四十八、最高のプレゼント
私は家に帰り、時雨さんのために買ったクリスマスプレゼントを、原宿に忘れてきたことに気がついた。
しまった~~~・・ガラの悪い男性に向かっていった時、その場に置いたんだったわ・・
もうとっくに・・誰かが持ち帰ってるよね・・
しまったなぁ・・
結構・・高かったんだけどな・・
仕方がないか・・もう一度、買うしかないよね。
あ・・でも・・とりあえず、探しに行けばいいかな・・
でもな~・・探すって言ったって・・探しようもないよね・・
しかも・・明日はイブだし・・私、バイトだし・・
ルルル・・
あっ・・電話だ・・
え・・誰・・?この番号、知らないな・・
「もしもし・・」
私は恐る恐る電話に出た。
「あの・・薄柿さんですか」
「あ・・はい、そうですけど・・」
「今日、クリスマスプレゼント買ってもらった、雑貨店の者です」
「ああ~~、どうも~」
「きみ、プレゼント忘れて行ったよね」
「あ、はい、そうなんですよ」
「それ、俺が預かってるよ」
「ええっ!そ・・そうなんですか!」
「ところできみ、今日、凄かったね。俺、見てたんだよ」
「えっ・・そうなんですか・・」
「で、男の子は、どうなったの?」
「ああ・・ろっ骨が折れてましたけど、無事です」
「そっか。よかったね。きみ、救急車に乗って行ったから、俺が預かったんだよ」
「そうだったんですか~!ありがとうございます!でも・・明日も明後日もバイトだし・・えっと、どうしようかな・・」
「俺が届けてあげるよ」
「え・・でもっ・・」
「きみが取りに来る頃には、クリスマス終わっちゃうよ?明日イブだよ?」
「そ・・そうなんですけど・・」
「宅配便で送ったところで、もう間に合わないよ」
「でも・・それでは・・悪いし・・」
「いいから。俺のお詫びも兼ねて、届けてあげるよ」
「え・・お詫び・・?」
「ほら・・彼のこと・・」
「あ・・ああ~~・・そんな、いいですよ・・」
「いいんだって。で、最寄りの駅、教えてくれる?」
「あ・・はい・・」
そして私は最寄りの駅を教えた。
「それで、バイトは何時に終わるの?」
「四時です・・」
「そっか。んじゃ四時半に駅前で待ってるね」
「はい・・すみません・・」
そして電話を切った。
よかったぁぁ~~~・・まさか預かってくれてたなんて・・助かったわ・・
でも、あの店員さん、いい人だな・・
そして翌日、バイトを終えて、私はすぐに駅前へ向かった。
プレゼントを受け取って、そのまま道場へ行けるわ。
今日も、頑張るぞ~~~!
するとほどなくして、店員さんが改札口から出てきた。
「あ、どうも、わざわざすみません」
「こんにちは。昨日は、お買い上げ、ありがとうございました」
店員さんは、冗談交じりにそう言って笑った。
「あ、俺、山田二郎です。ものすごくふつーの名前でしょ」
「あ、いいえ~、そんな」
「んで、これね」
そう言って山田さんは、プレゼントを袋の中から出してくれた。
「あ、どうもありがとうございます。おかげで間に合いました」
「今から彼と会うの?」
「いいえ、今から道場へ行くんです」
「道場?」
「私、合気道習ってて・・」
「あっ!そうか~~!それできみ、あんなにすごかったんだね」
「あはは・・でも、彼に叱られました・・」
「どうしてなの?」
「無茶すんなって・・」
「ああ~~・・なるほど。確かにそうだよね。彼としちゃ、心配になるよね」
「はい・・」
「きみ・・彼に愛されてるんだね」
「え・・」
「いい人だね、彼」
「はい・・とてもいい人です。男らしくて・・優しくて・・かっこよくて・・」
「あはは。ごちそうさま。もうその辺でいいよ」
「あっ・・すみません・・私ったら・・」
「小春・・」
私たちが親しげに笑いあっていたら、そこに時雨さんが通りかかった。
「あ、時雨さん」
「お前・・なにやってんだよ」
時雨さんは山田さんを見て、少し不機嫌になった。
「あ・・写真の彼だね!」
「はああ?お前、誰だよ」
「ちょ・・ちょっと待って・・時雨さん。説明するから・・」
そして私は原宿でプレゼントを買ったことと、それを山田さんが届けてくれたことを話した。
「そうか・・」
「実物・・写真よりも何倍もイケメンだね」
「うるせぇよ」
「時雨くんか・・」
「なんだよ」
「きみ・・彼女に愛されてるよ」
「はああ?」
「俺さ、きみのこと知らずにディスったんだよ。そしたら、私の彼のことを侮辱しないで!って、そりゃもう、すごい剣幕で」
「や・・山田さん・・」
「じゃ、俺は行くから。原宿に来たら、二人で寄ってね」
「あ、はい。どうもありがとうございました」
そして山田さんは、人混みの中へ消えて行った。
「小春・・こんなところで、あんなチャラ男と話してんじゃねぇよ」
「でも、わざわざ届けてくれたんですよ」
「そりゃそうだけどよ・・」
「で・・これ、私からのプレゼントです」
そう言って私は包みを時雨さんに渡した。
「俺・・なんも買ってねぇぞ・・」
「そんなのいいんですよ~。私、お世話になりっぱなしなんですから~」
「なんか・・わりぃな・・」
「開けてくださいよ~」
「あ・・ああ・・」
そして私たちは近くのベンチに座った。
包みを開けて、時雨さんはとても嬉しそうにしていた。
「被って見せてください~」
「うん・・」
そして時雨さんは帽子を被った。
「きゃ~~~素敵~~~!すごく似合ってます~~」
「そ・・そうか・・」
「やっぱりかっこいいです~~、時雨さん」
「なに言ってんだよ・・」
ほんとにかっこいい・・
すごく似合ってる・・
ああ~~・・久しぶりに失神しそうだわ・・
「小春・・」
「はい~?」
チュッ・・
時雨さんは帽子で私たちの顔を隠した。
「俺からのプレゼントだ」
そして時雨さんは、また帽子を被った。
「はい・・ありがとうございます・・。最高のプレゼントです・・」
「そっか・・」
「手袋もつけてくださいね」
「小春・・ありがとな。大事にするよ」
「はい」
「お前、今から道場か?」
「はい~ひと汗かいてきます~」
「そっか。頑張れよ」
「はい~では、行ってきま~す!」
そして私は自転車を走らせ、道場へ向かった。
私のプレゼントなんかより、時雨さんのプレゼントの方が、何倍も何百倍も最高だわ・・
帽子で顔を隠してくれたこと・・思わずキュンってなっちゃったな・・
もう~~時雨さん・・粋なことするんだから~~
きゃ~~~~!
どやさ~~~どやさぁぁぁ~~~!




