表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕の異世界生活はどうにも波瀾万丈なようです。  作者: 有木苫占
閑話4

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

106/113

閑話5 俺はトニー

 俺はトニー。

 ラウンドール王国公爵家三男。生まれ育ちは良い。だが、爵位を継ぐ見込みのない俺は王女様に恋しても報われない立場だった。

 そんなことは幼いメリーアン王女に一目で恋に落ちた時からわかっていた。


 魔法学校に入学したブライアン王太子殿下のご学友としてお茶会の席でメリーアン殿下と出会った。

 侯爵家の三男で将来騎士を目指している、と自己紹介すると、私の護衛騎士になってくださいませ、と可愛らしいお声でおっしゃった。

 

 銀髪でアメジストのような大きな瞳の美しい人形のようなメリーアン殿下が俺の心をぎゅっと掴んだ瞬間だった。

 俺は王家の騎士団に入団して王族の護衛騎士になると決意した。


 それから、ブライアン王太子殿下は王宮に俺をしばしば呼びつけた。


 お人形のような容姿とは裏腹にメリーアン殿下は王宮の庭の片隅で魔蚕を飼ったり、蜘蛛の巣を集めたりしており、侍女達には探せない場所に潜り込んでいることがままあったからだ。


 いや、ブライアン王太子殿下は王太子教育に時間を取られサミュエル殿下ほどメリーアン殿下の側にいられないのを悔しがって、私を呼んでメリーアン殿下から遠ざけていたのだろう。


 実際のところは、国王夫妻が末っ子のサミュエル殿下を溺愛していたが、王宮内の使用人たちは側室のお子であるサミュエル殿下を疎ましく思う者もおり、サミュエル殿下が庭の奥にメリーアン殿下を探しに行けば嫌がらせをしていたようなので、ブライアン王太子殿下は警戒して俺を呼んだ側面もあった。


 ブライアン王太子殿下は口の悪いところがあっても根は家族思いで、とても慎重な性格だった。


 身分、魔力、容姿に優れたメリーアン殿下は幼いころから縁談が引きも切らず、縁談を断られると誘拐を企む外国勢力もあった。

 護衛をまいてしまうヤンチャな妹に忠実に付き添える俺をお姫さもと護衛騎士のごっこ遊びの延長としてそばに置いていた。


 かくして俺は魔法学校時代から見習い騎士として王宮に出入りしメリーアン殿下の護衛兼子守りのような立場になった。

 

 俺は王家の騎士団の精鋭しか就けない王族の護衛騎士を目指してとにかく鍛錬に励んだ。


 メリーアン殿下は留学してしまい、護衛兼友人としてアデルが同行したので安心していたが、メリーアン殿下は小国の王子と恋仲になってしまった。


 しょせん俺には手の届かぬ高貴なお姫様だ。


 俺は念願かなって王家の騎士団に内定したのに、メリーアン殿下は小国の王子を婿に取り親戚筋の公爵家を継ぐことになりそうだった。


 苔の騎士団に入団すると婚姻後、女公爵になってしまうメリーアン殿下の護衛騎士になる道は断たれたと思った。


 それでも、入団式での王家に忠誠を誓う誓約の儀で王家代表としてメリーアン殿下が登壇された時は嬉しかった。

 俺の順番になり登壇した俺の肩にメリーアン殿下が握る魔法剣が触れた時……。





「騎士団の誓約の儀式で魔法剣が反応したのは、トニーがその時すでに尋常ならざる量の精霊達を股間に集めていたからなのですよ」


 シーナは淡々と俺と魔法剣と精霊達の説明をサミュエル殿下にした。


 あの時も俺は確かに勃起していた。


 シーナに解説されてしまうと美しい思い出だったが、メリーアン殿下に抱いてしまった劣情を思い出し、疚しさに胸を締め付けられた。


「そうやって人間なら誰しも抱く欲望を悪しきものとして抑え込むから、精霊達が見悶えながら喜ぶのよ」

「健全な成年なら当たり前の反応だよね」


 一児の母のシーナが口にするなら、まあ、かまわない。

 異世界の記憶があるからといって、幼き日のメリーアン殿下そっくりの顔の六歳の王子様が、健全な青年の身体的反応について語らないでほしい。


「精霊達がトニーの魔法剣に干渉しているのか!」


 サミュエル殿下に股間を凝視されるとどうにも落ち着かない。

 サミュエル殿下の好みは童顔で年下の華奢な男性だから、俺は範疇にないのは重々知っているが、一物が光れば興味を示すだろう。


 頼む!光るな!


 よしよし。


『アップウの呪文、で当分光るな、と命じてあるから大丈夫よ』


 脳内に響くシーナの精霊言語に俺は苦笑を堪えた。


 サイラス殿下とセドリック殿下がバーニーとサーフィンの練習に励み、アダムが拘束されている男に呪文を唱えながら聖水をかけている間に、荒野に出現した精霊達の事を思い出したサミュエル殿下に尋ねられたシーナは、全てを俺の魔法剣のせいにした。


「片思いに悶々とするシチュエーションを好む精霊が多くいます。そこに、王族に興味があった精霊達が魔法剣に張り付いたのでトニーは魔法剣に選ばれた剣士になったのでしょうね」


「そうだったのか」


「精霊なんて姿を現さないだけでそこら中にいますよ。鎮魂の儀式の時は物凄い量の精霊達が集まりました。あの時現場にいた騎士達に聞けば詳しく教えてくれますよ」


 俺の股間にだけ集中して集まるのではない、とサミュエル殿下念を押した。


「なるほどね。この話はアダムにしてもいいが、あの男に知られないようにしなければならないんだな」


「ええそうです。例の素材を研究していたのが大聖堂島の古代魔術具研究所です。緑の一族以外に精霊達を集められる人物がいる、と教会関係者にバレると、たぶんここにいる王族がまず先に狙われます」


「ああ、あそこは未知なる力を欲しているからな。あの男から供述を取った後に男を教会に引き渡したらならんな」


 ブライアン王太子殿下はあの男から供述を引き出し終えたら、まずもって生かしてはおかないだろう。


「サミュエル殿下!産毛が生えてきましたよ!」


 アダムの嬉しそうな声に俺達は振り返った。


「産毛って、どこの毛を生やしたんだ!」


 亀甲縛りで拘束されている男は縛られたまま着衣をずらされて乳首を露出させていた。


「いいところに着目しましたね!アダムさん。ほとんど取れかかっていた乳首が再生するのなら、乳毛だって再生するはずだ!」


 アルフレッド殿下が嬉しそうにアダムと男の方に駆け寄った。


「そうですよね。乳首は二つあるから聖水と温泉水を比較するのに丁度いいのです!」


 アダムは嬉々として亀甲縛りの隙間から男の服を大きくずらして素肌を広げた。


 やめてくれ!卑猥すぎる。


「ああ、本当ですね。うっすらと乳毛が生えていますわ」


 シーナは屈みこんで拘束されている男の乳首をまじまじと見た。


「頭部はやっぱり駄目か?」


「はい。変化がありません」


「もともとの傷の深さが違うのかもしれませんから、傷を元に戻して再検証しましょうか?」


 シーナの言葉に乳毛が生えた男はフルフルと首を横に振った。


「いくら罪人でも、一日に何度も傷を戻されたら苦痛で気が触れてしまうよ。もう検証は明日以降でいいでしょう?」


 乳毛男は、天使のような美しい顔で心優しい言葉を言うアルフレッド殿下に心酔した眼差しを向けた。


 もう少しガッツリ殴っておけばよかったな。


「ああ、癒やしは聴取とセットでする方がいいだろう。砦に戻ってからたっぷり尋問しよう」


 冷ややかな微笑を浮かべたサミュエル殿下はまだまだ嗜虐趣味を維持しているように見える。

 尋問はサミュエル殿下に任せておけばいいだろう。


「コンラッド様!セドリック!そろそろ砦に戻るよ!」


「砦までサーフィンで戻ってもいいでしょうか!」


「いけませんよ、コンラッド殿下!カモミール畑を潰されたら蜂達に襲われてしまいますよ!」


 シーナの言葉にサーフボードに乗っていた面々は頷いた。


「砦に戻ったら大聖堂島で聞いたシャオ王国の様子をご報告しますね」


 アルフレッド殿下はメラニー姫の事が気がかりなのか嬉しそうに頷いた。

 サイラス殿下とセドリック殿下は複雑そうな表情をしている。


 アルフレッド殿下にラウンドール王国に残ってもらいたい気持ちは俺も同じだ。


「メラニーへのお土産の第一弾がシャオ王国に届いているはずだから、一緒に話を聞こうよ!」


 アルフレッド殿下の誘いに二人の王子は安心したのか笑顔になった。


 アルフレッド殿下は本当に人を和ませるのが上手だ。


 メリーアン殿下遺児だからではなくアルフレッド殿下が特別に愛らしい人だから、皆が惹かれるのだ。


 俺は命ある限りこの方に忠義を尽くすつもりだ。


 股間に精霊達の圧がかかった。

 頼むから散ってくれよ!

 どこかほかの場所を気に入ってほしいんだけどなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ