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やり直し勇者は溺愛される ~魔王を倒した勇者ですが、平和の代わりに元仲間たちとのお見合いが始まりました~  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と鳥かごを抱く少女

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クレス編 いつまでもアナタの隣で……

いつも読みにきてくれて、ありがとうございます。


クレス編 最終話

【いつまでもアナタの隣で……】


お楽しみください。

 

 ――セレンディア城 西の塔 リビング――



 視界が戻り、目の前には西の塔のリビングのソファで、俺の隣で涙を流し泣いている、ドレス姿の少女がいた。


「ダメ……ダメなのぉ……クロードには私がいないとダメなのぉ……」


 彼女は俺に将来の理想を否定され、泣き崩れていた。


「クレス、聞いてくれないか?」


「いや……いやなのぉ……」


 もう一度、彼女とちゃんと話がしたかった俺は、会話を試みるが、うまくいかない。


(どうする? 落ち着くのを待つか? でもここにずっといてくれるかもわからない……どうすれば?)


 俺が次の手に困っていると、セレーネがこらえきれずに割り込んできた。


「もう! クロードさぁん! なぁにやってるんですかぁ! 『俺にはまだ、やれることがある』って言ってたくせに!」


(う、うるさいぞ! それに、話したくてもクレスがこの調子じゃ、なにも話せないだろ!)


 セレーネの文句に俺が反論すると、彼女はため息混じりに助言してきた。


「いいですか! グイッと抱き寄せて耳元で『俺の女になれよ!』って言えば、キュン! っで簡単に落ちるんですから、早くやっておしまい!」


(そんな無茶苦茶な!?)


 だが、セレーネの助言もあながち間違いではない……そう思った俺は、クレスを強引に抱きしめた。


「……っ! ク、クロード!?」


「俺はこれからも、必要であれば旅に出るし戦いにもいく……だからクレス! 俺と一緒に来い!」


 俺は、あの日言うべきだった言葉を彼女に伝えた。


「……一緒に?……」


「そうだ! もう俺は、お前を置いていかない! お前が立ち止まったら、俺が引っ張ってでも連れていく! だからずっと俺のそばにいろ! クレス!」


 俺はありったけの想いで、彼女を抱きしめながら、わがままなお願いをした。

 するとクレスが、か細い声で言葉を紡ぎ出した。


「……ずっと、一緒にいていいの?」


「当たり前だ! 一緒にいろ!」


「……死んだりして、私のこと置いてかない?」


「そしたら『私も死ぬ』くらい言いやがれ!」


「……クロードが死んじゃったら、私も死ぬ!」


「ああ! じゃあ簡単に死ねねぇよバカ!」


「クロードォー、もう置いてかないでぇー!」


 彼女はそう言って、また俺の腕のなかで泣きだした。


「ああ! もう置いてかない! だから、安心しろ!」


「クロードォ、大好きー!」


「……知ってるよ、バカ……」


 しばらくの間、俺とクレスは抱き合っていた……




 クレスが泣き止み、俺の体から離れると彼女は呟いた。


「クロード、ありがとう……もう大丈夫!」


「そうか……」


「うん! 私もうクロードのやりたいことの邪魔はしない! だから……ずっとそばにいさせてね……」


「言っただろう! 俺のそばにいろ! って」


「……うん!」


 彼女の言葉には、まだ恐怖が残っている、でもその微笑みは本物だった。

 しかし、クレスの表情がすぐに険しいものになってしまう。


「それならクロード! さっきの夕食だけど、全然野菜が入ってなかったよ! 料理人さんに嘘の調理法を教えたでしょ?」


「えっ!? いや、それは……やっぱり記憶が曖昧だったからその……肉が入ってたって思い出しかなくて……」


「はぁ……クロードは相変わらずなんだから……でも、安心して! 今度からクロードの食事は私が作ってあげるから!」


 そう言ってクレスは、自信満々に腰に手をあて、宣言した。


「はっ!? いや待て、クレス! それはちょっと……」


「なぁに? なにか問題あるのかな?」


「いや、問題というかなんというか……」


「……そういえば昨日あんなに偏食しちゃったし、明日から3日間は、野菜中心の料理にして、城外100周しようね!」


「1回の屋台飯でか!?」


「当たり前だよ! 1回の贅沢は、3日分の浪費だよ! なら3日分の努力で補わなきゃ! それが健康でいる秘訣だよ!」


 彼女はもう、俺に置いていかれる恐怖にかられ、鳥かごに閉じ込めようとする少女ではなくなった。

 その代わり、俺を長生きさせることに生きがいを感じる、想いが重い女性になってしまった。


「……それでね、クロード……」


「うん、どうした?」


「その……今日ね、イリーナとルーシェが『帰ってこなくてもいい』って言うから……」


(うん!?)


「その……泊まっても、いいかな?」


「……えっ?」


 俺は喉の奥から、声を搾り出していた……




 クレスと和解し、西の塔に用意された部屋の一室にある浴室で、彼女はシャワーを浴びていた。

 そんななか俺は、リビングのソファで険しい表情のまま座っている。


 そして隣の女神は、騒々しかった。


「お泊まり回キチャァァァ!! クロードさん! いいんですね!? いいんだな!? 時は来ましたよ!」


「うるさい! このバカ女神! どうやってこの状況を切り抜けるか、こっちは必死なんだよ!」


「えっ? なんでですか?」


「なんで? って忘れたのか? 俺のスキルの制約を?」


「制約……って、ああ! 故意の過剰な接触はダメってやつですね!」


「そうだ! 今までは、手をつないだり、体が触れ合う……」


「ハグしてましたね」


「……抱きしめたりする程度で、制約に引っかかっていなかったが、今の状況はかなりマズい……」


 俺は、険しい顔をさらに険しくさせ、どうやってこの状況を切り抜けるか、思考を巡らせていた。


「大丈夫ですよぉ〜、たぶん彼女もまんざらでもない、お色気展開が起きますが、その後もなにも起きません!」


「なぜそう言い切れるんだ!?」


「テンプレだからです!」


 そう言ってセレーネは、俺に親指だけを立てた状態で拳を突き出した。


「てん……ぷれ?」


「はい! 多少の誘惑イベントは起きると思いますが、クロードさんは、頑張って理性と戦ってください!」


「なぁ、それ本当に大丈夫なのか!?」


 セレーネの謎の自信に、俺はまったく安心できずにいると、浴室の扉が開いた。


「……おまたせ……」


「……あ、ああ……」


 部屋着を持ってきてなかったクレスは、俺のシャツを着て、浴室から出てきた。


「彼シャツ着たァァァ!! ってキタァァァ!! 鼻血出そう……もう出てるぅ〜!!」


 背後でセレーネが、また謎の奇声を発して興奮しているが、俺はそれどころではなかった。


「……俺もシャワー浴びてくる!」


「……う、うん! そうだね……いってらっしゃい……」


「あ、ああ、いってくる……」


 そして俺は服を脱ぎ、浴室へ……


「あっ! 男のシャワーシーンなんてカットしますね! テヘッ!」




 緊張のせいか、俺はいつのまにか浴室からリビングに戻っていた。

 クレスは、俺がさっきまで座っていたソファで、足をゆっくりバタつかせて俺の戻りを待っていた。


「……あっ! おかえりなさい……」


「あ、ああ、ただいま……」


 ただ浴室に行って戻ってきただけなのに、俺たちは『いってきます』と『おかえり』の挨拶を交わしていた。

 俺は、クレスの隣まで行くと、あまり体が触れ合わないように気を付けながら、ソファに座った。


 そして案の定、二人は黙り込んでしまい、部屋のなかを静寂が支配していた。

 そんな状況を俺は変えたくて、とりあえず思いついたことを口にしてしまった。


「し、しかしクレスもおっちょこちょいだな! 泊まりに来たのに、部屋着を持って来てないなんて……」


「……あっ! あのね、イリーナとルーシェがどうせ脱ぐなら必要ないだろう……って」


「……ぇえ!?」


 俺は、話題の選択を間違えたことを、すぐに理解した。


 いつも横に結んだ髪は解かれ、体を覆うように着ていたドレスではなく、薄いシャツだけで、なんとか大事なところを隠している状態だった。

 そして、なぜだろう……同じ石鹸を使ってるはずなのに、隣のクレスからは、もっと他のいい香りがした……


「……そのクロードは、そういうこと……やっぱりしたいかな?」


「……ごぶっ!?」「……ごはっ!!」


 クレスの質問に、俺は激しく咳き込み、背後のセレーネは、なぜか盛大に血を吐いていた。


「だ、大丈夫!? クロード!」


「あ、ああ、大丈夫だ! 心臓が破裂しただけだ!」


「大丈夫じゃないよそれ!? 今日はもう休もう!」


「そ、そうだな! そうしよう!」


 クレスの提案に俺は賛成し、2人で寝室に向かった。

 しかし、よく考えればわかることを、俺は失念していた。

 いくら広い寝室の大きなベッドとはいえ、一つしかないベッドに2人が寝るには、少しだけ狭かった。


「クレス、やっぱり俺はリビングのソファに寝るから、ベッドはお前が使……」


 そう言って部屋を出ようとする俺の腕に、クレスが抱きついてきた……


「……クレスさん!?」


「……その、クロード……今日は、一緒に寝よ?」


「……ごふっ!?」「……ぶっはっ!!」


 クレスの言葉に、俺はまた激しく咳き込み、背後のセレーネは、血を吐いたまま動かなくなっていた。


「……だ、大丈夫!? クロード!」


「だ、大丈夫だ! 女神がそこで死んでるだけだ!」


「それ大丈夫じゃないよ!? やっぱり一緒にベッドで休もう!」


「そ、そうだな! 今夜は、もう休もう……」


 そう言って俺とクレスは、互いの体が触れ合わないように、向き合うようにベッドで横になった。


「ねぇ、クロード……お願い言ってもいいかな?」


「うん、なんだ?」


「その……手を繋いで寝たいなぁ……って思って……」


「なんだそんなことか? ほら!」


 俺はクレスのお願いを快く聞き入れ、手を差しだした。


「ありがとう、クロード……」


 彼女はそう言ってから俺の手を握りしめた。


「クロード、私ね……ずっとクロードに追いつきたかったの……クロードが王都に行っちゃった日……クロードのこと必死に追いかけたんだよ!」


「そうか……すまなかった……」


 彼女の記憶を見て知っていた事実を、クレスの口から聞かされ、俺はただ謝るしかできなかった。


「ううん、クロードのせいじゃないよ! ただ私が……クロードは、いつまでもそばにいるって勘違いしてただけ……」


 そう言ってクレスは、俺を見つめながら言葉を紡いだ。


「いつも『いつか勇者になって魔王を倒す』って、クロード言ってたもん……だからクロードは悪くない……」


「そうか……ありがとう……」


 おそらくあの日のことは、クレスにとっては変えられない後悔の日なのだろう……だから俺はそれを否定してはいけない……だから俺はただ彼女に『感謝』と『未来』のことを伝えた。


「でもこれからは、一緒だ! もうクレスを置いていったりしない! 絶対だ!」


「……うん! ありがとう、クロード……」


 そして彼女は安心したように、目を閉じて深い眠りについた。

 クレスが静かに寝息をたてている姿を、俺はいつまでも見つめていた……

 すると、動かなくなっていた女神が動きだし、俺に声をかけてきた。


「ググ、グロードざん……おみごどな、攻略でじだ……」


 その声に反応するように、俺は体を起こして、セレーネに視線を移した。


(やっと起きたか……よくわからんが大丈夫なのか?)


「問題ありません、ただの致命傷です、グフッ!」


(……大丈夫なのかそれ?)


「ともかくクロードさん……クレスさんの攻略、おめでとうございます!」


(『攻略』……か、まぁそうなるのか)


「いやぁ〜、甘々と苦々が交互にやってきて、私死んじゃいそうになりましたよ〜、ってか死んでました!! さすが毒使いのクレスさん! 神をも殺すとはあっぱれです!」


(お前、さっき本当に死んでたの!?)


「まぁそれは、置いといて〜、ここが『いいところ』だと思いますよ!」


(……ああ、そうだな)


 俺は、眠っているクレスに視線を戻すと、一度だけ深呼吸をした。


(クレス……また後で会おうな……)


 俺は、眠るクレスにそう告げると、スキルを唱えた。


(スロット3にセーブ……)


【スキルの使用を確認しました。スロット3のセーブポイントを作成いたします……スロット3のセーブポイントを作成いたしました】




 ――クレスの覚悟――



 夢を見た……


 クロードが勇者として、城に行ってしまう、あの日の夢。

 私は、その背中を必死に走るけど、アナタに追いつけない。


 そのとき、アナタが振り向いて手を伸ばしてくれた。


「クレス、一緒に行こうぜ!」


 これは、何度も私が夢見た可能性……


 もし、アナタと一緒に行けてたら、私は幸せだった? 頑張るアナタの背中を、見ているだけでよかった?

 違う! そんな私に、アナタといる権利なんてない!


「ありがとう、クロード……でも今は、一緒に行けないの……もし、一緒に行っちゃったら、アナタの背中を見てるだけで、満足しちゃうから……」


 幼い日のクロードは、私の言葉の意味が理解できず、ただ私のことを見つめていた。

 だから、私はアナタに言葉を紡いだ。


「クロード、先に行って待っててくれる? 私いっぱい頑張って強くなって、きっとアナタに追いつくから……アナタの隣を、ずっと歩ける人になるから……」


 私の言葉を聞いたクロードは、何も言わず馬車へと向かって走って行った。

 その姿を追いかけそうになる体を、私は自身を必死に抱きしめて、抑えつける。


 大丈夫……後悔なんてしない! だって、この日の別れがあったから、私は今、彼の隣を歩けるのだから……


「だから、クロード……次に会ったときは、私を連れてってね……」


 そんな願いを込めて見上げた空は、清々しいほどに晴れ渡っていた……




 ――やり直し勇者と鳥かごを抱く少女編 完――



クレス編読了、お疲れさまでした!


ここまで読んでいただけたこと、本当に嬉しく思います。

実は、早く読んでほしくて2話連続投稿キャンペーンなんて物をやっちゃいました笑


これにて、クレスの攻略は終わり、次のヒロインの攻略が始まります。


ぜひ、次章からの展開もお楽しみください!


本作を気に入った!続きがちょっと気になる!ってなったら

下にある【☆☆☆☆☆】マークから評価と、ブックマーク登録を何卒よろしくお願いいたします!


▼次回予告

新章 やり直し勇者と○○に○○る少女

『秘密の部屋』


明日 20時 投稿予定です!!

明日からは、いつもの更新頻度に戻ります!


また気が向いたらやるかも知れません笑

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