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第8話不合格者は始末始末


「あ?なんだこの女?まさかァ、そんな細腕で俺達三人と戦おうってんじゃぁねぇだろうな?もしそうだとしたら自分の実力を過大評価してる妄想女だぜェ」


ルイーゼのか弱そうな見た目を前に、ロアは高笑い。見せつけるように背中から大斧を手に取り、地面へと叩きつける。


が、大斧は床ではなくルイーゼのホウキによって止められた。


ガォンッ


鈍く大きな音が響き、舞い上がる衝撃波。ロアの大斧はルイーゼのホウキを破壊することは愚か、傷一つ付けられていない。


「は?」


「駄目ですよ。アザゼル様から生み出された大切な魔王城を傷つけようだなんて。減点1」


ルイーゼは背中でホウキを一回転。頭の上で掴むと、ロアの脳天にぶち込んだ。


「がふっ!!」


ロアは白目を向いて撃沈。


「減点といっても、貴方は既に不合格なんですけどね。さて、次は眼鏡のお兄さん。貴方にしますか」


ホウキにてクリフを指す。冷静だった瞳は驚きと怒りで、鋭く皺を刻む。


「ロアさんはすぐ油断する。その馬鹿男を倒していい気になってるみたいですね。クソアマ。僕の魔法の前に、泣いて許しを乞え」


クリフは土魔法を扱う魔導師のジョブ。勇者が武器に魔法を纏わせ戦うのに対し、魔導師は杖から自然物を生み出し放つことができるのだ。


勇者が扱える魔法が一種類に対し、優秀な魔導師程多くの魔法を扱える。


「コイツの全身を嬲れ!ストーン・ショット!」


クリフが放つ無数の石礫。


「顔だけは綺麗に残してあげますよ」


眼鏡の奥で、下衆な瞳が笑った。


「良いですね。面接官に魔法でアピール。で、す、が」


ルイーゼは野球のバッターの如くホウキを構え、無数の石礫を打ち返す。クラシカルメイド服がふわりと広がった。


「へっ」


全弾跳ね返され、クリフはマヌケな声をあげる。ルイーゼの首から下を狙った石礫。打ち返された挙句、クリフの全身を捉えた。


「ぐぎゃぁっ!!」


下衆眼鏡が吹っ飛び、自らの石礫を全身に浴びる。よろめくが、クリフは倒れない。


「こ、こんな、ことがっ嘘だ、み、認められないぃっ」


「あら。思ったよりタフですね。アザゼル様の手前、一撃でいきたかったのですが」


「おぃミラン!お前がどうにかする話だろ!このクソ役に立たねぇクソ勇者めがぁ〜ッ!とっととやれ!」


「ッ……」


ゾッと恐怖に染まるミランの顔。何かに操られるように弓を引き、ルイーゼに放つ。


「一撃で三連の矢を放てるのですね。素敵です」


ルイーゼを襲う三本の矢。それもホウキ一振でいなす。


「ははぁっ!振り終えたお前が攻撃するよりも、僕の魔法の方が速い!串刺しになるがいい!」


ルイーゼを襲う鋭い岩。狙いは胸のド真ん中。勝利を確信したクリフの口元が弧を描いた。


「はぁ……救いようのない下衆野郎ですね」


「?!」


ガッ


ルイーゼの白魚のような手が、飛んできた岩を掴む。


「ば、馬鹿な……僕の最速の魔法を片手で掴んだ……?!ミスリルをも貫く、僕の岩魔法を?!搾取され、組み敷かれ犯されるだけの虫ケラ女が止めた?!」


「アザゼル様の魔王城に相応しく無い。お帰りくださいませ」


ドンッ


美しく、一直線にクリフの眼前へ。ルイーゼのホウキが頭部と顎を高速で連打。あまりの速さに、軌道が美しく円形を描いた。


「ルナ・クリーン」


脳天を揺さぶられ、クリフは泡を吹いて倒れた。


静まり返る玉座の間。ミランは体を震わせ、弓を持つ手は戦意を失う。


パチパチパチ


アザゼルの軽やかな拍手が響いた。


「見事な清掃だったよ、ルイーゼ」


「お褒めに預かり光栄です。アザゼル様っ」


主からの褒め言葉にホウキを両手に持って、はにかむルイーゼ。あれだけの戦闘で塵一つ被っていない。


「さて、残るは貴女だけですね」


ミランはビクリと肩を震わせる。心は絶望に飲み込まれていた。


(魔王の手下すらこの実力。わたくしが指一本触れることも敵わない……しかし、わたくしはまだ、死ぬ訳には行かない!)


ミランは胸元から煙幕を取り出し、床に叩きつける。逃げの一手に意表を突かれるが、ルイーゼには関係の無いことだ。


「お待ちください」


逃走劇は一瞬。ルイーゼはミランの手を両手で握りしめて捕まえる。


「洗練された動き。そして的確な判断力。貴女、魔王城に転職しませんか?」


ルイーゼの紫色の瞳が無邪気に微笑んだ。


「て、転職?」


殺されるかと身構えていたミランはぽかんと口を開けたのだった。









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