八十七、送別会
「小春、私と紬で考えたんやけどな」
あれから数日後、美琴が教室で話しかけてきた。
「なにを?」
「あんた、卒業したらアメリカへ行くやん?」
「うん・・そうだけど・・」
「その前にな、小春の送別会やろと思てるねん」
「そ・・送別会ぃぃ?」
「そやで」
「そんなぁ~、私はいいよ~」
「なんでやの。ええやんかいさ」
「いや・・私、絶対に泣くし・・」
「泣いたらええがな」
「えっ・・」
「小春、せっかくでありんすよ。是非、やろうでありんす」
「それって・・誰の家でやるの?」
「っんな・・家っちゅうような、しけたことろやあらへんでっ!山の中や、山の中っ!」
「ええ~~!なっ・・なんで山の中?」
「キャンプやがな」
「げっ・・こんな寒いのにキャンプって・・」
「あほやな。なにもテント張るんちゃうがな。ログハウスを借りるんや」
「ログハウス・・」
「どやっ、ええと思わんか?」
「んで・・誰を誘うの?」
「決まってるがなぁ~、時雨王子、和樹王子、紫苑さん、静香さん、田中さん、お兄さん、葵さん、お母さんや」
「えええ~~!そっ・・そんなに大勢?しかも田中さんまで・・」
「いつも楽しそうに話してるね」
そこに斎藤くんがきた。
「斎藤やん」
「なんの話?」
「小春の送別会のことやねん」
「へぇ~そうなんだ」
「あっ、斎藤も来る?」
「えっ・・僕が?」
「ええやん。あんたも入れたるわ。あんた小春と漫画友達やもんな」
「僕、いいのかな」
「いいでありんすよ~、是非、参加してほしいでありんすよ」
「そっか・・うん。わかった。僕も参加させてもらうよ」
「よーーしっ!ほな、斎藤、追加な。あとは~誰か忘れてへんかいな」
「設楽さんは・・どうするでありんすか」
「ああ・・設楽さんなぁ。私も考えたんやけど、ほら・・お兄さんのことがあるやろ」
「なるほど・・そうでありんしたな」
「ほんで・・泊りとなると・・やっぱりな・・」
「えっ・・泊まるんだ」
そこで斎藤くんが驚いた。
「そやで。キャンプするねん」
「へぇ~・・って、めっちゃ寒いじゃん」
「あほかっ!あんたも小春と同じやな。ログハウス借りんねや」
「そうなんだ。それならいいね」
「まあ~土日かけて行くさかい、一泊二日やけどな」
「なんだか楽しそうだね」
「そこでやっ!私と紬で色々とレクレーションの策を練るから、斎藤、あんたも手伝って」
「レクレーションって・・、それを言うならレクリエーションだよ」
「斎藤!細かいことはええねや。関西ではレクレーション言うねや」
「そうなんだ」
「ほんで、小春」
「なに・・」
「今後、この話はあんたにはせぇへんからな。私ら三人で話してても、ハブられてるとか思たらあかんで」
「あ・・うん、わかった」
送別会かぁ・・
なんか・・アメリカ行きを実感するわ・・
はぁ~~・・行きたくないけど・・でも約束だもんね・・
今度こそは、行かなくちゃね・・
それからまた数日後・・
「小春、今日は、時雨王子の家へ寄らせてもらうからな」
「あ、そうなんだ」
「渡すもんがあるんや」
「それって・・なに?」
「招待状や」
「そ・・そうなんだ・・」
「だから、あんたは来たらあかんで」
「あ・・うん・・」
「あ~~忙し~忙しいわ~紬~行くでぇ~」
そう言って美琴は教室から出て行った。
「小春・・」
「なに・・紬」
「美琴、張り切ってるでありんすよ」
「そうみたいだね」
「斎藤くんも、色々と趣向を凝らしているでありんすよ」
「そうなんだね・・なんだか、申し訳ないな・・」
「なにを言うでありんすか。私たちの仲でありんしょ。水臭いことは言いっこなしでありんす」
「うん、ありがとう」
「ほら~~!紬!なにやってんの~~、はよ行くでっ!」
廊下で美琴が叫んでいた。
「それじゃ、小春。お先に行くでありんすね」
「うん、また明日ね」
美琴と紬は、送別会の招待状をたけさんに渡し、たけさんがお兄さんたちに渡してくれることになった。
紫苑さんには美琴たちが渡し、それを紫苑さんが東雲さんに渡してくれた。
こうして、いよいよ送別会が執り行われることとなった。
場所は東京の郊外にある、キャンプ場だった。
シーズンオフということもあり、利用客は私たちだけだった。
「いやあ~、寒いけど、いいところだな」
たけさんがキャンプ場に着いてそう言った。
ログハウスは二階建てで、中もとても広そうだった。
「健人・・私、こんな空気のいいところ、久しぶりよ」
「そうだな。まあ、かあちゃんも楽しめよ」
たけさんは、いつからか、お母さんのことを「かあちゃん」と呼ぶようになっていた。
「薄柿さん、アメリカへ行かれるのですね・・」
静香さんがそう声をかけてくれた。
「はい、そうなんです。卒業したら行くんです」
「淋しくなりますね」
「静ちゃん、その話は後にしようね」
「あ・・はい」
東雲さん・・やっさし~~~!
「みなさん~~!本日は~小春の送別会にご参加くださり、ありがとうございますっ!」
美琴がみんなに向けて、そう挨拶をした。
「ほんまやったら去年、とっととアメリカへ行ってたはずなんですけど、まあ~~わがままな小春は、王子と離れたくないぃぃ~~っちゅうて、日本に残りました。そしてこの一年、たくさんの思い出ができたと思います。みなさん、小春との思い出話を存分にしておくんなはれ~~。では、ロッジの中へ入ります~」
美琴がそう言うと、その場は爆笑に包まれた。
そして私たちは中へ入り、とりあえず、それぞれ荷物を置いた。
「みなさん~、今後の予定をざっくりと言いますね。えっと、晩御飯は当然!BBQですっ!もう肉も野菜も切ってありますし、コンロの準備がでけたら、後は焼くだけですんで、手間はかかりません。ほんで・・その後のレクレーションなんですが・・」
「美琴くん、レクレーションではないぞ、レクリエーションだぞ」
紫苑さんが、すかさず突っ込みを入れた。
「はいっ!出ました、紫苑さんの突っ込み。関西ではレクレーション言いますねん」
そう言うと斎藤くんが笑っていた。
「で、そのレクレーションですが、なんとっ!肝試しをやります~~」
「あら・・わたくし、肝試しは苦手でございます」
田中さんが紫苑さんの横でそう言った。
「私も怖いです・・」
静香さんもそう言った。
「静ちゃん、僕がついてるから大丈夫だよ」
「和くん・・」
二人は見つめ合っていた。
「こらこら~~!そこっ!世界は二人のためにかいな~~!佐良直美かっ!」
え・・佐良直美って・・だれっっ?
「あら・・美琴さん、佐良直美、知ってるのね」
「間宮さんも知ってます?」
「知ってるわよ~。当時、大ヒットしたのよ」
「さっすが~~、間宮さん、話せますわ~~。んでっ!静香さん、和樹王子と一緒に行けると思たら大間違いやでぇ~~」
「えっ・・」
「ここは公平に、あみだくじをします」
「そ・・そうなんですか・・」
「それで、誰と行くにしても文句は一切受け付けませんよってに!ええでっか!」
「わ・・わかりました・・」
「ほんで、肝試しの前に、斎藤からサプライズがありますよって、お楽しみに~。ではっ、しばし解散!」
はぁ~~・・肝試しか・・私も苦手なのよ~・・
たけさんと行けたらいいんだけど・・くじだしな・・
「小春」
「あ、たけさん」
「美琴たち、こんないい企画立ててくれて、よかったな」
「はい・・なんか申し訳なくて・・」
「っんなことねぇよ。みんな楽しんでんじゃねぇか」
「はい、思いっ切り楽しんでもらいたいです」
「それにしても、肝試しか」
「私・・怖いです・・」
「別にどうってことねぇよ」
「たけさんと・・行けたらいいんですけど・・」
「心配することねぇって」
「小春~」
そこで美琴が声をかけてきた。
「なに?」
「私と紬と斎藤、今から肝試しの準備するから、外、行ってくるわな」
「あ、そうなんだ。気をつけてね」
「ほんで、私と紬がお化けの役するからな」
「ええええ~~~!そんなのいいじゃない~~。歩くだけでも精一杯だよ~」
「っんなあほな。せっかくなんやし」
「えぇ・・そんなぁ・・」
「まあ、お化けっちゅうたって、大したことあらへんで」
「そうなの・・?」
「お面、被るくらいかな・・」
「ええええ~~~!十分、怖いって!」
「ほんで・・長髪のカツラをつけて・・」
「ぎゃあ~~~!止めて~~~!」
「あはは、冗談や。ほな、行ってくるわ~」
ひゃあ~~・・もう、マジでやめてよね。
静香さんと田中さんだって、びっくりするわよ。
「お義母さん、外に出ましょうか」
そこで葵さんが間宮さんに声をかけた。
「あ・・そうね」
「真人くんも行きましょう」
「うん、そうだな」
「小春、俺たちも行こうぜ」
「あ、はい」
そして、東雲さんたちも、紫苑さんたちも外に出た。
寒いけど、とても気持ちがいいな・・
ここに・・翔さんもいたらなぁ・・
翔さんは、私とたけさんを初めてデートさせてくれた人なんだよね。
それと、私が悩んで落ち込んでる時も、話をしてくれて・・
一杯、お世話になったのよね・・
「翔さん・・元気にしておられますか?」
「ああ。元気だぜ」
「そうですか~。会いたいですね」
「そうだな」
「翔さんには私、ほんとにお世話になって・・」
「俺もだよ」
「はい・・」
「かあちゃんとも電話で話したんだぜ」
「そうなんですか・・」
「かあちゃん、泣いて喜んでたよ」
「そうなんですね・・」
「ほら、翔ってさ、ずっと俺から離れずにいてくれただろ。そのおかげで今の健人があるってな」
「はい・・」
「あいつには感謝してもしきれねぇ」
「そうですね」
それからほどなくして、バーベキューが始まった。




