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第52話定時退社エンド


(俺はカイザー。これまで思い通りにならなかったことは無かった。どんな天才も秀才も俺の頭脳と実力の前には児戯でしかなかった…それなのに、ただのゴミムシだったはずの…使い捨てられるだけだったはずの勇者に俺は全てを壊された…)


「なにがホワイトだ…それじゃあこの世界では淘汰されるのみ……なにも守ることはできないし、強さを維持することも出来ない……」


カイザーは寝転がったまま外を眺めた。

その時だ。体中を撫でる悪寒。振り返るとそこには、黒マントを翻すアザゼルの姿。


「き、貴様は…なっ何しに来た?そうか殺しに来たのか……フッ。いいタイミングだ…俺もももう、生きているのが情けなくなっていたところだしな……」


「君のことを殺すつもりはない」


アザゼルは静かに床に降りる。傍らにはルイーゼ、ミラン、シン、そしてクレア。


「はっ…クレア。貴様の仕業か…俺に恨み辛みをぶつけたいが故にこんな回りくどいやり方をしなくても…」


「カイザー。貴様はウチの傘下に入れ」


「は…?」


「俺が経営する魔王城の傘下に入り、農場を経営しろ」


「の、農場?正気か貴様?誰がそんな庶民の仕事を」


「その傲慢さが身を滅ぼしたのだとまだ分からないのか?人に多大な迷惑をかけ、人の人生を捻じ曲げたお前に働く場所を与えるんだ。誠心誠意尽くして働き、償ってみせろ」


「は…ふざけたことを……俺を雇ってどうする?俺は貴様の嫌うブラックギルドの先駆者だぞ?貴様の言うパワハラセクハラなんかのクセが直ぐに抜けると思うか?」


「カイザー様」


クレアが一歩前へ。腕を引くと思い切りカイザーの横っ面をはたいた。


パァンッ


乾いた音が響く、いいビンタだ。


「ッ……なっ何を……」


「もし貴方がまた道を踏み外しそうになった時は私がこうして躾します。ですからいつまでもへそを曲げていないで働け」


クレアのキツイ目線。大人しく自分にしたがっていた時とは違う。カイザーは頬を抑えながらぽかんと口を半開きにした。


「彼女に感謝するんだな。頼まれでもしなきゃ君のことを助けるつもりは無かったが…シンやミランもそれを望んでいるようだったしな」


わたくしもまだ貴方のことは許せませんが、問題はギルドだけに留まりませんわ。ブラックの温床となっているのは世界の仕組みに他なりませんの」


「俺も許せない。けど、ただ死なれたり罰を受けるより、こっちの方が屈辱的だろうしな…ま、カイザーの経営手腕は凄いとこあるし、その力をいい方向に活かせた方が償いになるだろ」


「……しょ、正気か貴様ら…俺は、お前たちを…」


「もう腹を括れ。償うのか、償わないのか。選びとるのは君だ。カイザー」


「……は…分かった。全力で働いて働いて、償うことにする。叩かれて目が覚めたな…罪は消えないが、今まで壊した分下っ端でも奴隷でもどんな扱いも甘んじて受けよう」


「カイザー………俺の魔王城で、身を粉にして働いたらクビだからな?」


「……ふはっ…あぁ。了解した」


カイザーはようやく、引きこもっていた自室から一歩踏み出した。


◇◇◇


(エンゼル王国を牛耳っていたカイザーを傘下に入れた……これで王国の支配権を得たと同意だ。手始めに働く環境整備や支援物資を提供しなければ。やることが盛りだくさんだな)


「アザゼル様。お疲れ様です」


「あぁ、ルイーゼ。君もな」


「楽しく暮らしたいってだけの、つまらない王……そんなことは無かったです。ルイーゼはアザゼル様が作り上げた魔王城で過ごす日々が楽しくて面白くて仕方ありません」


「ふふ、急にどうした?こんなに大規模なことになるとは思ってなかったが、王国丸ごとホワイト化に成功だな。乾杯」


アザゼルはコーヒーカップをルイーゼに向ける。ルイーゼは微笑むと軽くカップを突き合わせた。


「これからどうしますか?王様を乗っ取りますか?」


「いやぁ…俺魔王だしなぁ……とりあえず、皆が自分らしく楽しく働いてくれたら充分だ」


「では、世界征服等いかがですか?エンゼル王国はブラックギルドの末端。世界にはもっとヤバめのギルドがゴロゴロあると聞いてます」


「世界のブラックを滅ぼしホワイト征服。悪くないな?」


「はいっ。楽しみです。この世界に蔓延るコンプラ違反を抹消しちゃいましょう!」


「大きな夢だ…が、今の力なら実現出来るな。ルイーゼ、着いてきてくれるか?」


「もちろんです!あっ、アザゼル様!」


「おっともうそんな時間か。今日もお疲れ様」


定時退社


◇◇◇


区切りがいいので一旦完結と致します。最後まで拝読いただきありがとうございました。

宜しければ☆評価をお願い致します。新作に乞うご期待くださいm(_ _)m


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