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僕の異世界生活はどうにも波瀾万丈なようです。  作者: 有木苫占
第三章 男児はつらいよ ~僕とおじさん

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21 叔父さんとのしばしの別れ

 その後、なんやかんやを話した後、僕はノンをセドリックの間に挟んで川の字で眠りについた。


 セドリックとノンの穏やかな寝息が聞こえた。

 精霊達は点滅を止めていたけれど、そばにいる事を感じた。

 精霊の赤ちゃんは僕の掌で他の精霊達き包まれている。


 精霊素、おいでおいで、精霊の赤ちゃんはもう少し精霊素が欲しいんだって。

 元気いっぱいに育つんだよ。


 掌の精霊達が、ありがとう、と二回淡く点滅するのは瞼の裏に感じながら深い眠りに落ちた。




「やったー!」

「トニーの背中に木刀が当たった!」

「……!」


 翌朝の稽古で僕とセドリックとノンはトニーとシーナの助言から学び立ち位置をころころ入れ替えた。


 僕がトニーの小手を狙い、ジャンプしたセドリックが上段の構えでトニーの頭部を狙う最中、ノンが背後から打ち込み、全ての打撃をかわされた瞬間、ノンはトニーの股をくぐり抜け、股間を狙って木刀を振り上げた隙に、僕がトニーの背後を打つことができた。


 相変わらず汚い戦法だが、やっとトニーに当たった!


 見物していた大叔父やサミュエル叔父達から、やりましたな、と拍手が沸き上がった。


 二人と一匹は見物人に手を振るとトニーを振り返った。


「痛くなかった?」

「これぐらい大丈夫です。それより、ノンの一打を食らったら危なかったよ」


 トニーの言葉に大爆笑が起こった。


 僕はシーナに目配せするとシーナは頷いた。


 笑う口元を隠す仕草でアップウの呪文を誤魔化し、夢中になり過ぎて寸止めできなかったトニーの背中を癒した。


 精霊素が木刀が当たった場所に集めるように念じると癒されたトニーは僕とシーナをに小さく頷いた。


 昨晩、アップウの呪文で僕がトニーの魔力を使っていることをシーナに早々に指摘され、紙での検証だけでなく癒しで魔法の精度を試す事にしたのだ。


 癒やすからといってトニーを木刀で殴打していいわけではないが、何としても一発決めたい衝動でためらいなく打ち込んでしまった。

 寸止めする技術を磨かないといけない。



 

 稽古が終わると着替えの時にシーナにトニーの状態を確認してもらった。


『青あざもない完璧な癒しだったよ』


 朝食の席でシーナが精霊言語で結果を知らせてくれた。


『通常の癒しより一瞬で痛みがなくなったらしいわ。この程度の癒しならトニーの魔力使用感もそれほどなかったみたいだから、毎朝使っても問題なさそうよ」


 紙に魔法をかけても成果は出でも感想は聞けないが、トニーなら詳細な感想を聞ける。

 温泉水の回復効果も薄くなったからこれからはトニーに積極的に癒しの魔法をかけていこう!


「公爵領滞在の最終日にアルフレッドがトニーに一発入れるところを見れて良かったよ」


 サムエル叔父の発言に僕とセドリックは、最終日?と聞き直した。


「ええ。魔術具の設置の準備ができたからサミュエル殿下一行は朝食後に出立する事になったのですよ」


 大叔父が答えるとサミュエル叔父と叔父の背後に立つ青年アダムは残念そうに頷いた。


「王家の騎士団を遊ばせておくのもなんですから、少しばかし騎士を派遣して砦の移築を急がせたのです」


 サミュエル叔父を大歓迎しつつも大叔父は手を回していたようだ。

 公爵領は大叔父に任せておけば安泰だ!


「砦ごと魔法で移築するんですよね。見てみたかったです」

「魔法学校に入学したら公爵領の騎士団の見習いとして見学できますよ」


「アルフレッド様。王都の魔法学校に進学した方が蔵書が多いですよ!」


「アルフレッド殿下は王都の魔法学校でも領都の魔法学校でもどちらに進学されてもいいのですよ。長期休暇にここに戻ってきてくだされば」


 僕を王都で進学させたいセドリックの発言を大叔父は否定しなかった。


 ありがたい。

 命からがら逃げてきた母の実家の実家。

 こんな僕がいつでも帰って来れる場所がある。

 まだこの土地で僕が成すべきことを何もしていないのに、誰にでも愛された母の子だというだけで受け入れてくれる大叔父の言葉に胸が熱くなった。

 ここにいるためにはここで必要とされる人物にならなければいけない。


「精一杯頑張ります!」


「アルフレッドは頑張っているよ。トニーとの稽古の成果は目を見張るものだ。ああ、セドリックも頑張っている。二人ともひとかどの人物になる事を期待されているし、そうなるべきなのだが、今は親族から愛されていることをただ享受していてほしい。それが、人生の転機に判断に迷う時に確かな指針になる」


 サミュエル叔父の言葉の意味をどこまで理解したのかわからないが、セドリックが感銘を受けたような表情で頷いた。


 ヘンタイサディスト未満の叔父がその道に踏み込むきっかけが、()さぬ仲でも愛してくれた義母へ力添えをするため神学校に進学したからだとしたら、力み過ぎるとろくなことにならないという反面教師と思った方がいいのかな。


 掌の中の新米精霊が、愛っていいよね、と感銘を受けたかのようにくすぐったいような思念を発した。

 まだ六歳なのに擦れた思考回路になるのはよくないよね。

 新米精霊には、愛情たっぷり、栄養たっぷり、という事で精霊素を呼んであげよう。


 ハハハ。ちょっとだけ大きくなったね。育ってる育ってる。


「アルフレッド王子殿下の成長が楽しみです」


 僕とセドリックを交互に見てにんまりと微笑む青年アダムの微笑に何か違和感を感じた。


 あっ!

 セドリックが僕の未来の妻の部屋に宿泊しているのは、淡いBLの芽生えを催すイベントではなく、セドリックが自身の護衛を連れて来なかったゆえの合理的な部屋割りなのに、心が清らかでない青年アダムは何やら(よこしま)な妄想をしているな!


 シーナは涼しい顔をしているけれど腹筋を身体強化している。

 まあ、そんな真相なんて知らなくてもいいや。



 朝食後、なんやかんやで仲良くなったサミュエル叔父の一行を見送ってから青年アダムから学んだ精霊素を集めて魔法を行使する検証をした。 

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