24 時をかける元聖女
体調不良につき短めです。
ごめんなさい。
「これが精霊」
シーナが胸の前で上向きに掌を広げると、一体の精霊が掌の上で淡い光を放った。
見慣れた精霊の姿に僕とトニーは、そうだね、と頷いた。
「ちょっとみんな集まって!……これが中級精霊の大きさ」
シーナの掌の上に精霊達が集まり、身長三十センチメートルほどの〇-ビー人形のサイズの人型の光の塊になった。
「これが中級精霊の大きさ。真似たのは大きさだけで、本物は人形のように人間そっくりに変身できるわ」
ほう、と僕とトニーは感心した。
光の塊の人形は誇らしげに胸を反らせた。精霊達は中級精霊になりきって楽しんでいるようだ。
「そして、上級精霊の大きさはね……」
シーナの言葉に合わせてさらにたくさんの精霊達が集まり、トニーと同じくらいの大きさの人型の光の塊になった。
「大きさは実寸大の人間と変わらない。けれど、人間ではありえないほど、とても美しいお姿なのよ……」
「……人間と言うより……神々に近いのか……」
シーナはうっとりとした表情で遠い目をし、トニーは酷く驚いたのか言葉を絞り出すように言ったが、僕は精霊がいる世界なのだから大精霊がいたっておかしくない、と考えたのでそこまで驚かなかった。
普通の精霊達が寄せ集まって模った上級精霊の人型は淡い光で背後が透けて見えており中途半端な幽霊のようで威厳がなかった。
精霊達の淡い光は揺らいでおり、偉大な上級精霊の姿を模るのはおこがましい、と怯えているようだった。
「ええ。精霊は神々の僕ですもの。人間とは違う存在だわ。そして、何より……上級精霊様が神々しいのは、その御力……」
どう説明したものか、としきりと首を傾げたシーナは思いがけないことを言った。
「アルなら理解するはずだ、と上級精霊様は言っていたわ」
「僕なら?」
「ええ。私は早朝礼拝を終えて宿に戻るとアルとトニーと一緒に宿を出て、屋台で朝食を食べたのよ。それも、何度も」
「何だって!」
「ループ?」
僕とトニーは同時に全く異なる反応をした。
「ループ。同じ時間を何度も繰り返す時間の輪。言い得て妙ね。でも、永遠に時間の輪から抜け出せないわけではなかったから、ちょっと違うのでしょう。屋台でソーセージパンを食べたのは三回。いえ、一回目は食べていないから、口にしたのは二回ね」
「ちょっと、何を言っているのかわからない……」
「とりあえず、シーナの話を聞こう。同じ時間帯を繰り返したのなら、順番に起こった出来事を話してほしい」
ファンタジー感満載のこの世界にフィンクション的読み物が存在していないから、トニーには通常の魔法でできないことは想像しにくいはずだ。
それなら、トニーが理解しようがしまいが、シーナに何がどうなったかを淡々と語ってもらうしかない。
「私もどう言ったらトニーが理解できるように説明できるかわからない。とにかく、早朝礼拝で祭壇が輝いてから、混乱している教会関係者たちに、この町の人々は以後おのれの行いを正すだろう!とだけ言いおいてササッと宿に戻ったのよ」
はぁ、と溜息をつくシーナに、トニーは理解していないながらも、そうなのか、と呟いた。
「宿で清算する時に従業員に嫌味を言われたわ」
「ああ、俺がうるさかったらしいな」
シーナはトニーが嫌味の内容に気付いていない事に驚いた。
「やだ、私が反論しなかったら、貴方ったらあの嫌味に気付かず、そのまま宿を出たの?」
「そうだよ。シーナはどうやって反論したの?」
トニーは即答した僕の言葉に首を傾げた。
「頭の中が下品な発想でいっぱいだから、下衆の勘繰りをするんだ、と言ったのよ。奇跡の回復薬を作っていたことは、後で教会からの下げ渡しの水飴が市中に広がればわかる事実だもん。あえて言わなかったわ」
「そうだね。心が穢れているから、そんな風に聞こえちゃっただけだもんね。というか、聞き耳を立てている方が下衆いよ!」
「どんな風に聞こえていたんだ!」
混乱して頭を抱えるトニーにバラバラになった精霊達が宥めるように淡い光を放ちながらトニーを取り囲んだ。
「そんなところに引っ掛かっていたら話が進まないから、続けて!」
僕は混乱しているトニーを放置するようにシーナに頼んだ。
「七大神の祠巡りをする前にアルが物欲しそうな顔をしていたから、先に朝食を食べる事になったの」
うん、とトニーは自分が理解できる話に頷いた。
「結構並んでいたんだけれど、すぐに私達の順番になったわ。ああ、宿を出てから私達をつけ狙っていた連中は、偶々雇い主が私たちの後ろに並んでしまったので動きが封じられてしまっていたの」
「ああ。誘拐したアルを転売する立場の人間が犯行現場にいるのはマズいんだな」
わざわざ実行犯にチンピラを雇ったのに現場にいたら主犯格だと発覚しやすいからか。
でも、あの男は真っ黒な噂だらけだったから、体面なんて気にしても意味ないだろうに。
「トニーがパンの代金を支払い終わるか終わらないかのうちに、町中のいたるところで大爆発が起こったのよ。商業ギルドの建物なんて跡形もなくふっとんだわ」
「「やりすぎだろう!」」
声を揃えた僕達にシーナは頷いた。
「そうよ。わたしが、やりすぎだ、と呟いたら、光り輝く祭壇の前で名乗りを上げ、精霊達に悪者達を懲らしめるように精霊言語で伝えた直後に戻っていたのよ!」
あちゃー。
精霊達に命じる前に戻ればいいのに、どうしてその地点に戻っちゃうんだ!
毎日更新を優先するため、数日間短めで投稿します。




