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僕の異世界生活はどうにも波瀾万丈なようです。  作者: 有木苫占
閑話4

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閑話4 私はシーナ

 私はシーナ。


 生まれつき精霊言語取得していた私は、良くも悪くも過保護に育てられ、それを振り切るために無茶な生き方をした自覚はあるの。


 あらゆる生命体の声が聞こえるから、余計な物の声を聞こえないようにする事に多くの魔力を費やしていた。そういえば、理不尽な人生だけど、魔法学校生時代は試験内容を事前に教えてもらえるからそれほど苦も無く成績上位者になれた。

 過剰に褒められると自分がズルしているようで、後ろめたさがあったわ。


 アルの魔力循環方法を使えば精霊言語を聞こえないようにする事が省魔力で行えるようになった。

 アルと出会って自分がズルして知識を身に着けていたような後ろめたさも、結局は考え方次第なんだと気付いたの。


 異世界で生活していた前世の記憶があるアルを見ていたら、ちょっと知っていることを実際にやるために結構きつい努力をしているのを目の当たりにしたら、私の人生は結構頑張っていたんじゃないか、と思えてきたのよ。


 精霊達に振り回される人生を嘆くなんて、上級精霊様や神々の干渉が突然起こる事に比べたら、赤ん坊がハイハイを嫌がっているような小さな事だったのよ。


 ここからの出来事は砦の奇襲が起こってからの事よ。

 



 トニーの執務室に押し掛けてきた面倒臭いおじさんに無礼にならないギリギリの表情で鬱陶しさを顔に出した。


「トニーがアルフレッドに過保護になるのは理解できるのですが、シーナ殿も相当過保護ですよね」


 警備の都合上、王族全員を外出禁止にしているだけで別にアルだけを過保護にしているわけではない、と言いたいところだが、相手は王子様だ。


 トニーにあいつを何とかしろ、と視線で訴えた。


「サミュエル殿下。アダムさんに外出許可が出たのは砦の農地化が認められたのでアダムさんの自由行動の許可が下りたのです。一緒に行けないからといって私達にあてこすりしないでください」


 サミュエル王子は不貞腐れた表情で恨めしそうに私を見た。

 私がトニーに言わせたのに、私があんたの外出禁止を解くようにトニーに頼むわけないわよ。


「黒焦げになった上級魔導士は教会ではとっくに死亡届が受理された人物でした。同時に死亡している上級魔導士がもう一人いるので、間違いなくもう一度奇襲されるでしょう。そして、その魔導士も癒える事のない傷を負っているのなら、必ず癒しの湯を求めて近日中に現れます」


 サミュエル王子は眉間に皺を寄せたまま溜息をついた。


「私はね。もう自殺願望はないよ。毎日が楽しくて仕方ない。アダムが私に執着するだけでなく作物を成長させることに喜びを見出したように、私はアルフレッドがいつの間にかみんなの生活を快適にしていくところを見ていたいのだ。だから、()()()()()()()()()()()()()()に混ぜてほしいんだ!」


「「無理です!」」


 私とトニーは即答した。


 アルの日常を守りたい気持ちは理解できる。サミュエル王子は王族だから魔力こそ豊富だ。

 それでも、中級魔導士だから詠唱が長すぎる。申し訳ないが戦力外だ。

 精霊達にも予測できない魔術具を使用した上級魔導師との対決に足手まといはいらない。


「殿下にしていただきたいことは、アル殿下の暴走を止める事です。上級魔導士が現れたら、アル殿下は礼拝室に避難せずに私達援護するために砦の外に出ようとするでしょう。叔父としてアル殿下を諭してください。あの方は絶対に無茶をしようとしますから」


 お気に入りのアルを抑え込んでほしいと頼むと、渋々ながらもサミュエル王子は頷いた。


 私の推測通りの場所に目深にフードを被った不審者が出現した。

 私とトニーはこの時ばかりは転移魔法で現場近くに転移すると、打ち合わせ通りに不審な男を挟み撃ちにする場所へと移動した。

 トニーが抜刀して立ち上がった魔法剣の炎を不審な男の手袋が吸収した。


 この野郎!吸収した炎と一緒に精霊達を手袋に取り込んだな!

 これはマズい!

 アップウの呪文で精霊達を下がらせた。

 いやいや、安全な所に下がれ!と命じたけれど、トニーの股間に集中するな!トニーの股間が真っ白に光っているよ!

 恐怖で股間への圧を強くするなよ!とアップウの呪文を重ね掛けした。


 不審な男はトニーの光る股間から魔法攻撃が飛んで来るのかと考えたのか両掌をトニーの股間めがけて広げた。

 アホっぽい絵面に呆れつつも、不審な男が精霊達の気配と魔法攻撃の前兆との区別がついていない事に気付いた。


 こいつは精霊使いではないな。


 一向に股間から魔法が放たれない事に気付いた男は手袋から炎の矢をトニーの股間めがけて放ったが、トニーの魔法剣に弾かれた。


 ローラの蜂達が男を敵認識して集合している。

 蜂達もあの手袋に吸収してしまうのだろうか?


 どこまでの攻撃が手袋に吸収されるのか試すつもりで爪に仕込んだ魔法陣に魔力を流し氷の針を作り出すと、不審な男足元めがけて連打した。


 男の手袋は氷の針も吸収したが、全てを吸収しきれずに男は後退りした。


 これなら仕込んだ魔術具の方に誘導したら難なく捕縛できそうだ。


 トニーもその可能性に気付いたようで小さく頷いた。


「なんだ!吸収した魔法剣の炎が尽きたらお前からの攻撃はなしか!」


 トニーは不審な男を煽った。

 私はうすら笑うふりをしながら喉の奥で土魔法の呪文を唱えた。


「上級魔導師なのかと思ったが、ただの魔法泥棒かよ!」


 トニーの煽りに私は男を指さしながらゲラゲラ笑うと、男は私に向かって掌を広げた。


 男が私に魔法を返すより先に男の足の裏めがけ地中から杭を出したが、魔法の気配を察知した男が飛び上がった。私は次々と仕込んである魔術具の方へ男が向かうようにと杭を出し突けたが、男は仕込んである魔術具の位置を把握しているかのように魔術具を踏まなかった。


 こいつはなぜ吸収した私の氷の針を使用しない?


 ……アイツノ マワリカラ セイレイソガ イナクナッタ。


 ……アルガ セイレイソニ フシンシャカラ ハナレロ ト イッタ。


 何でアルが現場の状況がわかるんだ?


 ……アソコカラ アルガ ミテイル。

 

 精霊たちに言われるがまま視力強化で見張り塔を見上げると、アルとローラと護衛騎士がこっちを見ていた。


 あのヘンタイサディストになりそこなった王子はアルを礼拝室に連れて行かなかったのか!

 

 ……アノヘンタイハ ムチャスルナヨ ト アルニ チュウイシタヨ。

 

 なんともまあ。中途半端に約束を守ったのか!

 

 今さら何を言っても仕方ない。協力してくれるならもっと的確に精霊素を散らすようにと精霊言語でアルに指示を出した。


 私の視線での先を見たトニーは、見張り塔にいるアルがこの場の精霊素を操作している事に気付いた。


 今ならやれる!とトニーに頷いた。


 再びトニーが抜刀すると、立ち上がった炎を精霊達が制御し、不審な男の背中に飛び火した。

 

 よし、いける。ここから先はあいつをぶん殴ればいいだけだ。


 私とトニーは同時に男に飛び蹴りを入れるとボコボコに殴りつけた。

 一時避難していたローラの蜂達が私とトニーを器用に避けて男を攻撃した。


「いた。こいつだ!」

 男が手を伸ばして女王蜂の魔術具を捕まえると瞬時に男は転移した。


「行くぞ!トニー!」


 トニーが返事をする前にトニーの腰に腕を回して担ぎ上げると、力いっぱいトニーを見張り塔に向かって投げ飛ばし、両足に力を入れてジャンプしてぶっ飛んでいくトニーのベルトに捕まった。

 

 ……何してくれるんだ!


『いやいや、いざとなったらぶん投げる、って言っていただろう?トニーはちゃんと風魔法でコントロールしているじゃないか!』


 ……丸太を引っこ抜いてぶん投げる緑の一族の女性ってシーナの事だったのか!


『そんなことは、どうでもいいからスピードを緩めろ!砦にぶつかる衝撃が強すぎると、砦の守りの結界が反応する!』


 トニーの能力を信じているけれど、ここはアップウの呪文で速度を落とした。


 見張り塔の頭頂部ではすでに侵入者の男は騎士達に押しつぶされており、騎士達が拘束具を探していた。


「あるよ!」


 窓から入ったトニーが話に割って入ると、飛んできたのかと私達は注目を浴びた。


 見張り塔に集まっていた精霊達がローラとアルとノンの活躍を精霊言語でまくしたてた。

 はいはい。

 侵入者を拘束してから、ちゃんと詳しい話を聞くわよ。




 心優しいアルは侵入者の男をきつく拘束する事を避けようとした。


 まあね。これは服の下の皮膚が爛れていることを考慮した縛り方なのはわかる。


 だが、このまだらに爛れた皮膚の男が猿轡に亀甲縛りをされている姿は、特殊性癖の持ち主を刺激しそうだ。


 ……アルガ イセカイテンセイシャガ ホカニモイルノカ!ト ドウヨウシテイル。


 精霊言語でアルに精霊神誕生のきっかけになった異世界転生者の説明をすると、エロは時代を越えるのか、とアルは驚いていた。


 こういった文字を使用しない文化は秘密裏の継承されるから残りやすい。





 ブライアン王太子はヘンタイ仕様に拘束された男を見て顔を顰めた。


 アルが指示を出した亀甲縛りよりエロ差が際立つ縛り方になっていた。


 ブライアン王太子は残念そうな目でサミュエル王子を見たが、男を縛り直したのは正規の王家の騎士団員だ、と精霊達は言っている。


 ……サミュエルハ モトモト ヘンタイダケド エンザイダ。


 ……サミュエルハ ココロヲ イレカエタ。オトウトヲ シンヨウセヨ。


 サミュエル王子推し精霊達の精霊達がうるさい。




 なんだかんだとありつつも、男の自白を促す方法が正直に話せば温泉水で爛れを癒す事になった。


 邪神の欠片に触れた爛れの苦しみは一生続くのに、この温泉水を浴び続ければ痛みから開放されるなら何でも話すだろう。


 アルは死滅した毛根から毛が生えてくるかもしれない、と信じているけれど、それは無理だろう。

 失ってしまった細胞が蘇るのなら欠損した部位だって再生できてしまうじゃないか。


 ……デキナイ? デキル? ワカンナイ。

 

 そうだよね。

 神々のご利益の効果は精霊達にだってわからないわよね。


 精霊素の多い水なら大聖堂島の噴水の水だって精霊素が湧き出ているのだから何かしらの効果があるかもしれない。


 危険な魔術具の始末を見届けなくてはならないから大聖堂島に行かなくてはならないわね。





 子ども達に、いろいろな移動方法を研究した中で最適な移動手段だった、とトニーを投げて掴んで一緒に飛ぶ方法を説明したが、実際のところはトニーに、いざとなったらぶん投げる、としか言っていなかった。


 子ども達の手前トニーは話を合わせて頷いている。


 アルは、タオパイパイとおっぱいみたいな事を呟きながら、サーフボードを投げてそれに乗ればいい、ととんでもないことを言い出した。


 ……ソレナラ ヒガエリデ ダイセイドウトウカラ モドッテコレヨ。

 

 転移魔法を隠すんだったら高速飛行するしかないわね。





 ……トリデノソトノ セイレイタチガ ザワイデル!


 精霊達の警告に衝撃波を出しながらぶっ飛んで帰って来たら、サーフボードで遊ぶ子ども達の周りを色とりどりの精霊達が煌めいていた。


 蜂蜜ごときで興奮するんじゃないわよ!

 アップウの呪文で点滅を止めさせた。


 精霊達についての説明を拘束されている男の前でしたくないから、ここは聖水を持ちだして関心を逸らすしかないか。





 聖水はちっとも効き目がなかったが、拘束された男は古傷の痛みで精霊達の光どころではなくなった効果があった。


 聖水に癒しの作用があるのなら、毎日、聖水で沐浴している聖職者は毎日癒されている事になるのに実際は怪我なんて治らない。


 ……チョットダケ ナオッテイルヨ。


 あら、そうなのね。


 当たり前に享受している恩恵はなかなか気が付かないのよね。


 そっかー。だから、聖職者って長生きするのか。


 ……シーナガ ワカクミエルノハ セイスイノ オカゲ。


 ……ゾクチョウノミズノ ケンキュウヲ シテイルカラ。


 あらあら、私も恩恵を受けていたのね。

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