32-4 犠牲者
★オーク変身呪文を解除したら裸になってしまうのを忘れており、それに関連してエピソード公開当日夕方に記述を変更したのですが、その内容にいくつか紆余曲折がありました。混乱させてしまい申し訳ありませんでした。最終的には鎧作成呪文を使って服を作ることにしましたが、公開当日の夕方までに読まれていた方につきましてその時点では修正前であった可能性がございます。その場合、再読して頂けますようお願い申し上げます。また、ご指摘いただいた方には感謝を。助かりました。ありがとうございました。
★本日(2026.4.10) 書籍5巻 発売となりました。5巻につきましては書籍化にあたり読みやすく改稿し、sime先生の表紙、挿絵も魅力的なものになっております。よろしくお願い申し上げます。
★書籍5巻発売に合わせまして、コミックス3巻(新たに紙版で出版) 4巻(電子・紙版)も同時発売となっております。山﨑先生の素晴らしいコミカライズでアルの魅力が満載となっておりますのでこちらもよろしくお願いいたします。
★書籍、コミカライズ、電子書籍も含めましてシリーズ累計販売で10万部を突破いたしました。この場を借りて発表させて頂き、合わせて御礼申し上げます。直接ご購入いただいたことはもちろん、ここまで続けてこれたのは皆様の御支持のおかげであり、感想やレビューを頂いたり、誤字指摘頂いた結果でもあります。本当にありがとうございました。
Web版も引き続きよりよい作品を目指して継続してゆきたいと思っておりますので引き続きよろしくお願いいたします。
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ファラー村が見えてきたところでアルは高度を地上から50メートルぐらいにまで下げた。入り口あたりに着陸したほうがいいだろうか。迷いながら村の様子をみていると、村の中央には見覚えのある中型のテントが6張並んでいるのが見えた。どこで見たのだろう、掲げられている旗に描かれている六弁の花をあしらった紋章はチャニング家のものと同じだなとアルが思っているとメアリーが大きく声を上げて手を振った。
「うちの騎士団が来てるんだ。おーーーい」
えっ? うちの騎士団ってどういうこと? アルは驚きながらも知り合いなのだろうと高度を下げさらに近づいていく。メアリーの声が届いたのかテントから何人かが出てきた。するとその中には見知った顔があった。兄のギュスターブ、そしてアルと同い年でオズバートの息子のオービルである。
そのままアルはテントの前に着地した。ギュスターブやオービルがいるのなら問題ないだろう。しかしうちの騎士団とはどういうことなのか。
「こんにちは。久しぶりだね、ギュスターブ兄さん」
アルは声をかけるが、ギュスターブはメアリーとオーソンに抱かれた二人の幼い子供を驚きの表情をしてじっと見ていた。
「ボビー! イミー!」
「よかった。見つかったのか」
「おい、誰か2人の家族を呼んで来い」
「大丈夫か?」
「どこに居たんだ」
ボビーやイミーはアルたちが助けてきた子供の愛称のようだ。集まった村人から声が上がりメアリーとオーソンに駆け寄って来た。人だかりはどんどん大きくなっていく。
「色々聞きたいことはあるが、まず2人をどこで見つけたのか教えてくれ」
アルにギュスターブが駆け寄ってきて尋ねた。表情は硬くていつもと雰囲気が違う。
「鉱山からさらに南に10キロほど離れた蛮族の集落だよ。タンレヴとかいう蛮族の王か神のようなものに捧げものにされようとしていたんだ」
「鉱山からさらに南に10キロ? ここからだと20キロ以上か。そんなところに……」
ギュスターブの頬は少しこけ、髪は乱れていた。そうか、父からの手紙にシプリー山地一帯はチャニング家が今年から治める事になったと書いてあった。アルと妹のイングリッドが攫われた時はマーローの街から衛兵隊が派遣されて調査をしてくれたが、今はチャニング家が調査をする立場になっているということか。では、あの旗はチャニング家と同じというのではなく、まさしくチャニング家の旗、チャニング家の騎士団というのを示しているにちがいない。
ギュスターブはその陣頭指揮をしに来ているのだろう。周囲の目もある。状況がわかっていない者が喋ると変な誤解を生むこともありそうだ。アルは念話呪文を起動してギュスターブにつないだ。
“ギュスターブ兄さんお疲れ様。2人から聞いたところだと攫われたのは一週間ぐらい前みたいなことらしいけど、どうなの?”
“念話か。助かる。実は色々と話をしたかったんだ。事件は8日前らしい。俺たちは5日前に連絡を受けてな。その日のうちに2個小隊連れて来て捜索を開始したんだが、ゴブリンの小さな集落で痕跡はみつけたものの子供の確保まではできなかった。現在も村の連中と協力し範囲を広げて探索中だ。2人だけでも助かって良かった。アルフレッドは危険な事をしなかっただろうな”
ギュスターブの反応には疲労の色が濃い。兄が危惧する危険な事をした自覚はあるが、それを今話す気はなかった。感情に流されてしまった部分が多分にあったかもしれないが、あれはあれでしなければならなかったことだ。
“その様子じゃ他にも犠牲者が?”
ギュスターブの懸念は無視して、アルは逆に尋ねた。
“アルが保護してくれた2人の他、まだ見つかっていないのは4才と6才の女の子だ。初級学校の授業が終わった後に、10人ほどで河原で遊んでいたらしい。近くに大人も居たんだが、ゴブリンが集団で襲って来たので守り切れなかったそうだ。その時に大人が2人、子供が1人死んだ”
すでに3人が犠牲となり、4人が攫われたというのか。酷い……。アル自身も幼い頃にその場で殺される事なく近くのゴブリンの集落で拘束されていたのを祖父に救助された。アルも祖父に発見してもらえなければ救出した2人のように南にあった大きな集落に運ばれ生贄にされる運命だったかもしれない。やはり蛮族はその存在を絶対に許してはいけない。アルはぎゅっと胸元のグリィのペンダントを握る。
アルはメアリーとオーソンをちらりと見た。2人は村人たちに囲まれて質問攻めにあっているようだ。2人はアルにたいしてちらちらと視線を送って来る。一緒に何か言って欲しいのかもしれないが、村の人々にはどういう顔をして話せばいいのかよくわからないし、それより第一に行方不明の2人を探したい。
“ごめん、村の人々との対応は任せても良いかな? もう一回捜索に行ってくるよ。2人を見つけた大集落も気になるけど、他にも以前プレンティスの魔導士が蛮族に食糧を与えていたときに報告した集落がここからそれほど遠くないはずだからそっちも見てくる。口が堅くてある程度戦える人なら誰か連れて行ってもいいけど……”
救われた子供の家族は感謝の言葉を述べ、どこでどのように救ったのか聞きたいかもしれないし、まだ行方不明の2人の家族はどうして救い出してきたのは自分の家族じゃなかったのかと言いたいかもしれない。或いは事件の際に死亡した者を家族に持つ者からすれば事件が起こる前にどうして何か対策をしてくれなかったのかと問いただしたいかもしれない。いろんな思いはあるだろうが、それらを今受け止めて話をするという気はアルには無かった。今はただ自分がすべきと思った事をするのが先だ。話を聞くのは後だ。
“そうか、あれはこの近くか。俺も話を聞いた時は遠征途中だったこともあってすっかり頭から抜け落ちていたな。まいった……”
“近いといっても、空を飛べばの話だよ。ナッシュ山脈に入って絶壁が連なってるあたりだから、徒歩だとかなりかかるよ”
ギュスターブは唇を噛んだが、アルの話に下をむいて頷いた。
“わかった。村人との話は任せてくれていい。どちらもアルフレッドに調査をしてもらったほうが効率的だろう。まだ捜索に行ったままの者もいるから定期的に連絡が欲しい。しかし、3人はどうしてそんな鉱山の南の蛮族の集落に行ったのだ? こっちの事件の話が伝わってきていたのか?”
ギュスターブの問いにアルは首を振った。
“父さんからの手紙を受け取ってね。全然こっちの状況を知らなくてごめん。驚いてみんなてっきりチャニング村にいると思って昨日の夕方そっちに帰ったんだよ。父さんやギュスターブ兄さんたちには会えなかったけど、時間が遅かったからマーローの街までは行かずにその日はジャスパー兄さんたちと夜にご飯を食べながらいろいろと話をした。するとメアリーが鉱山に蛮族が現れる回数が異常な気がするって言いだしてね。オーソンもそれに同意するものだからさ。気になって父さんに会いに行くのを延期して鉱山から南の様子を見に行ったんだ。それで2人の子供を見つけたっていうわけなんだよ”
アルの答えにギュスターブはそうだったのかと頷いた。
“なるほど。メアリーやアルが蛮族の事を気にしてくれていたおかげで見つかったとも言えるな”
大きく考えればそれも間違いではない。ギュスターブは少し考えて頭を上げると、アルフレッドの肩をがっしりと掴んだ。
「アルフレッド、ご苦労だった。今度はオービルを連れて行ってくれ。メアリー、オーソン、南にあった蛮族の集落について話を聞きたい。子供2人は村の者に預けてこちらにきてくれ。ファラー村の者たちよ、2人を救ってきてくれたこいつは、私の弟で魔法使いギルドの特別顧問官を務めているアルフレッドだ。こいつは妹のメアリーやもう一人の妹の許婚であるオーソンと共にここから南にある鉱山のさらに南に蛮族の集落があるかもしれないというので調査に行ってくれていた。アルフレッドは残る2人の調査にまたすぐに出発する。色々と話は聞きたいだろうが時間が惜しい。幸運を祈ってくれ」
周りにも聞こえるような大きな声だ。上手に言ってくれたので助かる。これでいろいろと聞かれたりすることもなく出発できるだろう。そういえば辺境伯騎士団に所属していた頃もギュスターブ兄には人望があり、もうすぐ小隊長になるかもという話だった。こういった才覚があるのだろう。いそいでアルはよくわからないという感じの顔をしているオービルの手を引いて、先ほどまでオーソンが座っていた運搬の椅子に半ば無理やり座らせた。
「オービル、行くよ。しっかり椅子の手すりは持ってね」
「えっ? えっ? お、おう アル。わかったよ」
アルとオービルは幼馴染であり、性格もよく知っているので信用できる。連れて行っていろいろ見せても問題はないだろう。アルはそのまま空に浮きあがりひとまずは西に向かう。ナッシュ山脈山中にある蛮族の拠点はおそらく未捜索だ。そこで子供が無事に見つかればよいのだが……。
読んで頂いてありがとうございます。
月金の週2回10時投稿を予定しています。よろしくお願いいたします。
誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。
いいね、評価ポイント、感想などもいただけるとうれしいです。是非よろしくお願いします。
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