表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の異世界生活はどうにも波瀾万丈なようです。  作者: 有木苫占
第三章 男児はつらいよ ~僕とおじさん

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/108

3 僕と僕の母方の親族

「長男のコンラッドと次男のサイラス。もうすぐ十歳の二人は今年の秋中級魔法学校に進学予定です。長女のイザベラは八歳で初級魔法学校の二年生です。三男のセドリックがアル殿下と同い年の六歳です」


 応接間で紹介された王太子夫妻の子ども達は、長男コンラッドと次男サイラスは伯父上に似た銀髪に王太子妃ブリジットに似た青い瞳をしており、一卵性双生児らしく顔も体形もそっくり同じで、はにかんだ表情まで瓜二つだった。

 二人は得意な魔法が違うのか魔力の質が異なっているので間違える事はなさそうだった。


 長女のイザベラはブリジット妃に似た鮮やかなライムグリーン色の髪に伯父上と同じアメジスト色の瞳をしており、双子達と両親から受け継いだ色を入れ替えたみたいで面白かった。


 三男のセドリックはそんなきょうだい達と全く違い、茶色の髪と灰色の瞳は母方の祖父の侯爵の色と同じだった。侯爵は一度でもセドリックに面会していたなら僕と間違える事なんてなかっただろう。


 それでも子供たちは全員、伯父上とブリジット妃の面影があり、興味津々に瞳を輝かせて僕とノンを見ている。


「従弟のアルフレッドです。公爵領に行くまでの間、こちらでお世話になります。よろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げると、ハァ、と子ども達から吐息が漏れた。


「母上の部屋にメリーアン様の絵がたくさん飾られているのですが、アルフレッド様は幼いころのメリーアン王女様にそっくりですね」

「はにかむ表情も困惑気味に瞳を揺らすところもそっくりです」


 双子のコンラッドとサイラスの言葉にイザベラとセドリックが頷いた。

 いとこ達からブリジット妃と同質な熱量を感じる。


 アイドルのポスターやブロマイドを熱烈に収集するように母の肖像画を集めていたブリジット妃の影響をもろに受けて僕を推しの子として、神格化しているのだろうか?


 こういう場合は興味の対象を増やせばいいはずだ。


「こっちは、僕のペットのノンです。この衣装は緑の一族の村で作ってもらいました。二本足で立つとマントに見えるデザインです」


 僕の紹介に合わせて立ち上がってポーズを決めたノンに、可愛い!とイザベラが目を輝かせた。

 男の子達も、言葉がわかるのか!と驚いている。


「そして、こちらが護衛の魔法剣士トニーと、上級魔術師にして上級魔導士同然の元聖女のシーナです。シーナは冒険者ギルドで契約終了の手続きをするまで、ここに滞在する予定です」


 ハイスペックな二人を紹介すると子ども達はトニーとシーナに尊敬の眼差しを向けた。

 よしよし。


「まあ、シーナ様はアルフレッド様との護衛契約を終了してしまうのですか!ですが、アルフレッド様の滞在中、いえ、その後もしばらく離宮に滞在していただけませんか!」


 ブリジット妃は新たな推しを見つけたのに早々にお別れしなければならないなんて、と言いたげな切ない瞳でシーナを見た。


「ありがたいお申し出ですが、私は修行中の身なので一所に長期滞在することはありません。アルフレッド殿下と契約を延長したとしても、殿下を公爵領まで送り届けたら終了するつもりです」


 転移魔法で伯父上と合流してしまったからシーナとの旅が短くなってしまった。ここでお別れは寂しいから公爵領まで護衛してもらえるとありがたい。


 シーナに契約延長の意向がある、と聞いたブリジット妃は満面の笑みになった。


「まあ、それでしたら、アルフレッド様が離宮に滞在中はシーナ様もこちらにいらっしゃるのですね」


 オホホホホ、とブリジット妃は高らかに笑った。シーナの滞在を確約させてひとまず満足したのだろう。


「「母上。僕達がアルフレッド王子様をお部屋まで案内してもいいですか?」」


 双子の申し出にイザベラとセドリックが、抜け駆けだ、と言うかのようにショックを受けた顔になった。


「後日、お茶の時間を作りますから、アル様にはゆっくり休んでいただきましょう。


 ピシャリと双子の申し出を退けるとブリジット妃は僕付きのメイドや使用人達を紹介した。


「アル様のお世話を担当するメイドを通してアル様のご意向を窺ってから面会予約をするのですよ」


 子ども達は残念そうな表情をしつつも、はい、と素直に返事をした。





「ブリジット妃殿下が母上の親衛隊員だったって、どうして事前に教えてくれなかったの?」


 豪華なスイートルームに案内されてから僕はトニーに詰め寄った。


「メリーアン様が外国に留学する時にメリーアン様をお守りする事を決意する生徒たちによって親衛隊が結成され、ブリジット妃殿下も参加されていました。ですが、メリーアン妃と学年が違ったため、ブリジット妃殿下は一年で帰国されました。その後、王太子殿下の婚約者候補になり王宮に通われるようになりましたが、当時はこれほどメリーアン様に入れ込んでいるとは思っておりませんでした」


 トニーの説明に僕付きのメイドが小さく頷いた。


「メリーアン様のご成婚が決まった時にシャオ王国まで付き添えない親衛隊は解散しました。私も当時、親衛隊の一人だったのです。アルフレッド様が離宮に滞在されると決まった時から私共使用人一同は殿下をお迎えできることに大変光栄に感じていおりました」


 メイドは他の使用人も親衛隊員だったことを臭わせた。


「ハハハハハ。ブリジット妃殿下はご成婚されるまでは大人しくされていたのでしょうね。メリーアン妃がシャオ王国に嫁がれてしまった寂しさで、メリーアン妃の肖像画の収集が加速したのでしょう」


 シーナの推測にメイドは微笑みながら頷いた。


「今頃、絵師たちがアルフレッド殿下のスケッチ画を描かされていることでしょう。お気になさりますか?」


「いえ。かまいません。僕の存在は母上が生きた証です。僕のスケッチを見て母上を偲んでくださる方々のお慰めになるのでしたら光栄です」


 やめて、と言って部屋に突撃されるくらいなら、絵で満足していてほしい。


「護衛の視点ではアルフレッド殿下が王都に滞在中はスケッチ画を離宮内から流出させないでほしい」


 シーナがメイドに忠告すると、心得ております、とメイドは頷いた。


 ヘンタイサディストの叔父に僕の容姿が伝わって叔父が僕に興味を示すような事態を避けたい。


「ブリジット妃殿下はアルフレッド殿下が国王陛下に謁見できるのは戦勝パレードの後になるのではないか、と推測されています。……」


 メイドが今後の予定を説明している最中にドアをノックする音し、メイドは言葉を止めた。

 メイドが扉を開けると、そこにいたのは先ほどチラッと紹介された家令だった。


「アルフレッド殿下。温室でメリーアン王女様が愛された花が見頃を迎えています。ぜひ足をお運びください」


 先ほどまでブリジット妃殿下が僕の旅の疲れを気にしていたのに、部屋に通されて間もなく温室に行くように勧めるなんて、きっと今行かなければいけない理由が、急遽、起こったのだろう。


「わかりました。向かいます」


 僕の返答に家令は目を細めて頷いた。

 この人も僕を見て母上を偲んでいるのだろう。



 家令の案内で温室に向かうと温室の奥のもう一つの温室へ向かう扉に家令が手をかざした。

 魔法陣が反応し、カチリ、と鍵が開いた。

 扉を開けると家令は扉の中に向かって深々とお辞儀をした。


「どうぞ、こちらです。本日は特別に護衛のお二人も中にお入りください」


 家令に促された僕が扉の向こうを覗くと、大きなサボテンの花の奥に二人の老夫婦がいた。


「ああ。アルフレッド!」

「まあ、話に聞く通り、メリーアンにそっくりね」


 紹介されなくてもこの二人が誰なのかわかった。

 若いころはきっと見事な銀髪だったに違いない巻き毛は真っ白で、涙がにじむ瞳の色はアメジスト色の老紳士が、僕の祖父の国王だろう。

 プラチナブロンドに青い目の老婦人は母の面影があった。


 僕のお祖父さんとお祖母さん。


「はじめまして、お祖父様、お祖母様。僕がメリーアンの長男、アルフレッドです」


「ブライアンに話を聞いてから謁見の手続きなど待っておれなくて、秘密の魔法陣を使用して会いに来てしまった。旅の疲れが残る時に呼び出して済まなかったねぇ」


 二人の元に駆けつけると祖父は両手を広げて僕を抱きしめてくれた。


「いえ。体が丈夫になったので全然疲れていません!」

「そのようね。ああ、貴方ばかりでなく私にもアルフレッドを抱きしめさせてちょうだい!」


 涙ぐんだ祖母が両手を広げると力強く僕を抱きしめていた祖父は僕を手放した。


「ああ。あの子がここにいてくれたら一番よかったのですけれど、それは叶わない事ですわね。でも、こうしてアルフレッドが私達を頼って来てくれたことを嬉しく思いますよ」


 僕を抱きしめた祖母は抱擁の手を強めた後、パッと放し、僕の頬を優しく撫でた。


「魔法剣士トニー、上級魔術師にして上級魔導士相当の元聖女シーナ様。お二人のお陰でアルフレッドは無事にラウンドール王国の土を踏むことができた。おまけに、戦後処理の死霊系魔獣討伐まで済ませていただき、神々のご褒美で湧き出た温泉で儂の体調が回復した。感謝してもしきれないくらいの恩人だ」


「お祖父様はあの温泉に入ったのですか!」

「ああ、アルフレッド達が引き揚げてから、かつての国境の砦まで王家の転移魔法陣で転移し、温泉地に向かったんだ。アルフレッド達が侯爵領で騎士達と戯れているころ儂は温泉ですっかり回復した」


「私は王宮で留守番していたのですが、入ると若返る湯があるというではありませんか!私も訪ねてみたいものですわ」


「公式に訪問するのはすぐにとはいかないから、時間を作ってお忍びで行こう。道中に転移魔法の拠点を作っておいたから日帰りで行けるぞ」


 ずいぶんとフットワークが軽い祖父母だな。


「公務を控えなければならないほど体調を崩されていたと伺っていたのですが、大丈夫なのですか?」


 祖父母はハハハと笑った。


「長引く戦争を終わらせるべくブライアンが戦地に赴いてから、儂は忙しすぎてぎっくり腰になったんだ。回復薬でぎっくり腰をどうにかすると、今度は肩を壊してしまい、それも回復薬で誤魔化して働いていたら、容貌が一気に老け込んでしまってな。とてもじゃないがやつれすぎて表に出にくくなってしまったんだ」


 僕の背後でシーナが頷いている。


「そうなのよ。アルフレッド。この人には休養が必要だったのに、まだ、ブライアンには任せられない、と変に張り切ってしまって、体調不良をこじらせてしまったの。この人が休んでいた方がブライアンの足を引っ張る連中を炙りだせるから、と長期間静養してもらったのよ」


「大事じゃなくて何よりです」

「癒しの湯で若返ったからといって、無茶しないでくださいね。私より二十も年上なのですから、しっかりご自分の年齢を自覚してくださいませ!」


 そんなに年が離れているのか!

 僕が祖父母を見比べるとバツが悪そうに祖父は笑った。

 気さくに笑い合い、共にお忍びで行動する二人は政略結婚に見えない。


 なんてこった!

 僕の母方の祖父はロリコンだったのか!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ