表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/52

第15話部下に残業押し付けるだ?処す


聖女アンジュの力により、イグルは復活。プライドを踏みにじられたい故に、こめかみには深く青筋が浮かんでいる。


「遅せぇんだよアンジュ!何のためにテメェを連れてると思ってる?」


イグルは大きく舌打つとアンジュの胸ぐらを掴む。


「ひゃぁっ!ごめんなさいごめんなさいっ!あの方の攻撃が早すぎて追いつけなくて…」


「言い訳すんじゃねぇブス!いいか?次はちゃんと発動させろ。じゃなきゃ次は爪を剥ぐぞ?」


「ひっ…わっわ、分かりましたよぉ……うぅ…」


「恫喝。脅迫。はぁ…アザゼル様の瞳に映すことすら憚られますわ。不合格者はさっさと始末して差し上げないと」


「調子に乗るのもここまでだぜ…」


遠巻きに攻撃していたイグルが突っ込んでくる。ミランは動じない。弓を引いて、突進してくるイグルの肩めがけ、放つ。


イグルは避けない。肩に矢が刺さっても痛みなど感じないと言うように。


「っ?!」


虚をつかれた。ミランが弓を引くよりもイグルのレイピアの方が速い。


「しまっ…」


やられる!ミランが身構えた時、目の前に現る、黒服を靡かせた男。


「あっ、アザゼル様っ!」


アザゼルは指先一つでレイピアを止めた。その眼光は鋭く、怒りに満ちている。


「…なんて、ことだ…お前っよくも、よくもこんなことができたな?!」


アザゼルが声を荒らげる。ミランは目を丸くしながらアザゼルの背から顔を出す。


「えっ…わたくしがつけた矢の傷が…無い?」


「あぁ。そのダメージは……」


アザゼルは眉間にシワを刻みながら聖女アンジュの方を見る。


「ぐぅっ!…っ…」


アンジュは肩を抑えて蹲り痛みに震えていた。ミランもアザゼルの怒りのわけを悟る。


「まさか…アンジュさんを身代わりに…くらったダメージをすべて彼女に押し付けていると言うことですの?!」


「ご名答。すげぇ便利だろ?アンジュは、人のダメージを肩代わりすることができる。死ぬような傷でも、だ。しかもアンジュの体は不死身。相手の苦しみを取り除いてやろうだなんて、正に聖女だ!」


「便利?肩代わり…?自分のミスや責任をアンジュに押し付け、手柄だけは横取りか。冒険者としても人間としても腐ってるな?」


「便利な奴を利用して何が悪い?実際アンジュも俺たちのお陰でいい暮らしができてるんだ。戦闘力はゴミ以下。出来ることといやぁ料理と洗濯だけ。俺のダメージの肩代わりくらいワケねぇだろ。どうせ死なないんだからな、聖女様は!」


「…人のノルマを横取りし、甘い汁を啜る奴。面倒事を他人に押し付けて、平気な顔して成果をあげる奴。お前は俺が心の底から嫌悪する人間像そのものだ。吐き気を催す邪悪め」


「は?何言ってやがんだ?邪悪なのはテメェの方だろクソ魔王様ぁ」


バキンッ


鈍い音を立ててイグルのレイピアが崩壊する。アザゼルは武器に触れていない。怒りに満ちた"睨み"だけで武器を崩壊させたのだ。


「はぇ…えっ?!えぇっ?!」


ボロボロのレイピアを前にイグルは狼狽える。アザゼルはイグルの肩に手を置く。イグルはダメージを負うことがないと分かっているのに、体が動かなかった。


「お前の始末だけは、俺がやらないと気が済まない」


「アザゼル様!しかしこの男に与えたダメージはすべてアンジュさんの方に…」


「あぁ。分かっている。だから…アンジュ」


「ッ…ひっ、あっ、ご、ごめんなさ」


肩の痛みに青ざめていたアンジュは錫杖を握りしめて縮こまる。きっとこれまで、たくさん傷つけられて来たのだろう。


(話しかけられただけで謝ってしまう。長年こんな環境にいたら、そうなるか)


「アンジュ、魔王城へ転職しないか?」


小刻みに震えていたアンジュもこの時ばかりは固まる。言葉の意味を数秒考え込んだ。


「え…?」


「君に見合う仕事はもっとある。人の痛みを癒す。素晴らしい能力だ。メディカル系の仕事場が合う」


「?……な、なにをおっしゃって、いるのか…」


「それから…君、料理できるの?」


「は、はい…好きで……?…??」


「イイ。凄くいい。君、魔王城へ是非転職して欲しい。君の力が、ホワイト魔王城には必要だ!」


真っ暗な闇を切り開く、魔王の一言。差し伸べられた血色の悪い手。アンジュは導かれるようにその手を取った。


「あ、あぁ、あの、お名前は…」


「アザゼルだ」


「…アザゼル様!」


ブラックギルドに苛まれ、陰を落としていた聖女の瞳に、光が宿った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ