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僕の異世界生活はどうにも波瀾万丈なようです。  作者: 有木苫占
第三章 男児はつらいよ ~僕とおじさん

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7 僕のもう一人の叔父さん

 コンラッドとサイラスとイザベラがガーデンパーティーに合流する頃にはすっかりお腹が膨れた僕とセドリックはノンと一緒に影踏み鬼ごっこをしていた。


「パレードは無事終了し、予想通りの収穫があったようですわ」

「「僕達の密偵が市中で目視した情報だから間違いないよ」」

 

 イザベラと双子達は王族スマイルを浮かべていたが具体的な話になると鼻息が少し荒くなった。

 おいおい、コンラッドとサイラスは個人で密偵を雇っているのか!

 いや、まだ未成年だから魔法学校で同級生を舎弟にしているのかもしれない。


「圧倒的にラウンドール王国の方が優勢な状態で長らく戦況が膠着していたから、軍事特需で潤っていた派閥が完全終結を面白く思っていない事から、何らかの妨害工作があるのではないかと、父上は考えていたんのです」


「まあ、戦争は終結してしまったんだから、今さら連中が何をしたって嫌がらせでしかないんですよ」


 コンラッドとサイラスの説明に僕とノンとセドリックは頷いたが、たぶんセドリックは、嫌がらせ、という言葉しか理解していないだろう。


 伯父上が戦争で荒稼ぎしていた舅の侯爵の肋骨をバキッと折っても、反対側の肋骨がまだピンピンしていたのだろうか。


「王宮のバルコニーから市中のパレードの様子を見ても、にぎわっている様子を高いところから眺めているだけだったので、私達には何事もなく終わったかのように見えましたのよ」


「トニー様とシーナ様は父上の部隊の真ん中にいました」

「白馬に跨り真っ白なベールを被るシーナ様と赤い鎧の魔法剣士のトニー様は格別に目立っていました」


 いいな、見たかったな、と言うセドリックに、視力強化をしなければ見えなせん!とイザベラが遠くから見ていたことを強調した。


「二人の前を真っ白なポニーに跨った緑の服の少年がアルフレッド様の代役だったのですが、観衆からばらまかれた花吹雪の中に呪いの花びらが紛れていたようで少年は気分が悪くなり、途中で馬車に乗り換えました」


 鎮魂の儀式に緑の一族がかかわっていたことを明示するために、僕は緑の一族の民族衣装を伯父上に貸していた。

 僕のアオザイを着た少年は長い黒髪のかつらを被りニーナの代役を務めたから厳密には僕の代役ではない。


「パレードの行進に影響がなかったので、バルコニーからはそんな事があったなんて気が付きませんでしたわ」


「シーナ様とトニー様が王城に到着した時に少年の乗ったポニーがいなかったから僕達は気が付いたんだ」

「本物のアルフレッド様ではないから入城する前に下がったのかと思っていたけれど、市中の特等席にいた僕達の密偵が、花びらがかかった代役の少年の体がふらついたので馬を降りたシーナ様がポニーの手綱を取り、少年を保護して後方の馬車に乗せるのを目撃していたんだ」


「……密偵ですか」


「「僕達の親衛隊の中から精鋭達を厳選して密偵として鍛えているんですよ」」


 僕の呟きにコンラッドとサイラスはニヤリと笑いながら言った。舎弟ではなく親衛隊だったのか。


「はいはい。緑の一族の少年役の子は無事でしたよ」


 パンパンと手を叩きながらシーナが合流した。シーナは聖女服ではなく、いつもの緑の一族の衣装に着替えていた。


「少年が気分が悪くなったのは人酔いしたからですよ。観衆から投げられた花びらに呪いはありませんでした!殿下たちのご学友の魔法学校生は、後片付けが楽になるように花びらに仕込まれていた魔魔法陣を呪いと勘違いしただけです」


 ウインクしながら説明したシーナの動作から僕達はそれが公式見解で、本当は何かあったが今は口にしない方がいいと理解した。

 いや、セドリックは全くもって理解していないだろう。


「パレードの進行を邪魔しようとする動きは警邏隊によって阻止されているから、そっちの黒幕はこれから判明するでしょうね」


 緑の一族の少年役の子に何かあった事とは別件で未遂に終わった妨害工作があったようだ。


「それより、こんな気さくなガーデンパーティーはもう二度と開催されないかもしれないから、楽しんだ方がいいですわよ」


「兄上!揚げパン、ちがった、アメリカンドッグが美味しかったです!揚げパンは辛いのが入っていました」


 セドリック、あれは揚げパンじゃなくてカレーパンだよ。揚げパンはきな粉がなかったから作っていない。


 セドリックは双子達の手をとりホットスナックのコーナーに引っ張っていった。


「私のお勧めは、あっちの焼肉ですよ」


 シーナが焼肉ブースの方を指さすとイザベラは、ずっと気になっていました、と焼き台の方に歩き出した。

 肉の焼ける匂いは人を引き付けるよね。


 僕とノンは、本当のところはどうだったのか?と尋ねるようにシーナを見つめた。


『教会関係者だ』


 シーナは精霊言語で僕とノンに顛末を語った。


 戦勝パレードに僕が参加したら誘拐される未来が事前に知っていたシーナは伯父上と相談して、僕が参加しない事で危険を回避するだけでなく首謀者を拘束するために囮を用意していた。 


 パレードで観衆がまく花びらに仕掛けがあることが予測できていたので、あらかじめ観衆たちにばらまく花びらを配布し、それに風魔法の魔法陣が刻まれており、花びらを回収しやすいような工夫がされていた。


 ばらまく花びらを事前に用意していても、興に乗った市民たちが他の花びらをまくだろうと想定し仕込んだ花びらの風魔法で他の花びらも集めるようになっていた。

 それで、教会関係者が仕込んでいた問題の花びらも回収できたらしい。


 緑の一族の少年役の子に投げつけられた花びらには魔法陣ではなく呪文の発動を補助する記号が記されていたらしい。


 呪文を使えるのは教会関係者だけなので、今のところ容疑者は教会関係者、となっている。


 ちなみに呪文の発動はシーナが阻害し、少年は無事だったが、やられたふりをして馬車に下がったとのことだった。


『第二王子は中級魔導士だから容疑者の一人なんだけど、王宮のバルコニーから呪文を唱えても魔法を行使できる距離ではない。まあ、精霊達が見た実行犯も中級魔導士だったから、繋がりがある可能性があるのよ』


 シーナはチキンパエリアを堪能しながら僕とノンの脳内に語り掛けた。

 パエリアは美味しかったけれど、僕としては海鮮のパエリアが食べたかった。


 ヘンタイサディストの叔父とはいえ、面識のない甥っ子を誘拐したいと思うだろうか?中級魔導士だったら教会の方が怪しいよね。


 僕の掌がほんのりと光って集まっている精霊達がシーナに僕の考えを伝えた。


『教会としてはアルを司祭候補として取り込みたいだろうけれど、親権が不安定なアルを誘拐するとは思えない。……うーん。精霊使い狩りの黒幕っぽい古代魔術具研究所の連中ならあり得るけれど、花びらを仕込んだ奴が中級魔導師だから、連中がそんな中途半端な奴を送り込んで来るとは思えないのよ』


 中級魔導士ってたいしたことないのかな?


『中級魔導士は危険な素材採取のようなもっとキツイ現場に送り込まれるのよ。公衆の面前で詠唱魔法を行使するなら短い呪文を使える上級魔導士にすると思うわ』


 人ごみの中で長々と呪文を唱えるよりアップウの呪文のように短い呪文の方が人目につかないかぁ。


『まあ、実行犯の顔は確認できたから人相書きを警邏隊に回しているわ。そもそも、中級魔導師なんてそうそういないから、ほどなくして捕まるはずよ』


 魔法学校より神学校はずっと少ないらしく魔導士の存在自体が珍しいらしい。


「ピラフの方が私は好みかしら」


 シーナの感想に皿によそってくれたメイドが頷いた。

 料理長がたっぷりのバターを使用したので今回はピラフの方が口当たりがまろやかだ。

 チャーハンとリゾットも用意したかったが、米が少なくて断念した。


『ああ、精霊達が太陽柱から映像を見つけたようね。あらあら。……黒幕が第二王子だったらよかったのに、どうやら、違うかもしれない』


 太陽柱を見た精霊達からの情報なのにシーナの精霊言語は歯切れが悪かった。


『チッ。違うのかぁ。第二王子が黒幕だったら国王陛下との面会の時に第二王子を排除できるけれど、どうやら、実行犯は第二王子の関係者だけど、第二王子は関係していないようね』


 シーナは残念そうに精霊言語で舌打ちをした。


 第二王子の関係者なのに関係していないって、なんだか変だな。


『いくら、成人した前世の記憶があるからといって、子どものアルに説明しずらいな……』


 あっ!痴話げんかだ!


『あー、そうねぇ。そんな感じかなぁ。まあ、ぼんやりと説明すると、少年に対する嗜虐趣味がある、と精霊達が忠告していた第二王子の現在の愛人が、自分は第二王子の好みの範疇より成長してしまった事に焦っていたようね』


 えっ!もしかして、僕がヘンタイサディストの叔父の好みの年齢だから、勝手に嫉妬されたのか!


『うーん。……ちょっと違うようね。アルはまだ幼すぎるけれど、メリーアン妃にそっくりな容貌が第二王子の好みらしくって、アルが成長する前にアルを亡き者にしたかったみたい』


 ああ、愛人の妄想による暴走かぁ。

 それじゃあ、ヘンタイサディストの叔父は無罪だ。


『うーん。アル。ちょっと誤解しているかも。……厳密には第二王子はまだそこまでヘンタイサディストではないようなの』


 唐揚げに檸檬をかけたメイドを見ながらシーナは首を傾げた。


「ご要望をお伺いする前に果汁をかけてしまって申し訳ありません。お取替えいたします!」

「いえいえ、ちょっと考え事をしていただけで、果汁のありの方が好みです」


 シーナは受け取った皿をぎゅっと手前に引っ張って訂正した。


「僕も果汁ありで一個お願いします!」


 散々食べたけれど見ているとまた食べたくなった。


『どうやら第二王子は神学校に入学して寮に入ってから下働きをする年下の神学生を可愛がるうちにそういう関係になってしまい、毎年入れ替わる下働きがどんどん年下になっていくから少年趣味、と誤解されているだけで、美青年も範疇に入っているみたいなの』


 それじゃあ、ヘンタイサディスト、いや、男色家の叔父はショタではないから、今すぐ愛人を捨てるわけじゃないだろうに。


『……それがね。どうにも、今の愛人、今回の実行犯ね。そいつが傷めつけられると快感を感じる被虐趣味があって、追い込まれると快感を感じるから、勝手に捨てられると被害者意識を抱いて今回の事件が起こったの。そいつの性癖のせいで、美少年は傷めつけられると快感を感じると第二王子が思い込んでしまっているようなの』


 ああ、深層心理に嗜虐嗜好がなかったのに行為の最中に嗜虐による快感を得てしまったから叔父は思考回路がおかしくなってしまったのかぁ。


『王太子ブライアンが第二王子をメリーアン妃から遠ざけていたので、第二王子はメリーアン妃に妄執しているきらいがあるから、アルと面会させたくないのよね』


 そうなのか。

 もしかして、愛人の妄想からの暴走なのに、ヘンタイサディストになりそうな叔父は僕に固執する可能性がやっぱりあるのか!


 伯父上に要相談だ!


『待て待て待て!第二王子が男色家らしいと噂にはなっているけれど、アルが口にするのは憚られる!しかも、第二王子は国王夫妻の長期の婚約期間に理解ある愛人として陛下を陰から支えた現側室の愛息子なんだ!四十歳越えてからの初産を陛下ばかりではなく妃殿下もたいそう心配するなか誕生した王子様だから、第二王子は国王夫妻がたいそう目をかけている存在なんだ!』


 うわぁ。

 なんてこった!

 それは、明らかに僕を誘拐しようとした証拠がなければ、謁見の場にいないでほしい、とは言い出しにくいじゃないか!

『前途多難』の時代のラウンドール王国は大地震や国の分裂のせいでアルのレシピは消失してしまっています。

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