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三人王子と三匹の子ブタちゃん  作者: たらふく
45/94

四十五、とんでもない誤解



それから数日後・・

私はいつものようにバイトに入っていた。


もうずいぶん寒くなったなぁ。

もうすぐクリスマスか・・

ケーキの予約とか結構あるんだよね。


冬休みに入ると、時雨さんはますます受験勉強しなくちゃいけないし、デートどころじゃないよね。

我慢・・我慢・・

受験が終わるまでは、我慢するのよ・・小春。


「小春ちゃーん」


あっ!お兄さんだ。

わあ~~珍しいな~~


「お兄さん、お仕事帰りですか?」

「うん、まあね」

「わあ~~来てくださって嬉しいです~」

「頑張ってるみてぇだな、小春ちゃん」

「はいっ!」

「肉まんくれねぇか」

「あっ、はい!おいくつですか?」

「そだな~、健人と和樹、よく食うから、六つもらおうかな」

「はい!少々お待ちください」


そっか~。

時雨さんと東雲さんに差し入れするのね~。

優しいなぁ~・・お兄さん。


「薄柿さん、肉まん、後で補充しといてね」


設楽さんが奥から出てきて、そう言った。


「あ、はい」


そこで設楽さんは、お兄さんを見て、少し驚いた表情を見せた。

え・・なんだろ・・

知ってるのかな・・


「お兄さん、お待たせしました。肉まん六つです。どうぞ」

「ありがと。んじゃ、またな」


お兄さんはレジを済ませ、店を出て行った。

その後姿を設楽さんは、じっと見つめていた。

設楽さん・・どうしたのかな・・

若干、切なげなんだけど・・


「設楽さん・・」

「え・・?あ、なに?」

「さっきの人・・知り合いですか?」

「あ・・いいえ、知らない人よ」

「でもなんか・・設楽さん、様子が変でしたけど・・」

「ま・・まさか。余計な詮索しないで」

「はぁ・・すみません」


いや・・さっきの設楽さんは確かに変だった。

でも知り合いじゃないって言ってたし・・

そもそも知り合いなら、時雨さんのことだって知ってるはずだけど・・時雨さんのことは知らなかったし、時雨さんも設楽さんを知らなかったし・・

どういうことなんだろう・・

ま・・いっか。


「あの・・薄柿さん・・」

「はい、なんですか」

「さっき・・お兄さんって言ってたわよね」

「え・・ああ、さっきのお客さんのことですね」

「うん」

「あの人、私の彼のお兄さんなんですよ」

「そうなの・・」

「それが、どうかしましたか?」

「ううん、なんでもない」


なんでもないって・・

そんなはずないよ・・

なんでもないのに、わざわざそんなこと訊いてくる?


「亮介くんは、その後、どうですか」

「相変わらずよ」

「そうですか・・」

「高校にも行かないって言うし・・かといって、働く気もないみたいだし・・まったく・・どうしようもないわ」

「そうなんですね・・」

「あなたはなぜ、一人暮らししてるの?」

「あ・・えっと・・父の転勤で、両親はアメリカへ行ったんです」

「へぇー」

「で・・私は行きたくなくて・・それで」

「そうなの。それで彼があなたを・・」

「はい。でも、もう迎えには来ません」

「どうして?」

「私、自分の身くらい自分で守らなくっちゃって思って、合気道習ってるんです。その技を彼に掛けたら納得してくれて」

「あなたが彼を倒したってわけ?」

「あはは。そうなんです」

「へぇー、すごいわね」

「彼、受験生だから、私のために時間を取らせたくなくて・・」

「そうなのね。あなた、強くなったわね」

「そうですか~!設楽さんにそう言ってもらえると、私、嬉しいです~」


私がそう言うと、設楽さんは初めて優しい笑顔を向けてくれた。

わあ~~・・なんて綺麗な笑顔なんだろう・・

女優さんみたいだな・・いいなぁ~~・・


「設楽さんって・・年はおいくつなんですか」

「十九よ」

「えええ~~!わかっ!」

「そうかな」

「いや・・とてもしっかりされてるので・・二十歳は超えていると思ってました」

「まあ、よく言われるけど」

「モデルもされてるんですよね」

「うん」

「雑誌ですか?」

「うん。あまり有名じゃないけどファッション雑誌よ」

「そうですか~。今度、見せてください~」

「そんな、見せるほどの物でもないわよ」

「いやいや~~ぜひぜひ」

「さっ、そんなことはいいから、仕事よ」

「はい~」


ファッション雑誌かぁ~~・・いいなぁ~~・・

憧れちゃうな・・

設楽さんって、こうやって話すといい人だな・・

以前、私に冷たかったのは、仕事人としてしっかりしてほしかったからなんだよね・・

今はそれがわかる・・


「小春~」

「あっ!美琴ぉ~紬ぃ~」


店に二人がやってきた。


「制服、似合ってるやん~」

「二人とも、どうしたの?」

「それやがな~。泊まりに来たで」

「えええ~~!そうなんだ。嬉しい~」

「来店したからには、買い物をするでありんすよ」

「そうなんだ。ありがとう。あと少しで終わるからね」


そして美琴と紬は、店内を見て回っていた。

二人とも、私のことを気にかけてくれてるんだな・・

嬉しいな・・


やがて二人がレジに来た。


「わあ~、たくさん買ってくれるんだ~」


籠の中には、お菓子、アイス、ジュース等々・・たくさんの商品が入っていた。


「あったり前田のクラッカーやがなっ!」

「あはは。ありがとうございます~」


バーコードリーダーでチェックしていると、見覚えのない箱が出てきた。

ん・・?この箱はなんだろう・・

新しいお菓子かな。


ピッ・・


「えっと・・全部で二千五百三十円です」

「はーい」


美琴がそう言って、三千円を出した。


「四百七十円のお返しです。ありがとうございました」

「ほな、私ら外で待ってるわな。終わったらすぐに来てや。アイスあるし」

「うん、わかった」


そして二人は店の外へ出た。


「薄柿さんのお友達?」


設楽さんがそう訊いてきた。


「はい。学校の同級生です」

「泊まりに来てくれたのね」

「はい~」

「あまり、羽目を外さないようにね」

「はい~、わかりました」

「私の言ってる意味、わかってる?」

「え・・はい・・」

「あなたたち、まだ高校生なんだから、それを自覚しなさい」

「は・・はい・・」


なんだろ・・

意味って・・なに・・?


やがてバイトも終わり、私は外へ出た。


「美琴~、紬~」

「おお、来たか。ほなはよ行こ。アイスが溶けるわ」

「じゃ、私、自転車だから、先に行って冷やしておくね」

「うん、わかった~」

「小春、あまり慌ててはいけないでありんすよ~」

「わかった~」


そして私は自転車を走らせ、アパートの前に着いた。


「おお~小春、今帰りか」

「あっ、時雨さん~」

「今日もお疲れさま」

「今からお風呂ですか」


時雨さんが入浴グッズを持っていたので、そう訊ねた。


「うん。お前、ちゃんと晩飯食えよ」

「あっ、今から美琴たちが来てくれるんです」

「へぇーそうなのか」

「で、こんなに買ってくれて」


そこで私は袋の中身を時雨さんに見せた。


「へぇーマジでたくさんだな」

「でしょ~」

「え・・」


突然、時雨さんが袋の中身を見て驚いた。


「なんですか?」

「お前・・これ・・」

「え・・なんですか」

「な・・なにって・・」

「え・・?」


私は袋の中を覗いてみた。

なんか変な物、入ってたかな・・

別に・・ないけどなぁ・・


「これさ・・お前、なにか知ってんのか」


時雨さんは箱を指してそう言った。


「え・・これってお菓子でしょ」

「は・・はああ?」

「違うんですか」

「ばっ・・バカっ!」

「え・・」

「風呂行ってくる!」


そう言って時雨さんは、お風呂へ行った。

え・・なに・・今の・・

あっっ!アイスが溶ける~~~!


私は急いで部屋に入り、冷凍室にアイスを入れた。

それにしても、時雨さん・・なんだったんだろう・・

私はその箱を手に取り、改めて見てみた。


チョコレート・・?違うな・・

えっと・・


「小春~」


あっ、美琴たちだ。


「はーい」


私は急いでドアを開けに行った。


「どうぞ~~入って~~」

「お邪魔しまんにゃわっ」

「なによ、それ」

「まあ、ええがな」

「お邪魔するでありんす~」


そして私は、座卓にお菓子を並べた。


「あっ、そうだ。ねぇ、この箱ってなに?」

「小春・・それを知らないでありんすか」

「やっぱりな~。そうやと思たわ」

「えっ・・これってなんなの?新しいお菓子?」

「あはは、お菓子ってか。ちゃうちゃう」

「さっきね、時雨さんに会って、この箱見てすごく驚いてたのよ」

「げ~~~~!王子に見せたんかいなっ!」

「なんと・・。で、時雨王子はなんと言ってたでありんすか」

「バカっ!って言われちゃったんだけど・・」

「あははは!ああ~~おもろい~~」


美琴はお腹を抱えて笑っていた。


「ねぇ、なんなのよ、この箱」

「開けてみるか?」

「美琴・・それはあまりにも刺激が強すぎるでありんすよ・・」

「あはは、そうやな」

「もう~~なんなのよ!」

「小春・・それは・・コンドウさんでありんす」

「コンドウさん・・?なによ、それ」

「コンドーですっ!」

「なに言ってんのよ、美琴・・」

「その・・男性用の避妊具でありんす・・」

「え・・ええええええ~~~~!嘘でしょ~~~!」

「あははは~~小春・・あかん・・あんたおもろ過ぎる~~」

「ちょ・・ちょっとおおおお~~~!ヤダ~~私、時雨さんに・・見せちゃったじゃないの~~!」

「そら、王子もびっくりやな」

「ヤダ~~私が買ったと思われてるじゃない~~!っていうか・・美琴と紬・・どうしてこんなもの買ったのよ!」

「そら~~小春のためやん?」

「なんで私のためなのよっ!」

「事に至るのは・・突然ラブストーリーでありんす・・」

「いや、それを言うならラブストーリーは突然に、や」

「ああいったことは・・突然訪れるものでありんす。その時に、これがなかったらダメでありんしょ」

「まったく~~~!そんなことないって言ってるでしょ!」

「小春は、まだ高校生でありんす・・。避妊はしないと、でありんすよ・・」

「紬だって高校生じゃない・・」


まったく・・この二人には・・ほんと、参っちゃうわ・・


「あれ・・小春、これってバランスボールやんか」


美琴がバランスボールを見つけて、そう言った。


「うん」

「買ったん?」

「うん、買ったの」

「なんでまた」

「あのね、実は・・」


そこで私は、合気道を習っていることと、その動機も話した。


「ええええ~~~!小春が合気道ってか!」

「あら~~・・これは意外でありんしたな」

「でね・・私、この間、時雨さんを倒したのよ」

「なにっっ!まっ・・まさか・・。ついに王子は我慢でけんようになったか・・やっぱり十八やしなぁぁ・・しゃあないか・・」

「やはり・・コンドウさんを買って、正解でありんしたな・・」

「違うぅぅぅ~~~!時雨さんはそんな人じゃないの!私が襲ってって言ったの!」

「ぎゃ~~~!小春っっ!大胆にも程があるっちゅーーーねんっ!」

「やはり・・コンドウさんを買って正解でありんした・・」

「もう~~!違うんだったら~~!」


この二人・・絶対わかってるよね・・

わざと言ってるよね・・


あ・・そうか・・

だから設楽さん・・「羽目を外さないように」って・・言ってたんだわぁぁ~~!

ひぃ~~~、誤解されてる~~!



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※ 文中に出てくるギャグ


「お邪魔しまんにゃわ」は、吉本新喜劇、井上竜夫さんの挨拶ギャグです。

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