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第13話Sランクパーティ来訪


魔王城は順調に領土を拡大し、施設の効率化を測っていた。


「えーと、農作物を加工するジャムとピクルス工場…生産系の施設は上場だな。だが…どうしたもんか」


アザゼルは執務室にて頭を抱えていた。


「アザゼル様。コーヒーお持ちしました」


「あぁ。ルイーゼ。ありがと。ルイーゼのコーヒーが一番美味しいよ」


「!…こ、光栄です」


ルイーゼは真っ赤になりながら笑う。可愛らしいなぁ。アザゼルは癒されながらいい香りのするコーヒーに口をつけた。


「それでアザゼル様。なにかお悩み事ですか?」


「ン?あぁ。働く場所はいいんだけど、メンタルケア系の施設が全然無いなって」


「メンタルケア…遊ぶところ、とかですか?」


「それも追々欲しいね。カジノとか酒場とかは早めに作っときたい。でも一個、めちゃくちゃ重要な娯楽がある」


「娯楽…」


「それは、食堂だ!!」


「えっ、今のじゃ駄目なんですか?」


「悪くはない。俺が召喚で手伝うこともあるし、今は持ち回りだからな。食うには困らない。だが、シェフが作ったような高級料理だとか、凝った料理…揚げ物とか食べたい!」


アザゼルはダンッとデスクを叩く。切実だ。


「なるほど。ではアザゼル様の召喚スキルでシェフを召喚しますか?」


「それがさぁ、ポンポン召喚してたせいか人はもう増やせないっぽいんだよね。だから魔王城に来る勇者とかパーティの中にシェフが居ればいいんだけど…」


◇◇◇


「ひとーつ」


バンッ


鈍い音と共にナイフが的へと突き刺さる。"的"に縛り付けられた少女は猿轡越しに悲鳴をあげた。


「ふたーつ」


次に放たれたナイフも少女の頬を掠め真横へと刺さる。薄皮が刻まれ、痛みと恐怖に少女の体が震えた。桃色の瞳からはボロボロと涙ばかりが。


それを見つめながらブロンドヘアを靡かせる男は楽しげに笑った。


「イグル。何時まで遊んでる?カイザー様から指令だぞ」


「指令だよーん」


よく似た顔をした双子少年達が顔を出す。

少女を括り付けた的にナイフを投げつけるという異様な行為に言及などしない。日常茶飯事だからだ。


「聞いてるよ。魔王の討伐だろ?ったく。俺たちSランクにお願いするってさーぁ。どんだけ弱いんだよ。今の勇者ァ」


イグルは最後のナイフを投げる。ナイフは少女のこめかみに――


「ッ!」


少女の目が見開かれる。しかし、刺さることはない。イグルが寸前で刃先を掴んでいたからだ。それでも少女を死への恐怖が襲ったのは事実。ガタガタと震え。涙を流す。


「さて、支度をするぞ。俺の可愛いマリオネット…」


助けを求める少女の声は、誰にも届かない――


◇◇◇


Sランクパーティは、ギルド内に三パーティしか存在しない。SランクとAランクには雲泥の差があり、こなす任務は少数であるのに高待遇。

Aランクパーティがこなせない任務ができた時のみ出勤するため、殆どは働かずして報酬を貰っているわけだ。


そんなSランクパーティの筆頭、イグルはひと月ぶりの依頼で、魔王城に向かっていた。


「ねーねーイグル知ってる?今から討伐する魔王城って、"勇者が消える魔王城"って言われてるんだよ〜」


双子の片割れ、ユリが身を乗り出す。


「クソどうでもいいな。勇者が何人死のうが大した問題じゃない」


「一応さぁAランクパーティがボッコボコだったらしいから、結構強いのかなぁってさ」


「Aランクは雑魚。俺たちでもボコボコにできる。参考になんねぇよ。それにウチには勇者はいねぇ。さっさと終わらせて、女囲って酒飲みてぇよ」


「……」


後ろを歩く三人の会話に聞き耳を立てながら、先頭を歩く少女は丸メガネを押し上げる。少女の名はサアサ。ジョブは、聖女である。


「まっ僕らが負けるわけないよね、ユノ」


「あぁ。圧勝、圧勝。だって俺達が傷つくこと、無い。無い」


「だなぁ…なんたって俺らには、聖女様がついてんだから」


高笑いする三人に、サアサは自分の体を抱きしめる。これから訪れるであろう、地獄の時間に身を震わせ、一歩一歩、魔王城へと近づいていく。


ギギ…


大きな扉を開けば、整列した騎士達に囲まれ、玉座に居座る男が一人。


あれが、魔王アザゼル。


「よぅクソ野郎。俺は光の貴公子、イグル様だ。俺の輝きの前に、消し炭になる覚悟はできてるか?」


向けられるレイピア。アザゼルは立ち上がると息を吸い込んだ。


「面接を始める。ミラン」


「はい」


「今日の面接官は君だ」


「光栄ですわ。お初にお目にかかります。貴方方がアザゼル様のお傍に相応しいか、見極めて差し上げますわ」


雷を纏う美しい弓が漆黒の床に輝いた。















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