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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第84話 勝者の後ろ


負けたソフィアと勝ったミレイナ。


二人は試合場で思い思いに感傷に浸っていた。


そして、床に座っていたソフィアにミレイナは手を伸ばす。


「ソフィアさん。貴女の操縦技能……見事でした。あんな性能の暴力の様なスーツを良くぞあそこまで。お見事です。」


「……勝者の余裕かしら。そう言うのは……」


そこまで言いかけてミレイナの顔を見たソフィアはそれ以上の言葉を続けなかった。


ミレイナの顔には憐れみや、嘲笑の色はなく……戦士として、これから隣を歩まんとする者の表情を浮かべていたから。


「はぁ……メガイラと言い、貴女と言い……どいつもこいつも……」


ソフィアは呆れた様にため息を漏らすと差し出された手を取り立ち上がった。


「……次があったら、必ず貴女を落としてみせるわ。」


「もちろん、望むところです!」


ミレイナとソフィア。


共にナギサとの縁で繋がっていた二人は、こうして新たな縁を結んで行く。



ここに武と技、新しい関係が築かれた。





二人の戦いを観ていたメガイラは内心ゲンナリしていた。


次の試合、そもそもソフィアはバディであり友である為戦いづらかったし、近接戦闘最強と噂のミレイナに関しては、勝ち筋が見えていなかった。


ただでは転んでやるものかとは思っていなかったが、それでも次の試合、自身が苦しい状況なのは理解してしまった。



第三ブロック第一試合は、最初からミレイナが圧倒していた。

メガイラの放つエネルギーバインダーも、ギガンティック・アームも、あくまでアリア戦を想定した調整のままだった。


本来ハッキング及び、遠隔操作等の搦手を得意とするメガイラに、サムライソード一本で戦うミレイナは相性が最悪の相手だった。


それもアリアをも越える接近戦能力……


もちろん、ここが戦場であればメガイラに負ける要素は無かったが、ここは遮蔽物の無い

試合場。


自身の性能を100%引き出せない状況に歯噛みしていた。


しかし、メガイラも第一世代としての譲れぬプライドがある。


メガイラはエネルギーバインダーに自身の姿を投影させミレイナを撹乱させる。


そしてミレイナがエネルギーバインダーに映るメガイラを切り捨てたと同時に、メガイラは背後からギガンティック・アームによる強力な一撃を繰り出す。


背後から迫る質量。


反応は刹那。


ミレイナは咄嗟に半身を沈める。


背面装甲が火花を散らし、ギガンティック・アームが空を裂いた。


───掠めた。


だが、致命には至らない。


ミレイナはそのままの姿勢から無理やり回転し、自身の上空に鎮座する巨腕を切り捨ててみせた。


メガイラは顔を顰めつつも再びエネルギーバインダーに自身を投影し、ミレイナの四方を囲みながら移動する事で撹乱を狙う。



しかし……


あろう事か、ミレイナはその場で目を瞑った。


───そしてスラスターの音、放たれるビームの音、メガイラの呼吸音、本物だけが放つ鎧の軋む音……


それらを全てを回避行動を取りながら聞き分け始めていた。


そのミレイナの行動に理解不能の危機感を覚え始める。


ミレイナのあの動きはただ技術を磨いたからと到達出来る次元では無い……



試合を観ていた他のワルキューレ達ですら、目を閉じながらも高速のビームや刃を回避し始めたミレイナの動きに驚きを越え、

もはや薄気味悪さすら覚えていた。




ただ一人、フィレアだけは口角を上げこれからリリィがあの"化け物"と対峙するという事実に高揚していた。


シード枠でしゃしゃり出て、次世代のワルキューレに無様に負けてしまえばいいんだ……と



そして遂に……自身の今出せる全てを出しきったメガイラに、ミレイナの刃が放たれる。



バインダー制御に専念していた為、回避は不可能だった。


メガイラの胸部装甲が装着者保護を優先し弾ける。



それと同時に、試合終了のブザーが鳴り響いた。



メガイラは地面に墜落し、

自身が試合に負けた事を知覚してからしばらくして、顔を歪め泣き始めてしまった。


第一世代としてのプライドも、アリアに勝ったという事実すら覆されてしまったと感じ、涙を止める事が出来なかった。



ミレイナはサムライソードを腰に納めると、今の、勝者になった自分には、傷付いたメガイラに話せる舌は無いと自覚した。



下唇を噛み締めながら、無言でメガイラに会釈すると、そのまま試合場を後にした。



───自分の刃が相手の誇りを折ったのだと理解した。



───勝利した先に有るのは栄光だけでは無い。


勝者が居れば必ず敗者が生まれる。



それがこの試合であり、これから自分達が行う本物の戦いなんだと、ミレイナはサムライソードを握り締めた。





そして、ただ一人、リリィがゆっくりと試合場のメガイラに歩み寄ると今も顔を覆い泣いているメガイラの頭を優しく撫でた。


「……大丈夫。メガイラちゃんは本当に、すっごく頑張ったよ。」

そう言いながらメガイラの上半身をゆっくりと起こすと優しく抱きしめ頭を撫で続ける。


「今度は、私もメガイラちゃんに負けないくらい頑張ってみるから……応援してくれたら嬉しいな」


リリィの見せた優しい笑顔にメガイラは再び大きな声をあげ、リリィの胸で泣いた。



リリィはミレイナの見せた強さに自身が勝てるかは……ハッキリ言って分からなかった。



元々、第一世代としてのプライドも、矜持もあまり持ち合わせてはいなかった。



これはあくまで試合であり、自身が死力を尽くす場では無いとすら考えていた。



───しかし、今こうして、腕の中で泣く妹分の為にも、死力を尽くして試合に臨んでいた他の皆の為にも



───"今だけ"は本気で戦う覚悟を固めた。



リリィが本気出すためには誰かの為じゃないとって事でメガイラに泣いてもらっちゃった……ごめんね

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