第23話コンプラ違反には記録が大事
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シン
連勤 2日
ストレス値 100
忠誠心 7/10
性格 一人でコツコツタイプ
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ミラン
連勤 4日
ストレス値 150
忠誠心 9/10
性格 バリキャリウーマン、新しいこと好き
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アンジュ
連勤 0日
ストレス値 200
忠誠心 3/10
性格 おっとり天然、家庭の味
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「うーん」
アザゼルは従業員管理のウインドウを見ながら額を抑えた。
「ここ数日で皆のストレス値が上がっているな」
「無理もないです…私も朝から愚痴大会に巻き込まれましたぁ…」
「ええ…よくない雰囲気ですわね。先日は壁に落書きまで…アザゼル様、このままでは」
「ああ。ストレス値上昇に伴って、利益が下がっている。パフォーマンスの低下だな。無理もない。だがもう暫くの我慢だ。必ず俺が魔王城の環境を整える」
アザゼルが額を抑えたその時だ。執務室の扉が開く。
「アザゼル様。ご相談がありまして」
眉を下げ、苦笑しながら入ってきたのはラグだ。その顔はどこか落ち込んでいるように見える。
「……どうした?」
「実は、僕の財布が無くなってしまったのです…昨日から、思い当たる節は探してみたのですがどこにも。心苦しいですが…その…」
「何者かに盗まれた、と?」
「い、いえ、とんでもない。アザゼル様の部下にそんなことをする方はおりません。先日の虫の騒動も、僕が過敏になりすぎましたし…この魔王城は皆良い方達ばかりですから…」
困っている。そう言いたげな顔だ。
「持ち物検査を行う。ラグ、君の言う通り、人の物を盗むような輩は、この魔王城にはいない」
「はい…ありがとうございます」
頭を下げるラグ。俯いたその顔は怪しく笑みを零していた。
◇◇◇
「というわけで荷物をチェックする。君らを疑っている訳ではないけど、潔白を証明した方が落ち着くだろう」
魔王城メンバー達はザワザワしながらも各々の鞄を開け始める。
「ラグ、何色の財布だ?」
「銀の革製で、花の飾りがついた財布です」
丁度その時だ。鞄を漁っていたシンの手が止まる。おそるおそる、といった様子でシンが鞄から取り出したのは銀の革製財布――
「え…シン君それって…」
隣にいたニーアの呟きに全員の注目が向いた。シンは驚愕しながら財布を見る。
「っ、ち、違う!俺じゃない!アザゼルさん!俺盗ってません!」
アザゼルは眉間にシワを刻む。状況証拠とするなら充分すぎる。
「それは僕の財布…あはは、盗まれるのも、無理ありません…僕は新人。邪険に思われるようなことをしてしまったのでしょう…あの、大事にはしないので返してくれませんか……父の大切な肩身なのです」
「だから俺じゃないって!こんな財布、俺は知らない!」
「でも、シンの鞄からでてきたぞ…」
「盗みだなんて……人は見かけによらないわね」
青ざめるシン。魔王城が冷ややかな雰囲気に包まれる中、ラグだけが心の底では笑っている。
「シンは盗んでいない」
空気を割いたのは、アザゼルの一言だ。
「アザゼル様。シン君を信じたいのは分かりますが、僕の財布は彼の鞄からでてきましたよ」
「そうだろうな?何故なら君が、シンの鞄に財布を入れたのだから」
「は?僕が間違えてシン君の鞄に入れたと?誰が自分の鞄を間違えるんですか」
「ルイーゼ、ミラン」
パチンとアザゼルが指を鳴らす。ルイーゼとミラン、それぞれが白い布の端を持ち、左右に広げる。
「証拠があるからだ」
ポンッ
アザゼルの手のひらに現れたのは小さなカメラ。今度はラグが青ざめる。
「まさか…」
白い布に映し出された映像には、財布をシンの鞄に入れるラグの姿が。
「従業員の貴重品管理も怠らない。小型の監視カメラだ」
「こんなの捏造ですよ〜。貴方はシン君を贔屓していましたから」
「コイツの言ってること、嘘」
いつも口数の少ない騎士、オルウェンが呟く。
「シン、朝から俺たちと一緒にいた」
「俺とオルウェン、シンで剣術の訓練をしていました。貴重品があるロッカーには行っていません」
ヒバリが付け足す。形勢逆転だ。
「爪が甘くなっていたらしいな?これまでの成功で気がゆるんだか?もっとも、わさと隙を見せていたんだが」
「どうですかね?他の方が僕の鞄からシン君の鞄に財布を忍ばせたとか…中身だけ抜いて、シン君に罪を着せるために」
「言いくるめるのが得意らしいな。だが、これは?」
アザゼルがポケットから出したのは小さなスティック型の機械。ボタンを押せば――
『アザゼル様は昨晩もルイーゼさんとミランさんとヤりまくったらしいですよ』
『シルビアさんが、貴方の悪口を言っていました…』
『魔王城は来月から労働時間が二時間増えるらしいですよ』
「ろ……録音機…いつ、そんなものを…」
「君は魔王城の秩序を故意的に乱した。悪質な嫌がらせには記録が大切だ…俺の大切な魔王城を穢した罪、洗いざらい暴いてやろう」




