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三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
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49/94

四十九、兄ちゃん



ルルル・・


え・・なに・・?電話・・?

嘘ぉ~~・・今何時なの・・

時計を見ると、朝の六時だった。


ええ~~・・誰よ・・こんなに早く・・

画面を見ると、時雨さんからだった。

え・・なにかあったのかな・・


「はいっ、もしもし」

「おう、小春、起きてたか~」

「なにかあったんですか!」

「あはは、なんもねぇよ」

「え・・こんなに早く、一体どうしたんですか」

「あのさ、俺、合宿行ってくるから」

「え・・合宿・・?」

「うん。塾の合宿な」

「え・・いつから行くんですか」

「今からだよ」

「えええええ~~~!そんなの聞いてないですよ~~」

「言わなかったんだから、当然だろ」

「なんで言ってくれなかったんですかぁ~」

「だってさ、合宿行くなんて言ったら、お前また、私のせいでぇ~勉強がぁ~疎かになったからですねぇ~とか、言うじゃん」

「なっ・・モノマネしましたね・・」

「あはは。んじゃ、そういうことだから」

「えっ!今、家ですか?」

「いや、もう駅だぜ」

「げ~~~!ひっどーーい!」

「あはは。向こうで電話すっからな」

「ちょ・・ちょっと待ってくださいよ~~」

「なんだよ」

「いつ・・帰ってくるんですか・・」

「正月明けてからだよ」

「えええええ~~~~!そんなにっ?ヤダ~~一週間もあるじゃないですかぁ~」

「ほら~、そんな風に言うだろ。だから言わなかったんだよ」

「あの・・勉強、遅れてるんですか・・?」

「遅れてねぇよ。今から行く塾、俺、相性いいんだよ。んで、合格を確実にするためにな。念のためだよ」

「そうですか・・。わかりました。我慢します。時雨さんの合格のためですもんね。わっかりました~~」

「お前、風邪ひくなよ」

「時雨さんも。気をつけて行ってらっしゃい」

「ああ。んじゃな」


そう言って電話は切れた。

なによ・・

少しくらい言ってくれてもいいのに・・

今だって・・ここに来てくれたらよかったのに・・

ううう・・急に淋しくなってきた・・


一週間かぁ・・長いなぁ・・

え・・正月明けってことは・・ヤダ~~初詣、一緒に行けないじゃない~~

でも・・わがまま言っちゃダメよね・・

受験が終わったら、思いっ切りデートするんだからね~~!



それから二日後・・


「薄柿さん・・」


バイト中、私は設楽さんに声をかけられた。


「はい、なんですか」

「あの・・バイト終わったら・・ちょっと一緒に行ってくれないかな・・」

「え・・どこへですか」

「時雨さんのお家に・・」

「え・・時雨さんの・・?」

「うん。亮介がね・・真人さんに会いたいって言ってるの」

「そうなんですね~、いいですよ~」

「よかった。ありがとう。じゃ、よろしくね」

「はいっ!」


そっか~~・・亮介くん、亡くなったお兄さんに会いたい気分なんだろうなぁ・・

それにしても、設楽さん・・少し表情が明るくなった気がする・・

亮介くんが、立ち直りかけてるのかな・・


そしてバイトも終わり、私と設楽さんは時雨さんちへ行くことになった。

店の外では亮介くんが待っていた。


「亮介くん、こんにちは」

「あ・・どうも・・」

「胸の痛みはどう?」

「はぁ・・特に痛くないっす・・」

「そうなんだ。設楽さん、よかったですね」

「うん。ありがとう」

「あ・・でも、お兄さん帰ってるのかな・・」

「え・・まだお仕事中なの?」

「うーん、帰ってくる時間は、まちまちみたいで、早ければもう帰ってると思うんですけど」

「そうなのね・・。帰ってなかったら、外で待たせてもらうわ」

「あ、よかったら私のアパートへ来てくださいよ」

「え・・」

「私のアパート、時雨さんのアパートの隣なんですよ」

「そうだったの・・」

「はい~」


やがて私たちは、時雨さんちへ着いた。


「こんにちは~」


私はそう声をかけたが、中から返事はなかった。

やっぱり帰ってないのかな。


「いないみたいね・・」

「そうですねぇ~」


「おお~~、小春ちゃーん」


そこに、ちょうどお兄さんが帰ってきた。


「あっ、お兄さん~!おかえりなさい~」

「小春ちゃん、健人な・・塾の短期合宿へ行ってんだよ。だからいねぇんだよ。ごめんな」

「あっ、知ってます~。えっと、今日は時雨さんに用じゃなくて・・設楽さんたちがお兄さんに会いに来たんです」

「そうなのか。こんにちは、亮介くん、設楽さん」

「こ・・こんにちは・・」


亮介くんは、とても照れくさそうに挨拶をした。


「突然、すみません・・。それと先日は大変お世話になりました・・」

「いいえ。よく来てくれました。さっ、どうぞ」


そしてお兄さんは玄関の鍵を開けて、設楽さんたちに入るよう促した。

私もついでに上がらせてもらった。

というか・・設楽さんに引っ張られて入った。

設楽さんと亮介くんは、ちゃぶ台の前に座った。

お兄さんは台所へ行った。


「お兄さん、お手伝いします」


私はそう言って、お兄さんの横に立った。


「ありがとな。んじゃ、お茶淹れるから、持ってってくれな」

「はーい」


そして私はお盆に湯飲みを乗せ、二人にお茶を出した。

そこにお兄さんもきた。


「亮介って呼ぶぞ。亮介、ケガの方はどうだ?」

「うん・・もう痛くないよ・・」

「そうか。そりゃよかったな」

「あの・・俺は、なんて呼べばいいかな・・」

「俺か?なんでもいいぞ。兄ちゃんでも、兄貴でも、真人でも、なんでも」

「そっか・・じゃ、やっぱり兄ちゃんで・・」

「うん、それでいいぞ」

「あの・・私は、真人さんとお呼びしてもいいでしょうか」

「はい。なんでもどうぞ」


そう言ってお兄さんは、優しく微笑んだ。


「あんまり緊張しないでくれよ。何でも話していいからな、亮介」

「うん・・」

「あの・・これ、兄なんです・・」


そう言って設楽さんは、一枚の写真を差し出した。


「おっ・・、これがお兄さんですか・・」


お兄さんは、写真を見て驚いていた。

私も横から写真を覗きこんだ。

すると・・まるで時雨さんのお兄さんじゃないかと思えるほど、設楽さんのお兄さんはそっくりだった。

これほど似ているなんて・・

そりゃ・・亮介くんが会いたがるのも無理はないわ・・


「私も亮介も、兄が大好きでして・・。特に亮介は兄と年が離れていますので、亮介が小さい頃からとてもかわいがっておりました。亮介はいつも兄の傍から離れず、甘えてばかりいました」

「そうですか・・」

「父は、亮介が生まれて間もなく亡くなりましたが、兄が父親代わりに亮介を面倒見てくれましたので、この子は淋しい思いをせずに済みました・・」

「そうですか。とてもいいお兄さんだったんですね」

「はい。あ・・なんかこんな話・・つまらないですよね・・」

「そんなことないですよ。気にしないでください」

「あの・・」


そこで亮介くんが口を開いた。


「なんだ、亮介」

「兄ちゃん・・俺と一緒に写真を撮ってくれないかな・・」

「おお、いいぞ!んじゃ、俺の横に来い」

「うん」


そして二人は並んで写真を撮っていた。


「うーん、もう一枚だな」


そう言ってお兄さんは亮介くんの肩を抱き、もう一枚撮った。


「よしよし、これでいいな」

「兄ちゃん、ありがとう」

「っんな~、なに言ってんだよ。写真くらい何枚でも撮ってやるからな」

「どうもありがとうございます・・」


設楽さんもお礼を言った。


「なんの。んで、亮介は高校へ行くのか」

「え・・」

「お前、中三だろ」

「うん・・」

「もうすぐ受験じゃねぇか」

「でも・・俺・・ずっと勉強やってないし・・無理だと思う・・」

「あはは、そんな心配すんな。うちの弟いるだろ。健人。あいつ昔は超バカでな。0点なんてざらだったんだぞ」

「え・・」

「でもな、必死になって勉強して、E高校へ行ってるんだぞ」

「えっっ!E高校って・・超進学校だよ?」

「うん。あいつにもできたんだ。亮介にだってできるさ」

「そ・・そうなんだ・・0点だったのに・・E高校・・す・・すごいな・・」

「亮介・・今からでも遅くないから、勉強して進学しなさい」

「姉貴・・」

「そりゃE高校なんて無理だけど、高望みしなければ進学できるのよ」

「そうかな・・」

「あっ!そうだ。今日はいねぇけど、ここに和樹ってやつも住んでてな。そいつ、超秀才でな。健人よりもずっと優秀。そいつに勉強みてもらえよ、亮介」

「え・・いいの・・?」

「あはは、かまわねぇよ。よし、俺から頼んでやるからな。それと健人が合宿から帰ってきたら、健人にも教えてもらえよ。それでいいな」

「う・・うんっ。兄ちゃん、ありがとう」

「あはは。いいってことよ!」


亮介くんの様子を見ていると、もうバカなことはしないってわかる・・

お兄さんを見つめる目が、輝いているもん・・

よかったね・・亮介くん、設楽さん・・


「そういえば・・設楽さんの下の名前ってなんていうんですか?」


私がそう訊ねた。


「あ・・私、華子(はなこ)っていうの」

「わあ~~かわいい名前ですね~」

「おお~~華ちゃんですか。んじゃ、これからは華ちゃんって呼びますね」

「あ・・はい・・」

「んー・・ってか、敬語もやめるか。もうダチ語で話すけど、いいか?」

「はい、ぜひ、そうしてください」

「っんな~、華ちゃんも敬語、やめようぜ」

「え・・でも・・」

「いいからさ。気楽に行こうぜ、気楽にな」

「あ・・うん・・」


え・・設楽さん・・

なんか・・ちょっと・・

いや・・私の考えすぎかな・・

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