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僕の異世界生活はどうにも波瀾万丈なようです。  作者: 有木苫占
第三章 男児はつらいよ ~僕とおじさん

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6 戦勝パレードとガーデンパーティー

 僕の日課はトニーとセドリックとの早朝訓練から始まり、中庭の祠に魔力奉納をしてから朝食を取る。

 王太子一家はここまでほぼ全員参加した。伯父上が参加していない日は前日の夕食後、王宮に行ったきり帰って来ない日だけだ。


 王太子がそんなに忙しいなら仮病の国王の祖父が仕事をすればいいのに。

 いや、まだまだ祖父は現役続行の意思を見せていたのだから、きっと不穏分子の炙りだしに時間がかかっているのだろう。


 午前中はセドリックとお勉強をしている。この時間帯でも多忙な王太子一家はなんとか時間に都合をつけ、誰かかれか見学に来ている。

 セドリックとノンの学習対決が見世物になっているからだ。


 計算対決だけでなく、地理や歴史の勉強では家庭教師の出題にノアがセドリックより先に地図や教科書に差し棒で該当箇所を示すのだ。


 後手に回ったセドリックが家庭教師に説明する役になり、答えに詰まると僕が回答を誘導する助言をするので、円滑に授業が進んだ。


 いつも敗北してばかりのセドリックは翌朝リベンジを誓ってトニーとの早朝訓練に臨み、ノンに木刀で打ち負かされている。


 ぽっちゃりセドリックはよく食べるしよく動く腕白な子どもだったから、目を離すと花壇をひっくり返したり部屋の調度品をひっくり返したりしていたらしい。

 そんなセドリックが、早朝訓練でガッツリ体を動かした後、魔力奉納で魔力を使い、朝食後の座学で頭を使うと、昼過ぎにはガッツリお昼寝してしまうので、離宮の使用人たちはノンに会うたびに礼を言っている。


 午後からは、セドリックがお昼寝している間に僕は図書室に籠もり僕に許されている範囲で蔵書を読み漁り、メラニーへの土産話になりそうなエピソードを写本していた。


 セドリックが起きたら、ノンを交えて鬼ごっこをする。

 そうこうしているとお茶の時間になり、王太子一家の誰かかれかがなんとか時間の都合をつけて僕達に合流するのだ。


 コンラッドとサイラスは時折、お互いの服を入れ替えてお茶の席に着くので、何で入れ変わるの?と尋ねると、二人は魔法学校の専攻が異なっているが互いの研究に興味があるので支障のない範囲で入れ替わっているとの事だった。


 学問と公務を両立させるために、興味の対象を絞って受講している二人は時々入れ替わって互いの授業を受けているらしい。


「結局のところ、上級魔術師の資格を取得してしまうと、ほとんどの魔法陣の使用が認められるのです。薬学は販売目的でなければ自分で調合できるから、上級薬師の資格取得条件まで受講する必要がないのですよ」


「上質な回復薬は自分の魔力で調合した方が自分に合った薬になりますからね」


 シーナの言葉にコンラッドとサイラスは頷いた。

 次期王太子の期待を背負うコンラッドは薬草学や植物学を専攻するサイラスの研究に興味があっても、周囲から受講することを好ましく思われていたかったから諦めたようだ。


 サイラスはコンラッドとは逆で、ブリジット妃の実家がサイラスに兵法にまつわるような騎士課程の進学を望んでおらず、侯爵家の派閥の学生達に嫌味を言われるのを嫌い地味な専攻を選んでいた。

 だが、体を動かすのも兵法も地政学も好きだったので、時折入れ替わって受講すると気楽で楽しかったらしい。


「私はシーナ様のように広く深く魔法学を学びたいのですが、専攻を絞ったお陰でこうして兄弟でお茶を楽しむ時間が取れるのだから、周囲の助言を聞いておくものですね」

 

 コンラッドの言葉にサイラスとイザベラは頷いた。


「私は人生の大事な決定を後回しにしたかったから、いつまでも勉強を続けていただけす。最終的に神学を学んで聖女になりましたが長続きはしませんでした」


「聖女というお仕事は大変なお仕事ですよね」


 イザベラの質問にシーナは首を傾げた。


「聖女は光属性の魔法を行使する女性がなるのですが、私は属性の偏りがないので司祭補佐としてあらゆる仕事をしていましたね。死霊系魔獣の討伐隊に参加したこともありました」


 シーナが男性のようなルックスの似非占い師に見えているいとこ達は、シーナ様ならできるだろう、と納得している。


 僕達が伯父上と合流する前に鎮魂の儀式と共に死霊系魔獣を討伐したことは、元聖女と緑の一族の助力を得て鎮魂の儀式が完了して死霊系魔獣が消滅した、という公式発表になった。


 戦勝パレードにはトニーとシーナも参加する事になったが、僕はセドリックと一緒に離宮でお留守番だ。当日の僕の護衛は王太子直属の騎士達を離宮に派遣する予定になっている。


「パレードで聖女服姿のシーナ様が見られるなんて楽しみですわ」


 イザベラの言葉に、おっさん姿のシーナの女装を想像したのか従弟達がギョッとした目でシーナを見た。


 身体強化で姿勢を保つ練習をしていた僕はそんな従弟達の反応に笑いがこみあげても顎を引いてうなじを伸ばす優雅な死姿を意識するだけで耐えられた。


「頭からベールを被って参加するので、子どもの幽霊ごっこみたいな格好ですよ。だいたいの聖女は顔バレすると誘拐の危険が高まるので、不特定多数に見られる公の場ではベールをがぶっています」


「ラウンドール王国に現在、聖女はいませんから知りませんでした」

「世界的に聖女は少ないですね。まあ、女性が少ないから聖女も少ないのでしょう」


「「シーナ様は王宮の戦勝パーティーには参加されないのですか?」」

「ええ。トニーに押し付けるつもりです」


 シーナの返答にトニーは頬を引きつらせつつ頷いた。

 

 パーティーは独身のトニーにとっていい出会いの場になりそうだから、そんないやそうな顔をしないで楽しんできてほしいな。


「アルフレッド殿下が戦勝パレードの当日に離宮で予定しているガーデンパーティーの方が楽しそうですよ」


 お留守番が決定しているセドリックを楽しませようと、僕は離宮の使用人達の慰労を兼ねたガーデンパーティーを計画していた。


 招待客はいつも僕達をお世話してくれているメイドや庭師や調理師達で、あらかじめ料理して食品保管庫に収納していた料理でささやかな慰労会にするつもりなのだ。


 事前準備は大変だろうけど、大鍋でのパエリアやピラフのレシピを料理長に伝えると張り切っていた。


 戦勝パーティーに参加しない双子やイザベラも途中から参加する予定なので、シーナまで合流するのならトニーはこっちの方が気楽でいいのだろう。


 魔法剣士トニーに憧れを抱く可憐なお嬢様がいるかもしれないから、トニーは大人のパーティーに参加した方がいいよ。




「詠唱魔法はカッコいい!」


 戦勝パレードの真っ最中に開かれたガーデンパーティーでセドリックが家庭教師に熱弁を振るっていると、僕の警護に増員された一部の騎士達が小さく頷いた。


 僕の警護には侯爵領で仲良くなった騎士達が派遣されていたのだ。

 離宮の従業員たちの労いを兼ねたパーティーなので、増員された騎士達も交代でパーティーに参加できるように叔父上が認めてくれたから、あの時僕達の焼肉の煙を浴びていただけの騎士達が味見をできるように焼肉ブースも用意した。


 離宮の従業員たちは交代で参加する事になるが、作り置きの料理がたくさんあるのでシフトが後になった人たちも笑顔で働いている。


「セドリック殿下。詠唱魔法は神学校に通わないと学べないので、ご家族と離れて暮らすことになるのですよ」


 家庭教師はセドリックに神学生は教会付属の寮生活になる事を教えると、セドリックは眉を顰めた。


「シーナ様も寮に入ったのかなぁ」

「教会付属の孤児院に部屋を借りた、とおっしゃっていましたよ」


 家庭教師の説明を聞いたセドリックは、離宮を出たくない、と首を横に振った。


「セドリック殿下の叔父様の第二王子殿下は上級魔法学校を卒業後、神学校に進学されました。初級魔導士の資格を取得後、ご自身の離宮から新学校に通われていましたよ。神学をお勉強されるとしたら、成人後の方がよろしいでしょうね」


 ラウンドール王国第二王子、と言えば、ヘンタイサディストの叔父ではないか!

 詠唱魔法を使えるのか!

 

「叔父上は上級魔導士の資格を取得されているのですか?」


 アップウの呪文より短い呪文を使う可能性があるのかと疑問に思った僕の質問に家庭教師は首を横に振った。


「いえ、第二王子殿下は中級魔導師で、教会では司祭補までのお仕事しか成されていなかったはずです。第二王子殿下は、十年間教会の仕事に携わる、という契約で教会に入られた方なので、そこまでの修行はされていません」


「やっぱりシーナ様は凄い人なんだ!」


 成人後の王族が十年経っても取得できない資格を取得した元聖女のシーナにセドリックはますます入れ込んだかのように言った。


 うん。

 君の父親は家庭教師が初恋の人でそこから年上好きの性癖をこじらせてしまったからセドリックの家庭教師が男性が選ばれたのだろうに、過度にシーナに憧れてしまうと父親の二の舞になりそうだ。


 ……だから、男装の似非占い師に見えるように精霊魔法を使っているんじゃないかなぁ。


 つぶらな瞳で訴えているノンに、だよね、と僕は頷いた。


「殿下!この揚げパンが画期的に美味しいです!」


 いつもセドリックを護衛している騎士見習いの一人がアメリカンドッグを手に興奮してセドリックに話しかけた。


「見かけはこん棒みたいなのに、美味しいのかい?」

「僕は好きな味ですよ」


「アルフレッド様が好きな味なら試してみよう!」


 セドリックはホットスナックのコーナーに興味を移した。


「王族が教会に入る、という事は王位継承権を放棄する方が多いので、あまり口にしない方がいいのですよ」


 騎士見習いの少年が小声で僕に教えてくれた。


「第二王子殿下が、十年間、と限定して王位継承権を放棄せずに教会に籍を置きましたから、セドリック殿下も可能なのですが、世間的には王座に興味のない王子とみなされてしまうでしょう。そこのところはおいおいセドリック殿下にご説明いたします」


「セドリック様は一度にたくさんの説明をすると、一部しか覚えてくださいませんから、おいおいでいいと思います」


 僕の言葉に、家庭教師は曖昧に微笑み、ノンは力強く頷いた。


 

 王位座と距離を置きたいなら神学を学べば手っ取り早く世間を納得させられるが、すでに精霊達を使役する呪文を使える僕は精霊使い狩りの危険性を鑑みると教会から距離を置きたい。


 詠唱魔法はカッコいいけれど、魔法陣とアップウの呪文を組み合わせたらかなり幅ひろい魔法が行使できそうなので、僕は神学校には興味がないな。

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