クレス編 少女の恐れるもの
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【クレス編 少女の恐れるもの】
ぜひ、お楽しみください。
――現在 喫茶店"リリテオ"――
思えばあのときに俺は、クレスになんの挨拶も告げずに王都へ向かい、そのまま王都で暮らして旅に出て、クレスと再会するまで一度も会っていなかったんだな……
「あのぉクロードさん?」
「うん? なんだセレーネ?」
「そのですねぇ〜、さっきのクレスさんの件で、お店のご主人の機嫌が、だいぶ悪そうですよぉ〜」
「……えっ?」
そう言われて、店のカウンター側に視線を移すと、店の主人らしき人がコップを拭きながら、眉間にシワを寄せていた。
俺は申し訳ない気持ちになり、カウンターの主人の元まで向かうと、謝罪と代金を置いて店を後にした……
店を出た瞬間、俺は辺りを見回したが、やはりクレスの姿はなかった……
まだどこかにいるかもしれないと思い、念のために俺は、城下町を歩き回っていた。
「クロードさぁん、どうしますかぁ? 1回ロードし直してもう一度やり直すのも手だと思いますよぉ〜」
「そうだな……けど、まだ失敗に終わったか判断するには早いと思うんだ……」
セレーネの提案に、俺はそう返した。
「まぁそうですけどぉ〜、それなら次にクレスさんに会う前に、一度セーブをしておくことを勧めますよぉ」
「……それもそうだな……クレスがこのまま見つからなければ、城に戻った後にセーブするよ……」
そう言って俺は、日が完全に落ち切るまでの間、クレスがいないか城下町を歩き回っていた……
――セレンディア城 西の塔――
結局クレスを探し回った俺は、彼女を見つけられず、城に戻ってきた。
だが城のメイドから、クレスが帰宅していることを聞き、安堵した俺は西の塔へ帰った。
【スキルの使用を確認しました。スロット3のセーブポイントを作成いたします……スロット3のセーブポイントを作成いたしました】
今後どうなるかわからないが、セレーネの助言どおりに、念のためのセーブも行った。
そしてもう一度、セレーネに語りかける。
「セレーネ、いるんだろう?」
「どうしましたクロードさん? 今日はたくさん呼んでくださいますねぇ〜、指名料取っていいですかぁ?」
「取るな、バカ! ……クレスの件だが、お前言ったよな? センサーが反応してるって……」
「バカは余計ですが、言いましたねぇ〜、もうビンビンでしたよ!」
「ビンビンってのは、強く反応してるってことか?」
「おお! クロードさん! 素晴らしい理解力です!」
「ぜんぜん嬉しくないぞ! ……つまりあのときの状況を、もう一度作れば【記憶回想】が使えるんだな?」
「そうですねぇ〜、ただ昨日と同じ状況以上のことが、必要になりますが……」
「はぁ? どういうことだよ?」
セレーネの言葉に、俺は疑問を抱いた。
「いやいや、考えてみてくださいよぉ〜、好きな人の前であんな取り乱し方をしたのに、また同じことをすると思いますぅ?」
「……たしかに……」
「でしょ〜! だから、同じ話をしても、次は心乱さずにやり過ごしちゃいますよ!」
セレーネの予想を、俺は否定できなかった。
「じゃあ、次にクレスに会ったら、俺はどうすれば?」
「それは決まってますよ! もっとクレスさんの心を揺さぶってください!」
「……なっ!?」
「だってぇ~、一度失敗した以上、それしかないですよぉ? それとも……彼女たちの抱えるものを知るの……やめますか?」
「……」
彼女の言葉に、俺は何も言い返せなかった。
だが、やめることはできない! 俺は彼女たちの気持ちに応えると決めたのだから……
「わかった! やるよ! 明日、クレスに会いに行く! そこで決着をつけよう……」
「……はい! いやぁ〜、ここでやめるって言われたらどうしようかと思いましたよぉ〜」
「舐めるなよ! これでも魔王を倒した勇者だぞ! 多少の困難は乗り越えてやるさ!」
「いいですねぇ〜、じゃあそんなクロードさんにヒント……助言をいたしましょう!」
「……助言?」
「はい! クロードさん……クレスさんのアレは、ただアナタを束縛したいなんて単純なものではありません! それなら他の2人との仲は最悪ですし、クレスさんの結婚計画に『他の人と会わないで』ってあるはずです……」
「なるほど……でも、あの制限の数は異常だぞ!?」
「ですねぇ〜、ですが思い出してください……彼女が最後に言った言葉を……」
そうセレーネに言われた俺は、クレスの言葉を思い出していた。
「『もうどこにも行かないで……か?』」
「そうです! あれは誰かに奪われる恐怖ではなく、クロードさんに置いてかれる恐怖です……だから、アナタの行動を制限して自分の管理下に置きたい……なんだったら『自分が必要とされる状況』も作りたいんじゃないでしょうか?」
「『必要とされる状況』に……か……」
「はい……小さな子が母親を求めるように、自分がいないと何もできない人になってほしい、という状況に……その原因は間違いなく、クロードさん……アナタです!」
セレーネはそう宣言すると、俺のことを指差した。
俺はただ、黙ってそれを受け入れるしかなかった。
「……なんとなくだが、心当たりはある……」
「へぇ〜、クロードさんにしては、察しが良いですねぇ〜」
「悪かったな! だが、だからこそ、クレスの根底にある物は、俺が取り除かないといけないんだ!」
俺は、改めて決意を言葉にした。
それを聞いたセレーネは、満足そうな笑みを浮かべた。
「いいですねぇ〜、じゃあ私はそろそろ空腹がピークなので、これで失礼しまぁ〜す! ばあぁ〜い!」
「あっ! ちょっ! 待てって!」
俺の制止も聞かず、セレーネは消えてしまった……
「あいつ、空腹って言ってたけど、飯とかどうしてるんだ? ……まぁ、なんとかしてるみたいだからいいか」
そして俺も、遅めの夕食を済ませて、明日に備えて眠りにつく準備を始めた。
明日の朝に東の塔へ行ってクレスを迎えに行こう……
そして、彼女の持つシコリを取り除こう……
そう決意して俺は、眠りにつくのだった……
――クレス編 少女の恐れるもの 完――
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
クレス攻略2日目を終えたクロードさんですが、彼女のトラウマを覗き見る事は出来るのか!?
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▼次回予告
『クレス編 軋む鳥かご』
明日 20時 投稿予定です!!




