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三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
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九十二、男の正体



「紫苑さん・・この方に応急手当てをした方が、よろしいんじゃございません・・?」


田中さんは、男の衰弱ぶりを見かねてそう言った。

男は立っていることにも疲れたようで、その場に座っていた。


「手当など・・いい。とにかく一晩で構わないから・・ここに匿ってくれ・・」


男がそう言った。


「紫苑さん、どうするん・・?」

「きみ、名前は何というんだ」

「え・・中島なかじま・・」

「下の名前も言うんだ」

「た・・太郎たろうだ・・」

「中島太郎か・・」

「ああ・・」

「中島くん、きみは裏口の鍵をどうやって開けたんだ」

「俺・・鍵屋やってんだ・・。それで道具さえあれば、簡単に開けられるんだ・・」

「ほう、そうか」

「俺は、何もしない。あんたらに危害を加えることもない。約束する・・」

「まあいいだろう。みんな、中島くんに手当を施すが、それで構わないか」


みんなは、その意見に賛成した。


「僕がやるよ」


そこで東雲さんがそう言った。


「確か・・隣の部屋に救急箱があったはずでありんす・・」

「そうか」


そう言って東雲さんは、隣の部屋に入った。

すぐに静香さんが後を追いかけた。


「しかし妙だな・・」


紫苑さんがそう呟いた。


「街でチンピラに絡まれたと言うのに、なぜこんなところまで逃げて来たんだ」

「俺・・そいつらに目を付けられてて・・それで、拉致されたんだ・・」

「ほう」

「車に乗せられて・・山の麓まで来たんだ。それで・・隙をついて逃げ出したんだ・・」

「なるほど。それで山に入った、と」

「ああ・・」


そこで東雲さんは、救急箱を持って戻ってきた。


「少し痛いかもしれないけど、我慢してくれ」


東雲さんは、とても手慣れた様子で、素早く応急処置をした。

静香さんは、洗面器でタオルを濡らし、顔の血を拭き取ってあげていた。


「ありがとう・・」


中島さんがお礼を言った。


「あくまでも応急処置だから。後日、必ず病院へ行くこと」

「ああ・・そうする・・」

「東雲くん、ケガのほどはどうなんだ」


紫苑さんがそう訊いた。


「右頭部を切ってるね。傷はそれほど深くないけど、菌が入っていると大変だから、必ず専門医で診てもらうことだね」


そして静香さんは、中島さんに白湯を差し出した。


「ほんとに助かった・・みんな、ありがとう・・」


中島さんの姿に、みんなは少しずつ警戒心を解きつつあった。


「薄柿さん、ちょっと来てくれ」


私はそう言われ、紫苑さんとキッチンへ行った。


「なんですか・・」

「きみ、女性たちに伝えるんだ」

「なにを・・ですか」

「決して中島に近づくな、とね」

「え・・どういうことですか・・」

「僕はまだ、彼を信じていない。不可解な点もいくつかある」

「そうなんですか・・」

「しかし、彼を警戒させないために、僕は彼を信じるふりをするので、承知していてくれ。そのことも含めて女性たちに伝えてくれ」

「男性たちには、どうするんですか」

「それは僕が伝える」

「はい、わかりました」


そうなんだ・・不可解な点があるんだ・・

しかも、いくつも・・

それって何なんだろう・・


「美琴、紬~、トイレ行こう~」


私は暖炉の部屋に戻り、そう声をかけた。


「え・・またかいなっ」

「だって~冷えるんだもん」

「もう~~、しゃあないな」


そして私たちはトイレへ行った。


「美琴、紬・・よく聞いてね」

「え・・なんやの。トイレちゃうんかいな」

「なんでありんすか・・」

「中島さんに近づくなって紫苑さんが言ってたの・・」

「え、どういうことなん?」

「紫苑さん・・中島さんのこと疑ってるみたいなの・・」

「そうでありんしたか・・」

「私には何が不可解なのかよくわからないんだけど、とにかくそう言うことだから」

「よっしゃ、わかった。紫苑さんがそう言うなら、従った方がええな」

「そうでありんすな。それで、夜が明けるまででありんすし・・」


そして私は、間宮さん、葵さん、静香さん、田中さんにも伝えた。

中でも葵さんは、紫苑さんの意見に激しく同意した。

私たち女性は一塊になり、暖炉の前で身を寄せ合っていた。


紫苑さんは、中島さんから片時も目を離すことがなかった。

たけさんたちは時折、ログハウス内を点検して回っていた。


ドンドンドンッ!


時間も午前二時を回ろうとしていたその時、入口のドアを激しく叩く音がした。


一瞬、みんなの身体が硬直した。


「た・・助けてくれ・・」


中島さんが怯えてそう言った。

そこで静香さんが立ち上がり、中島さんのところへ行こうとした。


「静香さん、行っちゃダメ・・」


私は静香さんの服を引っ張った。


「でも・・中島さん、怯えています・・」

「ダメ・・紫苑さんの言うことを聞いて・・」

「そうよ、静香さん、行ってはダメよ」


葵さんもそう言って止めた。


ドンドンドンッ!


また激しくドアを叩く音がした。


「そこにいるのは誰だ!」


紫苑さんが入り口で、外にいる者に訊ねた。

外では何か言っていたようだが、ドアが分厚くてよく聞き取れなかった。


「きゃあああああ~~~!」


今度は田中さんが悲鳴を挙げた。


「田中さん、どうしたの!?」


葵さんがそう訊ねた。


「あ・・あそこの窓から・・誰かが覗いて・・」


その言葉にみんなは、窓に注目した。

すると恐ろしい顔をした男が覗いていた。


ぎゃ~~~~~!なに~~~!

めちゃくちゃ怖いんですけど~~~!

男は、なにかを叫んでいるようだったが、防音ガラスなので、なにも聞こえなかった。


するとたけさんが窓際へ行き、「あっちへ行け」というジェスチャーをしていた。

それでも男は、なにかを叫んでいた。

そして男は一旦消えた。


「た・・助けてくれ・・」

「中島くん、僕たちがついている。心配することはない」


紫苑さんが中島さんの傍まで行き、そう言った。

でも手には、火かき棒を持っていた。


すると窓からまた、あの男が覗いた。

男はメモ用紙のような物を、私たちに見せていた。


すぐにたけさんが、それを読んでいた。


「紫苑・・来てくれ」


たけさんがそう言った。

紫苑さんはすぐに、たけさんの傍へ行き、メモを読んだ。

中島さんの顔を見ると、次第に表情が険しくなっていった。


なにが書かれてあったの・・?

一体、なにが起こってるの・・?

東雲さん、お兄さん、斎藤くんは、女性の傍から離れなかった。


「中島くん」


そこで紫苑さんが声をかけた。


「なんだ・・」

「外にいる男と、僕が交渉してくる」


そこで中島さんは立ち上がり「やめろ」と言った。


「動くんじゃない。座るんだ」


紫苑さんは手で中島さんを制した。


「お前ら隣の部屋に移動しろ。それで中から鍵をかけろ」


たけさんが私たちの傍へきて、小声でそう言った。


「え・・健人・・どうなってるの・・」


間宮さんがそう訊いた。


「いいから、早く移動しろ」

「健人くんの指示に従いましょう」


葵さんがそう言った。

そして私たちは、部屋を移動しようとした。


「動くな・・」


中島さんが恐ろしい形相で、私たちを引き止めた。

え・・なに・・?

なにを言ってるの・・?


そして中島さんは、ズボンの後ろに手をやり、拳銃を私たちに向けた。

え・・

うそ・・

嘘でしょ・・


「きゃあ~~~~!」


また田中さんが悲鳴を挙げた。


「一歩でも動くと撃つぞ」


いつの間にか入口に近づいていた紫苑さんが、鍵を開けようとした。


「開けたら女を殺す」


そう言われた紫苑さんは、手を止めた。


「てめぇ・・殺人犯だな」


たけさんが中島さんを睨みつけた。

ええええ~~~!殺人犯んんん~~~!

嘘でしょ・・

あ・・さっきのメモ・・きっとそれが書いてあったんだわ!


「一歩でも動くと撃つからな」


拳銃なんて・・

こっちの武器では・・対抗できないわ・・

なにか・・方法はないのかな・・


「中島くん、こうしようじゃないか」


紫苑さんは、相手が殺人犯であることも全く意に介さないように、極めて冷静にそう言った。


「なんだ・・」

「僕が人質になるから、みんなを解放してやってくれないか」

「ダメだ。一人も動くことは許さない」

「ここには女性も年配者もいるんだ。どこかへ逃亡するにしても、足手まといになるぞ」

「・・・」

「僕だけなら、そうはならない」

「・・・」

「もう、わかってると思うが、外には警察が来ている。ここに留まれる時間もあまりないぞ」

「紫苑さん・・そんな・・無茶でございます・・」

「そやで・・。紫苑さん人質やなんて、あかんて!」

「どうなんだ、中島くん」


紫苑さんは、田中さんと美琴の声を遮ってそう言った。

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