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僕の異世界生活はどうにも波瀾万丈なようです。  作者: 有木苫占
第一章 僕と最強の護衛

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15 シーナとトニーと僕の模索

「不確定な未来を漠然と列挙されて振り回される人生は結構面倒だよね」


 僕の言葉にシーナが頷くと、全ての精霊達が動揺したようにかすかに放つ光を震わせた。

 まるで空間が歪んだかのように視界がおかしくなるから止めてほしい。


 アップウとシーナに一喝され、精霊達は気配を消した。


「まあ、精霊達に唆されても決意したのは私だから、教会に入ったことも、聖女を辞めるために結婚したことも、後悔していないよ」


 ケタケタとシーナは笑った。


「十分、精霊達に引っ掻き回された人生のように聞こえるよ」


 トニーの突っ込みに僕も頷いた。


「大きな志を持たない人生なんてそんなもんでしょう。私の洗礼式で、教会に関わる仕事が向いている、と司祭に言われた時は、生涯神に祈りを捧げる仕事に就くことに興味がなくて、だらだらと魔法学校を最終学年まで通い続けたの。それなのに元聖女よ」


「だらだらと魔法学校で在学を続けるなんて無理だよ。成績上位者でないと上級魔法学校には進学できない」


 小声でトニーが突っ込んだ。


 初級、中級、上級、と別れている魔法学校は成績不良では進学できないらしい。猛勉強しないとシーナのように自在に魔法を使えるようにならないのか、と僕は気を引き締めた。

 せっかく健康な体に生まれてきたんだから、前世より努力をして剣と魔法の世界を堪能しなければ!


 今できる事は魔力循環だけだから、せっせと体の中で魔力をぐるぐる回す。

 慣れてくると歩きながらでも高速で魔力を循環できるようになった。

 おっと!

 あまり高速でグルグル回すと指先や足先などの折り返し地点で遠心力がかかって体の外に魔力が飛びだしたら、また精霊達に干渉される余地が出てしまう!


 指先などの折り返し地点に身体強化の要領で皮膚の表面に魔力を張り付けるようなイメージをする。


 ……いいね。ちゃんと定着した。


「ハハハ。緑の一族から学費を出してもらうための条件があったから、それなに勉強を頑張ったよ。まあ、開発した光魔法の魔法陣が高く評価されて、卒業後の進路に神学校への推薦の話が出たんだ。一族から離れて世間を知っても教会での暮らしに魅力を感じていなかったから、神学に興味のない素振りをして暗に断ったのに推薦されてしまった」


 軽い口調に初対面の胡散臭さがなかなか抜けなかったシーナが、元聖女と知っても、シーナが教会で祈る姿をイメージしにくい。

 のらりくらりとした学校生活をしていたんだったら、ぱっと見は不真面目な学生だったんだろうな。


 あれ!意識しなくても魔力を漏らさないようにできるようになったら、足取りが軽くなった。

 さっき精霊達が身体強化の補助をしてくれた部分を体が覚えていたようだ。


「うちの一族は女系だから、魔法学校で彼氏ができなければ、帰省のたびにお見合い話を持ち込まれるの」


 ただでさえ女性が少ない世界で、富をもたらす緑の一族なら嫁入り先は引く手あまただろうな。


「うんざりしていたんだけど、かといって、魔法学校は貴族の子弟ばかりだったから、はなにつく男子ばかりで関わりたくないような男ばっかりだったの」


 シーナの説明に、そうだな、とトニーは同意した。


「魔法学校には基本的に貴族しかいない。平民でも、洗礼式で認められるだけの魔力量があれば入学を認めらる地域がある。それでも、貴族階級同士で縁談を結びたい男子は平民出身の女子生徒を小馬鹿にする傾向があることは認める。まあ、そんな奴に限って卒業間際になっても縁談がまとまらず、焦って数少ない平民の女子に声をかけても、もう縁談が決まっているものだったな」


 圧倒的に女子が足りない世界だから、貴族階級に嫁ぐ平民もいるのか。

 緑の一族だったら貴族階級でも縁を持ちたいと思うんだろうな。


 おっと、話に花咲く今なら、少しだけ歩く速度を上げても二人は気付かないかもしれないな。


「世話好きの親族が持ち込むお見合い相手は、富を呼び込む緑の一族の娘、ということで商家の長男ばかり勧められる。ああ、緑の一族は権力を避けるから、貴族階級からのお見合いはよっぽどじゃない限り断っているよ」


「体面を気にする貴族は、緑の一族と言えど、階級は平民なので、縁談と言っても愛人、よくて小国の王族の側室だろう」


 トニーの解説にシーナは頷いた。


 僕が少し歩く速度を上げても、二人は僕の両脇にぴったりとくっついてきているのに気付いた様子はない。

 もうちょっと速度を上げて見よう。

 うん。

 足取りが軽いのに、魔力は僕の中をぐるぐる回っているだけなので魔力を使った感覚がない。

 いいねぇ。


「なまじっか流暢に魔法を使うと貴族の鼻っ柱を折ってしまうし、子どもが生まれたら本妻の子より魔力量の多い子どもが生まれてしまうから、女児でも御家騒動の火種になる。当人同士の大恋愛でもない限り貴族階級と縁を結ぶことはないね」


 貴族の面子かぁ。

 亡き母は王太子の父の最大の後ろ盾である側室の実家を配慮して僕と父の面会日を決めていた。

 母は大国出身でも内政面では後ろ盾になれないから、気を使っていたけれど、苛烈な王太子妃だったら側室を苛めるパターンだったんだろうな。


 母が側室の親族への対応を事を荒立てずに子ども達を徹底的に守る方に全振りしたのは、自分の体調がすぐれなかったからなのだろう。


「結婚を選択すると、せっかく学んだ魔法を使用できる機会がなくなるから嫌になってね。結婚する気がないんだったら教会に入ればいい、と精霊達の唆されたんだ」


 初恋に一途すぎだったトニーは、気が向かないなら結婚しない方がいい、と深く頷いた。


「せっかくなら全種類の魔法を極めようと考えて、教会で魔導士の勉強をすることに決めたんだ。でもね、上級魔導士の試験に合格したのに、女子は聖職に就けず、結局、聖女なるしかなかったんだ」


 男性ばかりの世界で女子の就職は教会でなくても難しいだろう。


 それでも、資格さえ取れば第一人者として活躍できるかもしれない、とシーナは期待したんだろうな。

 教会に入れ、と精霊達がシーナを唆しても、自分たちの都合の悪いことを説明しないので、シーナが上級魔導士になれないことを話さなかったのだろう。


 いや、シーナは自分が先駆者になるつもりだったのかな?

 そういう生き方もカッコいい。


 あっ!

 トニーがシーナの話に聞き入っている今なら、もうちょっと早く歩いてもいいかな。


 身体強化で呼吸が楽になっているから速度を上げても息切れしない。


「聖女なんて御大層な称号なのに、実際は教会では便利屋扱いなんだよ。その上、認識疎外の魔法を使わなければ夜這いに会う始末だ。やってられないよ」


「聖職者でありながら、なんて卑劣な!」


 トニーは眉を顰めた。


 冒険者ギルドでシーナが女性だと気付くや否や誰もかれもが急に距離を縮めようとしたように、あまりに女性が少なすぎて、聖職者といえども欲望を抑えきれないのだろうか。

 いや、どんな集団にでも卑劣な男がいるからだろう。


「ああ、教会の最上位者はよくできたお方で、危険な派遣先では男装して上級魔導士のふりをして活動することを認めてくださった。……それでも、まあ、華奢な男でもかまわないという性癖の連中が迫ってくるんだよ」


 筋骨隆々でもそういった誘いはある、と小声でトニーが呟いた。

 トニーはそっちの方々にモテたのだろうか?


 トニーの周りの精霊達がほんのりと二回点滅した。


 あれ?僕は精霊達に干渉されないように外に出る魔力を抑えているのに思考を読まれたのか!

 うむむむむ!

 体から漏れ出る魔力を完全に抑えるのは難しいんだな。


「結婚するためなら還俗できる、と精霊達に唆されると、まあ、いい年だし、結婚するのもいいかな、と考えて、お見合い斡旋が好きな親族に手頃の人を紹介してもらったんだ。これも、結局は自分で決めたんだ。トニーだったら、結婚に興味がある時期に精霊達に唆されても、妃殿下やアルの護衛を辞めないだろう?」


 シーナの身の上話を聞いていたのに急に自分に話を振られたトニーは、辞めない、と力強く頷いた。

 王女様の筆頭護衛だったトニーはラウンドール王国でさぞモテただろうに。


 トニーの周りの精霊達がほんのりと二回点滅した。


 畜生!

 体内の魔力を高速回転させつつ皮膚の表面にガッツリ魔力の壁を作ったのにまだ魔力が漏れているのか!


「ひょっとして、ラウンドール王国にいた頃だけでなく、シャオ王国でもトニーに縁談があったの?」


 光を消したトニーの周りの精霊達を睨みながらトニーの恋愛事情を掘り下げた。


 精霊達が淡く光ることを冷やかしと感じたのかトニーは、ええまあ、それなりに、と頷きながら苦笑した。


「俺はメリー妃殿下の護衛になるために騎士になることを志した。その意志は固い。ラウンドール王国では長く続く紛争の解決手段としてメリー殿下が外国に嫁ぐことを念頭に入れたご教育をされていた。俺は縁談があっても海外赴任になることを伝えたら、娘を海外に出してもいい考える親御さんがいないから立ち消えになった」


 いやいや、女性の同僚のアデルがいたのだから、娘を海外に出したくない親御さんばかりじゃないだろう。

 トニーが無意識に僕の母以外の女性を寄せ付けないような振る舞いをしていたに違いない。


 僕の周りの精霊達がうっすらと二回点滅した。


 ムムムムム!

 皮膚の表面に固定する魔力をさらに厚くしたのに、まだ思考を読み取られるほど漏れているのか!


「シャオ王国で私に持ち込まれた縁談は、メリーアン妃殿下やアルを陥れるための手駒のような女性を紹介されたので、お断りした」


 実際、僕は害されてシャオ王国から脱出することになったのだから、僕は苦笑した。


「トニーの人生をすっかり狂わせてしまったのは僕の存在なのかな……」


 ボソッと呟くとトニーの周りの精霊達は弱弱しく抗議するかのように点滅し、トニーは大きく首を横に振った。


「妃殿下に初めてお目見えした時に、将来、私の護衛騎士になってください、とメリーアン妃殿下からお言葉を賜った時からずっと、王族の護衛騎士として生涯を捧げる、と俺は決意した。妃殿下から託された使命を果たすことが俺の生きる証だ。アルを立派に成人させる事に俺の存在意義がある!」


 胸を張って真摯な眼差して僕を見るトニーの周りで精霊達が小さく光った。

 トニーのこの一途さを精霊達は気に入っているのだろう。


「ありがとう。でもね、トニーはトニーとして幸せになってもらいたいんだよね」

「「結婚だけが人生の幸せじゃない!」」


 トニーとシーナが同時に反応した。


「「あれ!?いつの間に、身体強化しながら歩いていたんだ!」」


 しまった!

 トニーとシーナに同時にバレてしまった!

 

 僕に注目が集まるような発言なんてするんじゃなかったな。

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