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三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
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九十一、侵入者



「眠気防止にコーヒーを淹れましょうか?」


私がみんなにそう言った。


「小春、俺も手伝うよ」

「うん、たけさん、ありがとう」


そした私たちはキッチンへ行った。


「それにしても、大変なことになったな」

「そうですね・・なんだか私の送別会でこんなことになって・・みんなに申し訳ないです・・」

「なに言ってんだよ。関係ねぇじゃん」

「でも・・」

「気にすることはねぇよ。それより朝まで頑張ろうぜ」

「はい、そうですね」


そして私たちは人数分のコーヒーを、暖炉の部屋まで運んだ。


「女性は横になるといい。そうだ、二階の寝室から毛布を運ぼう」


紫苑さんがそう言い、男性たちは二階へ上がった。


「お義母さん、お疲れではないですか?」

「葵さん、あなたも疲れているんじゃないの・・?」

「私は大丈夫です。それよりお義母さん、毛布が来たら横になってください。私が傍にいますからね」

「ありがとう・・」


「小春・・ごめんな・・」


美琴が私にそう言った。


「え・・なによ美琴。なんで謝るの?」

「私がここを予約したんや・・」

「なに言ってるのよ~~!美琴のせいじゃないじゃん!」

「山の中とか言うてさ・・張り切ってしもて・・」

「ヤダ~~美琴ったら、らしくないわよ!」

「こんなことなら・・どっかレストランでも借りたらよかったわ・・」

「美琴、なにを言ってるでありんすか。みんな楽しんでいたでありんすよ」

「そうよ~~、紬の言う通りよ~」

「そうやけど・・」

「もう~~美琴っ!ほら、元気出して!」

「うん・・」

「いつもの美琴はどこ行っちゃったの?ほら~~ギャグは?」

「そんな心境ちゃう・・」

「ストローカックンするでっ!」

「小春は・・ほんまに・・」


美琴は頼りなく笑った。


そこで二階から毛布を持って、男性たちが下りてきた。


「ここは暖かいから、毛布だけで凌げるな」


紫苑さんがそう言いながら、田中さんに毛布を渡していた。


「ありがとうございます・・」

「琴美くん、横になるんだ」

「はい・・眠くなったら横になります・・」


「静ちゃん、はい、これ被ってね」

「和くん・・ありがとう・・」

「怖がらなくていいからね。僕が傍にいてあげるから安心して寝ていいよ」

「和くん・・お願い・・ここにいてね・・」

「うん、ここにいるよ」


「お袋、葵ちゃん、これ被って横になれよ」

「真人・・ありがとうね・・」

「真人くんも、無理しないでね」

「俺は平気だ。どうってことねぇよ」


「小春、お前もこれ、掛けて寝ろよ」

「たけさん・・ありがとうございます」

「っんな~、不安そうな顔すんなって」

「だって・・」

「お前は俺が守る。これは絶対だ」

「うん・・」


「柴土、路考、はい、毛布」

「斎藤、ありがとうな」

「斎藤くんも、疲れているでありんしょ・・」

「僕はどうってことないさ。みんないるし」

「斎藤・・ごめんやで・・」

「え・・?」

「あんたを誘った、私の責任や・・」

「柴土~~、今、そんなこと言ってる場合じゃないよ。みんなで協力し合わないと」

「うん・・そうやな」


こうして、みんなそれぞれ不安をかき消すように、いたわりあっていた。

お願い・・早く朝になって・・

時計を見ると、もうすぐ零時になろうとしていた。


やがて間宮さんは眠ってしまった。

その横で、葵さんがウトウトし始めた。


「葵ちゃん・・横になれよ・・」


お兄さんが葵さんの耳元で囁いた。


「・・あ・・え・・?あっ・・真人くん、私、眠ってしまいそうだったわ・・」

「無理すんなって。安心して寝ろよ」

「でも、お義母さんが・・」

「お袋は心配ねぇよ。俺が見てるからな」

「そう・・。じゃ、ちょっとだけ横になるわね」

「ああ」


そして葵さんも横になった。


「たけさん、私、トイレ行ってきますね」

「そうか。俺も着いて行こうか?」

「いいですよ~。私一人で行けますよ」

「そっか」

「小春、私たちも行くでありんす」

「うん、じゃ一緒に行こうか」


そして私は、美琴と紬と三人でトイレへ行った。


「ここのログハウス、ほんと広いよね」

「そうやねん。それがええと思て、ここ選んでん」

「そうでありんすな。なんせ・・十二人でありんすからな・・。大所帯でありんす」


トイレはキッチンを通り抜け、廊下の端にあった。

私たちはトイレを済ませ、暖炉の部屋に戻ろうとしたその時だった。

裏口の鍵が開いているのに、私は気がついた。

きっと閉め忘れたんだわ・・

私は鍵を閉めて戻った。


「紫苑さん、裏口の鍵が開いてたので、閉めときました」


私は紫苑さんにそう言った。


「え・・?僕、閉めたよ」


斎藤くんがそう言った。


「え・・でも・・さっき見たら開いてたんだけど・・」

「なんだとっ!」


そこで紫苑さんの顔色が変わった。


「みんな落ち着いて聞いてくれ。おそらく中に誰かが侵入したと思われる」

「いや・・いやよ・・」


静香さんは男の顔を見ているので、東雲さんに縋りつくようにして怯えていた。


「おい・・紫苑、マジかよ・・」

「くれぐれも繰り返す。けっして混乱してはならない。侵入したのはおそらく十時以降だ。薄柿さんたちがトイレへ行っても侵入者の反応がなかったと言うことは、どこかに隠れている可能性がある。しかしそれは二階ではない。ここ、一階だ」

「紫苑くん、探すつもりかい?」


東雲さんがそう言った。


「この部屋に入って来れる入口は、二か所だ。キッチンからの動線と、隣の部屋だ。しかし隣の部屋はここを通らなければ入るのは無理だ。ということは、侵入者が来れるのはキッチンから・・ということになる」

「キッチンの向こうには、トイレと・・それとお風呂があるよね」

「東雲くん、その通りだ。トイレに隠れてないとしたら・・風呂に隠れている可能性が大だな」

「でも・・男子トイレは・・?」


私がそう訊いた。


「そうだったな。男子トイレも可能性として残されている。おそらくこの二か所だろう」

「紫苑、どうすんだよ」

「時雨くん、待ってくれ。とりあえず、ここを動くのは危険だ。僕はまず、男子トイレを確認してくる」

「ちょ・・待てって。お前一人じゃ危ねぇって。俺も行くよ」

「ヤダ・・たけさん・・やめて・・」

「ここには・・そうだな、斎藤くんと、お兄さんを残そう」

「え・・いやです・・和くん・・ここにいてください・・」

「静ちゃん・・」

「お願い・・ここにいてください・・」

「わかった。では東雲くんもここに残ってくれ。僕と時雨くんで確認してくる」

「たけさん・・」

「小春、心配ねぇよ。すぐに戻って来るからな」

「健人、ぜってー無理すんなよ。ヤバかったら逃げんだぞ。わかってるな」

「ああ」

「それじゃ、時雨くん、行くぞ」


そして紫苑さんが化粧水を持ち、たけさんが火かき棒を持ってトイレへ行った。


「ヤダ・・たけさん・・大丈夫かな・・」

「男二人やし・・大丈夫やって」

「でも・・刃物とか持ってたらどうするの・・?」

「それは・・」

「とにかく・・祈るしかないでありんす・・」


ほどなくして、たけさんと紫苑さんが戻ってきた。

よ・・よかった・・


「トイレにはいなかった。となると、風呂だな」


紫苑さんがそう言った。


「どうするよ、紫苑」

「侵入したにもかかわらず、隠れているということは、我々に危害を加える意思がない可能性も捨てきれないな」

「んじゃ、朝まで待つのかよ」

「それも不気味だ。そもそも侵入者が血まみれの男なのか、窓から覗いていた男なのか、はたまた別のやつなのか・・」


みんなは紫苑さんの言葉を聞いて黙っていた。


ガタンッ!


「きゃああああああ~~~!」


静香さんが、また悲鳴を挙げた。

みんなも凍り付くような表情になっていた。


「今の音は、やはり風呂辺りからだったな」


紫苑さんがそう呟いた。


ガタッ・・ガタッ・・


ヤダ・・

なに・・

これは何の音なの・・?


するとキッチンの横から、血まみれの男が姿を現した。


「いやあ~~~!」


私もそう叫んでしまった。


「頼む・・み・・水を・・」


そう言って血まみれの男は、こっちへ近づいてきた。


「いやあ~~~!来ないで!あっち行ってぇぇぇ~~!」

「小春、落ち着け!」

「いやあ~~~!」


美琴も紬も田中さんも、呆然としていた。

そこで、間宮さんと葵さんの目が覚めた。

すると二人も、事態を飲み込めず、呆然と見ていた。


「こっちへ来るな」


紫苑さんが男の前に立ちはだかり、今にも化粧水をかけんばかりだった。


「頼む・・助けてくれ・・」

「止まれ!一歩でも動くと、これをかけるぞ」

「・・・」

「これは硫酸だ!」


紫苑さんは、嘘を言って威嚇した。

すると男の足が止まった。


「お前は誰だ」

「俺は・・やつらに追われて・・この山へ逃げ込んだんだ・・」

「やつら?それは誰だ」

「街のチンピラに・・因縁つけられて・・。頼む・・それより・・水を飲ませてくれないか・・」

「紫苑さん・・もしかしてこの方、被害者ではございませんの・・」

「お前、そのケガ、どうしたんだよ」


たけさんがそう訊いた。

男は右頭部に、酷い擦り傷のようなものがあった。

そのため、顔にもシャツにも血がついていた。


「これは・・走って逃げている時に、滑り落ちて・・それで頭を打ったんだ・・」

「あのさ、見知らぬ男が窓から覗き込んだんだけどさ、追ってるやつらってそいつか?」

「ああ・・おそらく・・そうだろう・・」

「おい、紫苑、この話、マジじゃねぇのか」

「・・・」


たけさんにそう言われても、紫苑さんは黙ったまま、男をじっと見つめていた。

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