37 新しい日常と突然の非日常
エピソード101 第三章37『日常と非日常の狭間』はコピペの失敗で一部内容が重複していました。
本来の内容に訂正したものを『新しい日常と突然の非日常』としました。
お見苦しいものを投稿してしまい申し訳ありませんでした。
養蜂かローラさんは砦の騎士達のマドンナ的存在になった。
若くて可愛い娘さんが単身で男ばかりの砦に来たのだ。未婚の男性騎士達は色めきだった。
それでも、一人がローラさんに声をかけると、わらわらと騎士達が群がり、互いに牽制しあってたので、個人的に親しくなった騎士は誰もいなかった。
肉襦袢のように全身に精霊達を纏っているローラさんに近づくと精霊達から圧がかるのか食堂でローラさんの隣の席に座れる騎士はいなかった。
例外は、愛妻家のハイアット部隊長と、なぜか青年アダムだった。
蜜蜂の巣箱の設置のために砦の外に出るローラさんの警護計画を立てているハイアット部隊長はスケジュールを聞くのに食堂でローラさんの隣の席になる事が多い。
青年アダムは砦の周辺のお花畑計画を推進するために蜜蜂が好む花の種類を聞いているからだ。
妻一途で仕事熱心なハイアット部隊長と、サミュエル叔父至上主義で花畑を薔薇園にしたい青年アダムはローラさんに張り付いている精霊達に好意的に思われているようだ。
ローラさんに振り向いてほしい騎士達は畑作りに精を出した方が精霊達に気に入られそうだ。
「カモミールは花を摘めば次々に咲くし、積み損ねても種が散らばって勝手に増えるから、砦周辺の環境に合っていたようですね。いい蜜が集まっています」
蜂蜜の採取ばかりでなく、積んだ花を乾燥させてハーブティーにする作業をリハビリ中の傷痍騎士達がしてくれたので一石二鳥だ。
カモミール茶はミルクティーにすると美味しいのだけど、生クリームだけでなくアイスクリームの味を覚えた面々が、牛乳がまだあるのか?と視線で訴えてくるので、最近は飲みづらくなった。
「シーナ姉さまに軍事要塞で養蜂をする話を持ちかけられた時はこんなに美味しい食事にありつけるとは思ってもいませんでした」
「それは同感です」
食堂でお好み焼きを頬張るローラさんにハイアット部隊長が頷いた。
僕とサイラスとセドリックの昼食に同席しているのはローラさんとサミュエル叔父と青年アダムとハイアット部隊長で、多忙なトニーとシーナはいなかった。
ここ最近二人は料理長のお弁当を作ってもらって砦の周辺で何か細工していた。
「苦みの少ないキャベツの栽培に成功したから魔術具のホットプレートで簡単にお好み焼きが焼けるのです!」
魔術具のホット歩レートを作ったのはシーナでお好み焼きの種を作ってくれたのは料理長だから僕はキャベツの品種改良しかしていない。
お子様舌のセドリックは野菜の好き嫌いが多かったので、苦みの少ない野菜の品種改良をしたのだ。
いや、シーナの持っていたキャベツの種をそのまま育てて生で食べると胃腸薬のような味がしたので、正直、僕もちょっと苦手だった。
だって……豚カツの横の名わき役が臭くて苦いなんて嫌でしょう!
品種改良といっても花が咲いたらアップウの呪文で、甘くなれ!と念じるだけでいいんだもん。
甘くてやわらかくて大玉のキャベツが育ったら、お好み焼きが食べたくなってお好み焼きソース素の試作に励んだのだ。
お好み焼きといっても材料はシンプルに、小麦粉、ベーコン、刻み生姜、ダチョウの卵、揚げ玉が揃えばまあよしとした。長芋がないから卵白のメレンゲで代用した。
ハンドミキサーを忙しいシーナに代わってサイラスが開発して誰でもメレンゲが簡単に作れるようにすると、理長が大喜びした。
「魔法使いがたくさんいると、こんなに美味しいものができるんですね」
「いやいや、美味しい食べ物への強いこだわりがあるアルフレッドの執念の結果ですね」
確かに、前世の野菜や果物の味を覚えている僕は野菜のえぐみを減らして甘くすることに固執した。
「温泉水が豊富に使える環境だから、とことん味の追求をしますよ」
「食事もさることながら、ここの温泉もいいですね。女湯はシーナ姉様と私で独占しているようなものです。毎日が幸せです」
「保養所としての整備が済むまで心置きなく大浴場を堪能してください」
サミュエル叔父はここにいずれ貴族女性が訪れる事をローラに匂わせた。
「疲れが取れるだけでなく髪も肌もツヤツヤになるお湯ですから、貴婦人達にも人気になるでしょうね」
「ここだけの話、増毛効果もあって、温泉に浸かりながら植物の成長魔法を試してみた青年の髪がふさふさになったんだ」
サミュエル叔父は誰の髪がとは言わなかったのに、みんなの視線がサミュエルの背後に立つバーニーの頭に集中したので、若禿だったのですね、とローラは声を出さずに口を動かした。
「もう一枚食べますか?」
話題の転換にサイラスがローラさんにおかわりを焼くかどうか尋ねた。
「いただきます」
サイラスはローラさんとの初対面の時から料理を手伝っていたので、ローラさんはラウンドール王国の王子はみんな料理好きと勘違いしているようで気兼ねなく注文した。
次はチーズを入れようか、などと僕達が話していると、けたたましい警告音が食堂内に鳴り響いた。
「ああ、警告音が長いです!これは本当に警戒すべき事態です!」
バーニーは僕達が礼拝室に籠っていて時の警報とシーナがローラを連れてきた時の警報の違いを指摘して、誤報の長さじゃない、と判断すると、さらに警報の音が大きくなった。
「最大警戒レベルに上がりました!王族の皆様とローラさんは最大警戒レベルの避難行動を開始してください!」
バーニーの避難誘導の言葉が終わる前に、僕達のために増員された騎士達が食堂になだれ込んできて退路の確保を始めた。
「敵の狙いは癒しの湯です!手負いの敵が癒しの湯で回復したら、この砦どころかラウンドール王国北東部を吹き飛ばす威力の魔法を行使できる人物が想定されています!王族の皆様は礼拝室に退避してください!」
砦の守りの結界に魔力を奉納するために王族が礼拝室に籠もる必要があるのは理解できる。
ただ、礼拝室に隣には王族専用の転移魔法の部屋があった。
応援する事しかできない未成年の僕とサイラスとセドリックは最大級の警戒が発令された状況下で、王都に送り返されるのではないだろうか?
「礼拝室にはローラさんは入れません!僕はローラさんと共にここに残ります!」
「ローラさんは礼拝室の手前で待機してもらいます。王族の方々は砦を守る結界の強化をお願いいたします」
「私はシーナ姉さまの契約姉妹です。砦を守る戦力としては乏しいかもしれませんが、そこら辺の騎士に負けないくらいの自衛力はあります。どうぞ私を気遣うことなく礼拝室にお籠もりください」
「礼拝室で魔力奉納するのはサミュエル叔父上だけで、未成年の僕達はただ応援するだけです。それならサイラス様とセドリック様で十分です。僕は僕の護衛のトニーとシーナの応援をするためにここに残ります!」
魔法少女の杖を収納ポーチから取り出すと、魔法効果の倍増に期待を寄せた騎士達の目の色が変わった。
「ああ、礼拝室での魔力奉納は私に任せておけ。アルフレッドはトニー殿とシーナ殿の補佐を、アダムはローラ殿の補佐に当たりなさい」
サミュエル叔父の言葉にサイラスとセドリックは息をのみ、青年アダムは頷いた。
魔法にバフをかけられる能力者は後方に甘んじてはいけない。
最前線で支援をすべきだ。
「ああ、礼拝室での魔力奉納は私に任せておけ。アルフレッドはトニー殿とシーナ殿の補佐を、アダムはローラ殿の補佐に当たりなさい」
サミュエル叔父の言葉にサイラスとセドリックは息をのみ、青年アダムは頷いた。
魔法にバフをかけられる能力者は後方に甘んじてはいけないのだ。
「見張りの塔に行きましょう!砦を走り回ってトニーとシーナを探すより効率よく探せます!」
走り出した僕とノンに、無茶をするなよ!とサミュエル叔父が声をかけた。
いやいや、今、無茶をしなくていつするんだ!
今度の敵はマズいやつだ!と精霊達が狼狽えている気配がする。
はやる気持ちで全身に身体強化をかけるとパルクールさながらに壁を蹴って護衛騎士達を飛び越えた。




