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おいしいはしあわせ  作者: 南 さくら
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お正月の楽しみ鯛の子の煮付け

 おせち料理はあまり好きではなかった。好き嫌いが多かった私には、あまり好んで食べられるものがなかった。色どり豊かな料理が並ぶお重を前にして、祝い箸が進まない。だが、おせち料理で唯一お箸が止まらなかったものがある。鯛の子の煮付けだ。甘辛いおだしで炊かれた鯛の子の煮付けは、我が家ではお正月しか食べることのできない贅沢品だった。見た目こそ高級感はないものの、一口食べると魚卵の粒が口中に広がりなんともブチブチッとした食感がいい。口の中がパサパサする食べ物は好きではないが、鯛の子の煮付けはそれとはまた違う。これがまたごはんに合う。お雑煮はいらない。おせち料理はこれとだし巻き卵だけで充分だった。でもたくさん食べると怒られた。こればかり食べすぎると身体によくないとかなんとか。大人になった今では、キリッとした辛口の日本酒と共に食したい。そう思っていた矢先、なんとも運良く出会えたのだ。会社の先輩に連れて行ってもらった鮨屋のお品書きの中に鯛の子の煮付けの文字を発見。お正月以外で鯛の子の煮付けが食べられるなんて夢のようだ。しかも、いくら食べても怒られない。嬉しすぎて小躍りしそうな気持ちを抑えて、注文。出てきたのはきれいな和柄の小鉢に入った鯛の子が3切れほど。なんとも上品な佇まいではないか。日本酒と、と思ったが調子良く空になっていたグラスに瓶ビールを注いでもらい酒のアテとしていただく。口の中の魚卵の粒々を、冷えた黄金のビールが流してくれる。うん、間違いなくおいしい。濃いすぎず、ちょうどいい塩梅に煮付けられている。この味、この食感、なんともいえず懐かしい感じも尚いい。居酒屋でもなかなか出会えない一品だっただけに、感動すら覚えた鮨屋との出会いだった。もう今は引っ越ししてフラッと行けない距離なのだが、どこか近所に鯛の子の煮付けに出会えるお店はないものか…

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