↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やり直し勇者は溺愛される ~魔王を倒した勇者ですが、平和の代わりに元仲間たちとのお見合いが始まりました~  作者: 希月タカトラ
冥界攻略編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/115

冥界攻略編 崩壊を告げる者



 ——ヴォルナール コロッセオ——



 勇者をコロッセオに放り込んでから一時間……


 何か策でもあるのかと警戒したが、雑魚相手に不殺の戦いをするだけで、なんの面白味もなかった。


 結局、勇者だろうが聖女だろうが、どんなに個の力があったとしても、数の暴力で抑え込んでしまえばいい。


 貴族だろうが王族だろうが、どんなに個の権力が絶大だったとしても、それに従わなければ意味がない。


 そのために、大切なものを天秤にかけさせ、恐怖によって支配するのが一番手っ取り早い。


 私は広場から視線を外して、向かいにある観覧席に目を向けた。


「そろそろ飽きたか……」


 大男を一閃のもと葬った一撃は見事だったが、盛り上がりはそこが絶頂……


 私はもう長引くだけの見せ物に幕を引くことにした。


 右手の人差し指と中指を勇者に向けて構えた。


 スキル——『超長距離魔弾』


 私の持つスキルで、指の先から超高速で回転させた魔力の弾を放つ。


 スキル発動時の私の視力は大幅に強化され、あらゆるものを狙撃する。


 そして私の目は、勇者を捉えて離さない。


 殺意を持った一撃など、勇者なら容易く避けるだろう。


 だが泥沼の混戦となった今、遠方から感じる殺意に気を取られている暇はない。


「終わりだ、勇者よ……君は実につまらない奴だったよ……」


 そして、勇者の動きが止まるのを見て、私は魔弾を放とうとした、その瞬間——


 コロッセオの壁の一部が『ドォォォン』と大きな音を上げて、何かが壁を突き破ってきた。


 そして、コロッセオのど真ん中で止まると、翼を広げた少女が姿を見せた……




 ——クロード コロッセオ——



 突然だった。


 イリーナの策が成功するかわからず、終わりの見えない戦いを続けるなか、遠くからの殺意を感じて立ち止まった瞬間、コロッセオの壁がふき飛び、土煙のなかから、見覚えのある少女が現れた。


「あれは、ララティアか!?」


「いた、クロードさま……みんなは……?」


 ララティアが俺を見つけると、他のみんなのことも上空から探そうとしていた。


 その時、ララティアがある場所に視線を奪われた。


 来賓用の観覧席、しかしそこには……


「ララティア! 逆だ! ヴォルナールはそっちじゃない!」


 だが、ララティアに俺の声が届かなかったのか、何故かヴォルナールとは逆側の観覧席に向かって突っ込んでいった。


 そして次の瞬間——


 強力な防壁が、ララティアの突進を防ぎ、衝突の勢いで飛び散った魔力の塊が、コロッセオのなかを暴れ回った。


「ララティア! 止めるんだ!」


 しかし、ララティアには俺の声が届かず、なんとか防壁を破ろうと、ララティアが力を振り絞ったその時。


 防壁の内側、来賓席から高密度の魔力の塊が飛んできて、ララティアをふき飛ばした。


「ララティア!」


 ふき飛ばされて落ちるララティアのもとに、俺は身体強化で上空高く跳躍した。


 そして落ちるララティアを受け止め、そのまま広場に着地すると、地面を滑り砂煙を上げながら止まった。


「ララティア! 大丈夫か!?」


「えっ!? あっ、ごめんなさい……」


「別に謝らなくていい、ララティアが無事でよかった……」


 ララティアの無事を確認した俺は、みんなの方に視線を移すと、クレス、イリーナ、ルーシェの3人がじっとこちらを見つめていた。


(((お姫様抱っこ、いいなぁ……)))


「な、なんだ……?」




 ——ヴォルナール——



「あれは、勇者が連れていた小娘!? まさか魔族の類だったとは……だがまあ、予想外の戦力が現れたところで、この状況を打破することはできない!」


 今の出来事のせいで、私が長距離から狙撃しようとしていたことに、勇者が気づいたかもしれない。


 だが長い時間、奴らの戦いを見ていてわかった。


 奴らは、誰も殺さないどころか、子供相手には離れて戦わないようにしている。


 なら、子供の数を増やして、逃げ道をなくし、戦う意志を削いでやる。


「今度こそ終わりだ勇者! お前らの敗因は、たったの7人で冥界に来たことだぁ!」


「いいえ、8人です」


「はっはっはっ……へっ? 今、人の声が……?」


 その声に、私はとっさに反応できなかった。


 今聞こえた声は、確かに女の声だった。


 だがこの部屋にいる私の部下に、女は1人もいない。


「なんだ!? 誰がいるんだ!?」


「ここまで戻ってくるのに、大変苦労しました……警備が厳しいからではなくて、道がわからなかったからですが……」


「誰かいるのかと聞いてるんだ!!」


 私は、どこからともなく聞こえる女の声に向かって恫喝した。


 だが声の主は現れず、私の部下ですら何故急に私が声を荒げているのか不思議がっている様子だった。


「……私にしか聞こえていない? 精霊術の類か? それとも……スキル持ちか!?」


「ご明察でございます……私のスキル『気配遮断』は、周囲から私の存在が認識できなくなるスキルです」


「なっ!? 気配遮断だと!? だが、何故だ!? 何故貴様の声すら私しか気づいていないのだ!?」


「いえ、私の声ならみなさまにも聞こえていますよ……ただ、覚えていないだけです」


「はあ!? ……おい、貴様!」


 私は、扉の近くで待機していた部下を呼ぶと、声のことについて問いただした。


「今、女の声が聞こえたはずだ! 何故気づかん!?」


「お、女の声ですか? 確かに聞こえた気がしなくも……あれ、申し訳ありません! なんの話をしてたでしょうか?」


「なぁ……?」


 部下の言葉に、驚きを隠せず間抜けな声を漏らしてしまったが、すぐにある可能性を導き出した。

 

「まさか……もう一つあるのか? スキルが……?」


「はい、ご明察です……『認識改変』、私がそこにいたという事実を改変し、記憶にも残らなくするスキルです」


「そんな馬鹿な!? そんな高度なスキル持ちが、あんな手緩い勇者なんかと一緒にいる!?」


「…………」


 私は声の主に問いかけたが、その質問に答えは返ってこなかった。


「ヴォルナールさま、アナタはそうやって人を軽んじるから、クロードさまのお言葉も軽んじるのです……『俺たち4人に勝てないことは、理解してるんだろう?』と言うお言葉を……だからこそ、アナタも私のスキルの影響を受けていると確信が持てました」


「クッ!」


「ですが、アナタには感謝しております……私のスキルは害意を抱いた相手には使えない、だから戦いの時はいつも隠れてみなさまの勝利を祈ることしかできなかった……そして今回も、何もお役に立てずに、ただ祈ることしかできないかもしれないと、不安で仕方ありませんでした」


「……何を、言っている?」


「だからアナタのおかげで、私はみなさまの、お兄ちゃんの役に立てたと、胸を張って頭を撫でてもらえます……感謝いたします、謀王ヴォルナールさま……」


「……ふざけるなよ、女ぁぁぁ! 勝った気でいるようだが、私に存在を教えた時点で失敗なんだよぉぉぉ! どこにいるのか知らんが、手当たり次第にやれば殺せるんだよぉぉぉ!」


 そう! 私にはまだ勝機がある! 奴は害意を持った相手にはスキルが通用しないと言っていた。


 ならば、私を倒そうとした瞬間に、反撃すればいい。


 幸いにも、防刃対策の鎧は服の下に着ている。


 頭と首さえ守れれば、多少の手傷は負うかもしれないが、致し方あるまい。


 それで奴を……うん?


「おい、お前! 私は今、誰と話していた!?」


 私は部下の男に問いただしたが、部下の男は素っ頓狂な顔をしながら返事をしてきた。


「いえ、謀王さまが急に独り言を始めて、怒鳴ったりして、その、名演技でした……」


「そんなことは聞いていない! 私は女と……女?」


(ダメだ! 思い出せない! 私はいったい、何を忘れているんだ!?)


「そこにいては危険ですよ」


「うるさい! 今私は大事なことを思い出そうと……まて、今の声はどこから……」


 その瞬間——私の体がフッと宙に浮いたように感じた。


(これは、勇者をはめた罠が作動した!? 何故だ!? いったい誰が!?)


 地に落ちる感覚に襲われながら、私は視線を仕掛けのあるソファに向けると、見たことがないメイドの女が、こちらにお辞儀をしているのが見えた……


 私は一緒に落ちていた部下を掴み、落下の衝撃を少しでも和らげるための盾にした。


 そして、地面に激突した瞬間、凄まじい衝撃と痛みが身体に走った。


「はぁはぁ、い、生きてる……?」


 私は落下した場所をよく見ると、勇者を落とした時に一緒に落ちたソファが、多少なりにもクッションの役割をしたことに気づいた。


「ふっふっふ、はっはっは! 残念だったな女ぁぁぁ! 私は生きているぞぉぉぉ! 待っていろ! すぐに戻って、貴様を……」


 すでに閉じた天井に向かって、私が勝利の雄叫びを上げたその時、顔の横を抜き身の剣が突き出された。


「よお、ヴォルナール、やっと落ちてきてくれたな」


 その声は、私に強い殺意を隠すことなく向けている勇者のものだった……


 


 ——冥界攻略編 崩壊を告げる者 完——

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。