表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/52

第19話魔王城内恋愛勃発


「で…できた」


総製作時間一時間半。ミランはついにフォンダンショコラを完成させた。


「凄いです!売り物見たいですよコレ!」


ルイーゼがはしゃぐ。皿の上には粉砂糖のかかった丸い焦げ茶色のスイーツが。ミランは照れくさそうに口元を抑える。


「それもこれも、アンジュ様のおかげですわ」


「いっいいえっそんなっ……ミランさんは言ったことをすぐ実践できるので…お、教えやすかったですし」


消え入りそうな声。聖女らしく胸元でぎゅと両手を組む。


「これでアザゼル様に喜んでいただける…本当にありがとうございました。ですが……これで勝ったと思わないで下さいましねっ」


「勝…え?な、なにか勝負してましたっけ…?」


「例え貴方が料理が上手でアザゼル様の胃袋を掴もうと、アザゼル様に長く、そして有用にお仕えしているのはこのわたくし。魔王城の経済はわたくしが支えていると言っても過言では無くってよ」


「あら、長く遣える。という点においてはミランさん。私の方ですね。ルイーゼはアザゼル様が"はじめて"召喚したメイドですから」


「っ、たった数日でしょう?それに、わたくしの方がアザゼル様にとって必要不可欠な存在ですわ!」


「アザゼル様の寝言を聞いたことは?口癖は?外を散歩した時必ずやることと言えば?アザゼル様の転生前のお話は?」


「うっ…」


「私が、アザゼル様の一番のメイド。ルイーゼです!」


「なっ何をえらそうに!貴方のそれ、メイドじゃなくてストーカーですわよ!今朝だってアザゼル様の寝間着をクンクンしていたの、知っているんですからね?」


「なっなっなんの事ですか?!そんなはしたないことしません!ミランさんこそ…拾ったアザゼルさんのハンカチ、そろそろ返した方がいいと思いますけどね!」


「んなっ?!ち、違いますの!あれは…すぐに返そうと……」


バチバチと火花を散らしながらも互いの恥ずかしい行為の暴露大会みたいになっている。アンジュは最初こそ止めた方が…等と思ったが、二人のやり取りに、口元が緩む。


「ふふ…お二人とも、アザゼル様が大好きなんですね?」


「だっ?!……大好きなんてもんじゃないですわ!あの方の魅力は一晩あっても語り尽くせないほどで」


「えぇっ!新人さんには分からないと思いますが、アザゼル様の素晴らしさは強さだけではなく優しさ」


「俺の話?」


厨房にひょこりと顔を出したのはアザゼルだ。ミランとルイーゼが悲鳴をあげて飛び上がる。


「おっ、なにこれ美味しそうだな?一緒にお菓子作りか?」


「あっ、えっ、こ、れは、その…」


ミランは頭の先まで真っ赤になると黙りこくってしまった。


「アザゼル様。ぁ、ぁの…み、ミランさんが」


アンジュも引っ込み思案。アザゼルの前だと言葉が出ず、もごもごしてしまう。アザゼルは少し屈むとアンジュの方へ耳を傾けた。


「ン?」


「ひぇっ……えと…ミランさん、アザゼル様のために、こちらのお菓子を、と」


アンジュは真っ赤な顔をしてアザゼルへと耳打ちする。


「えっ、これ食べていいってことか?」


「はっはいっ!その…拙いスイーツですが」


「そんなことない。お菓子作りとか俺全然できないし。いただきまーす」


バク、と豪快な一口。ミランは祈るように見つめる。


「んー!美味い!」


「本当ですか?!…はぁ、良かった…あぁでもアザゼル様。こちらはわたくしではなく、アンジュさんに教えていただいたもので…」


「そうなんだ?アンジュは料理上手だもんなぁ」


「っ…はい。アンジュさんはわたくしにはできないことができますの。わたくし、料理ではアザゼル様のお役にたてそうもありません」


「……」


アザゼルはミランの方を見たあと、バクバクと一気にフォンダンショコラを食べ尽くす。最後に指先で唇の端からショコラの欠片を拭う姿は女三人の胸を高鳴らせた。


「アンジュは料理ができる。ルイーゼは的確で効率的な人員配置ができる。ミランは経営全般のプロ。いろんな人がそれぞれの良さを集め合うから、この魔王城はホワイトになっているんだ。ミランにはミランにしかできない仕事がある。いつもありがとう。俺、毎日楽しいよ」


「あ、あ、アザゼル様ぁぁ……」


ミランのラベンダー色の瞳が潤む。ルイーゼもハンカチで目元を拭い、アンジュにおいては大号泣である。


「誰一人欠けてはならない。ひとり残らず、俺の魔王城に必要だよ」


「はいっ!わたくし、これからもっともっとお勉強して、アザゼル様のお役に経 たちますわ!」


「うんうん。それに新人のアンジュと親睦を深めてくれてたんだろ?助かるよ」


ミランとルイーゼは石になったように固まった。親睦を深めていたかどうかは微妙なラインだ。


「アザゼル様!少しいいですか?!」


「おぅシン。今行く。じゃあ、三人とも。おいしいスイーツありがとう。程々にして休めよ?」


アザゼルは呼び出しに向かっていった。ミランとルイーゼはちらり、新人アンジュを見遣る。


「はぁ……アザゼル様。素敵な方です……」


「アンジュさん!わ、わたくしはまだ貴方を認めていませんの!勝負はお預けですわ!」


「ふぇ?」


魔王城内恋愛は本日も乱れ模様(?)


次回、魔王城にはた迷惑な新人が――









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ