第42話冒険者斡旋ギルドのボイコット計画
「二日間、お世話になったアル」
リンリンは荷物を背負い魔王城の入口で頭を下げた。
「本当に戻られるの?このまま転職してしまえばいいのですわ」
「それは私のプライドと思い出が許さないヨ。でも、キチンとケリをつけたら魔王城の一員になりたいネ。その時はまたいろいろ教えて欲しいアルヨ」
「…分かりました。どうか無理なさらないでくださいまし。魔王城は心優しいリンリンの味方ですのよ」
「ありがとネ。ミランも、あんまりアザゼルに変態行為しすぎるなヨ?逮捕されたら一緒に働けないネ」
「なっ?!し、してません!しません!!」
「またナ〜」
リンリンは魔王城から出ると
(魔王城を見て、これまでの自分の常識がおかしいって気づいたネ。でも、私だけ救われるわけにはいかないヨ…イーヨル、エルザ、ナグ…アイツらも…)
リンリンの頭に戻パーティメンバー達の思い出が過ぎる。
『はぁ?リンリンだけ昇進?完全週休二日にボーナスって、なんだそれ。ズルだろ…』
『いいなぁリンリン…ウチの最高戦力取られてさ、ウチらは益々貧乏でこき使われることになるわぁ』
『り、リンリンがいないと困るよぉお…身勝手すぎる…自分だけぇっいい所から僕らを見下ろすんだァ…』
リンリン向けられた数々の罵倒。勿論リンリン自らが望んだ昇進ではない。
(それでも、裏切ったのはホントネ…逃げたり、逆らうこともできた。それをしなかった。保身のために仲間を裏切る方の選択をしたネ。だから私は――!)
「リンリン、戻ったアルヨ」
エンゼル王国執務室。カイザーが金色の瞳を鋭く光らせた。
「無傷か。それで、結果は出したのか?」
「とりあえずコレ、内部の構造メモね。見張りが薄い箇所や死角、非戦闘員のリスト」
カイザーは渡された書類を一枚一枚捲り、鼻で笑う。
「やはり魔王アザゼルは女好きか。これまで数々の勇者を送り込んできたが、キッチリ仕事をしてきたのは貴様だけだ。リンリン」
「光栄ネ。二日後、また忍び込むヨ。確信した。私ならその日、アザゼルを殺れるネ」
「あぁ。期待しているぞ、リンリン」
リンリンは青い瞳を奥底で輝かせた。
◇◇◇
リンリンは街からすぐのダンジョンへ向かった。雑魚魔物を倒し、リンリンが向かったのは任務中のとあるパーティ。
「!…リンリン」
リンリンの元パーティメンバーらである。
「なんでお前がここに…」
「話は後ネ。とりあえず…このダンジョンを瞬殺するネ…」
リンリンは勇者の中でも秀でた実力を買われ、カイザーの親衛隊に任命された女。今更初級のダンジョンに手こずるわけもない。寧ろ瞬殺だ。日が暮れる前にリンリンと元パーティメンバー達はダンジョンの外へと出た。
「し、信じらんねぇ…俺たちが三日三晩でやっとこさ攻略するダンジョンを…ほぼ一人で…」
「あっはは〜…ウチらが足手まといな訳よ」
「こ、こ、このせいで、次はもっと高ランクのダンジョンを宛てがわれるんだぁ…ぅあああ…」
「イーヨル、エルザ、ナグ。私、、ずっと間違ってたネ。私がカイザーに認められて、一人で昇進したのは仕方ないことだって、そういう世界なんだって…勇者が、踏みにじられるのは…仕方の無いことだって、どこか言い訳して逃げてたアルヨ」
「リンリン…」
「でもおかしいネ!立場が上でも下でも、尊厳が踏みにじられるのは間違ってるヨ!努力して、才能があって力を付けたからって弱い者を奴隷みたいに支配するなんて間違ってる!!それに私は…皆ともっと一緒に、冒険したかったネ…」
リンリンは涙ぐむ。静まり返るパーティメンバー達。最初に噴き出したのは同じ女であるエルザ。
「あ〜相変わらず正義感が強くて前向きで、ザ、勇者って感じだねぇリンリンは……ウチら、酷いこといったよね」
「……あぁ。実力のあるリンリンを妬んで、ズルいとかなんとか…恥ずかしいぜ」
「あっあれは…ブラックな環境に身を置き続けると、身も心も荒んでいき、正しい判断ができなくなる。奴はそれを利用している」
「おぉ……急に説得力あるじゃん」
「魔王の受け売りネ」
「魔王って、最近噂の魔王アザゼル?洗脳で勇者を取り込んで操り人形にするっていう」
「それは嘘ヨ。三人とも…私が見てきたこと、全部話すネ。だから協力して欲しいアル。勇者全員、魔王アザゼルに寝返る計画に――」
魔王城インターンにより生まれた反逆の火種。やがて冒険者斡旋ギルドを飲み込む大きな火に――
◇◇◇
「……使えない駒は、どう始末すべきか」
赤々と燃えるタバコ。カイザーは執務室のデスクに火種を押し付けて揉み消した。




