第2話 VSドラゴン
宿屋に宿泊して二日たった。
例によって町が騒がしくなる。竜神と戦おうとするバカが本当に実在したのだ。
「なんだアレ」
俺は宿屋の上に立ち上り街を上から見下ろす。すると朝の日の昇る時間帯になって人が増え、次第に騒がしくなる。
「本当にいるんだなあ」
竜神はこの世界じゃ絶対不可侵の存在。神聖にしてアンタッチャブルな存在のはずだ。そのことを知らないのだろうか? あの冒険者たちは。冒険者のパーティーらしき数は五人ほど。俺の鑑定眼を持って能力を測ると、確かに腕に自信があると言うわけではある。それなりにできる奴らなのはわかった。だが、それは人間の内輪での話であり、竜神はそこに含まれない。
「ああ~、本当にこっちに来てるよ……」
遠くからこちらに接近してくる巨体が一つ。竜神だ。鑑定眼で見たからわかる。伝説的存在である竜神が本当にきちゃったよ。
「あの冒険者たちはなにを考えてるのやら」
俺は経過を観察することにした。とりあえずその場に座った。そして竜神が戦意満載の冒険者の一団に気付く。
「お願いです──どうか矛を収めてください!」
冒険者ギルドの職員なのだろう。必死に冒険者を止めている。
「知るか。俺は竜神に勝ってドラゴンスレイヤーの称号を手に入れる。その邪魔はさせない」
「正気なのですか!」
あの冒険者、正気か? ドラゴンスレイヤーの称号って、教会の連中に知られたら処罰ものだぞ。ドラゴンは倒すような存在ではない。ただ眺め過ぎ去るのを待つのだ。
そうこう言っているうちにドラゴンは呆れたような鼻息を鳴らした。
「我を殺すと言うのか。冒険者の一団よ」
竜神が人の言葉で語りかけてきた。音ではなく念話の類だ。竜神は念話でこの街の住人すべてに語りかける。
「そうだ。俺はお前を倒し、名誉を手に入れる!」
「ふむ、我を殺しても大罪人になるだけなのだが……」
そこでギルドの職員が待ったの声をあげる。
「違います竜神さま! この者はこの国の王女と結婚するためあなたさまを討伐しようとしているのです」
竜神が呆れたような目になった。俺もついため息と細い目が出た。なんだそれ。人迷惑な条件だ。つまりあの冒険者は、王女さまとの結婚を認めてもらうためあの竜神を倒そうと言うらしい。
「ふむ、まあよい。とりあえず好きにかかってくるとよい」
冒険者の一団は一斉に竜神に飛び掛かった。一人は補助魔法を前衛にかけ、一人は回復の用意、そして三人がかりで低空飛行している竜神にそれぞれの武器で切り込む。
「ほれ──」
それを竜神は鼻息を溜めて吹き出した。どうやら精霊たちもあの風に乗っているっぽい。
「「「──ッ!」」」
三人とも思いっ切り吹き飛ばされて街の外壁に身体ごと突っ込んだ。
「うわあ、痛そう」
俺はつい声に出してしまった。
三人の冒険者は外壁からあふれ出る土煙の中から立ち上がってくることはなかった。




