表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/52

第51話償いの時


「転職拒否…ってそんなことあるんスね」


「妥当ですわ。あれだけのことをやってきて、あれだけの人を苦しめ殺してきた。直接的にでは無いにせよカイザーが殺したようなモノですわ」


シンとミランは玉座の間にて行く末を見守る。


「この魔王城には奴に心身ともに傷つけられた者たちが多く存在する。できれば思い出させたくも無い」


「そう……そうですね。貴方方の意見が最もです。かく言う私も彼に虐げられてきた一人ですから」


クレアは肩を落とす。


「逆に何故奴を魔王城に?」


「……カイザー様は私の幼馴染なんです。幼い頃は優しく真面目で、誰にでも分け隔てない方でした。しかし、母親が亡くなった後、父親の横暴とも言える躾の数々…時には命の危険すら…それで、ギルドを作る頃には……父親と全く同じ目をするようになってしまいました」


「それは不憫なことだな…ブラックも虐待も繰り返されるものだ」


「カイザー様が戻れない所まで罪を犯しているのは重々承知です…ですが、どんな形でもいい。彼を救いたいんです……」


「ううん…カイザーがそれを望んでいるのか?俺の下で働くなんて死んでもごめんだ!みたいに見えたが」


「そのプライドは先日アザゼル様がボコボコにしてくださったので問題ないかと…寧ろ変わるなら今しかない」


「あの…何故そこまでカイザーを助けようとするのです?クレアさんだって酷い目にあったんでしょう?」


ルイーゼが片手をあげる。


「そうですね。ムカつきます。けど……今、抜け殻のようになって生気を失っている彼を見ているとモヤモヤしてしまうんです。罪があるとすれば、秘書として彼を止めることができなかった私も同罪。お願いしますアザゼル様。彼に償うチャンスをください…」


深々と頭を下げるクレア。しかし、今まで虐げられてきた元勇者達にとって到底許せるものではない。


「ふざけるな…俺たちの仲間はカイザーのせいで過労死したんだ」


「人の未来を奪っておきながら、自分の未来は救って欲しいとか、傲慢にも程があるわね」


数々の不平不満。それらはアザゼルが片手を上げたことにより静まった。


「少し考えるが期待はするな。俺は自分のした事の罪を、カイザー自身が自覚し一生かけて償ったとしても彼を許すことはできない」


「……分かりました。では、失礼します」


クレアは立ち去った。玉座の間には怒りと不満が入り交じる声が飛び交う。


「皆。今日は半休にするから各自ちゃーんと好きなことをするように」


「アザゼル様。どういたしますか?」


「難しいな…俺ですら奴のことを許せないし許せないのが当然だ。シンだって……」


「え、俺は別に…確かにアイツのせいで両親は死んだって思うんスけど、アイツ一人を殺した所でこの世界のブラックな仕組みはひっくり返らない…俺的には両親は世界と俺の無力さが原因で亡くなったと思ってます」


「世界の歪みか…………長い目で見ないとな」


「……アザゼル様。お紅茶お持ちしますね」


「ありがとう、ルイーゼ」


◇◇◇


夕暮れ時、クレアは再びカイザーの元を訪れていた。


「お加減は…」


「貴様、今日魔王城へ行っていただろう」


「……」


「転職したいなら好きにするがいい。どうせ斡旋ギルドは倒産だ」


「懐かしいですね。昔トランプで私に負けた時も同じ顔をしておられました」


「俺を罵りたいなら好きにしろ。なにもかもどうでもいい」


「カイザー様…いえ、カイザー。貴方は何人もの人生をめちゃくちゃにし、縛り付けてきました。今更メソメソ泣きながらどうでもいいと自暴自棄になる。それが許される立場じゃ無いんですが」


「どうとでも言え」


「らしくない。自分のやり方は間違っていた。その自覚はあるんでしょう?」


「……」


「でしたら、さっさと反省してさっさと償ってください。そうじゃなきゃ勇者達も私も浮かばれません。では、失礼します」


閉まるドアの音を聞きながらカイザーは布団を握りしめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ