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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第83話 武術VS技術


ミレイナとソフィア……共に第二世代のワルキューレであり、この二人にはナギサを親とする者と、教練を施された者という共通点こそあったが、それ以外は今までは特に関わりは無い。


しかしミレイナは先に行われたナギサとソフィアの試合に武者震いにも似た感情を抱く。

ナギサの鍛えたソフィアの剣は、まるでナギサそのものと戦えるような感覚を覚えていた。


ミレイナにとってナギサは憧れであり、誇りであり、やがて越えるべき壁……


自身のサムライソードを握り締めると、

ミレイナは何も言わず、再び試合場へと歩き出した。



────



試合を終えたアリアとメガイラは次の試合を観るため、リリィ達の居る別室に入室する。


しかし、別室に漂う何処となく重々しい空気に、何かがあった事をアリアは悟り、近くにいたディアナに事情を確認した。


ディアナから聞いた内容にアリアは頭を掻く。

フィレアがリリィに食って掛かったとは穏やかじゃない。内容を聞くに、フィレアはリリィの実力を誤解しているのは明らかだった。


しかし、当の本人のリリィがフィレアに何も言わなかったのなら、何も言わないのが賢明だろう。

「しっかし、フィレアの奴は分からんなぁ……」



メガイラはこれから試合に向かうバディであるソフィアの元に向かった。

「ソフィー!第二試合頑張ってください!

貴女の相手はあのナギサのバディにしてアリアが鍛えたミレイナ

……第二世代でも飛び抜けた接近戦能力を持った強力なワルキューレです。油断しないでくださいね」


「ありがとうメガイラ……でも、安心して」


「油断なんか、絶対"出来ない"から」

ソフィアはこれから戦うミレイナのデータを見つめていた。


ミレイナがサムライソードから放つそれは、

音すら置き去りにする究極の一閃……


これから対峙するミレイナは戦士としての

天性の才と、それに溺れること無く自身を叩き上げられる強さを持った、接近戦において最強かも知れない相手……


ソフィアは次の試合、殺し合いでこそ無いが、間違い無く死闘になると直感していた。




───






ミレイナは先に試合場に到着すると、精神統一のため生身のままサムライソードを構えた。

そして、誰に見せるでもない演武を始める。


静と動が両立する鋭い動きは、見ている者が居ないのが惜しく感じられるものだった。


胸に秘めるは自身の越えねばならぬ高き壁への止まらぬ渇望。


両手で十キログラムもあるそれを振り下ろした時、視線の先にソフィアが立っていた。


ミレイナは一呼吸整えるとサムライソードを腰に戻し、頭を下げ挨拶を交わす。


「……お見苦しい所を見せましたね。

第二試合、貴女の相手のミレイナです。

挨拶こそ始めてではありませんが、こうして直接言葉を交わすのは始めてですね。本日はよろしくお願いしますね。」


礼儀正しいミレイナの姿勢にソフィアもまた、挨拶を交わす。

「こっちこそ、遅れたつもりは無いけど、待たせたのなら悪かったわ。

MV-10の装着者、ソフィアです。

今日は、いいデータが取れるような試合にしましょう。」



ソフィアの言葉にミレイナが反応する。

「MV-10……ソフィア……確か、ハカセの開発した最新鋭の、基礎性能だけなら第三世代に区分すべきかも知れないという、あの?」


「ええ……ハカセはそう話していたわね。

貴女のMV-06アテナとは性能差が大きい……

フェアな試合にならなくて申し訳無いわね。」

そうソフィアが事実を言った時だ。


「まさか!むしろやる気が出ます!」

ミレイナは笑顔を浮かべ、拳を握り締めた。


「何より、越える壁は高ければ高いほど良いというもの!

貴女のナギサさんとの試合での剣裁き、見事でした!

……しかし、必ず越えてみせます!」


ミレイナの発言に悪意は全く無かった。

しかし、その言葉はソフィアを逆なでした。

「……戦う前から勝つ気でいる……か。」

小さく、ミレイナに聞こえないほど小さく漏らす。


「そうね。確かに、私も貴女を"越えたくなった"わミレイナ」

ソフィアの目が鋭いものになる。


この真っ直ぐ過ぎる娘を一度ひしゃげてやりたくなった。


ソフィアがデバイスを構えた。

それを合図にするかのように、ミレイナもまたデバイスを取り出す。


互いが同時に、まるで炎と氷、相反するデザインの鎧に身を包んだ。



ミレイナが姿勢を低くして腰の剣を握り締める。


ソフィアはその予備動作から次にミレイナが放つ攻撃を先の試合から理解し、

目にも止まらぬ速さで放たれた刃を弾いてみせた。


事前知識で予測できたからこそ、弾けたものの、見据えていたはずなのに視認不可能だった速さの攻撃にソフィアは戦慄する。


───今のはミレイナがルキア戦で見せた

"あの一閃"では無い。つまり、まだ上があるという事……


(計算よりずっと早い……最初から全力でやらなければ……やられる!)


ソフィアはミレイナから距離を取るとスーツのエネルギーを最大解放するMV-10だけが持つ機能、"リミット・ゼロ"を発動。

アクアマリンの輝きがソフィアを包む。


これはリリィとの私闘で行った限界稼働状態をハカセがシステムに組み込んだものだった。


このシステムはあくまでスーツの各所結晶体に蓄積したエネルギーを完全解放するというだけのもの。すなわち、短期決戦用の機能だ。


ソフィアがスーツから放つ眩い輝きを見てミレイナは息を呑む。

「綺麗……」


しかしその美しさとは裏腹に悲鳴にも似た音を放つその姿が、限界稼働だと直感させる。

それを受け、ミレイナもまた、エネルギー供給を足にのみ集めていく。

操作の難しいそれを鍛錬により自身の技として、オレンジの輝きを放ち始めたミレイナもまた、自身の奥義で応えんと構えた。


ミレイナの技が発動するよりも早く、ソフィアが動いた。

ソフィアが描く、目にも止まらぬ鋭角な軌跡は試合を観ていた者達を圧倒していた。




「す、すげぇ性能じゃねぇか……流石は最新型……」

アリアは純粋な驚嘆の声を漏らす。

速さに自身のあるアリアですら目で追うことが出来ないMV-10の性能に舌を巻く。

……あれと互角にやり合ったというリリィの話が今更信じられなくなった。


「性能だけではない。ソフィアはあの"じゃじゃ馬"に翻弄される事なく己の力として扱っている。

……私が鍛えただけの事はある。」

ナギサは勝ち誇った様に鼻を鳴らす。


「いや、ナギサお前ミレイナの親代わりだろ。どっち応援してるんだよ。」


「もちろん、両方だ。」

ナギサは迷いなく答えた。




ソフィアは稲妻の如き動きでミレイナの周囲を舞い、ミレイナを翻弄すると、一気に距離を詰め、そのまま上空に吹き飛ばしながら双剣で畳み掛けんとする。



───しかし……それまで、ソフィアからは、まるでスローモーションに見えたミレイナの瞳が、ソフィアを捉え始める。


「私はっ……!」

サムライソードで辛うじてソフィアの攻撃を弾きながらミレイナが叫ぶ。


「ナギサさんを倒した貴女を越え……ナギサさんを越えてみせる!」

ミレイナの啖呵を聞きソフィアも叫ぶ。


「今、貴女に対峙しているのは……この私だ!!」


その叫びを聞き、ミレイナは思わず息を呑む。


ナギサさんを越えたい……その想いは間違いないが、今目の前に居るソフィアもまた、己が越えるべき、力を持った強者だ。

だと言うのに、自分はただナギサの影を重ねソフィアを見ていなかったと気付く。


自惚れか、或いは自身過剰か、とにかく目の前のソフィアに対しあまりに失礼な感情だったと自責した。


ソフィアの荒れ狂う稲妻の如き軌道に、ミレイナは自身のスーツのエネルギー出力先を小刻みに変動させ食らいついていく。


足がソフィアに届きそうなら足先へ、攻撃を受ける時は腕の装甲に、そうする事で世代差による出力の差を埋めていく。本来であれば難しいそれを音速を超えた戦闘で行ってみせた。


互いに機体性能を、自身の技をフルに活用し互角の剣戟を繰り広げていた。二人のあまりに激しい戦いにこれまで無事だった試合場に亀裂が入っていく。


ミレイナのメカニカルワルキューレもまた、本来の性能を上回る動きに危険域のアラートを鳴らし始める。


ソフィアもまた、自身のリミット・ゼロの限界が近い事を悟り、ミレイナに一気にトドメを刺そうと、助走の為に距離を取った瞬間


ミレイナは一気に地面に飛躍すると、

地に両足を着け、腰を低くして脚部にエネルギーを集中させる。


「その構え……させるか!!」

ソフィアは"あの一閃"が来ると判断し出力を更に引き上げ、残りの全てのエネルギーをスラスターに回した。


「勝つのは……私です!!」


───地から空へ、空から地へ、

同時に放たれた二人の刃。


───先に地に堕ちたのはソフィアだった。


ミレイナの刃は、焦りから最適解を選ばず、先にリミット・ゼロの限界時間が訪れたソフィアの装甲を切り裂いてみせた。



───第二ブロック第二試合は最後まで己を信じたミレイナの勝利で幕を閉じた。

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