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やり直し勇者は溺愛される ~魔王を倒した勇者ですが、平和の代わりに元仲間たちとのお見合いが始まりました~  作者: 希月タカトラ
やり直し勇者と鳥かごを抱く少女

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19/70

クレス編 軋む鳥かご

いつも読みに来てくれて、ありがとうございます。


【クレス編 軋む鳥かご】


どうぞ、お楽しみください。

 

 ――クレス攻略 3日目――



 朝、目が覚めると俺はベッドから起き上がり、近くに置いた剣を手に取り構えた。

 1回だけ大きく深呼吸して剣を振る。

「しっ! しっ! しっ!」


 静かな部屋のなかで一人、ただ剣を振る風切り音と俺の漏らす息、そして外の訓練所から聞こえる兵士たちのかけ声だけが響いていた……


 俺は身なりを整えて西の塔を後にし、セレンディア城の本棟を経由して、東の塔へと向かった。

 東塔への渡り廊下を歩いていると、向かいからイリーナの侍女が配膳台を押しながらやって来た。

 彼女は、俺の存在に気付くと足を止めて頭を下げた。

 その横を通り過ぎるときに、配膳台に置かれた食器に視線を移す。


(3人分の大皿……ならクレスもまだいるな……)


 俺はクレスがまだ塔のなかにいることを確信して、そのまま東の塔へと歩を進めた……


 東の塔に着き、俺は一度深呼吸をしてから、扉をノックした。


『コンッ、コンッ、コンッ』


 ノックの後、少しの静寂を挟んで扉が開いた。


「……あら、クロードさま! おはようございます!」


「ああ、おはよう、イリーナ……」


 扉を開けて出てきたのはイリーナだった……そしてそれを聞いたルーシェが姿を見せた。


「アンタ、こんな朝早くに来るなんて、非常識よ! 来るなら来るって先に言いなさい! ……あと、おはよう……」


「すまない! ルーシェ……それとおはよう」


 俺はルーシェにも挨拶すると、イリーナが用件を聞いてきた。


「クロードさま? 多分ですけど……クレスさんですか?」


「……ああ! 呼んできてくれるかな?」


 彼女は、俺の意を汲んでくれたようで、すぐにクレスを呼びに行ってくれた。


「アンタ、昨日クレスとなにかあったの?」


 イリーナがいなくなったときを見計らって、ルーシェが俺に問いただしてきた。


「えっ? ……まぁ、少しな」


「ふーん、まぁいいわ! アンタのことだから、なんとかしてくれるんでしょ?」


「ははっ……がんばるよ……」


「がんばるんじゃなくて『なんとかする』くらい言いなさいよ! バカッ! ……約束よ!」


「ああ、わかった! 約束する!」


「……ふん!」


 ルーシェは、俺の言葉を聞いて満足したのか、部屋の奥へと消えていった。

 そして、ドタバタと騒がしい音と共に、彼女が扉から顔を見せてくれた。


「ク、クロード!? ど、どうしたの!?」


「おはよう、クレス……昨日は送れなくてすまなかった」


「えっ! そんな、昨日は私が勝手に帰っちゃって、その……ごめんなさい!」


 お互いに昨日のことを謝ると、俺は本題に切り出した。


「今日、時間あるかな? できれば2人っきりで話がしたいんだ……」


「……う、うん! でも、ちょっと時間がほしいかな? その、準備とかしたいし……」


 彼女は誘いに了承してくれたが、なにか歯切れの悪さを俺が感じていると、イリーナがクレスの後ろから現れた。


「クロードさま……わたくしたちは、すべてを捧げる決意ができています……それでも乙女の秘密を暴かれることは、とても恐ろしいのです……お時間をご指定いただければ、秘密を隠す余裕もできることでしょう……」


「あ、ああ、わかった……では、夕食を西の塔で一緒にしないか?」


「はい……かしこまりました、クロードさま! では、失礼いたします」


「えっ? ちょっとイリーナ!?」


 クレスの戸惑いの声を無視するように、イリーナは扉を閉めてしまった……

 とりあえず、クレスとの約束を取り付けたことに、俺は安堵のため息をつき、西の塔に戻ることにした……




 ――セレンディア城 西の塔 リビング――



「そろそろか……」


 今朝の夕食の約束を無事に取り付けてから、西の塔に戻った俺は、多少汚してしまっていた部屋の掃除をした。

 そして、クレスはドレスで来るだろうと予想して、俺は正装に着替え直して、彼女が来るのを待っていた。

 そして……扉をノックする音が静寂のなかに響いた。


「今行く!」


 急いで扉に向かい、一度だけ深呼吸をすると、扉を開いた。

 そこには……見合いの場で着ていたドレスを纏った、クレスの姿があった。


「お、お待たせしました……」


「い、いえ……ど、どうぞ……」


 お互い、ぎこちない挨拶を交わして、俺はクレスを部屋に招き入れた。


「食事はまだ来てないから、少しそこのソファで話そうか?」


「う、うん……」


 俺の提案に、彼女が小さく頷き、彼女の手を引いて2人でソファに腰掛けた。


「その、ドレス似合ってるな……」


「あ、ありがとう……」


 覚悟はしていたが、2人っきりの空間とクレスの緊張が伝わってきて、俺まで緊張してしまっていた。


「あぁ〜もう焦ったいですねぇ〜、ちょっとやらしい雰囲気にしましょうかぁ?」


(黙ってろ! ここからちゃんとするから!)


 セレーネの軽口を受け流した俺は、クレスに話しかけた。


「今朝は、急に押しかけてすまなかった……」


「えっ? いや、そんな……」


「どうしても、またクレスに会いたかったんだ!」


「あっ? 会いたかった……!?」


「ああ……だから、来てくれて本当に嬉しいよ!」


「ク、クロード! だ、大丈夫? なんかすごい積極的だね!?」


「おいおい! 結婚しようって話をしてる相手に積極的になれなくてどうするんだよ」


「そ、それはそうだけど……」


「……まだ、緊張する?」


「……少し……」


 そう言って彼女は、頬を赤らめながら俯いていた。

 ――そのとき、扉からまたノックの音が聞こえた。


「食事が来たみたいだな……ちょっと行ってくるよ!」


 そう言って俺は立ち上がり、扉を開けて、食事を受け取ると、テーブルに並べた。

 そして、ソファに腰掛けたままのクレスの手を引いて、テーブル席に移動すると、クレスがあることに気付いた。


「クロード、これって?」


「ああ、モス村の料理だ! ……っとは言っても、小さな頃のフワッとした記憶で作ってもらった料理だから、ちゃんとしたものじゃないかもしれないけどな……」


 そう……料理長に無理を言って作ってもらった、モス村の郷土料理で、肉とキノコと適当な野菜を混ぜて煮ただけのものだが、懐かしい料理だった。


「俺たちにはこれくらいの方がいいだろう?」


 そう言ってクレスに同意を求めると、彼女は笑顔で頷いた。


「あはは! そうだね! でも、せっかくドレスを着て来たのに、食べるのが田舎料理って、変なの!」


「そうだな! 俺なんて、どんな料理かわかってたのにな!」


「あはは! 本当だ! クロード、変なの!」


 よかった……いつものクレスだ!

 そう安堵して、2人で食事をいただくことにした。


「あっ! でもクロード! モス村の料理じゃなくて、クローレス村の料理だよ!」


「……それ、恥ずかしいから勘弁してくれ……」


 俺の反応にクレスは、嬉しそうに満面の笑みをこぼした……


 食事が終わり食器を片付け、もう一度ソファにクレスを連れて行くと、俺は白湯を用意してクレスに渡した。


「ありがとう……料理おいしかったよ!」


「そうか、それならよかった……」


 彼女の表情が柔らかくなったことに、俺は改めて安堵した。

 これから彼女には、辛い想いをさせてしまう、だからそれまでは楽しんでもらいたかった。

 クレスが座るソファに腰掛けると、2人の肩が触れ合う距離で、昨日のことについて、俺は言葉を紡いだ。


「クレス……昨日の結婚生活のことだけど……」


「……うん……」


 俺の言葉に、彼女がまた緊張しだすのを感じた。


「今は、屋敷で1日中ヒマを持て余してゴロゴロしてるけど、しばらくしたら色々なところに行ってみたくなると思うんだ……だから、冒険者を引退することは出来ない……」


「……そんな……」


「それに、危険な魔物が出れば、俺は率先して戦うと思う、だって俺には、それだけの力があるから」


「……」


 俺の話にクレスは、ほとんど反応することなく、ただうつむいていた。


「だから、クレス……お前の描く結婚生活に……俺は協力することができない……」


「……そんなの、いや!」


 静かに俺の話を聞いていたクレスが、涙を浮かべながら反論し出した。


「だって危ないよ! クロードはイリーナみたいに治癒術使えないし、ルーシェみたいに遠くから攻撃できないし、絶対大丈夫なんて思えないよ!」


「本当にそれだけか?」


「……えっ!?」


「本当に心配なだけか? 本当は、自分がいなくても俺がやってけるって証明されるのが、怖いだけなんじゃないのか?」


 彼女の根底にあるはずの言葉を、俺はあえて選んでクレスに問いただした。


「……ひどいよ、クロード……なんでそんなこと言うの?」


 クレスの声がだんだん弱々しく、かすかに震えていた。


「クレス……俺は強くなったんだ! もう誰かに守られる存在じゃない……守る側の人間なんだ!」


「……違う! 私が……私がそばにいないと! クロードは何もできないから……」


「そんなことないぞ! 不器用は不器用なりにやればできるんだ……」


 クレスの意見に対し、俺はひたすら否定を続けた。

 たぶん……彼女に対する俺の答えは、もう出ていた……でもそれは、彼女の根底にある『それを』ちゃんと理解してからでないと、答えてはいけない。


「ダメ……ダメなのぉ……クロードには私がいないとダメなのぉ……」


 そう言ってクレスは、顔を手で覆ってうつむいてしまった。


「クロードさん、お疲れさまでした……もういけますよ!」


 セレーネの言葉に、俺はこれ以上クレスを苦しめる必要がないことに安堵し、そして最後の覚悟を決めた。


(いくぞ! セレーネ!)


「はい! いつでも!」


(【記憶回想】を使うぞ! 対象はクレスだ!)


 俺は心の中で、スキルの使用を唱えると、いつもの声が頭の中で聞こえた。


【スキルの使用を確認しました。対象者クレスの記憶を回想いたします】

 その声が聞こえると、俺の視界は真っ白になった……




 ――クレス編 軋む鳥かご 完――



最後までお読みいただき、ありがとうございます。


クレスの願っていることは、なんとなく察してはいるけど、だからといって彼女の辿ってきた努力の内容を知らないまま、受け入れたくないクロードの判断は、正しいのか? 正直、私もわかりません……


本作を気に入った!続きがちょっと気になる!ってなったら

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応援していただけたら、とても励みになります。


▼次回予告

『クレス編 夢に駈ける少年と現実を知る少女』


本日 20時 投稿予定です!!


本日から3日間限定で1日2回更新です!!


ぜひぜひ、お楽しみくださいませ!

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