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僕の異世界生活はどうにも波瀾万丈なようです。  作者: 有木苫占
第三章 男児はつらいよ ~僕とおじさん

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10 お茶会の主人公

「あながち間違っていると言えないところが微妙なのよね」


 ラウンドール王国の王族はヘンタイだらけと発言した僕の言葉を受けたシーナの言葉にノンは頷き、トニーは唇が白くなるほど噛みしめた。


「あのね。愛を貫くために寿命が縮まる(まじな)いを行なうのも、純愛とみるか、愛にとち狂った、と考えるかは見解の相違でしかないのよね」


 亡き母を熱愛していながらも生前の亡き母の行いの全てを肯定的に見ていたわけではないだろうトニーはシーナの言葉が響いたのか噛みしめていた唇を解いた。


「叔父上のお茶会に出席するとどんな展開になるのかな?」


 断っても押し掛けてくるのなら、お茶会に出席するのもありだろう。

 シーナの周りに精霊達が集まっててんでばらばらな色で輝いた。


「……あー、久しぶりにうるさいわ。アップウ!」


 精霊達は淡い光に落ち着いた。


「王宮からアルが連れて来ちゃった精霊達は躾がなっていないから声高に主張してそれに負けじとほかの精霊達も声を強めたから、頭がくらくらしちゃったわ」


 精霊達は申し訳なさそうに淡い光を揺らした。


「第二王子は、いえ、王族たちはヘンタイではなく、ちょっと変わった性癖、という事で一旦落ち着いてもらったわ」


 精霊達にはそれぞれの推しの王族がいるのに全員まとめて僕がヘンタイ扱いした事への抗議がシーナに集中してしまったようだ。


「はい、申し出は順番に、最初に声を弱めた子から……」


 シーナは幼稚園児に話しかけるように精霊たちに指示を出した。


「お茶会の内容は状況次第でだいぶ変わるようね。まあ、第三王子がアルと話したい本題は、メリーアン妃がシャオ王国で幸せだったかどうかね」


「温泉地にまつわる話じゃないの!?」


「あれは本当に思い付きで口にした事みたいね。まあ、それでも本気で行きたかったらしいよ。……ああ、その話の続きは知りたくない!」


 何の話をされたのか知らないがシーナは精霊達を止めた。


「母上の話をするくらいなら行ってもいいんじゃないかな?」


 トニーもノンも納得がいかない表情をしつつも頷いた。





 第二王子の離宮は庭はそこそこ広かったが居住部は二階建小さな建物だった。


「狭いところですがようこそお越しくださいました」

「お招きありがとうございます」


「結婚したら広い離宮を用意する、と言われていますが、今のところ連れ添いたいと思える伴侶に出会えていないのです」


「トニーもシーナも独身なので、僕はいい人がいないかなと思うのですが、本人たちにその気がないようですね」


 護衛としてでなく招待客として参加しているトニーとシーナは頷いた。

 王家から借りたマントを身に纏っているシーナは僕達にも似非占い師の男と見えていた。叔父の離宮の従業員達も見たところ男性ばかりだから、男だらけのお茶会だ。


 上着を預かろうとしている従者はシーナのマントが国宝級のマントだと近づいてから気付き、どうしたものか、と固まってしまった。


「女性が苦手ではないのだが、男性に囲まれている方が落ち着くのでシーナ様にはマントを着たままでいてもらってよろしいですか?」


「はい。私も男装をしている方が落ち着きます」


 第二王子とシーナのやり取りに肩をなでおろした従者の前に躍り出たノンはレースのエリザベスカラーのマントをサッと脱いで従者に手渡した。

 ゴージャスなマントは可愛いけれど飲食には適さない。


 ノン用のお茶と茶器とお菓子を持参しているので手土産と一緒に従者に渡した。

 中を検めた従者はノン用の小さな茶器を見て、可愛いらしい、と口が動いた。




 案内されたティールームはバルコニーに面していて庭の花を楽しめるのにテーブルの上には見事なフラワーアレンジメントがたくさんあった。


 第二王子は芸術だけでなく花を愛する王子様なのか。


「うわー!器用にカップからお茶を飲めるんだね。カップの方が魔術具なんだ!」


 シーナがブレンドしたノン専用の野草茶をカッコつけて飲んだノンを見て第二王子は大喜びした。


「ノンの魔力に反応して前足にくっつくようになっています」


「お茶菓子は両手で持てるんだ!いやはや、可愛らしいね」


「よく僕の真似をする子なので、シーナがノンのために魔術具を用意すると、さらに器用になるからどんどん魔術具の種類が増えてしまいました」


 お茶の席での話題はもっぱらノンが独占した。


「教えてできるようになるとは思えないから、やっぱり特別な子なんだね」


 第二王子の言葉にノンは優雅に微笑んで頷いた。


 廊下の方から、お待ちください!と叫ぶ従者の声がするとドタバタした足音が近づいてきた。

 今日は僕の護衛ではないのにもかかわらずトニーの全身に魔力が巡りいつでも立ち上がって侵入者に切りかかれるようなオーラを出した。


「申し訳ない。呼んでいない客が来てしまったようですね。ですが、部屋の警戒レベルを上げているので扉は開かないから大丈夫です」


 第二王子の言葉通り侵入者は扉をドンドン叩いてガチャガチャとドアノブを回すが扉が開くことはなかった。


『サミュエル!僕を締め出して、可愛い人を招き入れているなんて酷いじゃないか!』

「犯罪者をこの部屋に入れるわけにはいかない!」


 侵入者は戦勝パレードで緑の一族の衣装の少年を襲おうとしたサミュエル叔父の愛人か!

 サミュエル叔父を王都に引き留めておくために、未遂だったから、と愛人の減刑を伯父上に求めたのが裏目に出てしまったようだ。


「……あのう。叔父上のいい人でしたら、そんなにつれなくしなくてもいいんじゃないでしょうか?」


 僕の言葉に、サミュエル叔父とトニーとノンが、人違いとはいえ被害者になるところだった僕がそんなことを言うのか!と驚いた表情で僕を凝視したが、シーナは、痴話げんかに口を挟むな!と言いたげに白目をむいた。


 咳払いをしたサミュエル叔父は、首を横に振った。


「おそらく、その方はこの場で一番かわいいのが兎だと知らないから大騒ぎしているのでしょう?見てもらったら落ち着くはずですよ」


 僕の言葉に全員の視線がノンに集まった。


「殿下が扉の向こうの人物にまだ愛情があるのでしたら、見てもらうのが一番早いでしょうね」


「私が立ち上がりその方の前に立つことをお許しいただけましたら、()()()()()()()()対処できます」


 うんざりしたようなシーナ口調とトニーの語気を強めた言葉にサミュエル叔父は頷いた。


「本日のお客様が寛大だから、アダムの入室を認めてくださった。粗相をしないと約束できるのなら、扉を開けてやろう」


『決してこれ以上、失礼な態度はとりません』


 アダムと呼ばれた男性が誰に対して非礼をしないと言ったか定かではないのにサミュエル叔父は扉を開けた。


「お騒がせいたしました。私が神学生の時代から懇意にしている友人のアダムです」


 叔父にアダムと紹介された男は大きな瞳のせいで童顔っぽく見えたが、目尻に小皺がある年齢だった。


「お茶会をお邪魔してしまい申し訳ありませんでした」

「さあ、問題です!この場で一番可愛いのは誰でしょう?」


 僕が問答無用で問いかけると、殿下です、とアダムは即答した。


「残念!不正解です。伯父上も叔父上の家の従業員も全員、ノンを一目見るなりノンの魅力の虜になっていますよ」


 僕の言葉に全員が頷いた。


 青年アダムがベストを着たノンをまじまじと見ていると従者がフリフリレースがたくさんついたノンのマントを持ってきて広げて見せた。


「……確かに兎が一番可愛らしいですね」


「落ち着いたようですね。アダムさんに席を用意して差し上げてください」


 僕が叔父に頼むと青年アダムは膝から崩れ落ちた。


「申し訳ございませんでした!」


 無礼に対する謝罪なのか、僕を攫おうとした事への謝罪なのかわからないが、青年アダムは土下座をした。


「洗礼式前の子どものお茶会ですから多少騒がしいのはご愛敬です」


 優雅に事を治めようとすると、どっちが子どもなのか、と叔父が小声で突っ込んだ。

 青年アダムはそれでも顔を上げなかった。


「アダムさんは戦勝パレードで何か企んでいたようだけど、それについてはブライアン伯父上が適切に対処してくださるはずですから、顔を上げてください」


 被害者は僕ではないのだからその件で僕に謝罪されても困るのだ。


「僕はとんでもない勘違いをしていました。シャオ王国はサミュエルが唯一愛した女性を奪った憎むべき国でたとえメリーアン王女様の遺児といえどシャオ王国王子を許すべきでない、と思い込んでアルフレッド王子を襲う計画を立てました」


「いや、その罪はこれから裁かれるだろうから、一旦置いておいて、何で今日のお茶会に乱入しようとしたの?」


「保釈された時にサミュエルが可愛い人をお茶に誘ったという噂を小耳に挟み、僕がサミュエルのために侵した過ちで収監されている間に、サミュエルが新しいお気に入りと見つけたんだと勘違いしていしまいました」


「話が全然見えないのだけど、叔父上はシャオ王国を憎んでいるのですか?」


「いいや。メリーアン姉上の事を案じてはいたが、愛する男と結ばれたのだからどんな苦労も耐えられるのだろうな、と考える事がよくあっただけだ」



「事前調査の情報と違うようですね。アダムさんは伯父上の愛人で間違いないですよね」


 サミュエル叔父と青年アダムは頷いた。


「アダムさんは僕が新たな伯父上の愛人になるかと危惧して僕を襲うつもりだったのですよね」


「……そうなってしまうのではないか、と疑念を抱いたことはありますが、シャオ王国を憎むべきだ、との思いの方が強かったです」


「私の占いはあながち間違いじゃなかったのか。サミュエル王子殿下はそこまでシャオ王国を憎んでいないのにアダムさんはなぜそう思ったのですか?」


「メリーアン王女様の親衛隊の女性達の噂でそう聞いていました」


 貴族の派閥関係による権謀術数とかじゃなく、そっちなのかぁ。

 母上についていけなかった親衛隊の女性達はシャオ王国を憎んでいても仕方がない。


「叔父上とアダムさんはきちんと話し合った方がよさそうですね」


 コミュニケーションが足りていない恋人たちは思い込みで出実力行使に出る前によくよく話し合うべきだよ。

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