第14話従業員管理スキルの真骨頂
「面接だぁ?いいなぁそれ?じゃあ俺は、ボインちゃんが俺の女に相応しいか楽しい面接な?おぃ。他のやつは手ェ出すな。俺がやる……」
イグルはレイピアを光らせると素早い突き技。しかしそこにミランは居ない。宙へと飛び上がり一回転しながら弓を引く。
関節の可動域は大きく放った後も美しいバク転にて着地だ。まるで体操競技選手のようだ。
「うん。いい柔軟性だな…あの体制から弓を放てるやつはそういない」
アザゼルは得意げに笑う。
「はい。でもミランさん、魔王城へ来た時より強くなってませんか?」
「確かに…ホワイトな環境がミランの実力を伸ばしたってことだな」
「そ、そんなことあるんですか?」
「ある。働く…戦う環境っていうのはパフォーマンスに直結するからな。今のミランなら、Sランクパーティにも負けない」
アザゼルの言葉通り、一撃で六連もの雷の矢を発射するミラン。イグルは身軽な体を捉えきれずついに矢が肩へ直撃。
「ぐっ…は、この女…やるじゃねぇか。魔王様に力でも分けてもらったのかな?俺も…本気を出さざるを得ないらしい」
イグルがレイピアを掲げると周囲に広がる光の剣。突き技と共に四方八方からミランの体を襲った。
「血しぶき上げて死にな!クソ女!」
迫り来る光の矢。ミランは慌てることなく、素早く矢を放つ。
「ラムズアロー」
瞬く紫の矢。稲妻と共に光の矢は全て消し飛んだ。
驚愕に包まれたのはイグルの方だ。
「下品な言葉遣い。減点一。人を見下す態度。減点二。貴方のような方は、アザゼル様のお傍に相応しくありませんわね」
「キサマ…調子に乗るなよ?」
「あっはは!イグル押されてる!負けてる!」
「負けてる負けてる。勇者にコテンパン」
「黙ってろクソ双子が!!テメェら後で串刺しにしてやる!…有り得ねぇ有り得ねぇ…この俺に逆らう勇者が、この世に居ていいはずがねぇ!」
再び光の剣が現れる。先程より光の輝きが強い。
「最高硬度だ!!テメェの鬱陶しい矢…ぶち壊してやる!」
青い瞳が余裕なく血走る。ミランは放たれた剣に対抗し、矢を放つが粉々。最高硬度というのは口だけでは無かったようだ。
「死ねぇ!」
イグルは勝ちを確信。剣が迫る中、ミランはニヤリと口角を上げた。
ミランは手を振りかざすと光の剣を片手で弾いて見せたのだ。これにはアザゼルも驚きだ。思わず立ち上がってしまう。
「ば、馬鹿な…最高硬度だぞ?!ドラゴンの腹をも貫く最高硬度の……俺の光がぁあっ」
「私気づきましたの。魔王城のホワイト環境で働くうち、力がどんどん漲ってくるのを。感じますの。アザゼル様の力が、私に分け与えられている感覚を!」
放たれる紫の矢。その場の誰も、スピードを追えなかった。矢はイグルの襟首を捉え、壁へと鋭く突き刺さった。
「あ……へ?」
イグルは壁にぶつかった衝撃に脳震盪を起こしながらも、何が起こったのか理解できず目を白黒。
ミランの完全勝利だ。
「ミラン!これは一体…」
ミランはふぅと息を整え、アザゼルの方を向く。
「ふふっ驚きまして?アザゼル様をビックリさせたくて黙っていましたの。アザゼル様。恐らく貴方様のスキルのお力では?」
「従業員管理…まさか」
アザゼルは従業員管理のウィンドウを開く。
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ミラン
連勤 2日
ストレス値 0
NEW 忠誠心 8/10
性格 バリキャリウーマン、新しいこと好き
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「忠誠心……」
「あぁ、なるほど。戦う時妙に力が漲るのはアザゼル様のお陰だったのですね?」
横から見ていたルイーゼが頷く。
「スキル従業員管理は契約すると相手の状態が分かるものだと思っていたが…忠誠心ってやつが上がると俺の力を分け与えることが出来るのか…!」
「アザゼル様のお力が私の体に流れ込んでくる…あぁ、なんて心地いいのかしたら」
身を捩りながらうっとり天を仰ぐミラン。色っぽい。
「ちょっと〜なにいい感じに盛り上がってるんだよ?気持ち悪いなぁ。アンジュ。ボサっとしてないでイグルのこと治せよ」
「治せ治せ。役ただず」
「ぁ、う…ごめ、ごめんな、さぃ」
「チッ、根暗な聖女だな」
アンジュと呼ばれた丸メガネの少女は躓きながらイグルの元へ。錫杖を構えると緑の光がイグルを包んだ。
「あら、回復魔法ですの?何度挑んできても、私には敵いませんことよ?」
スキル従業員管理により力を得た。ミラン。
しかし、Sランク冒険者パーティの聖女、アンジュにより、この後波乱が巻き起こる――




