表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の異世界生活はどうにも波瀾万丈なようです。  作者: 有木苫占
第三章 男児はつらいよ ~僕とおじさん

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/106

27 魔法少女の杖

 温泉水で濡れた地面の黒っぽいシミが水魔法で浸透させると薄くなり、ムクムクと地面が動いた。


「なんだかわからないけど凄そうですね」


 セドリックの言葉にサイラスは頷いた。

 地中の中で土が攪拌されていても表面はちょっともモコモコしているだけで地味な魔法だ。


 しばらくすると土の動きが止まった。


「終わりですか?」

 

 セドリック言葉に立ち上がった傷痍騎士達は頷いた。


「ばっちりですよ。何か植えますか?」


 土地を触ったシーナの言葉に傷痍騎士達は安堵の表情を浮かべた。


「すぐに育って食べられる物がいいから葉物野菜かな?」

 

 僕の提案にノンが頷くと、賢い兎ですね、と笑いが起こった。


「フカフカの土だから根菜類も捨てがたいわ」


「選べるほど種をお持ちなのですか!」

 

 サイラスの疑問に、あります、と答えたシーナは収納ポーチからいろいろな種を取り出した。

 葉野菜、根菜、果実の種もあった。


 僕は人参、ノンは蕪の種を選び、お互いの好物を選んだ、と笑いあった。サイラスとセドリックは種から作物をイメージできないのか迷っていた。


「ここは長期的視点を持って果実を選ぶべきでしょうが、食べられるまで数年待たなくてはならないので悩みます」

「柔らかいお肉が食べたいです」


 セドリックの珍回答に傷痍騎士達は腹筋を身体強化して笑いを堪えたが、僕とノンとサイラスとシーナは爆笑した。


「家畜を育てるのはもう少し先の話になるかなぁ。でも、畑のお肉と言えば、豆類だね。……あるの!凄いな、大豆があったら嬉しいんだけど……あるんだ!」


 畑の肉?と首を傾げるセドリックに、豆は栄養たっぷりですよ、と護衛騎士が説明した。

 セドリックは豆のスープが苦手だったな。

 

 シーナの収納ポーチは何でも入っているなぁ。


「……そんなにたくさんは植えられないでしょう?」


 サイラスの指摘に僕は傷痍騎士達とフカフカになった土地を見比べた。

 まだやれるかな?


「疲れましたか?……そうですか、まだイケますか!」

 

 僕が視線で畑の拡張を提案すると、傷痍騎士達が晴れやかな笑顔で、やれます!と答えた。


「それでは、次はアル様なしでやってみましょう。理論上は、水魔法の魔力の流れに土魔法が合わせられたらアル様なしでも同じようにできるはずです」


 水魔法で精霊素を使い過ぎないうちに土魔法をかければ、僕が精霊素を呼ばなくても同じようにできるはずだ。


 やってみます!と傷痍騎士達は快諾した。


 


 僕を除いた面々で同じ手順でやり直すと結果は大成功したが、傷痍騎士達の魔力負担が多かったようで傷痍騎士達は終わると同時にしゃがみ込んだ。


 シーナはすかさず飲料用の温泉水を傷痍騎士達に配り、騎士達は回復すると、ハァと一息ついた。


「何をやっているんだい?」


 療養所の裏手にひょっこり現れたのは青年アダムをつれたサミュエル叔父と護衛騎士達だった。

 夕方に戻るとのことだったのに早いじゃないか。


「サミュエル叔父上!畑を作っているんですよ。」


 下手に興味を持たせないようにと魔法の(くだり)を省いて説明したのに、サミュエル叔父は土質を確認しているシーナの横にしゃがみ込んだ。


「ご興味がおありですか?」

「ああ、薔薇を植えるのに良さそうな土ですね」


 園芸に興味があったのか。


「サミュエル叔父上!薔薇は家畜の次ですよ。まずは美味しい食べ物をここで栽培する事から始めます!」


「備蓄食料があるじゃないか」


「フフフ。王太子離宮のガーデンパーティーの噂を聞いたことがないのですか?美味しい物には新鮮な食材が欠かせません!」


 花より団子!と主張すると、ハハハ、とサミュエル叔父は笑った。


「これっぱかしの土地では腹の足しになるような量は作れまい。花でも植えて愛でた方が療養中の騎士達の心が安らぐだろう」


 サミュエル叔父の言葉に青年アダムだけが頷いた。


「なんだ。皆、乗り気ではないな」


「叔父上、皆で植える種をもう選んでいたので、私達は食べ物がいいのです」


 サイラスは僕とセドリックの前に立ちサミュエル叔父から僕達を遠ざけた。そんなに露骨に警戒しなくてもいいのに。

 僕も最初はこの人を警戒していた事は、この際棚に上げておこう。


「ああ、それはすまなかったね」


「花を植えたいのでしたら、アダムさんがお手伝いなさればいいのではないでしょうか?」


「そうですね。アダムさんが手伝ってくだされば、僕がいない時でも土を作れますね」


 シーナの尻馬に乗って青年アダムの魔法にバフをかける能力を利用する流れに持っていった。


「もしかして、シーナ様はアダムの詠唱魔法を解読して魔術具を作ってしまったのですか!?」


 サミュエル叔父の指摘にみんなの視線が僕が持つ杖に向かった。


 この杖は魔力を流すとただ光るだけなんだけど……。面倒な説明はシーナに任せるつもりで視線をシーナに向けた。


「特殊な属性の魔力が必要なので、使い手を選ぶタイプの魔術具です。普通の人が使っても魔石が光るだけですよ」


 うん。嘘はついていない。精霊達の言い訳を聞き慣れているシーナらしい説明だ。


 さすがシーナ様です、と青年アダムは杖を作ったシーナに尊敬のまなざしを向けた。


「なるほど。この杖の魔法はアダムさんの開発した魔法だったのですか。アダムさんは他人の魔法効果をあげる詠唱魔法の使い手で、王都の流行り病の治療の時にアシストしていただいたことがありました。あの時はありがとうございました」


 軍医の説明でアダムの凄さを理解した面々は、ほう、とアダムに注目した。


「うん。私もアダムのお陰で予定よりも早く戻って来れた。土を作る手伝いもしてやれるだろう?」


「はい。どういった原理かの説明があれば、お手伝いできるはずです」


 傷痍騎士達から詳細を聞き出したアダムは、大丈夫です、と即決した。


 アダムを交えて魔法を行使しても問題なくできた。今回の傷痍騎士達の魔力負担はそれほど多くなかったようで笑顔で、もう一度できます、と言った。


 青年アダムと傷痍騎士達が土づくりに励む横で、僕達はシーナの指導の元畝を作りそれぞれが選んだ種を蒔いた。


 サムエル叔父は畝を作るための祝詞を開発して披露すると、現場で即魔法を作れるのですか!とサイラスは感動した。


 ヘンタイサディスト未満だった叔父だけど、能力高いんだよね、この人。


 ちょっとした悪ふざけで僕が、大きくなあれ!と魔法の杖を振ると急に発芽するようなことは起こらなかった。


「変化なしですね」


 セドリックががっかりした。


「ごめん。魔力を込めていなかった。だって、温泉水だけでどれだけ成長が早くなるかを見たかったんだ」


 王子様の僕が毎日畑仕事をするわけにはいかないだろうから、傷痍騎士達だけで発芽する条件を調べた方がいいのだ。

 

「その杖を貸して貸してもらえないだろうか?鉢植えで試してみるくらいかまわないだろう?」


 土魔法で鉢を作ったサミュエル叔父は苺の種を選んでいた。


「申し訳ありませんが、殿下の属性では杖が光るだけです」

「試してみるくらいいいんじゃないかな?」


 物欲しそうに幼児の玩具を見るサミュエル叔父の気のすむようにさせた方が、後でからまれなく済むだろう、と思いシーナに提案すると、シーナは頷いた。


 うわぁ。

 中年叔父さんが魔法少女の杖を持って楽しそうに笑っている。


「土に植える前に温泉水を含ませたこの薄布の上で種が発芽するかどうか確認しましょう」


 シーナはガーゼを二枚用意して僕とサミュエル叔父に手渡した。


 僕とサミュエル叔父は小鉢の中に土を入れ、その上に温泉水を含ませたガーゼの上にパラパラと苺の種を蒔いた。


「元気に発芽してね!」


 心の中で精霊素達に、おいでおいで、と呼びかけながら魔法少女の杖を光らせてブンと振り回して決めポーズをすると、教育番組の成長記録映像のように種が膨らみ新芽がニョキと伸びた。


 おおお、と歓声が上がった。

 僕も声が出ちゃったよ。


 これはね、集まってきた精霊素の影響だけじゃないね。小鉢のそばに精霊達が集まっている気配がするから、めちゃめちゃ精霊達が干渉しているに違いない。


「いい感じに発芽したから、そのまま鉢に植えても問題ないわね」


 シーナの指導の元、葉の具合がいい芽を選別して小鉢に移植した。


「叔父上も試してみますか?」


 魔法少女の杖を受取ったサミュエル叔父は、元気に発芽してね!と僕とそっくり同じポーズで魔石を光らせて杖をを振った。


 いいねぇ。王族の豪華な衣装で月に代わってお仕置きのポーズをきめてくれたよ!


 内心げらげら笑いたいが腹筋を身体強化して耐えた。


「ちっとも変化はありませんね」


 セドリックの言葉にサミュエル叔父はがっかりして僕に杖を返してくれた。


「アダムさん!ちょっと来てください!」


 シーナは傷痍騎士達と土づくりを続けていたアダムを呼んだ。




「元気に発芽してね!で、こんなに成長したのですか!」


 呼びつけられた青年アダムは僕とサミュエル叔父の小鉢を見比べて驚きの声を上げた。


「目の前で見ていたが、魔法がどう働いたかは全くわからなかった!」


 サミュエル叔父の言葉にサイラスと護衛騎士達は頷いた。


 それはそうだよ。

 僕はポーズをきめた以外、何もしていないのに精霊達が勝手にやったことだもん。


「なるほど、そうですね。苺の種は魔法をかけられたのではなく、温泉水の効能を自身の魔力に馴染ませたようですね」


 魔法の痕跡を発見できなかった青年アダムの導き出した結論にシーナは頷いた。


「できるかどうかはわかりませんがやってみましょう!」


 青年アダムは右てに小鉢を抱え左手で口元を隠して祝詞を唱え始めた。


 結論から言おう。

 青年アダムも発芽に成功した。


 ただし、僕達が種まきを終えて大浴場を堪能し、夕食の時間になった頃、青年アダムは発芽した小鉢を見せに来てくれた。


 この人も能力が高いのだけど、時間がかかるのが難点だよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ