第12話ホワイト化のコツは自動化
クラシカルメイド服を靡かせながらスキップにてアザゼルの部屋に向かうルイーゼ。小さなノックをし、中へ入る。
未だカーテンが閉じられた部屋は薄暗い。大きなベッドで眠りについているのは愛しの主だ。
「あぁ…アザゼル様。今日もなんて愛おしい寝顔。ほんと…食べてしまいたいくらい…」
ルイーゼは銀髪を耳をかけるとアザゼルの頬目掛け口付けを。
「ルイーゼさぁん?」
ぬるり、布団の中から細腕が。ルイーゼは絶叫しながら飛び退いた。
「きゃああっ!み、ミランさん?!」
アザゼルの布団の中に入っていたのはミランだ。長いラベンダー色の髪の毛を靡かせながら得意げに笑う。
「貴方今、アザゼル様にキッスしようとしましたわね?メイドとして有るまじき行為ですわ!」
「そ、それは…って、ミランさんはどうなんですかぁ?!」
ルイーゼが指を指す。ミランはアザゼルの腹部に跨っているのだ。
「あっアザゼル様の布団に忍び込み、寝込みを襲おうなんてはしたないです!」
「違っ…こ、これはアザゼル様を快適に起こして差し上げるモーニングサービスですわよ!」
「うぅーん…朝から騒がしいな。何?ってうわっ…み、ミラン?」
「あっ!おはようございますアザゼル様!おかげんはいかがですの?」
ミランはアザゼルの胸板に両手を着き淡く頬を染める。ワイシャツに包み込まれた巨乳を下から見上げるアングルだ。
「…悪くない」
アザゼルの視線は完全に胸。布団の中ではこれ幸いとばかりにミランの太ももに触れる。
「あっ、アザゼル様…ダメですわそんなっ…ンッ」
「……」
ルイーゼが顔を真っ赤にし、拳を握りしめながら震えるのは当然のことだ。ルイーゼはホウキをバトンのように回転させるとアザゼルの顔の真横に叩きつけた。
ドコォッ!
壁には巨大なクレーター。嫉妬に狂うメイドの勢いにアザゼルとミランは、ははは…苦笑い。
「お目覚めですか?ア、ザ、ゼ、ル、様?」
魔王城の朝が始まった。
◇◇◇
レッドカーペットに整列する従業員達。アザゼルは玉座にて足を組み、従業員管理ウィンドウを開く。
「はい。皆おはよう。今日の業務だけど――」
召喚メンバーと元勇者メンバー達に仕事を割り振る。もちろん無理のない、昼寝の時間も考慮した割り振りだ。
「魔王様」
周辺警護を行っている騎士、ヒバリが片手をあげる。
「ん?」
「ここ最近魔物が多く、その…昼寝の時間、というのが難しいんですが…」
「なんだと?」
アザゼルの低い声。従業員達はビシッと背筋を伸ばす。
口答えするな、か。黙って働け、か。それとも無理やり昼寝もしろ、か。
理不尽な物言いをされてきた勇者達は特に緊張感を持つ。
「それは由々しき事態だ!すぐに解消しよう」
玉座の間が驚愕と希望にどよめいた。
◇◇◇
アザゼルはミランとルイーゼ、秘書二人を連れて魔王城近辺の警護見学へ向かった。
次から次へと湧いて出る魔物。
「確かにこれは…」
アザゼルは指先一つで魔物を抹消しながらため息を零す。
「気を抜いてられんな。昼寝しようものなら食われそうだ」
「人員を増やしますか?」
「その場合の、利益の算出シミュレーションはお任せ下さい」
「二人とも…まだまだブラックな思考が抜けないようだな」
ミランとルイーゼは揃って首を傾げる。
「ホワイト化のコツ。それは、"自動化"だ!」
「自動化?」
「あぁ。見ていろ。リロード!魔弾砲!」
魔法陣から創造されるは4×4の鉄の筒がついた四角い大砲。
「これは…初めて見る道具ですわね。自動化って、まさかこちらで…」
「察しがいいな。ミラン。そう。コイツをぶっぱなして寄ってくる魔物を倒す。見ていろ」
体良く現れたゴブリン。魔弾砲の射程圏内に入った瞬間、魔弾砲が赤く輝き、魔弾を発射。
「ファイア!」
魔弾がゴブリンを捉え、一撃撃沈。ルイーゼがぴょんぴょん跳ねながら拍手をする。
「素晴らしい威力ですわ。ですがアザゼル様。魔力はいかが致しますの?アザゼル様おひとりのに負担がかかってしまうのでは?」
「そこは安心。この魔弾砲は"太陽光発魔"、だからな」
「太陽?発魔……?」
聞きなれない言葉。再び二人は首を傾げる。
「太陽の光エネルギーを魔力に変えて放つんだ。つまり、俺から魔力供給はいらない。太陽は曇りだろうと空の上でエネルギーを発しているからな」
「自然の力を魔力に…?!……な、なんて効率的なの…とても思いつきませんでしたわ」
「これで魔力問題も人員問題も解決ですね!……さすがアザゼル様…」
「勇者の頃は、いるメンバーで工夫して勝手にやれ、という丸投げ状態でしたのに……ミランは感激致しましたわ!利益を計算するのが楽しみですの!」
「ホワイト化のコツは自動化。いやぁ、勇者の頃、こうだったらいいなを叶えられるのは気持ちいいものだな」
魔王城に、魔弾砲が設置された。
騎士達のストレス値がマイナス50、された。




