表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
PR
56/94

五十六、拘り



設楽さん・・どうしてあんな切ない顔してたんだろう・・

亮介くんも・・若干、言いにくそうにしてたよね・・

亡くなったお兄さんと、関係があるのかな・・


それにしても三人で遊園地って・・

ほんとに大丈夫なんだろうか・・


私は家に帰り、そんなことを考えていた。


それにしても、よ・・

時雨さんったら、華子って呼び捨てにして・・

なによ・・

設楽でいいじゃない・・


そういえば・・時雨さんって遊園地行った時、私のこといきなり小春って呼んだよね。

「お前、小春ってんだろ」って言ってたわよね。

あれよね・・時雨さんって、少しでも親しくなると、下の名前で呼ぶよね。

でも、静香さんのことは「由名見」って呼んでるんだよねぇ・・

そうか・・東雲さんの彼女だからかな・・


ルルル・・


あっ・・時雨さんだわ・・

どうしたのかな・・


「はい、もしもし」

「おう、小春。さっきはありがとな」

「いえ・・」

「今さ、華子と亮介、帰ったぜ」

「そうですか・・」

「なんだよ、お前、元気ねぇぞ」

「そんなことないです・・」

「豚肉のアスパラ巻と、煮物、美味かったぜ」

「そうですか・・」

「高野豆腐って、なんかスポンジ食ってるみてぇだったけどな、あはは」

「そうですか・・」

「小春・・どうしたんだよ」

「時雨さん・・」

「なんだよ」

「なぜ・・華子って呼び捨てにしてるんですか・・」

「はあ?」

「・・・」

「お前、そんなこと気にしてんのかよ」

「だって・・」

「ったく!女ってのは、なんでそんなくだらねぇこと気にすんのかね!」

「くだらねぇって・・」

「くだらねぇじゃねぇか!」

「わ・・私は嫌なの・・」

「はっ、バカじゃねぇのか」


なによ・・バカって・・

私の気持ちなんて、どうでもいいの・・?


「じ・・じゃあ・・私が、クラスメイトの斎藤くんのこと、蒼汰って呼んでも平気ですか?」

「ああっ?斎藤って誰だよ」

「漫画喫茶で会った人です・・」

「てめぇ・・なに言ってんだ・・」

「平気かって訊いてるんです」

「呼びたきゃ呼べばいいだろが!」

「なっ・・」

「苗字だろうが名前だろうが、どうでもいいじゃねぇかよ!」

「わっ・・私にとっては・・どうでもよくないです!そ・・それと・・設楽さんだって・・健人くんって・・」

「あああっ?」

「私は時雨さんって呼んでるのに・・なぜ設楽さんが健人って・・。そんなの・・私、嫌です」

「お前、頭おかしいぞ」

「えっ・・」

「俺、お前がそんなくだらねぇことに拘る、心が狭いやつだと思ってなかったぜ。がっかりだ」

「そ・・そんなっ・・」


ブチッ・・


時雨さんは、突然電話を切った。

ヤダ・・なに・・私が悪いの・・?

がっかり・・って言ってた・・

こっちそこ・・がっかりよ・・

私が嫌だって言ってるのに・・全然わかってくれようとしない・・

普通・・こういうのって・・嫌だよ・・


私・・設楽さんに焼きもち焼いてるのかな・・

葵さんなら・・どう思うんだろう・・

葵さんに会いたいな・・


それから何日も、時雨さんから連絡が来ることはなかった。

朝の通学時も、時雨さんだけ時間を変更していた。


私って・・嫌われちゃったの・・?

あのことだけで・・嫌うものなの・・?

東雲さんも翔さんも、事情を知ってるようだったが、口止めされているのか、私にはそのことを話すことがなかった。



「小春・・王子、どうしたん?」


駅から学校へ向かう途中、美琴がそう訊いてきた。


「王子がいてないのん、これで何日目や?なんかあったんか?」

「別に・・」

「別にって・・そんなことないでありんょ・・」

「なにがあったんや。言うてみ」

「うん・・実は・・」


そこで私は電話でケンカしたことを話した。


「時雨王子・・女心をわかってないでありんすなぁ・・」

「そうでしょ?そう思うよね」

「ほんまや。女子にとって呼び捨てって、特別なもんやがな」

「幼馴染なら、まだしも・・つい、この間、知り合ったのでありんしょ?」

「そうなのよ・・」

「そりゃ、小春は気分悪いでありんしょな・・」

「うん・・」

「まあ・・設楽さんは設楽さんなりに、王子たちに礼を尽くしているのでありんしょが・・ちょっと・・無神経でありんすなぁ・・」

「私・・時雨さんに嫌われちゃったのかな・・」

「っんな、そんなことあらへんって」

「だって・・がっかりだって言われたのよ」

「売り言葉に買い言葉でありんすよ」

「・・・」

「王子って、あれやん?超意地っ張りやん。それだけやって」

「そうなのかな・・」

「小春・・ええか」

「なに・・?」

「ここは、我慢比べや」

「え・・」

「絶対に小春から譲歩したらあかんで」

「でも・・それじゃ・・」

「あかんっ!っんな、甘い顔見せたら、ますます付け上がるで」

「そう・・かな・・」

「嫌やってこと、ちゃんとわからせな」

「そうでありんすな。時雨王子は・・小春がなにも言って来なかったら、我慢できなくなり、向こうが折れるでありんしょ」

「それでいいのかな・・」

「ええねや」


二人の言う通りなのかな・・

そうね・・

そうよ・・!

なにも私が頭を下げることはないわ。



それから二日後・・

私がバイトに入っていたら、お兄さんがきた。


「小春ちゃーん」

「お兄さん、こんにちは~。お仕事帰りですか?」

「うん、まあな」

「今日は、設楽さん、お休みですけど」

「あはは。なんだよ、それ」

「いや・・設楽さんに会いに来たんじゃないんですか」

「ちげーよ」

「そうですか・・」

「あのさ、小春ちゃん」

「はい」

「バイト、何時に終わるんだ?」

「えっと・・もうすぐ終わりますけど・・」

「そっか。じゃ、俺、外で待ってるからな」

「え・・なんですか・・」

「うん、ちょっとな」


そう言ってお兄さんは、店の外に出た。

なんだろ・・話でもあるのかな・・

時雨さんのことかな・・


やがてバイトが終わり、私は店を出た。


「お兄さん、お待たせしました」

「おう。お疲れさま。んじゃ歩くか」

「はい・・」


そして私は自転車を押しながら、お兄さんと並んで歩いた。


「お兄さん、どうしたんですか?なにか話でもあるんですか」

「なあ、小春ちゃん・・」

「はい・・」

「華ちゃんのことな、わかってやってくれねぇか」

「え・・」

「小春ちゃんも知ってると思うけど、俺たち兄弟は親に捨てられて、ずっと二人で暮らしてきた。華ちゃんの場合は事情が違うとはいえ、親がいねぇことに変わりはねぇんだよ」

「は・・い・・」

「俺は高校も行かず、ずっと健人を一人で養ってきた。未成年のガキが働いて稼ぐってことが、どれほど大変か、小春ちゃん、わかるか?」

「いえ・・」

「華ちゃんは大学へ通いながら、コンビニでバイトしてモデルもやって、亮介を養ってる。その苦労がわかるか?」

「・・・」

「俺はな、その苦労が嫌というほどわかるんだよ。健人だって同じだぜ。俺が汗水たらして働いてきたのを見て知ってるんだからな」

「・・・」

「小春ちゃんは、俺と華ちゃんのこと心配してるみてぇだけど、そんな心配いらねぇよ」

「え・・」

「俺は葵ちゃんが好きだ。これは一生変わらねぇよ」

「でも・・設楽さんはお兄さんのことが好きですよ・・」

「華ちゃんは、俺にとって妹みたいなもんなんだよ」

「妹・・」

「だから、華ちゃんを女として見るのは無理なんだよ」

「そうなんですか・・」

「だから小春ちゃん、もう心配すんなよ」

「はい・・」

「それと、華ちゃんとうまくやれよ?同じ職場で気まずいのは、辛れぇからな」

「はい・・」

「あっ、小春ちゃん、健人とケンカしたんだってな」

「え・・まあ・・」

「あはは、そりゃ付き合ってりゃ、ケンカもするさ」

「でも時雨さん・・私のこと、がっかりしたって言ってました・・」

「名前のことか」

「はい・・」

「そこは俺も、健人と同じだな。どう呼ぼうがどうでもいいことだろ?」

「はぁ・・」

「小春ちゃんは、あれだな。華ちゃんに先を越されたことで焼いてんだな」

「えっ・・」

「小春ちゃんも健人って呼べばいいじゃねぇか。「くん」を付けないでさ」

「・・・」

「健人だって小春って呼び捨てにしてるだろ?」

「はい・・」

「んじゃ、またな」


アパートの近くまで来て、私たちは別れた。

たけひと・・か・・

なんか・・恥ずかしいな・・

よーーしっ、今度会ったら、健人って言ってやる!


でも・・会うって、いつ会うの・・?

連絡ないし・・でも私から譲歩するなって美琴たちは言ってたし・・

はぁ~~・・どうすればいいのかな・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ