編 文化の違い』
ぜひ、お楽しみください。
――セレンディア城下町 商家街――
俺とイリーナは、商家街のなかでも、平民街近くの区画に足を運んだ。
さすがに貴族街近くの商家街では、商人や他の客に、イリーナの変装がバレてしまうかもしれないが、こちらなら問題ないだろう。
「イリーナ、ここら辺でなにか見てまわるか?」
「はい! クロードさま! ……あの……」
俺の提案にイリーナが同意すると、すぐになにかを思い付いて、ささやくように俺に提案してきた。
「クロードさま……わたくしたちの呼び方ですが、偽名で呼び合いませんか?」
「えっ? 偽名でか?」
「はい……そうでないと、名前を呼び合ったときにバレてしまいます」
「なるほど……一理あるな……じゃあ俺は『クロ』でいいか?」
「『クロ』さま……はい! では、わたくしのことは『リィナ』とお呼びください!」
リィナは、俺の偽名を口にすると、楽しそうに自分の偽名を決めて俺に告げてきた。
「ああ、わかった! じゃあ行こうか! 『リィナ』」
「……っ、はい! 『クロ』さま!」
リィナは、互いの新しい呼び方がとても嬉しかったのか、満面の笑みで応えた。
それから俺たちは、本屋や装飾店など、適当に気になった店に入って買い物を楽しんだ。
するとリィナが、ある店に惹かれたようで、俺の腕を引いて店のなかに入って行った。
そこは若い女性を対象にした服屋のようで、俺は店に入るのを一瞬ためらうが、先を行くリィナに腕を引かれて抗うこともできず、そのまま足を踏み入れた。
「クロさま! かわいい服がいっぱいありますよ!」
「あ、ああ、そうだな……」
「今はこんな服が流行っているのですね! とても興味深いです……」
そう言ってリィナは、かかっている服を片手で丁寧に1つ1つ確認しながら、俺の腕を引いていた。
そうやって、上着のかかった並び、スカートのかかった並びと見ていると、薄手の布地で作られた服の並びに入った。
「まぁ! こんな可愛いシュミーズがあるのですね! これはなんて名前の模様でしょうか?」
そう、そこは女性用の肌着がかかった並びだった。
「え、あ、いや、なんだろうなー?」
俺が居心地悪そうにしていると、リィナは俺に向かって妖しく微笑みながら問いかけてきた。
「クロさまは……どれがお好みですか?」
「なっ!? じょ、冗談はよせ!」
「ふふっ……すみません、つい魔が差してしまいました」
そう言ってリィナが楽しそうに笑うと、背後のセレーネが辺りを見回した後、険しい表情でささやいてきた。
「クロードさん……もしかしてこの世界、『ブラ』って、まだ一般的ではないのですか?」
(ブ、ブラ……? なんだそれは? 武具かなにかか?)
俺は、質問の意味がわからず、リィナならわかると思い、彼女に聞いてみた。
「リィナ、『ブラ』って知ってるか?」
「……『ブラ』ですか? いえ、聞いたことがありませんね……民族衣装かなにかでしょうか?」
それを聞いた瞬間――セレーネの険しかった表情が、原型がわからなくなるほど歪み出した。
「なん……ですと……!? ということは、今この瞬間、クロードさんは『ノーブラ状態』のイリーナさんに腕をホールドされているということですか!?」
(だから! さっきから何を言っているんだお前は?)
「クロードさん……この世界の下着事情について詳しく教えてください……詳しく……説明してください! 今、私は冷静さを欠こうとしています!」
(本当になんなんだ! お前は!? 俺がそんなこと知るわけないだろ!)
「ダメです、クロードさん! これは最重要事項ですよ! 気になり過ぎて夜しか眠れません!」
(落ち着け! だから『ブラ』ってなんなんだ!?)
俺は、セレーネの動揺っぷりに驚きつつも、彼女の言うそれについて質問した。
「いいですか、クロードさん! 『ブラ』とは、女性の胸をしっかり保護するために着けられる肌着兼鎧のような物で、私が知る世界の女性のほとんどが着けている物です」
(『世界』ってどういう意味だ?)
「クロードさん! 問題はそこではありません! ほとんどの世界でそれが当たり前のなか、この世界にはそれがない! つまりそれは! おっぺぇに直接触れているのと同義なのです!」
「……なっ!?」
セレーネの言葉に俺は、腕から逸らしていた意識を集中させてしまう……柔らかい……確かにこれは、鎧なんて着けてない、直の感触だった。
「ど、どうですか? クロードさん? お、おっぺぇは? 生の感触はどうなんですか!?」
(お、おい! やめろ! これ以上騒ぐな! 意識させるな! お願いします!!)
俺は、必死にその誘惑に抵抗するため、セレーネを黙らせたかった。
(てか、お前だってローブ1枚だけの格好じゃないか!)
「私ですか? 失礼な! ちゃんとしてますよブラ!『ヌーブラ』ってやつです!」
(ヌー……ブラ? 着けてるの? ブラ?)
「はい! しっかりと! 気になるなら見ますぅ?」
そう言ってセレーネは肩のローブをずらすような素振りを見せてきた。
(やめろ! バカ女神! 本当にやめてください、お願いします!)
そんなやり取りをしていると、不思議そうに俺を見つめていたリィナが声をかけてきた。
「クロさま? やっぱり、店を出ましょうか?」
「えっ? あ、ああ、そうだな! ちょっと緊張してるみたいだから、また次の機会にゆっくり見に来よう」
「また……はい! クロさまが望まれるのなら、何度でも!」
俺の言葉に、リィナは嬉しそうにそう応え、店を後にした……
――イリーナ編 文化の違い 完――
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もうね、僕は思ったんだよ。
アレはアレでいいんだけど、アレがないだけで、あらゆる可能性が生まれるって……
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▼次回予告
『イリーナ編 リィナの計画』
明日 21時 投稿予定です!!




