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第48話魔王城社内恋愛その2


(私リンリンいうネ。元ブラックギルドのカイザー親衛隊として汚れ仕事を請け負ったきたケド、この度魔王城に転職したアル。今日は初めての出勤。私の主な働き場所は――)


「あ、おはよーっスリンリンさん。今日からよろしくな!」


赤髪の少年、シンは明るく挨拶を交わす。リンリンは戦闘員ということもあり、シンがリーダーとなっている生産部、騎士部に所属することになった。


「本当にココ、定時出社アルな。早く目が覚めたのにシルビアからまだ出社するなって止められてソワソワしたネ」


「めっちゃ分かる。俺も未だに遅刻して百叩きの系に処される夢見るし。ここは定時出社定時退社。ダンジョン潜る時は夜通しになるけど、その分出たあとの休暇はたっぷりあるから安心だよ」


「今日はダンジョン潜るネ?」


「うん。今日は初日だし一日だけの軽いヤツ。47階層のミスリルや宝箱の回収が任務かな」


「腕が鳴るネ!」


「それと今日はリンリンが初日だから…」


「俺も同行する」


「あっアザゼル。おはようネ」


「おはよう二人とも。今日も怪我なく適度に働くぞ」


「ウス!」


「ハーイ!」


(ホント、最高の職場に転職できたネ。心做しか体も軽いヨ。今ならなんでもできちゃう気がするネ)


ダンジョンに慣れているシンとヒバリ。さらにギルドでも優秀な戦闘力をもっていたリンリンと、未だ力が底知れないアザゼル。ダンジョンモンスターの方が泣き出しそうなメンツだ。


順調に48階層まで進んだ。


「そういえばリンリンさんの転職の決め手ってなんスか?やっぱりお給料?それとも福利厚生?」


「お給料は前の方が高かったネ。親衛隊、そこら辺は結構しっかりしてたアルヨ。まぁ勇者達の給料削ってる結果だし、些細なミスで即減給って感じだったアルけど」


「え、そーなんスね。あーでもミスって減給されたら総合的には魔王城の方が……」


「そうネ。長く続けられて健康。そっちの方がいいヨ」


「いい事言うじゃないかリンリンその点においては心配しないで欲しいところだな。で、それが決め手か?」


「それもおおきいケド……一番の理由は…」


リンリンは僅かに頬を染め口元を緩める。アザゼルとシンが耳を傾ける中、横から飛び出してくる剣の罠。


「ッ」


判断が遅れる。リンリンがチャクラムを振り抜くより早く、その体は逞しい男の体に引き寄せられ、剣が叩き落とされた。


「あ…ひ、ヒバリ…」


リンリンを庇い罠から守ったヒバリ。物静かながらその剣には迷いがない。


「助かったぞヒバリ。ありがとう」


「いえ、アザゼル様。同然のこと。それに俺が庇わなくとも彼女は対応できる実力があります。俺が勝手に手を出しただけのこと」


「真面目だなぁヒバリは…リンリンも怪我ないか?」


「あ、ウン。大丈夫アルヨ」


そこで会話は途切れアザゼル達はダンジョンの奥へと向かった。順調にダンジョンを終えて今日も仕事は恙無く終わった。


「では俺は日誌を書かねばならないのでお先に」


「あぁ。書き終わったら退勤していいからな」


「ヒバリってホント真面目ッスよね。でも面白いのが定時出社退社時間にも厳しいからアザゼルさんの言いつけ守るためにタイムカード握ってたまに凄い勢いで走ってるんスよ」


「ふは、想像できるな。アイツ残業記録無いしなぁ」


「あ、リンリンさん。今日はどうでしたか?」


「めっちゃ楽しかったヨ。こんなのでお金もらっていいのか分かんないくらいネ!」


「良かった。楽しく働く、がアザゼルさんの信条ッスからね。あ、そういえば魔王城転職の決め手、まだ聞いて無かったッスね」


「あ…え、ええと…それはもう一点アルヨ。その…社内恋愛しまくれるからヨ!!」


リンリンは真っ赤になりながら頬を抑えてはしゃぐ。アザゼルとシンの頭にクエスチョンマークが浮かんだのは言うまでもない。


「社内恋愛…」


「そうネ!ギルドじゃ禁止。見つかれば破局と罰則。そんなの勇者としての唯一の楽しみを奪われたも同然ヨ!胸がドキドキキュンキュン…そんな社内恋愛、一回してみたいネ…」


「そ、そっか…確かに社内恋愛取り締まられてたし、そもそも恋愛してる暇無かったッスからね!それで、誰か良い人居るんスか?」


「ッ…そ、それは…その。まだ分かんないアルヨ!初日だし…それに恥ずかしいネ」


「え〜?またまたぁ?好きな人、できたら教えろよ〜」


「そういうシン君はどうアルか?ミランによく見とれてるのを目撃するアルヨ!」


「みっ?!ち、違うって!ミランさんは憧れっつーか…経営のことなんでも知ってるし頭いいし…その、尊敬的な意味だよ!」


「高嶺の花アルネ〜あれは。ハッキリ言わないといつまでも気持ちは伝わらないアルヨ!」


「だ、だから違うって!!」


二人のやり取りを端で見ていたアザゼルは口元を緩める。


「社内恋愛、か…」


生前に約200年扱き使われていた俺にとっては無縁のこと。仲間内同士でソレについて語るなんてもっと有り得なかった事だ。


「いいな。魔王城では青春してナンボだ。で、二人とも。好きな相手ができたら俺に随時報告すること。これは上司命令だ」


「うわっ職権乱用」


「下世話上司ネ!」


笑い合う三人の声が夕暮れに響いた。






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