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〜トラブルは旅の友〜


◾️

 シェリアラはかつての友が差し出した手紙に火にかけ燃え尽きる様を茫然と眺めていた。


 まさか、この手紙がこの手に届いて間もなく、息子が冒険者を家に連れてくるなんていう偶然が起きるなど思いもしなかったのだ。


 しかも、その冒険者はかつて冒険を共にした仲間と同じ、転生者であった。


 あまりにも出来過ぎた流れは、奇跡と呼ぶよりも神の悪戯のようにも思えた。


 敬虔なオルフェリア教徒ならば、「聖母オルフェリアの奇跡に感謝を…」などと感激したところだろうが、シェリアラは元々信仰心などなかった。得てして冒険者はそういうものだ。


 心に沸くのは奇妙な縁によって手繰り寄せられたという不可解な気持ち悪さ。

 もっと言えば都合が良過ぎる展開に猜疑心が勝ってしまうのである。


 しかし、もう賽は投げられた。後は野となれ山となれといったところだ。

 結果は近日中に出るのだから。


 ノックの乾いた音が三度響き渡る。


 時間はぴったりだ。こういったところも非常に似ている。


(時間通りに現れるところは転生者特有なのかしら?)


 正確な時間を知る術を持たない人々と違って、律儀に時間を守る来訪者に苦笑する。


 シェリアラは席を立ち、入り口の扉を開いた。

 そこには珍しい緑色の髪に丈の短い赤いジャケットを羽織った青年と金髪で長身、色黒で筋骨隆々な女性戦士が待ち構えていた。


「来たわね。それでは改めて依頼を確認するわ。」


 シェリアラはエプロンのポケットから昨日二人に見せたペンダントを取り出すとアレックスと名乗った青年に手渡す。


「1つ、このペンダントを魔女に渡し、相手の反応を持ち帰ること。」


 アレックス、勇者は頷いた。


「2つ、報酬は金貨の換金先の紹介。3つ目はダブルサイドクエストとして、ハリエラ草の採取を追加クエストとすること。いいわね。」


「ああ、OKだ。」


(OK…ね。その言葉もこの世界にはない言葉。了解って意味だったかしら?)


 勇者が収納インベントリーを開いた時、シェリアラは待ったをかける。


「それはあなたが首から下げていて頂戴。」


 勇者は小首を傾げたが、言われた通りペンダントに首を通し、胸元には幾何学的な模様のチャームが輝いた。


「これでいいのか?」


「ええ、OKよ」


 シェリアラがいたずらっ子のように笑った横で、ゴルドラはOKの意味が分からず、困惑していた。


 勇者はきょろきょろと辺りを見渡し、シェリアラ越しに店の奥をのぞき込もうとする。


「なあ、エリックはどうしたんだ?」


 昨日あれだけ大声で喚き散らしていた本人の姿が見えないのは正直心配になる。そんな勇者に対し、シェリアラは笑って答える。


「まだ寝てるわよ。夜通し口喧嘩してたからさすがに疲れたんでしょう。昼間まで寝てるわ。」


 勇者たちが去ったあの後も夜通し喧嘩していたとは…正直二人とも頑固すぎて呆れてしまう。


「まあ、そういうことなら仕方ないか。エリックには悪いけど、ちゃんとあいつの依頼も達成してくるようにするよ。」


「ええ、お願いね。気を付けて。」


 シェリアラの見送りを受け、勇者とゴルドラは北の森へ向かって出発した。


 その背が見えなくなるのを見届けると、シェリアラは家の中に戻ろうとした時、家の裏側に真新しい足跡があるのが視界に入る。


(まさかあのバカ!)


 そう思い、シェリアラはエリックの部屋をノックし、返事がないのを確認するままに扉を開ける。


 そこには、エリックの姿は全くなかった。


(まったく、いつ抜け出したことやら…。)


 部屋の窓の桟には靴跡で汚れた跡があり、最早決定的だった。


 後先考えないこの性格は誰に似たのかというと、「昔の私だ」とシェリアラは答えるだろう。

 昔冒険者だったころ、何度も仲間に諫められたものだ。


 無事に帰ってきたとき、怒りが頂点になるのか、生きて帰ったことを喜んで泣き崩れるのかはわからない。だが、どちらにせよ、失意のどん底に落ちるよりはマシだ。


 シェリアラは手を組み、どの神とも知らぬ神に祈る。息子が無事でありますようにと。



 勇者たちは出来る限り急いで足を進め、小一時間で目的の場所を眼前に捕らえた。町の宿屋の三階から見えはするものの、そこそこの距離だ。10km程度だろうか。


 まず、鬱蒼とした木々の大きさに度肝を抜かれた。前世で木々は3~4m程度という認識だったが、6m以上は確実にあり、森の中はまだ午前中だというのに奥が見渡せない程度には薄暗い。森というより樹海だ。


 少しピクニック気分だったのを反省し、気を引き締めた時、ゴルドラが怪訝な表情をして森の一点を見つめていた。


「なんだ?」と、勇者も森に近づきながらゴルドラの目線の先に意識を向ける。


 そこには藪があった。


 薮なのだが、森の中でも不自然なそれは局所で肌色が見受けられる。

 勇者が頭を抱えているとゴルドラがずいずいとそれに近づき、植物の塊の首根っこを文字通り掴み上げた。


「あわ!あわわあわわ!」


 まるで鍋の蓋でも摘まみ上げるかのように軽々と持ち上げられ、それは当然狼狽した。

 勇者はため息をつき、その植物の塊の一部を捲りあげた。


「で、なんでついて来てんだ?おまえ?」


「あ、えっと…こっそり抜け出してきちゃった。」


 エリックは小さく舌を出して、てへへと笑う。それを見てゴルドラはこめかみに青筋を立てた。


「マスター、この身の程を弁えない小僧を一度家まで送り返してまいりますので少しお時間を頂けますか?」


「えー!せっかくここまで来たのに!」


「この期に及んでまだいうのか?!はあ、聞くに堪えませんね。心配には及びません。私が全力を出せば5分程度で往復して見せます。」


(時速240km!!…まあそれぐらいなら待ってもいいけど。)


「お願いします!僕も連れて行ってくれよ!ハリエラ草の自生区域だって知ってるし、森の探索は得意なんだ!それに、ちょっとレアなスキルもあるから、危険だってちゃんと回避出来る!だから頼むよ!!」


 エリックの捲し立てるような懇願に勇者はもう一度ため息をついた。


(そういうことじゃないんだよな~。)


 エリックが意外にも器用なスキル持ちで優秀なのは《超鑑定》で調査済みだ。——アルカナキャストではなかったが—— ナビ役として非常に有能であることは分かる。だが… …。


(問題はそこじゃないんだよ未成年君!)


 親があれほどまでに反対している状況で、クエストに同行させるってことがどう影響するかって話なのである。

 正直、シェリアラは食わせ者だ。無事に帰ってもこのことを理由に契約違反だとか誘拐とか言われると立つ瀬がない。

 ゴルドラの提案を吞むことも考えたが、結局また抜け出して一人で森に入り、勇者たちと合流できずに危険な目にあったとなってはこちらとしても目覚めが悪い。


 結局、なし崩し的に答えは一つだ。


「わかった。ついてこい。」


「やったー――!!」


 ゴルドラに首根っこを掴まれている状態でエリックは大喜びだ。


「よろしいのですか?」


「よろしくはないけど、下手に無茶なことされると困る。それなら同伴してくれた方がまだましだ。」


 ゴルドラはエリックを放し、勇者に耳打ちする。


「私が竜人であることは隠しておいた方がよろしいのですよね?」


「う…まあそうだな。そこは伏せといた方がいいな。」


「と、なりますと、本気を出すことは困難になりますが… …。」


 さすがに勇者は言葉に詰まる。宿屋での一件は見破られなかったとはいえ、レアスキルである《見切り》を持っていることは厄介だ。

 エリックのキャラクターを考えると騒ぎ立てるに違いなかった。


「エリック。ちょっとゴルドラと会議するから離れてろ。」


 一応素直に言うことを聞いて距離をとるエリックだが、また置いてけぼりにされないかが不安なのかしきりにこちらを警戒する。

 スキルの中に聴覚を強化するものはなかったから、この距離ならば小声で話せば聞こえないだろう。


「たしか、ある程度の力を出そうとすると半竜人化するんだったよな。」


「はい、角や翼、尾、爪などが顕現されます。この森にどの程度のモンスターがいるかは不明ですが、ボスレギオンクラスと戦う羽目になった場合は今の姿のままでは分が悪いでしょう。」


 ゴルドラの圧倒的なパワーがセーブされてしまうのは正直頂けない。となれば、取れる手段は限られてくる。


「敵のレベルは俺が具に確認していく。もしボスレギオンクラスと出会った場合はエリックを連れてその場から離れるようにしよう。」


「もし複数だった場合は?」


「その時はもう仕方ない。その場合は否応なく本気を出してくれ。」


「畏まりました。」


 ゴルドラは深々と頭を下げる。


 道中で出会ったハウンドドッグはレベル6。森の中には危険なモンスターがいて然りだが、ボスレギオンクラスと遭遇、それも群れとなんてことはさすがにないと信じたい。


「もういいぞ!」


 勇者の呼びかけに安堵したのか、エリックは満面の笑みで駆け寄ってくる。


「まあ、任せてよ!《森渡り》のスキルもあるから、ちゃんと歩ける道を案内してあげるよ。」


 胸を叩いて自分のアピールを惜しまないエリックを見てこの冒険が無事に終わりますようにと勇者は祈る。


(まあ、トラブルは冒険の友っていうしな。)


「じゃあ、いくか!」


 「おう!」と二人が声を上げ、三人は鬱蒼とした森の中に歩を進めるのだった。



「マジかよ。」


 勇者は手に持った茎も葉も白い植物の見つめながら思わず呟いた。


 一応鑑定する。間違いない。

 ハリエラ草である。


 道具屋で見た時のものは乾燥していて茶褐色だったが、元々は真っ白だったようだ。しかしながら、驚愕したのはその色についてではない。


 あっさりと見つけ出せてしまったことだ。


 確かに勇者は【薬師】のジョブスキルをマスターしているが、【ハンター】や【レンジャー】のジョブを得ているわけではないため、探索系のスキルは持ち合わせていない。ゴルドラは敵を索敵するための知覚スキルを持ってはいるが、採取には全く機能しないのである。


 それらを踏まえるとハリエラ草の採取は困難を極めるかと思ったが、豪胆なエリックは迷うことなく森の中を突き進み、経験と知識以上に圧倒的な第六感によって群生地を発見したのである。


 今日の夕方までには何とかしたいと思っていた課題は昼を迎える頃に完了してしまい、エリックがどや顔でふんぞり返っていた。


「どうですか!?やっぱり僕がついてきてよかったでしょ?!」


「ああ、まあ…そうだな。ありがとう…。」


 歯切れの悪い感謝の言葉だったが、エリックの機嫌は最高潮だった。


 勇者としては、エリックが介入したことでクエストの内容が採取ではなく護衛になるのではないかという懸念が浮かんだ。クエスト難度についてもこれでCはあり得ない。

 なんだかチート行為をしているようで少し後ろ暗い気持ちになったのが正直なところだ。


 まあ、楽できたことに対して詰め寄っても仕方がないことだ。勇者は採取したハリエラ草を収納インベントリーに放り込み、「さてと…」と前置きをして本題を切り出す。


「首尾よく表クエストを早くクリア出来たんで、これから本命に移るわけだけど、2人ともバイタルの方は大丈夫か?」


 言葉を変えて言えば「疲れていないか?」ということだが、2人は不敵に笑って頷いた。

 それを見て勇者は少し俯いてしまう。


 正直言えば疲れたのだ。


 ここまでの山道、《森渡り》のスキルによって平地のごとく楽々と進めるエリックとお化けバイタル持ちで疲れ知らずのゴルドラと違い、完全に自前のバイタルのみで挑んだ勇者は多少なりともへばっていたのである。

 せっかく時間が出来たので、キノコ採取や狩りなどをして昼飯と洒落こみたいところだが、まだまだ進む気満々の二人を前に、疲れたから休もうとは言い辛かった。


 幸いなことに、モンスターとの遭遇がなかったことも基本的な消耗を抑える要因となっている。これは、エリックのスキル《獣歩き》の効果であり、モンスターとのエンカウントを引き下げてくれるようだ。


(エリック優秀過ぎる…。)


 勇者はこの後のことを思案する。


 数秒後に考えがまとまると、二人に向き直った。


「小休止を終えたら魔性の森まで移動を開始しよう。エリック、魔性の森の入り口の場所は分かるか?」


「ああ、任しといてくれよ!」


「よし、そのルート上に水場を組み込むことは出来るか?」


「あ~、うん。ちょっとだけ遠回りになるけど、多分今からなら夕方前には到着できると思うよ。」


 よし、と頷くと。改めて勇者は本日の行動計画を発表する。


「30分後にここを出発してエリックの案内で魔性の森の手前で本日はキャンプを行う。今のところモンスターとの遭遇はないけど、魔性の森に入ったらそうはいかないことが予想できる。アンデットもいることが想定されているのなら、当然明日の朝から行動をした方がリスクも少なくて効率的だと思うけど、どうだろう?」


 勇者の問いにゴルドラは頷く。


「賛成です。この森の暗さで夜になれば、スキルや魔法がないとほぼ視界が利かなくなります。野営にしてもこの森自体は10LV以下の獣モンスターぐらいしかいませんので、正直危険はないと言えます。」


 ゴルドラの返答に勇者は深く頷く。そしてエリックに視線を移すが、どこか浮かない顔だ。納得はしているが出来れば…という雰囲気が感じられる。


 その様子を見て、ゴルドラは一つ咳払いをする。


「ただし、現状法国の焼き討ちがいつ行われるかという情報が不透明である以上、迅速に目的を達成できるように斥候を入れながら対応する必要があると思います。今焼き討ちが起これば、魔女だけでなく我々も危険な状況になります。」


 確かに、のんびりできない理由がここにもあった。

 このクエストには制限時間があるのだ。

 とりあえず、避難の鐘が鳴ればその時点で強制終了。退避しなくては逃げ遅れて炎の海に囲まれてしまう。


 そもそも、鐘の音がどこまで聞こえるかもわからない上に、聞こえても戻れないほど奥地に入り込んでしまう可能性もある以上、闇雲に急ぐわけにもいかない。だからこその斥候というわけだ。


 ここで必要な斥候の意味は本格的には明日の朝から始めるが、戻ること前提で今日の内にある程度情報収集しておく。つまり、魔性の森の予習ぐらいはしましょうということだ。


 方針が固まり、勇者はしれっと行動計画に捩じ込んだ休息を取った後、泉を経由して本日の野営に向けた水汲みを行う。

 水瓶2杯分、おそらく併せて40Lはありそうな水を汲み、収納インベントリーで確保する。

 もし収納インベントリーがなければ間違いなくこの場所が野営地になるが、水場は我々だけのものではない。この森に生きる全てのものだということを考えるとモンスターの遭遇率は飛躍的に上がるだろう。本当に便利な魔法だと感心は尽きない。


 そして、ついにその場所の門前に辿り着いた。


 時計を確認すると現時刻が18時前…。

 この森の暗さをより一層引き上げようとする時間帯とはいえ、この先に見える昏さとは比べるべくもなかった。


 ごくっと喉が鳴る。


 明らかに目の前の境界を踏み越えた先が異質なのである。

 靄がかかったように不透明な空間を前に、三人はしばらく立ち尽くしていた。

 ゴルドラがどう思ったかは知らないが、勇者とエリックには鬼の口の前に立っているような恐怖を感じた。


 沈黙を破るように、ゴルドラは一歩進み出る。


「それでは、予定通り斥候に参りたいと思います。小一時間程度で戻りますので、お二人はお休みください。」


 斥候役が誰になるかということまでは決めていなかったが、当然のようにゴルドラが率先して名乗り出る。

 誰が考えても当然の選出である。中は下手すれば魍魎跋扈するアンデットの巣。ボスレギオンクラスも現れる可能性があるならば、エリックが側にいないことで本気を出せるゴルドラが行けばまず問題はないだろう。


「ゴルドラさん。迷わないように必ず目印はつけてくださいね。真っすぐ進み、木にぶつかればその木に次進む方向の目印を付けてください。」


 エリックは山で遭難しないためのテクニックを教える。ゴルドラは苦笑いしながらもあい分かったと言って頷いた。


 ゴルドラは広域の気配探知をもっており、…というよりも全ての能力が桁外れである。

 たとえ迷っても森を突き抜けてでも脱出するだろう。それに、いざとなれば翼を顕現して空を飛べば万事解決してしまう。

 心配無用だが、その正体を知らないエリックの真剣な目を見ると、邪険には出来ない。


「それでは行ってまいります。」


 一礼し、森に向き直ったゴルドラが一歩足を進めた途端… …!


 刹那、ゴルドラの姿が搔き消えてしまったのだ。


 当然ながら二人の間に動揺と戦慄が走る。


「おい!ゴルドラ!聞こえるか!?一旦こちらに戻れ!!」


 勇者は声を張り上げてゴルドラを呼ぶが、応答はない。物理的な距離に異常がないならば、決して聞こえないわけがない。つまりそれは…。


「まさかこの森…異界化しているんじゃないだろうな?」


「異界…ですか?」


 エリックは目を戦慄きながら、オウム返しに勇者に尋ねる。


「多分だけど、足を踏み入れた瞬間に外界と隔絶される結界の中に閉じ込められてしまったんだと思う。簡単に言えば、魔性の森と呼ばれるこの部分だけ、この世界とは違う世界になっているってことなんだけど…。」


 勇者にも何が起こったのかの確信はない。考えうる状況を推測しての発言に過ぎないのだ。異界化などという言葉は勇者にとって非日常言語であり、今まで立ち会ったことなどない。前世の漫画やゲームのオカルト知識を使って現状をそう理解したに過ぎない。


 確かな答えなどはない中で、勇者の推理を元に現状を改めると非常に危険な状態であると言えよう。

 ゴルドラという巨大戦力と斥候による情報を失った時点で、先刻に立てた計画は音を立てて崩れてしまったのだ。


 体中に冷や汗を浮かぶ。

 これから打てる手は二つ。


 ゴルドラを追いかけるか、置いて逃げるかだ。


 だが、決断できない。


 気持ちを優先すれば前者である。だが、木乃伊取りが木乃伊になるという言葉通りになる可能性は高い。だが、かといって後者を選ぶわけにはいかない。


 追いかけるにしてもなにか縋るものが欲しかった。スキル、情報、魔法、助っ人…何か一歩踏み出せる後押しが… …。


 突如、勇者の手が引かれる。


 驚きのあまり抵抗を忘れ、呆気にとられながらもその手が導くままに、足が異界の境界線を越えた。


 勇者の手を取っていたのはエリックであった。



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