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やり直し勇者は溺愛される ~魔王を倒した勇者ですが、平和の代わりに元仲間たちとのお見合いが始まりました~  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と鳥かごを抱く少女

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クレス編 夢に駈ける少年と現実を知る少女

いつも読んでくれて、ありがとうございます。


クレスの過去編

【クレス編 夢に駈ける少年と現実を知る少女】


ぜひ、お楽しみください。

 

 ――鳥かごを抱く少女の記憶――



 真っ白な光に視界を奪われ、俺は目をつぶっていた。

 そして、恐る恐るまぶたを開けると、目に入ってきた光景は、今までクレスと一緒にいた西の塔のリビングではなかった。


「ここは……モス村か?」


 そう、視界に広がった風景は、俺の記憶のなかにもある、10歳のときまで育った村『モス村』だった。


「はい! クロードさん、とりあえずスキル発動おめでとうございます……そしてこれが【記憶回想】で呼び起こされた、クレスさんの心に根付いた記憶の一部です」


「そうか……じゃあここはやっぱりあの日の……」


 モス村を覆う曇天の空、そして村の入り口で列をなしている王宮騎士団とそれを見ている村人たちを見て、俺はあの日の記憶であることを確信した。


 その瞬間――


「俺ならここにいるよ!」


 俺は声のした方へ視線を向けた。

 聞き慣れない少年の声……だが俺は、その少年の正体を知っていた。


「あの日の俺だ……」


 後先を考えず、ただ自分の可能性を信じて疑わなかった日の俺が、王宮騎士団の団長相手に名乗りを上げていた。


「へぇ〜、あれが幼き日のクロードさんですかぁ〜、ちなみにあれはなにをしてるんですかぁ?」


「王都で聖女……イリーナが『聖女』として覚醒したから、同じ日に生まれた記録のあった俺を『勇者』として迎えに来たんだ……」


「あぁ〜、なるほどぉ〜」


 セレーネに状況の説明をしていると、幼い俺は一人の騎士の前で後ろ向きになり、背中を見せていた。


「そうだ、俺は気付かないうちに聖痕を宿していて、団長……アルバインがそれを見つけてくれたんだ……」


 『アルバイン騎士団長』……勇者になった俺を迎えに来た王宮騎士団の団長で、剣の師として仰ぐことになる人。


 セレンディア王国最強の剣士として、陛下から『剣聖』の称号を賜っていた人だ。


「俺はあの人の『剣聖』って称号のかっこよさに憧れて、あの人について行くことを決めたんだ……」


「ふぅ〜ん、男の子ですねぇ〜」


「……そうだな」


 セレーネの素っ気ない感想を聞いて俺は同意するしかなかった。


「ところでクロードさん……気付いていますか?」


「うん? ……なににだ?」


 俺は、セレーネの質問の意味がわからず、彼女に問い返してしまう。


「クロードさん、【記憶回想】は思い出話をするための能力ではありませんよ! よく考えてみてください……なぜ、クロードさんの旅立ちの瞬間を見ているのか? これはだれの記憶なのか? そして……」


 セレーネは俺の足元を見ながら言葉を紡いだ。


「この光景を見ているのは、本当に私たちだけなのか?」


 その言葉の意味とセレーネの視線の先の正体に、俺は言われるまで気付かずにいた……


 そう……これが『彼女』の記憶ならば、それを追体験する能力ならば、俺の近くに『彼女』はいるはずだ。

 俺は自分の足元の少女に視線を移した。


 それは幼き日の、クレスだった。


 彼女は、騎士団の行列に恐怖を感じ、群がる村人たちのさらに後ろに離れて様子を見ていた。

 そして、あの日の俺が、アルバインに導かれて馬車に乗り込む。


 すると幼いクレスは、俺の姿を見つけて走り出した。

 でも、子供の走りでは、追いつけるわけがなく、馬車は無情にも彼女を引き離して行く。


「まってぇ! クロードォ、置いてかないでぇ!」


 彼女が俺に叫びながら必死に馬車を追いかける。


「私も連れてってよぉ! 荷物持ちでもなんでもするからぁ! クロードォォォ!」


 馬車のなかの俺はクレスに気付くことはなく、ただ馬車のなかでアルバインに今後の話を聞いては、未来の可能性に目を輝かせていた。


「クロードォ、行かないでぇ! きゃっ!」


 クレスは、つまずいて顔から地面に向かって転んでしまった。


 そして、曇天の空からぽつぽつと雨が降りだしたかと思うと、それは瞬く間に豪雨となり、泣きじゃくる彼女を隠すほどの勢いで降り注いでいた。


 そんななかクレスは、ただ伏せて大粒の涙を流していた……


「クロード、行っちゃった……私がのろまだから置いてかれちゃった……クロード……」


「違うんだクレス! あの時は、勇者になれるって浮かれてて……」


「無駄ですよ! クロードさん……その子に私たちの言葉は聞こえません!」


 クレスに声をかける俺にセレーネが冷静に説明する。


「これはあくまで、クレスさんの記憶を見ているだけです……なにかを伝えることも、なにかを変えることもできません……だから今は、しっかり見届けましょう……彼女が今に至るまでにどんな経験をしたのか!」


「……そうだな……すまない、取り乱した……」


 セレーネの言葉で、俺は冷静になると、彼女に謝罪してクレスに視線を戻した。

 どしゃ降りの雨のなか、クレスが体を起こすと腫らした目を拭いながら彼女は呟いた。


「クロードに会いたい……だから、もっとクロードのそばにいられるようにならなきゃ!」


 次の瞬間――視界がまた変わる。


 そこは、俺がいつも走り回っていた村外れの渓流で、そこにクレスの姿があった。

 彼女は、小さな体を使って渓流の岩肌をボロボロになりながら駆け上がっていた……


 それは、俺がいつもやっていたことで、幼いクレスはそんな俺の後を必死に追いかけるけど上手くいかなくて、途中であきらめては泣いていた……

 けど、目の前の彼女は泣きそうな顔をしながら必死に岩の上を駆け上がっていった。


 そしてまた――視界が変わる。


 村から少し王都に近い街に、少しだけ背の伸びたクレスが、大きな荷物を持って歩いていた。

 彼女は首から冒険者の証である木製のプレートを下げていた。


 冒険者自体は簡単になれるが、幼い少女ができることなんてたかが知れている。

 彼女は、街外れの草原で薬草を拾って納品するクエストでその日の宿代を稼いでいた。


「嬢ちゃん、これ薬草じゃないよ!」


「えっ? 違うんですか?」


「ああ、これは毒草だから引き取れないよ! 悪いけどクエスト失敗で報酬もなしだよ」


「そんな!? 持ってきた分だけでも貰えませんか?」


「悪いけど決まりだからね……」


 そう言ってギルドの人はクレスとの会話を終わらせた。

 建物から出たクレスは、ふらふらと宿に戻ると、宿の主人がクレスの帰りを待っていた。


「おかえり! 待ってたよー、約束の宿代払ってくれるね?」


「……あのっ、ごめんなさい、クエストに失敗しちゃって……明日もう一度ギルドの人にお願いするので……」


 その言葉に、笑みを浮かべていた主人の表情が一瞬で怒りの表情に変わった。


「はぁ!? なに言ってるんだ! こっちは善意で格安で泊めてやってたのに、金を払えないなら出ていけ!」


「ご、ごめんなさい! すぐに出ていきます!」


 クレスは、宿に置いてあった荷物を、急いでまとめて宿を後にした。

 彼女は、自身の無力を嘆き、強くなるために、近くの街で冒険者になった。


 しかし、その日の宿代も払えず、挙句にその日の食事にすらありつけなかった。

 街を歩いていると、屋台の肉串の焼ける匂いに、お腹が空いてしまう。


「ここにいたら空腹で死んじゃう……」


 しかし彼女に行くところなどなかった。


「村に帰ろうかな……」


 そう考え、彼女は夜の街から逃げ出すように、夜の森に入っていた。

 しかし、彼女は過ちを犯していた……夜の森に入ること、それは自殺行為にも似た愚かな行為だった……




 ーークレス編 夢に駈ける少年と現実を知る少女 完ーー



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


幼いが故に、深みに堕ちていくクレス。

彼女の頑張りを、心を痛めながら、お楽しみください。


本作を気に入った!続きがちょっと気になる!ってなったら、下にある【☆☆☆☆☆】マークから評価と、ブックマーク登録を何卒よろしくお願いいたします!


▼次回予告

『蠱毒』


明日 15時 投稿予定です!!


今日から3日間限りの、1日2回投稿のキャンペーンです笑

ぜひぜひ、お楽しみくださいませ!

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