表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
63/94

六十三、久しぶりの再会



そして翌日・・


「おーい、小春~」


玄関の外でたけさんの呼ぶ声がした。


「はーい、今、行きます~」


私はもう身支度を整えていて、バッグを持ち外に出た。


「おはよ」

「おはようございます~」

「んじゃ、行くか」

「はーい」


そして私たちは駅に向かって歩いた。


「東雲さんに会うの、久しぶりですよね」

「そだな」

「一人暮らし、上手くいってるんですかね」

「大丈夫だろ」

「東雲さんとは、一年間、一緒に暮らしたんですよね」

「うん」

「どんな感じでした?」

「どんなって、別に普通だよ」

「東雲さんの性格って、私、あまりピンときてないんですよ」

「あいつは、超がつくくらい優しいやつだぜ」

「そうですよね。言葉遣いも優しいし・・」

「悪かったな」

「え・・」

「俺はこんな不良みたいで~」

「いや・・たけさんは、その方がいいですよ」

「なに言ってんだよ」

「だって・・この間、棒読みでしたし」

「うるせぇよ」

「あはは」


東雲さん、ほんとに優しい人だもんなぁ~。

でも、たけさんだって、すごく優しい人だよ・・

みんなそれを知ってるんだよね。


私たちは電車を乗り継ぎ、やがて都内の最寄り駅に着いた。

すると、改札を出たところで東雲さんが待っていた。


「よう~和樹~」

「東雲さん、おはようございます」

「おはよう。二人ともよく来てくれたね」


そして私たちは、東雲さんのアパートに向かって歩いた。


「和樹、学校はどうだ」

「うん。とても楽しいよ」

「そっか。よかったな」

「勉強は大変だけど、友達も少しだけどできたしね」

「おお~~、そっか。それはなによりだな」

「でもね、僕はやっぱり健人くんや翔くんと一緒にいた時の方が、何倍も楽しかったよ」

「っんな~、ダチいっぱい作ればいいじゃねぇか」

「まあね。自然に任せてるんだ」

「そっか」


ほどなくして、アパートに到着した。

おお・・これは・・アパートと言うより・・マンションだわ。


「ここの二階なんだよ」

「そっか」


部屋は203号室だった。


「さ、どうぞ」


東雲さんに促され、私たちは部屋に入った。

思った通りだわ・・お洒落な部屋だわ・・綺麗にしてるなぁ~

間取りは2DKだったが、ダイニングが広くて、狭さは感じなかった。


私たちは六畳の洋室の居間に置いてある、ソファに座った。


くつろいでね。今、コーヒー淹れるからね」

「あんま気、使うなって」

「使ってないよ~。コーヒーくらいしかないんだ」


東雲さんはそう言って、キッチンへ行った。

白のカーテンが、風に揺れていた。

それにしても綺麗だわ・・


「和樹~!由名見は元気にしてるのか」

「ああ。うん。元気だよ」

「将来、結婚したら医者と看護師だな」

「あはは。健人くん、気が早いね」


そう言いながら、東雲さんはコーヒーカップをトレーに乗せて戻ってきた。


「はい、どうぞ」

「ありがとな」

「ありがとうございます~」

「ところで、健人くん」

「なんだよ」

「モデルの方はどう?」

「ああ、まあ、ぼちぼちな・・」

「しかし、最初聞いたときは驚いたよ。まさか健人くんがモデルなんてね」

「華子と亮介のために受けたんだよ」

「うん、そうらしいね」


うわあ~~・・それ・・私の策略だったんですけどぉ・・


「俺、自分に合ってねぇって、受けたこと後悔したんだけどさ」

「うん」

「でも、辞めるってなったら、華子の顔を潰すことにもなるし、んで、マジでウゼェモデルがいてな。俺、そいつに負けねぇって思って、続けることにしたんだよ」

「へぇーそうなんだ」

「そいつ、奥寺ってやつでな、元ホストらしいぜ」

「え・・奥寺って、下の名前はなんていうの?」

「下の名前・・?なんだったけな・・」

「あの・・直哉って言ってましたけど・・」

「ああ、そっか。直哉だ、直哉」

「えっ・・奥寺直哉?」


そこで東雲さんの顔色が変わった。


「なんだよ、和樹」

「僕、奥寺のこと知ってるよ」

「えっ!マジかよ!」

「僕と同じ店で働いてた人だよ」

「なにっ!あっ!華子が言ってた、後から来てNo.1になったやつって、和樹だったのか!」

「それはどうか知らないけど、奥寺・・あ、源氏名はジョーっていうんだけど、ジョーは何かにつけて僕に突っかかってきたんだよ」

「げっ・・ジョーって・・奥寺だったのかよ!」

「うん。それがどうかしたの?」

「いや・・俺、和樹を探し回ってた時、ほら、ラーメン屋でバイトしてただろ。あん時、和樹と同じ店で働いてたホストが来てな、和樹とジョーのこと話してたの聞いたんだよ」

「そうだったんだ・・」

「それで、ジョーがリュウに嫉妬してるって・・」

「そうだったんだね・・」

「そっか・・奥寺ってジョーだったのか・・」

「ジョーは、とても嫉妬深くてね。自分がNo.1だったのに僕に座を奪われて、何度も嫌がらせを受けたよ。だから、健人くんも気をつけた方がいいよ」

「嫌がらせなんかしやがったら、ただじゃ置かねぇ。つか、ぜってー超えてやる。ますます燃えてきたぜ」

「あまり先走らない方がいいよ。マイペースが一番だよ」


そっか・・

奥寺さんって、東雲さんに嫉妬して嫌がらせするような人なんだ・・

これは気をつけないと・・


「それにしても、和樹」

「なに?」

「部屋、めっちゃ綺麗にしてるな」

「うん。そうなんだ」

「お前、こんなに綺麗好きだったか?」

「実は、静ちゃんがコーディネイトしてくれて、時々、掃除もしてくれるんだよ」

「っんだよ、そうだったのか」

「僕だけなら、もう足の踏み場もないと思うよ」


そう言って東雲さんは笑った。

やっぱりなぁ・・

そうなのよ、部屋の雰囲気、女子っぽいのよね。


「そういえば、この間、僕がバイトしてるコンビニに紫苑くんが来たよ」

「へぇー。あいつ元気にしてんのか」

「あはは。紫苑くん、相変わらずだったよ」

「あいつ、T大落ちて、私立行ってるんだよな」

「私立といっても、名門校だけどね」

「和樹は余裕でT大合格したんだから、またなんか、ネチネチ言ってたんじゃねぇのか」

「あはは、まあね」

「はぁ~・・マジでウゼェな」

「でも僕は、紫苑くん好きだよ」

「そっか」

「同時に感謝もしてるんだよ。今の僕がいるのは、ある意味、紫苑くんのおかげだからね」

「確かにそうだな。あいつがいなかったら、和樹は死んでたかも知れねぇもんな」

「あ、よかったら紫苑くんも呼ぶ?」

「え・・あいつ、ぜってー来ねぇぜ」

「健人くん、連絡してみてよ」

「えぇ~~・・俺がかよ」

「そうだよ」


そしてたけさんは、嫌そうに紫苑さんに電話した。


「おう、紫苑。久しぶりだな。ああ、そうだよ、時雨だよ。え・・なにって、電話しちゃいけねぇのかよ。うん、うん、そうだよ。でさ、お前、今日暇か?今、和樹んち来てんだよ。あはは、ちげーよ。んで、おめぇも来ねぇか?へぇ~、恥ずかしいのか。だったら来いよ。えっとな、住所、言うぞ・・・・だ。そうだよ。で、203号室な。んじゃな」

「紫苑くん、来るって?」

「僕はきみたちの友達ではない!とか言っちゃって。俺、恥ずかしいのかって言ったら、なにを言ってるんだ!心外だなって。んで来る気になったみてぇだぜ」

「あはは、まさに紫苑くんだね」

「小春、紫苑来るけど、いいよな」

「はい~、全然、いいですよ~」


ピンポーン


そして三十分が過ぎたころ、紫苑さんが来た。


「どうぞ、入ってね」


東雲さんがインターホンで対応した。


「や・・やあ、きみたち」


部屋に上がってきた紫苑さんは、少し照れたようにそう言った。


「あっ、きみもいたのか」


紫苑さんは私を見てそう言った。


「はい~、どうもお久しぶりです、紫苑さん」

「きみがここにいるということは・・時雨くんと恋仲になったのか」

「恋仲・・まあ・・そうです・・」

「これは驚いた。学園祭で告白したことが功を奏したという訳か」

「紫苑、ごちゃごちゃ言ってねぇで座れよ」

「時雨くん・・きみは相変わらず無礼だな」

「まあまあ。紫苑くん、今コーヒー淹れるから待っててね」

「気遣い無用だ」

「あはは。いいから、いいから」


そう言って東雲さんはキッチンへ行った。


「紫苑、お前、実家から通ってるのか」

「いや、僕も一人暮らしをしている」

「へぇーそうなんだ」

「きみは、相変わらずお兄さんと暮らしているのか」

「兄貴は結婚していねぇよ」

「ほう。じゃ、きみも一人暮らしという訳か」

「そうだよ」

「生活費はどうしているんだ」

「バイトしてるっつーの」

「なるほど。やっと自立したという訳か」

「っんだよ、やっとって。おめぇだってそうだろが」

「それにしても、あの時雨くんに彼女ができたとはな」

「あのってなんだよ、あのって」

「薄柿さんと言ったね。きみはこんな無礼なやつのどこが好きなんだ」

「え・・どこって・・優しくて男らしいところです」

「時雨くん、きみは果報者だ。薄柿さんを手放したらもう二度と次は現れないぞ」

「うるせぇよ!俺は毎日のように告られてんだよ」

「世の中には物好きな女性もいたものだ。信じられないな・・」

「おめぇはどうなんだよ」

「僕はそんなもの必要ない。勉学の邪魔になるだけだ」

「はっ、マジで相変わらずだな。ちょっとは成長しろよ」

「心外だな。成長というのはだな・・」

「はいはい。そこまでね。どうぞコーヒー召し上がれ」


そう言って東雲さんは、キッチンから戻ってきた。

紫苑さん・・ほんとに理屈っぽいわ・・

これじゃ・・彼女作りたくてもできないわよね・・


「紫苑くん、一人暮らししてるって本当なの?」

「そうだが」

「どこに住んでるの?」

「大学の近くだが、それがなにか」

「今度、遊びに行ってもいい?」

「なっ・・なにっ。僕たち学生には遊んでいる暇などないはずだ」

「僕ね、きみと友達になりたいんだ」

「しっ・・東雲くん・・。きみは一体なにを言ってるんだ」

「きみはT大には落ちたけど、頭はいいと思ってるんだよ。それにきみの行動力とか、洞察力には光るものがあるよ」

「くっ・・僕をバカにしているのか」

「まさか。僕は本当にきみから学ぶことがあると思ってるんだよ」

「なっ・・なにを言ってるんだ・・」

「だから、住所、教えてね。行くから」

「しっ・・東雲くん・・きみという人は・・」

「僕に色々と教えてね」

「かっ・・勝手にすればいい」

「おっ!紫苑。俺も行ってもいいか」

「しっ・・時雨くんまで、なにを言ってるんだ」

「私も行ってもいいですか」

「なっ・・薄柿さんまで・・。そうか、これはなにかの策略だな」

「っんな、勘ぐり過ぎだっつーの」

「僕を罠にはめようとしていないか」


そこで私は、みんなに見えないように携帯を手にした。

紫苑さん・・ほんと素直じゃないんだから。

見てらっしゃい。驚かせてあげるから。


「ちょっと待ったらんかぁ~~い!」


私は突然、大声を上げた。

すると、当然のように、東雲さんと紫苑さんは呆気に取られていた。

しかし・・さすがにたけさんは、次に何が起こるのか、期待感を抱いた表情をしていた。


「後でかけなおす!」


私は携帯を耳にあてて、そう言った。


「ぶっ・・あははは!小春~、さすがだぜ」

「あの・・薄柿さん・・?」

「電話がかかってきたのか。それにしてもきみ・・誰かと揉めているのか」

「いえ・・別に・・」

「どんなことで揉めているんだ。もし必要とあらば僕が解決してあげよう」

「いえっ・・電話はかかってきてません・・」

「なにっ!かかってきてないだと!?では今のはどういうことだ」

「どうって・・なんでもありません」

「不可解だな・・。僕のプロファイリングにはない事象だ」

「げ・・そんなんじゃないんですけど・・」

「紫苑、お前、混乱してるな」

「心外だな。混乱などしていない。しかし・・それにしても奇異だ。かかってきてもいない電話の相手に、いや、相手などいなかったのだ。それなのに、ケンカを吹っ掛け、後でかけなおす・・と。一体、誰にかけなおすと言うんだ・・」

「だから・・そうじゃなくてですね・・」

「あはは。考えろ、考えろ~紫苑」

「これは・・新たな研究が必要だな。東雲くん、きみはどう考える」

「え・・僕は、特には・・」

「それではダメだ。不可解な現象には必ず何かが隠されている。それを突き止めなければ危険を放置することになる。であるからして・・」


その後、紫苑さんは、わけのわからない持論を、延々と展開したのであった。


------------------------------------------


※ 文中に出てくるギャグ


「ちょっと待ったらんかぁーい、あとでかけなおす」は、吉本新喜劇、安尾信乃助さんのギャグです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ