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第33話部下の手に負えない仕事を片付ける。それが上司


「ここか」


アザゼルとルイーゼはお化け屋敷近くの隠し通路へと辿り着いていた。


「アザゼル様!ミランさん達大丈夫でしょうか?」


「あの二人だ。そう簡単にやられたりしないだろう。だが、従業員のトラウマを掘り返されると、ケアが必要になってくるからな。ウチの魔王城は楽しく安心して働ける場所でなくてはならない。行くぞ、ルイーゼ」


「はい!アザゼル様っ!」


◇◇◇


「っはは……油断、したなぁ」


シェードはよろめく。胸元からはボタボタと出血が。シンの渾身の一撃はシェードを切り裂いていた。が――


(浅かった…!クソ…)


そしてシンの体にも毒が回り始める。


ガクン


膝から崩れ落ちる。


「いやぁ驚いたよ…本当に。君たちにはビックリさせられた。まさか仲良しクラブしてる魔王城がこんなにも優秀な勇者を排出してるなんてね。これはカイザー様に報告だなぁ…」


「っ……シン、さん…ッ」


「女の子の方…ミランだっけ?惜しかったね〜ま、優秀だとしても結局超優秀である僕には敵わないんだけどさ。優秀と超優秀の違いを教えてあげようか?それはね…犬死にするかどうかだよ」


シェードはシンの頭を踏みつけると小型ナイフを数本取り出す。


「これだけの毒を一気に打たれるとどうなると思う?正解は、全身が紫色に腫れ上がって、ブドウみたいに破裂する、でした」


「ッ…ミランさん…ごめん…俺のせいで…」


「はははっ最高に惨めだなぁ…頑張ったところで所詮凡人勇者。僕みたいなエリート勇者には」


「犬死にではありませんわ」


ぐぐ、ミランは青い顔をしながら立ち上がる。


「…シンさんは次に繋ぐ役割を充分に果たしました」


「よく見ろよミラン。繋がってない。途切れたよここで」


「……アザゼル様が仰っていた…もし、部下の手に負えない仕事が現れた時は…」


シェードの背後に現れる影。シェードがそれに気づくのと吹っ飛ばされるの同時。ミランの瞳が希望に輝いた。


「上司、アザゼル様の出番だと」


コートを翻す魔王アザゼル。


「遅れてすまない二人とも」


「これは毒…アザゼル様、私の回復魔法では延命程度にしかなりません」


ルイーゼが二人に回復魔法をかける。


「問題ない。解毒薬はコイツが持ってるだろ」


「はぁ…君がアザゼル様、か」


ガラガラ


落ちる瓦礫に構いもせずシェードは笑みを浮かべてアザゼルと対峙。


「解毒薬はもちろんあるよ。でも、そんな無能の勇者を助けてどうするの?失敗=死でしょ。勇者は」


「失敗は成功の元。と東洋の国では言うらしい。人間は失敗する。勇者でも、だ。だから上司はそれを受け止め、次に活かすチャンスと環境を与える責任がある」


「いやいや。もっと強い勇者を雇ってどんどん強くしていく方が効率的。使い捨てにされるには理由があるんだよ。誰でも変わりはいる仕事しかできないやつは、生きてても死んでても同じさ」


「……そうか」


アザゼルは静かに佇む。シェードはそれを「言い返せなくなった」と解釈し飛びかかる。両手からナイフを放ち、アザゼルが全て弾く間に懐へ。


シェードの顎が跳ねる。


見えるのは天井。


声を出す間もない。


床に落ちる時に見えたのは、アザゼルの片足が、美しく蹴りあげられている姿。


「蹴ら……れ、た?」


膝を着くシェード。立ち上がろうにも全身に力が入らない。


(脳を揺さぶられたっ…は、早すぎる…このまおう


「それで、なんだっけか?失敗=死、だったか?俺に飛びかかって蹴飛ばされる役目なら、誰でもできそうだな?」


「っ〜み、認め、認められな、い……僕はっ僕はカイザー様に選ばれた親衛隊なんだ!!!」


シェードは死に物狂いで注射器を体に指す。


ドーピングの一種だ。


膨れ上がった筋肉でアザゼルへ渾身の一突き。


ヒュッ


瞬き一つの間に。


数十回の拳。


アザゼルの手加減した拳が、シェードの顔面をタコ殴りにした。


「ッ…ぐ、ふ…ばか、な…」


「悪いが時間が無い。雑魚に構っている暇は、な。ルイーゼ」


アザゼルが投げたのは緑の小瓶。ルイーゼは両手で受け取る。


「これは…!解毒薬!!」


「ミランとシンに」


「はい!!」


「なぜ君の、ような…やつが……つよぃ…」


地面に倒れ込んだ無様な暗殺者。アザゼルはほとんど見向きもしない。


「他人を見下して蹴落とす奴は結局一人。一人でできることは限られている。一人では、組織には勝てない。ブラックは、ホワイトで働く人間には勝てない。それだけだ」


アザゼルは踵を返し、ミランとシンの元へ。二人の頭を撫でる。


「二人とも、よく頑張ったな。ボーナスを弾んでやる」


「あ……アザゼルさ…すみません…俺…」


「何がだ?俺が来るまで、よくミランを守ってくれた。シンのお陰でミランも俺もたすかった。シンは優秀な部活だ」


安堵と嬉しさ。多くのものがシンの涙となって溢れる。ミランも引いていく毒の痛みに目尻を緩めた。


「はぃ……ありがとうございます。アザゼルさん。俺、魔王城に転職して、本当に良かったです…」


アザゼルはその言葉に頬を緩めた。


「俺も、魔王に転生して良かったよ」









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